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2020.05.14

カスタマーサクセスのKPIは?顧客の成果に向き合う、5つのKPIと実践例

カスタマーサクセスのKPIは?

そもそもカスタマーサクセスとは?

主にIT企業のSaaS型サービスでは、事業を伸ばしていくためにカスタマーサクセスが重要な役割を担います。顧客に正しく成果を得ていただき、提供しているサービスを継続利用したり追加で契約することでより多くの利用料を支払ってもらうこと、そしてそのサービスを他社にご紹介いただくこと、これがカスタマーサクセスで目指していくことです。詳しくは、「カスタマーサクセスとは?役割・仕事内容、CS(サポート)との違い」で解説しております。

なぜカスタマーサクセスは重要なのか?

サービスを提供する企業は、お客様のニーズに応えてサービスを随時アップデートしていくことになるため、顧客の課題と成果は何かをしっかり理解し、寄り添っていく必要がでてきました。これがカスタマーサクセスが重要になった理由です。
これまでのITサービスは「顧客が求める定義や仕様」に基づき、それに対して個別にカスタマイズ、開発したものを納品し、必要に応じて保守運用するというビジネスモデルでした。しかし、近年クラウドサービスをはじめサブスクリプションモデルのSaaS型サービスが登場し、同時にカスタマーサクセスが注目されるようになりました。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い

カスタマーサポートのイメージ画像


顧客に向き合っている点では同じですが、そのアクションのベクトルが異なります。一般的には、カスタマーサポートは顧客の課題を解決するために受動的なアクションを行います。メールや電話でのお問い合わせ対応がその代表例であり、限られたリソースでどれだけの課題を解決できたかが目標です。
一方、カスタマーサクセスは顧客の成果に向き合い、自発的なアクションを行います。その具体的な目標やアクションについて、これから解説していきます。

カスタマーサクセスのKPIについて

カスタマーサクセスのKGIは事業を伸長させること。そのために、顧客満足度を高めて継続率を上げ、既存顧客から新規顧客のご紹介を増やす、そしてアップセルやクロスセルを目指します。それでは、カスタマーサクセスで追っていくべき以下のKPIやそれに関わるキーワードを、優先順位が高い順番で解説していきます。
・解約率
・顧客推奨度
・オンボーディング完了率
・売上継続率

解約率(チャーンレート)とは?

カスタマーサクセスのKPIの1つである解約率(チャーンレート)のイメージ画像


全ユーザー(アカウント)のうち、解約したユーザー(アカウント)の割合を示す指標が解約率、もしくはChurn Rate(チャーンレート)です。顧客離脱率と呼ばれることもあります。基本的には月次で追っていきますが、季節要因に左右されるプロダクトの場合は移動平均をとることもあり、その場合は直近12ヶ月分の平均を算出します。
SaaS型サービスでは特に投資家からも重要視される指標でもあり、この数値を下げていくために企業は様々な施策を行っていくことになります。そのプロダクトの領域や顧客像、価格等によっても異なりますし、事業戦略に大きく関わるため一概には言えませんが、SaaS業界では一般的に解約率1%であればかなり良い数値と言われます。

顧客推奨度(NPS:ネット・プロモーター・スコア)とは?

カスタマーサクセスのKPIの1つである顧客推奨度(NPS)のイメージ画像


顧客推奨度(NPS)とは、「サービスを他社にどのくらい勧めたいか?」をアンケートによって取得することで、顧客ロイヤルティを数値化した指標です。
アンケートのフォーマットは決まっており、「あなたはこの企業(プロダクト/サービス/ブランド)を他社におすすめしたいですか?」という質問に対し、0から10までの11段階で評価していただきます。そしてアンケートの結果から顧客を「批判者(0〜6)」「中立者(7、8)」「推奨者(9、10)」の3タイプに分類します。そこから、アンケート回答者全体に占める「推奨者」の割合から、「批判者」の割合を引いた数値が顧客推奨度(NPS)の値となります。
この顧客推奨度(NPS)はマイナスになる場合が多いのですが、それ自体は問題ではありません。もちろん高い数値に越したことはないのですが、カスタマーサクセスによって数値が上がっていくことこそが重要です。

SaaSの機能は日々アップデートされますので、アンケートは頻繁に行っていくべきでしょう。また、顧客推奨度(NPS)の高い企業には以下のようなお願いをすることで次のカスタマーサクセスの施策につなげていくことができます。
・新規顧客をご紹介いただく
・導入事例の取材
・ユーザー会でのご登壇
・新機能のテストユーザー

オンボーディング完了率とは

カスタマーサクセスのKPIの1つであるオンボーディング完了率のイメージ画像


SaaSにおける「オンボーディング」とは、お客様に自社SaaSを活用していただき、一定程度、運用が軌道に乗っている状態まで導くこと。つまり、「オンボーディング完了率」とは、導入頂いているすべてのお客様のうち、「オンボーディングが完了した」とする基準を達成したお客様がどの程度であるかを示す指標です。一般的には、サービス解約の多くがトライアル終了時や初回の契約更新のタイミングで発生します。このように解約を大きく左右するということからも、オンボーディング完了率はカスタマーサクセスのKPIの中でも非常に重要な指標の一つと言えるでしょう。

