カスタマーサクセスとは?役割・仕事内容、CS(サポート)との違い

高橋 美絵(たかはし みえ) (SATORI株式会社)

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近年、注目を浴びている「カスタマーサクセス」ですが、正確な意味や具体的な活動内容、組織における役割についてきちんと理解できている方はまだまだ少ないのが実情のようです。 この記事では、カスタマーサクセスについて抑えておくべき基本を解説した上で、カスタマーサクセスチームの立ち上げ方、効果的な運用方法などをSATORIの事例を用いてご紹介します。

  1. カスタマーサクセスとは?
  2. カスタマーサクセスの目的と役割
  3. カスタマーサクセスチームの立ち上げ方
  4. カスタマーサクセスへの取り組みを成功させるために…

カスタマーサクセスとは?

カスタマーサクセス(Customer Success)は直訳すると「顧客の成功」という意味ですが、昨今ビジネス領域において注目されているカスタマーサクセスは、「顧客の成功を能動的にサポートしていく姿勢、あるいはそのために行うあらゆる活動」を意味します。また、場合によってはそうした活動に取り組む組織を指して「カスタマーサクセス」と呼ぶこともあります。

営利企業の究極の目的は、利益を上げることにあると言ってよいでしょう。そして、利益を上げるためには、自社の製品やサービスを顧客に購入し、使い続けてもらわなくてはなりません。

では、どのようにすれば顧客に自社の製品やサービスを使い続けてもらうことができるのでしょう?―様々な答えが考えられますが、何よりも重要なのは「それを使うことによって、顧客がメリットを得ることができる」、言い換えると、「自社の製品やサービスを通じて顧客が成功すること」だと言えるのではないでしょうか。

カスタマーサクセスの根本にあるのは、このような考え方です。自社の利益を支える大切なお客様に成功を掴んでいただくためにパートナーのような立ち位置でお客様に伴走し、必要な支援を提供する…これがカスタマーサクセスの基本的な理念です。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートはどう違うのか?

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い

「顧客に対する支援」と聞いて、「それはカスタマーサポートの仕事と同じじゃないの?」と思われた方もあるかもしれません。カスタマーサクセスとカスタマーサポート、どちらも「CS」と略されることのあるこれら二つの概念ですが、具体的にはどのような違いがあるのでしょう?

カスタマーサクセスもカスタマーサポートも、自社の製品・サービスを導入いただいた顧客を支援するという意味では、よく似た役割を担います。最大の違いは両者がとるアクションの方向性です。

一般にカスタマーサポートは、顧客の課題を解決するための受動的活動を行います。たとえばメールや電話での問い合わせに対して返答したり、トラブル発生の連絡を受けて対応を行ったりといったことが、カスタマーサポートの主要な役割だと言えるでしょう。

これに対してカスタマーサクセスは、より能動的な姿勢で顧客に向き合います。「頼まれたことにだけ対応する」のではなく、顧客が成功するためにはどうしたらいいのかを顧客とともに考え、自発的にアクションを起こしていくのです。既存のビジネスの例でいうと、学習塾などのモデルがカスタマーサクセスのイメージに近いと言えるでしょう。 以下の表1に、カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いを簡単にまとめました。これを見てもお分かりのとおり、単に受け身でサポートするのではなく能動的に顧客の成功に向けた支援を行い、結果として自社の売り上げ・利益アップにも貢献していくのがカスタマーサクセスの特徴です。

表1:カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い

 

カスタマーサクセス

カスタマーサポート

目的

顧客の成功体験創出

問題解決・クレーム処理

スタイル

能動的(プロ・アクティブ)

受動的(リ・アクティブ)

指標

売上継続率、アップセル数/率、
クロスセル数/率、解約率、NPSなど

対応件数、解決数、満足度など

関連部署

複数部署と連携

ほぼ単独で完結

位置づけ

プロフィットセンター

コストセンター

なぜカスタマーサクセスが重視されるのか?

