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2024.05.02

STP分析とは?わかること・やり方とマーケティングでの活用事例

STP分析とは?わかること・やり方とマーケティングでの活用事例

STP分析とは、市場を「セグメンテーション(Segmentation)」により細分化し、「ターゲティング(Targeting)」で狙うべき市場を定め、「ポジショニング(Positioning)」によって競合との差別化を図ることで、効果的なマーケティング戦略を策定するためのフレームワークです。

本記事ではこのSTP分析について、具体的なやり方や他フレームワークとの違い、そしてマーケティングでの活用事例などをご紹介します。

STP分析とは?

STP分析のイメージ

STP分析は、以下の3つの言葉の頭文字から名付けられたマーケティングにおける代表的なフレームワークの一つです。

  • Segmentation(セグメンテーション)
  • Targeting(ターゲティング)
  • Positioning(ポジショニング)

マーケティング戦略の策定に有効な手法であり、市場をセグメンテーションで何らかの軸に基づき細分化し、その中から狙うべき市場をターゲティングで定め、ポジショニングを通じて競合との対比の中で自社の商品やサービスの位置づけを決めます

消費者に対して商品やサービスを訴求する前に行うことで、効率的に利益を獲得するための市場を特定し、競争上の優位性を築くための戦略を策定するのに役立つ手法です。

STP分析でわかること

STP分析を行うことで市場におけるニーズを把握し、狙うべき市場やアプローチの方法、競合他社と比較したうえでの差別化要素が分かります。

1. 市場における顧客ニーズ

STP分析では、まず市場を細かなセグメントに分割します。この過程において、各セグメントにどのようなニーズや特性が存在するのかを把握することが可能です。その結果、より具体的なペルソナがイメージしやすくなります。

関連記事:ビジネスでの「ペルソナ」とは?具体例と作り方・無料テンプレート

2. ターゲット市場に対してより効果的なアプローチ法

狙うべきターゲット市場を特定することができるため、広告やプロモーション、製品開発などのリソースを最適化することが可能です。ターゲット市場に対し、より効果的にアプローチすることができます。

3. 競合他社との差別化ポイント

ターゲット市場における自社の立ち位置を決めるためには、自社の製品やサービスが顧客に対してどのような価値を提供できるのかを把握することが重要です。ターゲット市場内で特に自社の製品やサービスが必要とされる特定セグメントを見つけ出すことで、競争優位性を築くための差別化ポイントを特定することが可能となります。

STP分析のやり方(テンプレート付き)

STP分析は「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」の3つのステップで実施します。以下で、詳しいやり方を確認しましょう。

なお、すぐにSTP分析を始められるように「無料テンプレート」をご用意しました。以下のテンプレートに記入しながらSTP分析を進めてみてください。

1. セグメンテーション

セグメンテーションは、広い市場を類似のニーズや特性を持つセグメント(顧客グループ)に分ける作業です。まずは、以下のような変数を用いて市場を細かく分けていきます。

変数の分類説明分類の具体例
地理的変数(ジオグラフィック変数)国や都市、地域といった地理的な条件に関連する特性。・東京都在住
・勤務先が愛知県
人口動態変数(デモグラフィック変数)性別や年齢、家族構成、職業、収入といった人口動態に関連する特性。・30代の男性
・20代で子供が1人の夫婦
・年収600万円以上
心理的変数(サイコグラフィック変数)価値観や嗜好性、性格といった心理的な状態に関連する特性。・趣味が旅行
・喫煙者
行動変数(ビヘイビアル)人の行動パターンに関連する特性。・商品Aの購入経験あり
・1か月以内に問い合わせしたユーザー

次に、以下の「4Rの原則」に基づいて各セグメントの有効性を分析します。

なお、4Rに「Rate of growth(成長性)」と「Rival(競合の状況)」を含めた6Rを使用する方法もあります。「Rate of growth」は市場がどれだけ成長を見込めるのか、そして「Rival」は競合他社の扱う製品やサービス、シェア率などを示すものです。

Rank(優先度)自社の事業戦略やマーケティング戦略に沿って優先度付けが行われているか。
Realistic(有効性)十分な売上・利益を見込めるだけの市場規模があるか。
Reach(到達可能性)自社の製品・サービス、宣伝広告などのメッセージをターゲットに的確に届けられるか。
Response(測定可能性)対象市場の規模や特徴などを測定できるか。マーケティング施策実施後の効果(反応)を測定できるか。

関連記事:【図解】セグメンテーションの概念とは?ターゲティングとの違いや分類例を解説!

