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マーケティングフレームワークとは?主な12手法・目的と活用法

マーケティングフレームワークとは?主な12手法・目的と活用法

マーケティングの成功は偶然ではありません。戦略的な計画と実行の結果であり、その計画の根幹として活用できるのがマーケティングフレームワークです。

本記事では、マーケティングプロセスにおいてよく活用されるフレームワーク7選と、実践の手助けとなる2つの分析手法・消費者理解の手助けとなる3つの行動モデル(合計12手法)についてもご紹介します。

これらのフレームワークを理解し活用することで、企業はより効果的にマーケティング活動を展開できます。ぜひご活用ください。

マーケティングフレームワークとは?

マーケティングフレームワークとは、マーケティング戦略の計画、実行、評価を効率的に行うための枠組みのことです

フレームワークを活用することで、戦略立案を体系的かつ段階的に進められ、重要な要素を見逃さずに一貫性のある戦略を立案できます。さらに、KPIや重要な指標を設定しやすくなるため、成果を効果的に評価するのにも役立ちます。

ただし、フレームワークに固執しすぎると、フレームワークによる分析が目的となってしまい具体的な行動に結びつかないなどの問題が発生する可能性があるため、あくまで手段と考えて柔軟に使うことが重要です。

主要なフレームワーク7選

主要なフレームワーク

マーケティングの実践は、「自社を取り巻く環境の分析」→「ターゲット市場の選定や差別化を図るための戦略立案」→「戦略に沿った施策の実行」というプロセスで基本的に進めていきます

ここからは、各プロセスでよく活用されるフレームワークを7つご紹介します。

1)PEST分析

PEST分析のイメージ

PEST分析は、自社を取り巻く外部環境を分析するためのフレームワークで、以下の4つの外部要因が市場にどのような影響を与えるのかを分析します。

外的要因影響
政治的要因政府の政策や規制の変化が市場に与える影響
経済的要因経済成長率や消費者購買力の変化が市場の需要と供給与える影響
社会的要因人口動態や消費者のライフスタイルの変化が市場のニーズに与える影響
技術的要因技術革新が市場の競争環境や製品開発の方向性に与える影響

分析結果から社会全体の動向をつかみ、自社のビジネスを展開していくうえでの機会や脅威の発見につなげていきます。

関連記事:わかりやすい「PEST分析」とは?具体例を交えてやり方を解説(テンプレート付き)

2)5フォース分析

5フォース分析のイメージ

5フォース分析は、自社を取り巻く外部環境を以下の5つの競争要因に分類し、それぞれが自社のビジネスにとってどれくらい脅威となるかを分析するためのフレームワークです。

5つの競争要因概要
業界内の競合他社自社のビジネスにとって直接の競争相手となる競合他社
代替品の脅威従来は競合する製品とは位置づけていなかったものが競合するようになる可能性
新規参入者の脅威資本や技術力などで優位な新規参入者が登場する可能性
買い手の交渉力競合他社の製品や代替品への流出、消費自体の抑制、買い手市場への変化などにより自社の収益が減る可能性
売り手の交渉力供給元の価格の引き上げ、供給の停止などにより自社の収益が減る可能性

分析結果から、脅威に対してどう対応していくべきか、どう自社の資源を効果的に配分していくかを検討します。

PEST分析も5フォース分析も外部環境の分析に用いられますが、PEST分析はマクロ環境を、5フォース分析はミクロ環境を分析します。

関連記事:5フォース分析とは?わかること・やり方と具体例(テンプレート付き)

3)3C分析

3C分析のイメージ

3C分析は、「市場・顧客(Consumer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の3つの観点から、自社の経営環境について分析するためのフレームワークです。

3C分析では、市場動向や顧客ニーズ、競合各社の市場内シェアや推移、自社と競合の強み・弱みなどを分析することによって、自社の市場における立ち位置や将来起こり得るリスクについて把握します。

また、3C分析は外部環境のミクロ環境を分析する手法として位置づけられますが、自社の強みや弱み、事業の状況などと合わせて分析することで、見落としや視点の漏れを防げます。

関連記事:マーケティングの3C分析とは?目的・やり方と実践例(テンプレート付き)