では、なぜいまカスタマーサクセスが重要視されているのでしょう?その理由の一つとして、近年になって、クラウドサービス(SaaS)を始めとしたサブスクリプションモデルを土台としたビジネスが主流となってきていることが挙げられます。

たとえばソフトウェア分野では、従来は完成した製品を顧客に販売する「売り切り型」のモデルが一般的でした。しかし、ここ何年かの間にこの傾向に顕著な変化が現れはじめています。MicrosoftやAdobeといった巨大ソフトウェア販売企業がサブスクリプション型のサービスモデルを導入したのは、記憶に新しいところです。オフィスに設置する機器や社用車もリースの形をとることが一般化してきています。また、文房具なども会員登録制のBtoB ECサイトを通じて購入することが増えてきています。

従来の売り切り型ビジネスモデルでは、極端な話、製品を売ってしまえばそこでいったんビジネスは完結しました。つまり、もっとも重要なKPIの一つが受注獲得数(金額)だったわけです。

一方、定期的に契約を更新していくサブスクリプションモデルでは、受注の獲得に加えて「使い続けていただく」ことが重要となってきます。つまり、「継続率の向上(解約率の低下)」が重要な指標の一つとして加わってくるわけです。

そして、冒頭でも触れたように、使い続けていただくために何よりも大切なのは、製品・サービスを通じてお客様に成功していただく、ということです。お客様の成功がそのまま自社の利益に繋がるという、いわば「Win-Winの関係」を築くのが、カスタマーサクセスの特徴だといえるでしょう。

カスタマーサクセスの目的と役割

既に述べてきたように、カスタマーサクセスとは、顧客の成果・成功に向けてより能動的な支援を提供する取り組みです。けれど、一口に「能動的な支援」と言われてもピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。 そこでこの節では、ゼロからカスタマーサクセスの部隊を立ち上げ、3年で30名規模の組織に成長させた実績を持つSATORIの事例をもとに、カスタマーサクセスの目的や役割についてお話します。

目的

カスタマーサクセスの根本的な理念は「顧客の成果・成功の実現に向けて、顧客と伴走しつつ支援する」というものです。ただし、最終的なゴールは顧客が成果・成功に向けて自走できる状態に持っていくことにあるため、いわゆる運営代行のように、顧客に代わってすべての作業を実行するわけではない、という点が重要です。

SATORIの場合、「SATORI」の活用を通じてユーザーを成功へ導くこと、そして、それを「SATORI」の活用促進によって実現させることが、カスタマーサクセスの最大の目標であると言うことができるでしょう。

役割

カスタマーサクセスの役割は「顧客が成功するためのあらゆる活動を支援すること」です。「あらゆる活動」と書きましたが、もちろんこれには、自社が提供する製品・サービスの範囲を大きく逸脱しない範囲で、という但し書きがつきます。

たとえばSATORIの場合、顧客が「SATORI」を通じて成功できるようになるための様々な支援を提供します。ツールとしての「SATORI」の使い方をレクチャーすることであったり、マーケティングに関する知識・技術の提供であったり、顧客が抱える個別の課題に対する施策の提案であったりと、具体的な支援の形は様々ですが、いずれにしても、それらを通じて顧客が成功に一歩近づくことが、カスタマーサクセスが提供する最大の価値だといえるでしょう。

一方、社内に視点を向けると、カスタマーサクセスチームの究極的な役割は売上・利益の向上です。顧客が成果・成功を実現することで顧客満足度が向上すれば、製品・サービスの解約率低下やNPS(※1)向上・LTV(※2)伸長が実現し、ひいては売り上げの増加、利益率の向上につながります。これが、前段で述べた「Win-Winの関係」の意味するところです。

SATORIのカスタマーサクセスの目的と役割

※1:NPS=Net Promotor Score(ネットプロモータースコア):企業やブランドに対する愛着・信頼度を示す指標で、顧客ロイヤルティを測る新たな指標として活用されている。