ターゲティング

ターゲティングでは細分化したセグメントをそれぞれ評価し、自社が実際に狙うべき市場がどこなのかを定めます。セグメントの規模や構造がどのようになっているのかを踏まえ、自社が優位性を持ちやすい市場を選びます。もちろん、自社にとっての目標達成が可能な市場であることが大切です。

その際には、以下3つのマーケティング手法を用いるのが効果的です。

無差別型マーケティングセグメントに関わりなく、多様なターゲットに同じ製品やサービスを提供します。
顧客に類似した嗜好がある、あるいは大企業など、主に資金が潤沢なケースで用いられます。
差別型マーケティング複数セグメントに対し、それぞれのニーズに適した製品やサービスを提供します。
幅広い市場をカバーしたい大手メーカー等で多く用いられます。
集中型マーケティング特定のセグメントのみに絞ることで、シェアの獲得を目指します。
小規模企業など、資金が限られた中での戦略として用いられます。

ポジショニング

競合他社との比較を踏まえて、ターゲット市場内における自社の立ち位置を決めます。自社の製品やサービスをどう差別化し、ターゲット顧客により高い価値を提供するのかの戦略を策定することが、自社の利益最大化に繋がります。

このポジショニング戦略においては、自社及び競合他社の製品やサービスの位置づけを、以下の図のようなポジショニングマップで表すのが有効です。

STP分析のポジショニングマップ例

STP分析を実施するうえでの注意点

STP分析は、必ずしも「セグメンテーション(S)」「ターゲティング(T)」「ポジショニング(P)」の順番に従って実施する必要はありません。場合に応じて、例えば「P→T→S」「T→S→T→P」など順番を入れ替えても大丈夫です。

S・T・Pそれぞれの分析を行ったり来たりしながら試行錯誤することで、より効果的なマーケティング戦略が確立できるでしょう。なお、STP分析を実施しただけで終わるのではなく、他のフレームワークも活用して多角的な視点で検討することも大切です。

STP分析の実施タイミングと他フレームワークとの違い

その他のフレームワークのフロー

マーケティングの実践は、「環境分析」「基本戦略」「具体的施策」の3つのステップに分けることができます。STP分析は「基本戦略」のステップで利用するフレームワークです。

一般的には、自社の内部環境と外部環境を分析したあと、STP分析を用いて戦略を策定し、マーケティングミックス(4P)によって戦略を実行していくための具体的施策を決めるという流れで進めます。ただし、STP分析と4Pは連動しているため、実際には両者を同時並行で実施するのが効率的かつ効果的です。

STP分析以外のフレームワークについて、概要を以下にまとめました。

PEST分析・法律や規制の動向などの「政治的要因(Politics)」
・賃金や物価、金利、家計消費の動向などの「経済的要因(Economics)」
・人口動態や流行、宗教などの「社会的要因(Society)」
・技術革新やインフラの整備状況といった「技術的要因(Technology)」
この4つの視点から、企業経営に関わる外部環境を分析します。
関連記事:【重要】マーケティングの分析手法・フレームワーク
5フォース分析自社をとりまく環境を「新規参入業者」「売り手」「競合他社」「買い手」「代替品」の5分類で整理し、自社にとっての脅威性、そして対抗するための効果的な資源配分を検討します。
関連記事:【重要】マーケティングの分析手法・フレームワーク
3C分析「顧客・市場(Consumer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」という3つの観点から、自社の経営環境について分析します。
関連記事:マーケティングの3C分析とは?目的・やり方と実践例(テンプレート付き)
SWOT分析自社の内部環境と内部環境について、それぞれ「強み(Strength)」「弱み(Weekness)」「機会(Oppotunity)」「脅威(Threat)」の4要素で分析します。
関連記事:わかりやすい「SWOT分析」とは?基本とやり方・具体例(テンプレート付き)
マーケティングミックス(4P・4C)マーケティングやツールを組み合わせることで、マーケティング戦略を商品企画や宣伝、営業などの行動へ落とし込みます。代表例として、「製品(Product)」、「価格(Price)」、「プロモーション(Promotion)」、「流通(Place)」に基づく4P分析と、買い手側の視点で再検討した「顧客価値(Customer Value)」、「コスト(Cost)」、「コミュニケーション(Communication)」、「利便性(Convenience)」に基づく4C分析があります。
関連記事:マーケティング の4P・4Cとは?戦略を事例でわかりやすく解説します