4)SWOT分析

PEST分析や5フォース分析、3C分析が主に自社を取り巻く外部環境を分析することに主眼をおいたフレームワークであるのに対し、SWOT分析では、外部環境における「機会(Opportunity)」と「脅威(Threat)」、内部環境における「強み(Strength)」と「弱み(Weakness)」を分析するためのフレームワークです。

3C分析で集めた事実や情報に対してSWOT分析で評価や解釈を加え、自社の戦略的課題やそれに対する解決方法を考えるやり方がよく用いられます。

SWOT分析のイメージ

さらに、各要素を組み合わせて分析する「クロスSWOT分析」を行いながら自社の戦略の方向性を探っていきます。

  • 自社の強みを活かすことで利益獲得や成長の機会をいち早くつかむことができないか(S×O)
  • 脅威となりうる外部環境への対処として自社の強みを活用していく術はないか(S×T)
  • 現在の環境を自社の弱みを攻略する機会にできないか(W×O)
  • 脅威に立ち向かうなかで弱みを克服していけないか(W×T)
クロスSWOT分析のイメージ

関連記事:わかりやすい「SWOT分析」とは?基本とやり方・具体例(テンプレート付き)

5)STP分析

STP分析のイメージ

STP分析は、市場をなんらかの軸で「セグメンテーション(Segmentation)」により細分化し、「ターゲティング(Targeting)」で狙うべき市場を定め、「ポジショニング(Positioning)」によって自社の立ち位置を決めることで、効果的なマーケティング戦略を策定するためのフレームワークです。

効率的に利益を獲得するための市場を特定し、競合他社との競争優位性を築くための戦略を策定していきます。

SWOT分析とSTP分析はどちらも戦略を策定するのに役立ちますが、SWOT分析は内部環境と外部環境の要素を考慮して組織全体の戦略を策定するのに対し、STP分析は市場セグメントに焦点を当てて特定の戦略を策定するのに役立ちます。

関連記事:STP分析とは?わかること・やり方とマーケティングでの活用事例

6)マーケティングミックス(4P・4C)

4P分析のイメージ
4C分析のイメージ

策定したマーケティング戦略を、商品企画や広告宣伝、営業活動などの具体的施策に落とし込むために、いくつかのフレームワークを組み合わせて使うことをマーケティングミックスと呼びます。

その代表的な例として、「製品(Product)」「価格(Price)」「プロモーション(Promotion)」「流通(Place)」に基づく4P分析と、買い手側の視点で再検討した「顧客価値(Customer Value)」「コスト(Cost)」「コミュニケーション(Communication)」「利便性(Convenience)」に基づく4C分析があります。

それぞれの要素とターゲット市場における顧客ニーズとの適合性、またはそれぞれの要素間の適合性を検討しながら、顧客と自社の関係性を築き上げ、商品やサービスを選んでもらいやすい環境を作っていきます。

関連記事:マーケティング の4P・4Cとは?戦略を事例でわかりやすく解説します

     5分で理解!マーケティングミックスとは?活用事例もご紹介

7)バリューチェーン分析

バリューチェーン分析のイメージ

バリューチェーン分析は、企業の生産から販売に至る各活動において、どのように付加価値を生み出しているかを分析するためのフレームワークです。

一般的に企業の活動は「主活動」と「支援活動」に分けられ、そのなかで、“どこでより多くの付加価値が生まれているか”、“過大なコストがかかっている活動はどれか”といったことを分析します。

これにより、付加価値の最大化やコスト削減につなげていくのに加えて、自社の強みと弱みを特定して他社との差別化戦略の策定を検討します。

関連記事:わかりやすい「バリューチェーン分析」とは?目的とやり方・具体例(テンプレート付き)

目的と活用法

ここまでご紹介してきたフレームワークの目的と活用法をまとめました。

フレームワーク目的と活用法
1PEST分析外部環境のマクロ環境を分析することで、自社にとっての機会や脅威の発見につなげる
25フォース分析外部環境のミクロ環境(とくに競争要因)を分析することで、脅威に対してどう対応していくべきかを検討する
33C分析外部環境のミクロ環境(市場や競合)を分析することで、市場環境を理解する
4SWOT分析外部環境と内部環境を分析し、各要素を組み合わせることで、企業全体の戦略を策定する
5STP分析自社が誰に対してどのような価値を提供するのかを分析し、特定の市場における戦略を策定する
6マーケティングミックス(4P・4C分析)顧客ニーズと自社の商品・サービスの適合性を検討することで、売上の最大化を図る
7バリューチェーン分析自社の生産から販売に至る各活動を分析することで、付加価値の最大化やコスト削減につなげる