※2:LTV=Life Time Value(顧客生涯価値):企業がある顧客から生涯に渡って得られる利益。

カスタマーサクセスチームの立ち上げ方

ここまでの内容を読み、「よし、ぜひわが社でもカスタマーサクセスに取り組んでみよう」と思っていただけた方がいらっしゃるかもしれません。ここでは、SATORIのカスタマーサクセスチームがたどってきた道筋をなぞりながら、カスタマーサクセスへの取り組みの進め方をご紹介します。

1.支援の領域を明確化する

はじめに、カスタマーサクセスという取り組みの中で顧客に提供していく支援の領域を明確にします。カスタマーサクセスの理念は「顧客が成功するためのあらゆる活動を支援すること」とはじめにお話ししましたが、そうはいっても、活用できるリソースは限られているのが普通です。そこで、具体的にどのような範囲で支援を行うのかをある程度決めておくことをお勧めします。

SATORIの場合、カスタマーサクセスの活動を以下の4つの領域に分けて考えています。

組織名

役割

フィールドサポート

初期の導入支援や戦略構築支援などを担当

テクニカルサポート

顧客からの問い合わせ対応やマニュアル整備など日々の課題解決を支援

③コンテンツ&コミュニティ

顧客に向けたセミナーやコンテンツの開発・顧客同士の横のつながりを促進(顧客コミュニティの運営)

④サービスマネジメント

カスタマーサクセス全体のパフォーマンス最大化を支えるための既存業務の効率化・改善や業務フローの設計・構築

上記はあくまでもSATORIの例であり、必ずしもこの通りにする必要はありませんが、一つのモデルとして参考にはしていただけるのではないかと思います。

2.チームを編成する

活動の領域が具体化したら、実際にそれらの活動に従事する人員をアサインしてチームを編成します。SATORIでも前述の4つの領域にそれぞれチームを割り当て、活動に取り組んでいます。

なお、チームメンバーは必ずしもそれぞれの領域の活動に対して専任である必要はありません。フィールドサポートを担当するメンバーが時にはテクニカルサポートに従事する、といった体制も、状況によってはあるでしょう。このあたりは自社の状況に応じて、柔軟に検討してみてください。

3.業務フローを定義する

「やること(活動領域)」と「やる人(チーム)」が明確になったら、これらを時系列に整理し、カスタマーサクセスチームとしての業務フローを定義してみましょう。いつ、どのようなタイミングでどんな支援を行うのかをある程度可視化しておくことで具体的なアクションを起こしやすくなるとともに、チーム間の連携が取りやすくなります。 参考までに、下記の図でSATORIのカスタマーサクセスの業務フローをご紹介します。

SATORIのカスタマーサクセスのイメージ

4.チームの目標を設定する

最後に、各チームが活動するにあたって掲げる目標を明確にします。

既に述べたとおり、カスタマーサクセスという活動の究極的な目標は売上・利益の増加ですが、個々の活動を効果的に進めるためには、よりブレイクダウンした目標が必要です。 SATORIでは、先に述べた4つの活動の状況を以下のような指標で可視化し、チームの目標としています。

①フィールドサポート

フィールドサポートは顧客とSATORIとをつなぐ「窓口」的なチームであり、営業に近い役割を果たします。

各種ミーティングを通じて顧客にアプローチする機会を持つチームでもあり、既存顧客に対するアップセル/クロスセルの受注数などが主要な指標となります。

なお、これはSATORIの例ですが、サブスクリプション型モデルの製品・サービスを扱う場合は、売り上げ継続率なども有効な指標となり得ます。一部の顧客から解約されたとしても、アップセルによって全体的に売り上げが増えているのであれば、成功とみなすといった考え方です。

