BtoB企業では、リードナーチャリングを目的としてMAツールを導入するケースが多く見られます。本記事では、MAツールを用いてリードナーチャリングを実施する方法、そして成功のポイントを詳しく解説します。具体的な事例も取り上げていますので、MAツールの活用に向けてぜひ参考にしてください。

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リードナーチャリングの目的とゴール

リードナーチャリングは、「リード(見込み顧客)」を「ナーチャリング(育成)」する活動を指します。つまり、将来的な顧客となる可能性のある相手に対し、継続的に情報提供やコミュニケーションを行い、購買意欲を高めていくプロセスです。
特にBtoBの取引では、見込み顧客の関心が一時的に高まっても、すぐに導入検討へと進むとは限りません。施策の優先順位が低いために後回しになることもあれば、社内の方針転換や外部要因によって、突然その施策の重要度が高まるケースもあります。
そのため、リードナーチャリングのゴールは「すぐに契約を獲得すること」ではなく、「見込み顧客が必要とするタイミングで、自社を思い出してもらうこと」です。適切なタイミングで想起されることで、商談や契約に結びつく可能性が高まります。
MAを活用したリードナーチャリングの実施方法
MAを活用したリードナーチャリングは、以下のような手順で実施します。
1. 見込み顧客(リード)の集約と管理
見込み顧客は、以下のようなさまざまな経路を通じて獲得されます。それぞれの顧客情報をバラバラに管理していては、適切なアプローチができず、リードナーチャリングの精度も下がってしまうため、MAツールを活用して一元管理を行います。
- Webサイトの問い合わせや資料ダウンロード
- 展示会やイベントでの名刺交換
- オンライン/オフラインセミナーへの参加
- SNSや広告からの流入
以下は、各獲得経路においてMAツールで実現できる管理方法の例です。
| 獲得経路 | MAツールでできること |
|---|---|
| Webサイトからの問い合わせ・資料ダウンロード | MAツールのフォーム作成機能で、簡単に複数のフォームを作成・設置し、見込み顧客情報を自動的にデータベースに蓄積 |
| 展示会での名刺交換 | MAツールの顧客情報管理機能や、名刺管理ツールやOCRツールとの連携で、紙の名刺情報をデジタル化して保存 |
| セミナーへの参加 | オンライン・オフライン問わず、参加者情報をMAツールに連携し、セミナー後のサンクスメールやフォロー施策を自動化 |
また、顧客情報は集めるだけでなく、活用できる形で整理・分類することも重要です。以下のような管理項目を設けることで、適切なセグメントごとのアプローチが可能になります。
| 管理項目 | 具体例 |
|---|---|
| 名前 | 山田 太郎 |
| 会社名 | SATORI株式会社 |
| 役職 | マーケティングマネージャー |
| メールアドレス | yamada@example.com |
| 獲得経路 | 展示会/Webフォーム/セミナーなど |
| 行動履歴(スコア) | 資料ダウンロード、メール開封、ページ閲覧など |
このように情報を整理することで、購買意欲の高まり(ホットリード化)を可視化でき、アプローチの優先順位を的確に判断できるようになります。
2. リードナーチャリング施策の実施
MAを活用して、以下のようなリードナーチャリング施策を実施します。
1)ホワイトペーパーなどのダウンロード資料をWebサイトに設置
MAツールを導入すると、ホワイトペーパーや各種資料をダウンロードするためのフォーム作成やWebサイトへの設置が簡単に行えます。そうした機能を利用して、見込み顧客向けにお役立ち資料として提供しましょう。
ホワイトペーパーで見込み顧客に提供したい情報は、たとえば以下のような内容です。
| 商材・サービス | ターゲット | ホワイトペーパーの内容 |
|---|---|---|
| 組織コンサルティング | 企業の経営者、人事担当者 | 評価面談のレポートテンプレート集 |
| 広告計測ツール | 企業のデジタルマーケティング担当者 | Google Analyticsの必須設定ポイント |
| アンケートシステム | 企業の広報担当者 | 調査リリースネタカレンダー |
その他、お客様や見込み顧客からよく聞かれる質問や、商談中に提出を求められた内容なども、ホワイトペーパーとして適しています。
もちろん、ホワイトペーパーの設置によってすぐに導入検討に進むわけではありません。しかし、情報に興味を持った「そのうち客」のリストが獲得でき、これがリードナーチャリングの対象となります。こうした顧客に対しては、導入事例や製品資料、比較表などの提供もおすすめです。
2)メールマガジンを送信