これらのフレームワークを組み合わせて活用することで、戦略立案の効率性を向上させ、視点の漏れや見落としを防ぎます。なお、外部環境に変化がない場合や戦略立案に関わるメンバー間で共通認識がある場合、または時間が限られている場合には、他の分析を省略してSTP分析や4P・4C分析だけを行うこともあります。

合わせて使える2つの分析手法

これまでご紹介してきたフレームワークを活用して戦略立案していくなかで、視点や検討内容に漏れや不足があっては十分な成果を得ることができません。ここでは、戦略立案にあたり視点や検討の漏れを防ぐための2つの分析手法をご紹介します。

1)MECE

MECEのイメージ

MECE(ミーシー)とは、相互に排他的かつ完全な全体集合(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)を意味し、「漏れなくダブりもない」状態を指します。

ビジネスシーンにおいて、複雑で大きな問題を解決するためには、その問題を論理的に意味のあるシンプルなレベルまで要素に分割する必要があります。この過程で分割に漏れやダブりがあると、効率が悪くなり、問題の解決につながらない恐れが出てしまいます。

MECEはこのようなリスクを防ぐための論理的思考のフレームワークで、問題解決だけでなく、戦略立案や市場調査、商品企画などあらゆるビジネスシーンで活用できます。これまでご紹介してきたフレームワークも、実はMECEを基に定型化されたものです。

なおMECEには、ある事柄の全体を大きなカテゴリーに分け、そこからさらに細分化して具体的な要素を明確にするトップダウンのアプローチと、具体的な要素を洗い出し、それらを組み合わせて全体像を構築するボトムアップのアプローチがあります。

2)ロジックツリー

ロジックツリーのイメージ

ロジックツリーとは、大きく複雑な問題を、小さく単純な問題やその原因として考えられる要素まで樹木(ツリー)状に分解していくことで、原因や問題解決策を論理的に探索するツールです。

たとえば、売上が奮わない商品がある場合には、販売数量が落ちているのか、販売単価が下がっているのか、といった問題の所在をさらに細分化して確認する必要があります。販売数量が落ちているとしたら、

  • 需要の先食いが起こったことによる一時的な問題であるのか
  • 短期的な問題ではない顧客の流出によるものか
  • 所得の減少などで購買力が下がって購入できなくなっているのか

といったように、問題の所在や原因を要素に分解していくことで、真の問題は何か、どのような対処法がありうるかの検討が容易になります。

また、ロジックツリーには上記で解説した問題解決ツリーだけでなく、要素分解ツリーや原因追求ツリー、KPIツリーなどの種類があります。とくにKPIツリーを作成することで、全体的なビジネス目標を具体的なアクション項目に分解できるため、マーケティング活動における具体的施策を講じやすくなります。

消費者理解を助ける3つの行動モデル

5フォース分析の「買い手の交渉力」やSTP分析、4P・4C分析では、自社の商品やサービスを購入してもらうために、消費者をどのように導くかが主要な課題です。この課題に対処するには、消費者が商品やサービスを購入するまでの行動や心理過程を理解することが不可欠です。

ここでは、こうした消費者理解につながる、購買意思決定プロセスに関する3種類の行動モデルをご紹介します。

1)AIDMA

AIDMAのイメージ

AIDMA(アイドマ)とは、消費者が購買に至るまでのプロセスを、商品やサービスの存在を発見(Attention)し、興味(Interest)をもち、欲しいと思う(Desire)ようになり、記憶(Memory)して、最終的に購買(Action)に至るといった5段階に整理したものです。

また、Attentionを認知段階、InterestからMemoryまでを感情段階、Actionを行動段階とし、各段階にある消費者に対してどのようなコミュニケーションを行うことで次の段階に進んでもらいやすくなるか、といったコミュニケーションプランを検討するのに有益です。

  • 認知段階:知ってもらうこと
  • 感情段階:興味・関心を引き購入したいと感じてもらうこと
  • 行動段階:実際に購入してもらうこと

ただし、AIDMAは1920年代の米国で提唱されており、今日の社会環境とは状況が異なることから、検討対象の市場においてこのモデルが有効といえるかどうかは、慎重に検討する必要があるでしょう。