STP分析と混同されやすいフレームワークとして3C分析が挙げられますが、STP分析は市場ニーズの把握や自社の強みを活かした戦略策定などに有効な手法であり、3C分析は自社の現状を明確化することで経営課題を見いだすのに用いられる手法です。

なお、マーケティングの戦略立案についての詳しい手順などは、以下の記事でも解説しています。

関連記事:マーケティング戦略とは?立案の手順・わかりやすい事例解説

STP分析を活用したマーケティング事例

実際にSTP分析を用いて成果をあげた、マーケティング事例を3つご紹介します。

ユニクロ

性別や年齢などの人口動態変数を用いず、具体的な顧客ニーズから市場を細分化し、ニーズに合わせて商品の企画・生産・販売を調整しているのが特徴です。トレンド等にとらわれず、シンプルかつ実用的な商品を高い品質と手頃な価格で提供することで、競合他社との差別化を実現しています。

セグメンテーション長持ちする高品質の衣類が欲しい低価格と機能性を兼ね備えたコストパフォーマンスに優れた衣類が欲しい
ターゲティングカジュアルなスタイルを好む層ベーシックなスタイルを好む層
ポジショニング幅広い層から長く支持されるようなシンプルかつ高品質なアイテムを、低価格で提供

スターバックス

徹底的なセグメンテーションに加え、ターゲットを来店時間帯や平日・休日に基づいてさらに細分化しているのが特徴です。都会的な雰囲気ながら長居できるサードプレイス戦略、またグッズ展開や接客の質などで競合他社との差別化を図っています。

セグメンテーション10代後半~70代までの人を男女別に細分化職業を学生、会社員、公務員、自営業、ノマドワーカー、高齢者に分類
その他、経済的地位や地域などで分類
ターゲティング大都市や主要都市で平均以上の収入を得るオフィスワーカー
早朝:出勤前のオフィスワーカーや高齢者
昼間:主婦やノマドワーカー夕方から
夜間:学生と帰宅前のオフィスワーカー休日:カップルや買い物途中の若い女性など
ポジショニング第3の居場所として利用してもらうためのサードプレイス戦略持参すると値引きしてもらえるタンブラーなど、オリジナルグッズの販売質の高い接客

SATORI

業種別にセグメンテーションを行い、注力業種を定めて施策を実施しているのが特徴です。顧客の規模やニーズからターゲットを絞り込み、国産のマーケティングオートメーション(MA)ツールという強みを活かしてサービス提供を実施しています。

セグメンテーション対象市場をITや製造業などの業種別でセグメント化し、提供サービスに最もマッチしそうな注力業種を定義
ターゲティングマーケティング施策を実施する企業自社のサービスを効率的に販売・拡大したい企業
人手が多くない状況下で業務改善を目指す企業
ポジショニング日本企業に最適化された国産MAツールを提供機能豊富で活用方法がたくさんあるうえ、初心者でも使いやすい顧客の育成や獲得に強みを持つ

STP分析をマーケティング戦略に活かそう

STP分析は、売上拡大に繋がるマーケティング戦略の策定にとても有効です。ここでご紹介したように、すでにSTP分析によって成果をあげている企業も少なくありません。特に他のフレームワークと組み合わせれば、大きな効果が期待できるでしょう。

本記事で解説した内容を参考に、ぜひ自社のマーケティング戦略へ活用してみてはいかがでしょうか。なお、マーケティング戦略に役立つフレームワークを資料にまとめておりますので、こちらもぜひ参考にご覧ください。

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