②コンテンツ&コミュニティ

コンテンツ&コミュニティは各種Webコンテンツやダウンロード用コンテンツの開発、既存顧客向けのセミナーの企画、および顧客コミュニティの運営などを行うチームで、コンテンツの閲覧者数やセミナーの参加者数、セミナーを通じて獲得できたリード数などが重要な指標となります。また、コミュニティ活動については、NPSなどの指標を使用する場合があります。

③テクニカルサポート

テクニカルサポートは従来のカスタマーサポートに近い役割を果たすチームで、顧客からの問い合わせに対して迅速、かつ丁寧なサポートを提供するのが役割です。このため、問い合わせから回答までにかかった日数、回答に対する満足度などが指標となり得ます。

④サービスマネジメント

①~③の部門がパフォーマンスを最大化するための業務の効率化・改善や業務フローの設計・構築を担う部門になります。カスタマーサクセスチーム全体のパフォーマンスを最大化するために、業務効率化ができているかをKPIとして設定しています。このような部門が存在することで、顧客にとって本質的で有意義な活動を行うための基盤作りができます。

カスタマーサクセスで用いる指標については、下記の記事でも詳しく説明していますので、ぜひあわせてご覧ください。

参考:カスタマーサクセスのKPIは?顧客の成果に向き合う、5つのKPIと実践例

5.社内の教育体制を整備する

少し話が前後しますが、良質なサービスを提供するためには、サービス提供者である個々のメンバーが「プロ」であることが大切です。このため、カスタマーサクセスチームのメンバーを育成する教育体制の整備にも、可能な限り力を入れる必要があります。

SATORIでは、新規入社の社員に対して「SATORI」の仕様を理解するための習得プログラムを用意しています。担当者によってツール利用スキルが異なるとカスタマーサクセスの活動はスムーズに進まないため、この習得プログラムを通じて、それぞれのメンバーに「SATORIのプロ」になってもらうというわけです。

具体的には習得すべき項目をチェックリストとして作成し、先輩社員であるトレーナーの支援のもとで、それぞれの項目を一つずつ検証・理解していくといった形をとっています。

また、入社後3か月以内に自社のセミナーに登壇してもらうといった目標を設定することで、成長に対するモチベーションの喚起を図るような取り組みも行っています。

カスタマーサクセスへの取り組みを成功させるために…

以上、この記事では、昨今注目されているカスタマーサクセスについて解説しました。

最後に、これからカスタマーサクセスに取り組もうと考えておられる方にお伝えしておきたいのは、はじめからすべてを完璧に行おうとする必要はないということです。

この記事の後半でSATORIにおけるカスタマーサクセス立ち上げの手順をご紹介しましたが、実際には初めからこのように整然と取り組める企業は少ないのではないかと思います。かくいうSATORIも、当初はいわゆるカスタマーサポートに従事するメンバーが1、2名のみという状態からスタートし、徐々に活動の幅を広げていきました。立ち上げ当初から十分にリソースを確保できない場合、まずはいま一番成果の出しやすそうなところにフォーカスし、できることからスモールスタートしてみましょう。

カスタマーサクセスへの取り組みを成功させるために何よりも重要なのは、「顧客の成功が自社の成功に繋がる」というカスタマーサクセスの理念を関係者全員が理解し、その理念のもとで取り組みをすすめていくという点です。この点でブレなければ、貴社のカスタマーサクセスチームは経験を積むとともに成長していくことでしょう。 カスタマーサクセスへの取り組みについてお悩みの方は、ぜひSATORIまでお気軽にご相談ください。

PROFILE

高橋 美絵(たかはし みえ)

SATORI株式会社


メール配信システムベンダー、CDNサービスベンダーにてマーケティング全般のキャリアを構築し、2016年9月にSATORIへ参画。
同年12月より、事業部長としてマーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスを統轄。SATORI社内一人目の産休・育休取得者でもあり、多様な働き方を推進するSATORI社員のロールモデルを目指す。
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