「そのうち客」のリストに対して、メールマガジンを送信します。メールマガジンでは、Webサイトに設置したホワイトペーパーへの誘導を行いましょう。
MAツールを用いれば、見込み顧客ごとの興味関心や行動履歴に基づいたセグメンテーション(グループ分け)が可能です。パーソナライズされたメールを自動配信することで、継続的に良好な関係構築が図れます。
なお、多くの見込み顧客に読んでもらい、誘導先のページへ遷移してもらうには、以下のような点に留意します。
- マルチパート(HTML形式とTEXT形式の両方を送る形式)のメールを制作する
- コンテンツはなるべく少なくする。目安は3点程度
- はじめに目をひく写真や画像を入れる
- 「詳しくはこちら」などのリンクボタンを大きく目立たせる
- 誘導リンクはMAの機能で計測可能なURLに変換する
- 件名にこだわる
また、どれだけ豊富なコンテンツを保有していても、配信頻度は週1回をひとつの目安とし、見込み顧客の反応を見ながら調整することをおすすめします。嫌がられることなく、メールマガジンを継続して読んでもらうことで、検討のタイミングに自社を思い出してもらえる可能性が高まります。
BtoB企業の場合は、月1回程度の配信でも十分なケースが多いようです。ただし、2か月に1回以下の頻度では自社を忘れられてしまい、思うような効果が得られない可能性があります。結果的に「不要なメール」と判断され、配信解除が増える要因にもなり得るため注意しましょう。
関連記事:
メルマガとは?配信の基礎知識・効果的な作り方と成功事例
セグメンテーションとは?やり方と活用事例、ターゲティングとの違い
パーソナライズとは?仕組み・具体例やメリット、活用方法と事例
3)見込み顧客が特定のページを閲覧したら社内へ通知
MAツールは、Webサイト上におけるユーザーの行動履歴の管理や検知が可能です。そのため、一般的なメール配信システムとは異なり、以下のような行動履歴情報をユーザー別に管理できます。
- ユーザーがWebサイト内でどんなページを見たのか
- どんなメールを受け取って開封し、どのリンクをクリックしたのか など
これらの情報を分析すると、過去に成約したユーザーや、訪問アポイントを獲得できたユーザーがどんなページを閲覧していたのかの傾向をつかめます。その傾向を基に、特定のページを閲覧したユーザーの情報を社内向けに通知するようMAツールで設定することで、ユーザーの行動をタイムリーに把握できます。
MAツールを提供する弊社SATORIでは、こうした特定のページを「キラーコンテンツ」と呼んでいます。キラーコンテンツは、成約可能性の高いページから順番に複数設定するのがおすすめです。優先順位をつけながら通知メールの設計をすると良いでしょう。
関連記事:「キラーコンテンツ」の意味とは?具体例・作り方・使い方(コンテンツマーケティング)
3. スコアリングの実施
スコアリングとは、見込み顧客の属性や行動に基づいて点数を付与し、関心度や購買意欲を数値化する手法です。MAツールを活用すれば、このスコアリングを自動化でき、見込み顧客の温度感をリアルタイムで把握できます。
一般的に、スコアは以下の3つの指標に基づいて付与されます。
- 顧客の属性(自社商品やサービスとの相性)
- 顧客の興味(ページ閲覧、セミナーへの参加などの行動)
- 顧客の活性度(行動頻度の高さなど)
スコアを設定する際には、まず見込み顧客が成約に至るまでの行動パターンを可視化することが重要です。マーケティング部門だけでなく営業担当者の視点も取り入れながら、検討プロセス全体を基に詳細な仮説を立てましょう。
なお、スコアリングは最初から複雑に設定する必要はありません。シンプルな設計から始め、運用しながら見直していくことが重要です。たとえば、「スコアは高いのに成約につながらない」「優良リードが他社に流れてしまった」などの事象が発生した場合は、速やかに原因を分析し、スコアの基準を見直して精度を高めていきます。
関連記事:スコアリングとは?目的や採点基準、精度を高めるやり方
成功のポイント3つ
リードナーチャリングを成功させるには、MAツールを正しく活用するだけでなく、運用設計や分析の視点も欠かせません。ここでは、成果を出すために押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。
1)シンプルで現実的なシナリオ設計から始める
MAツールを活用するには、見込み顧客の獲得から成約までの行動を予測したうえで、計画や道筋となる「シナリオ」を設計する必要があります。
運用に慣れていない段階では、まずはシンプルで実行しやすいシナリオから始めることが成功への近道です。具体的には、以下のようなシナリオ設計が考えられます。
- 導入事例ページを閲覧したユーザーに対し、申し込みフォーム付きのセミナー案内メールを配信する
- 過去7日以上アクションのないユーザーに対してステップメールを配信し、コラムやホワイトペーパーなどのページへ誘導する