2)AISAS

AISASのイメージ

AISAS(アイサス)は、AIDMAに代わる行動モデルとして電通が提唱し、インターネットの普及により消費者が能動的に情報収集を行うようになったことを反映しています。

製品の存在を発見(Attention)し、興味(Interest)をもつまではAIDMAと同じですが、そのあとは商品やサービス関連の情報についてスマホなどで検索(Search)し、検索結果からそのまま購入(Action)したうえで、購入・使用した経験や評価をSNSなどに発信・共有(Share)する、としたものです。

このモデルもAIDMAと同様、各段階にある消費者に対するコミュニケーションプランの検討に用いるものですが、「検索」や「共有」といったプロセスがあることや、「共有」の内容が「検索」にフィードバックされるなど、現在の情報環境下における購買意思決定プロセスへの適応を図ったモデルであるといえるでしょう。

3)SIPS

SIPSのイメージ

SIPS(シップス)は、AIDMAやAISASの購買意思決定プロセスにおいて、ソーシャルメディアに特化した消費者行動プロセスとして、電通(当時)の佐藤尚之氏により2011年に提唱されたものです。

SIPSモデルは、SNS時代において消費者がなんらかの行動を起こす背景には、なんらかの情報に対する共感(Sympathize)があり、その詳細を確認(Identify)したうえで、同意すれば参加(Participate)して、体験や感想についてSNS上で共有・拡散(Share & Spread)するのだというものです。

情報の発信や共有が容易なSNS時代にあっては、購入プロセスでの不手際が共有・拡散され企業として致命的なダメージを受けるリスクがある一方、購入・利用しないまでも企業の取り組みに共感し、共有・拡散することで間接的に利益をもたらす可能性があります。

このことから、AIDMAやAISASが商品やサービスの購入をゴールとするのとは異なり、SIPSでは「参加」というキーワードでゴール設定の幅を拡げているものと思われます。

活用法

ビジネスでは最終的な売上確保が重要ですが、マーケティングコミュニケーション上の戦略としては、AIDMAやAISASを前提としつつも認知拡大や興味深化を狙った施策が必要です。消費者の共感を獲得し、SNSで共有・拡散できるコンテンツを発信すれば、マス広告より効率的に成果を上げられます。これら3つの行動モデルは時代に合わせて進化するだけでなく、場面ごとに使い分けていくべきものといえるでしょう。

ただし、これらのモデルは、認知度の低い商品やサービスを対象としています。すでに十分に認知はされている既存商品の場合は、新たな利用シーンを提案するなど、消費者の購買頻度や購買量を増やす取り組みが必要です。新商品やリニューアル商品の場合は、認知拡大から始めるプロセスが適していますが、柔軟な発想で顧客行動を整理することが求められます。

フレームワークの活用における注意点

紹介したフレームの多くは汎用性が高く、正しく活用することで効果的な戦略立案が可能です。しかし、社会環境の変化により陳腐化したり、不適切な利用によりミスリードにつながったりするリスクはゼロではありません。これらのフレームワークが適切かどうか、よりふさわしいフレームはないか、フレームを用いない方が適切か、といった点について事前の検討が必要です。

また、これらのフレームを用いて戦略立案を検討する際には、視野を広くもつことが重要です。競合企業や顧客の立場、自社の商品・サービスと同様の価値を実現する代替品・サービスの存在について気付きを得るためには、自社の立場や視点から意識的に離れて多様な視点をもつことが求められます。

技術革新や社会全体の経済環境の変化など、ビジネス環境は常に変化し続けています。こうした変化に適応していくためには、戦略も随時見直すことが重要です。戦略立案や取り組みの過程で環境変化への適応状況を確認し、外部環境の変化への適応が難しくなる前に戦略を見直す臨機応変さも持ち合わせておくべきでしょう。

フレームワークを活用してマーケティング戦略の立案に役立てよう

フレームワークを正しく活用することで、重要な要素を見逃さずに一貫性のあるマーケティング戦略を効率的に立案できます。これにより、企業の効果的なマーケティング活動が実現し、ビジネスの成功につながるでしょう。

なお、この記事で紹介したものも含めたフレームワーク集を、以下より無料でダウンロードすることが可能です。これからマーケティング戦略を策定・実行していきたいと考えている方はぜひご活用ください。

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