どの状態を「オンボーディングが完了している」と定義するかは、そのサービス内容や事業フェーズによって異なってきます。基本的には、初期設定の完了率や導入企業内での浸透率(普及率)が使われる場合が多いようです。「初期サポート期間内に、〜〜までの設定が全て完了し、運用が始められている状態」「導入から3ヶ月以内に、◯%の社員がチュートリアルを終えている状態」などが具体的な例です。
オンボーディングまでのフローとそれぞれの施策は、一般的に以下のようなものが考えられます。
1:キックオフ(キックオフMTGの実施、課題と成果の確認)
2:トレーニング(チュートリアル、活用ウェビナー、ユーザー会)
3:状況確認(チェックリスト、担当者によるヒアリング)
4:クロージング(課題と成果の振り返り、担当者によるヒアリング)

売上継続率とは?

カスタマーサクセスのKPIの1つである売り上げ継続率のイメージ画像


既存顧客の売上を前年比もしくは前月比でどの程度維持できているかを計る指標です。NRR(Net Revenue Retention (Rate)ともいいます。既存顧客の売上を維持もしくは増加させることで、「ネガティブチャーン」と呼ばれる、既存顧客の解約があっても売上が伸びている状態を目指します。
顧客がサービスに満足し継続利用したり、より高いプランに移行する、複数アカウントを追加で発行するなどして、売上を維持・向上させることもカスタマーサクセスのKPIとして用いられることがあります。

カスタマーチャーン/レベニューチャーンとは?

解約率には件数ベースと金額ベースの2種類があります。件数ベースの解約率が「カスタマーチャーン(Customer Churn)」、金額ベースの解約率が「レベニューチャーン(Revenue Churn)」です。
サービスの単価が1パターンしかない場合はカスタマーチャーンだけで問題ありません。しかしプレミアムプランやベーシックプランなど複数のサービスプランがある場合や従量課金がある場合は、件数だけでなくレベニューチャーンも追うべきでしょう。高単価プランの解約1件と低単価プラン1件の解約では、事業に対するインパクトがまったく違ってきます。事業の内容やプラン数に合わせてしっかり使い分けて算出することが大事です。

カスタマーサクセスのKPIを達成していくために

月次収益(MRR:マンスリー・リカーリング・レベニュー)から因数分解して決定する

カスタマーサクセスのKPIを決定していくために、まず事業目標である売り上げから因数分解していくことになります。その際に使われることが多い数値が、月次収益(マンスリー・リカーリング・レベニュー)。月毎に上げた収益のことで、新規顧客と既存顧客を含む全ての収益を合算した数値になります。これはカスタマーサクセスだけではなく、SaaSのビジネスモデル全体においても重要な指標です。
MRRや売上目標などから因数分解すると、新規顧客からの売り上げと既存顧客からの売り上げに分けられます。新規顧客は一般に営業やマーケティングが担う領域なので、カスタマーサクセスの担当である既存顧客からいくら売り上げを作っていくかを決定します。その目標からまた因数分解し、これまで解説したような指標を活用してKPIを決定、施策を実行していくことになります。

KPIを達成する、理想的なカスタマーサクセスの組織とは?

最も重視すべきは効率性です。理想は、カスタマーサクセス組織が接客セグメント毎に担当者が置かれ、それぞれアクションプランを立てられている状態でしょう。属人化せず、業務の再現性が高いセグメントで組織を作っていくべきです。そして、その中でさらに業務が細分化されていくイメージです。
手前味噌ですが、SATORIのカスタマーサクセスでは、担当するアクションごとに3つのグループに分けています。(2020.03現在)
・オンラインサポート:お問い合わせ対応といったオンライン上のアクションを担当
・フィールドサポート:直接お客様とのコミュニケーションを担当
・コンテンツ&コミュニティ:ユーザー会やセミナー、コンテンツの企画、ユーザー向けの情報発信などを担当

まとめ:顧客の成果に向き合うカスタマーサクセス

カスタマーサクセス担当は、お客様の事業構造をよく理解し、成果に向き合っていくことで自社のSaaS事業を伸ばしていくことを目指します。SaaSのビジネスモデルはまだ日が浅く、日々技術も進化しているため、多くのSaaS企業で試行錯誤が日々続けられています。マーケティングやHR、業務効率化など、そのサービスの領域によっても、カスタマーサクセスが担う役割は少しずつ異なります。

明確な正解がない中でも事業をしっかり伸ばし、顧客の成果に向き合っていくためにも、カスタマーサクセスのKPIをしっかり定義した上で一つひとつ着実にアクションを積み重ねていきましょう。
SATORIマーケティングブログでは、マーケティング関連の業務を担当される方や、自社のカスタマーサクセスの立ち上げ・強化に取り組みたい方、カスタマーサクセスへの知見を深めていきたい方へ、有意義な情報を日々お届けしています!
また、SATORIではカスタマーサクセス担当者を積極的に採用しています。顧客の成果のために、一緒に理想のカスタマーサクセスを実現していきませんか?
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