- 自社サービスの比較ページを閲覧しているユーザーに対して、ポップアップを表示して問い合わせを促す
関連記事:MAのシナリオとは?設計方法と具体例【テンプレート付き】
2)One to Oneマーケティングを実践する
MAツールを活用する大きなメリットの1つが、見込み顧客一人ひとりに最適なコミュニケーションを行える点です。これにより、「One to Oneマーケティング(個別最適化されたマーケティング)」の実践が可能になります。
従来のマスマーケティングとは異なり、ユーザーの属性や行動履歴に基づいて、最適なタイミング・内容・チャネルでアプローチすることで、エンゲージメントの向上やコンバージョンの促進が期待できます。
具体的な手法としては、以下のようなものがあります。
| 手法 | 内容 |
|---|---|
| レコメンデーション | 閲覧履歴や購入履歴に基づき、関連商品やサービスを個別に提案 |
| ポップアップ表示 | 特定のページや離脱時などのタイミングで、ユーザーに適した情報やCTA(行動喚起)を提示 |
| プッシュ通知 | スマートフォンやブラウザを通じて、キャンペーン情報や更新通知などをリアルタイムで送信 |
| リターゲティング広告 | 一度Webサイトを訪れたユーザーに対して、他のWebサイトやSNS上で広告を再表示 |
関連記事:【入門】One to Oneマーケティングとは?事例で学ぶ実践法
3)KPIを設定して効果検証と改善を繰り返す
リードナーチャリングではKPI(重要業績評価指標)を設定し、定期的な効果検証を行いましょう。施策による効果を数値化し、状況が芳しくない場合には改善を行います。リードナーチャリングを成功させるためには、このPDCAサイクルを回すことが重要です。
具体的なKPIの例を以下に挙げましたので、参考にしてください。
- ホワイトペーパーなどの資料ダウンロード数
- メールマガジンの配信対象数
- メールマガジンの開封率・クリック率
- キラーコンテンツ閲覧ユーザーの通知メール受信数
- キラーコンテンツ閲覧ユーザーからのアポイント獲得率/獲得数
- コール時の到達率の向上
- リード獲得から商談化までのリードタイム
関連記事:KPIとは?指標の設定例や方法
MA×リードナーチャリングの成功事例
MAツールを活用したリードナーチャリングの成功事例として、株式会社城南進学研究社の取り組みをご紹介します。
同社は予備校をはじめとする各種教室を運営していますが、少子高齢化の影響により現場スタッフの人数が削減され、営業活動に十分な時間を割くことが難しい状況にありました。
そこで、Web上で入会までを完結できる体制を整えるためにMAツールを導入。資料請求後にアクションのないユーザーに対しては、学年ごとに内容を変えたメールを自動配信した結果、問い合わせや体験授業への誘導率が、導入前と比べて約30倍に向上しました。
また同社では、対象年齢や志望学部などで異なるブランドを複数展開しているものの、これまではブランド間でのクロスセルがうまく機能していませんでした。しかし、MAツールの活用によって他ブランドの情報も適切に届けられるようになり、クロスセルの実現とLTV(顧客生涯価値)の最大化へとつながっています。
リンク:現場の工数を割かずにグループ内クロスセルを実現し、見込み顧客への再アプローチでCV率30倍アップ!
リードナーチャリングにMAを活用して継続的な成果を
BtoB企業におけるリードナーチャリングでは、「必要なタイミングで自社を思い出してもらうこと」が重要です。MAツールを活用することで、見込み顧客ごとにパーソナライズされたメールを自動配信したり、Webサイト上でのユーザーの行動履歴を検知・管理したりすることが可能になります。これにより、最適なタイミングでのアプローチが実現でき、継続的に良好な関係性を構築することができます。
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ナレッジ・リンクス(株)代表、NPO法人HASHIRU理事。大学在学中に人材ベンチャーでRA/CAとして勤務し、新卒で医療系人材会社に就職。RAとして主に医薬品業界を担当し、トップセールスを達成した後に営業企画職を兼務。Webマーケティングに従事し、その後はITサービスの新規事業にも携わる。IT系企業に営業企画職として転職し、数値分析および戦略立案を担う。その後にナレッジ・リンクスとして独立し、約3年後に事業を法人化。多くのフリーライターとパートナーシップを構築し、幅広いコンテンツ制作を担う。個人でもライターや編集者として、主にスポーツ・ビジネス関連の分野で活動する。その他、ランニングクラブ運営やメディア編集長など。趣味はマラソン、4人の子を持つ大家族フリーランス。
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