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2020.10.22

マーケティングプロセスとは?基礎と6つの流れ

マーケティングプロセスとは?基礎と6つの流れ

「マーケティングの基本的な流れがわからない」という声をよく耳にします。
マーケティングの基本的な流れ、つまりマーケティングプロセスは、経営学のカリキュラムの中に決まった形があります。
この記事では、マーケティングプロセスとしてもっともよく使われる6つの流れを中心に解説していきます。

1. マーケティングプロセスの考え方と基礎知識

マーケティングプロセスとは、マーケティングの一連の流れを表すものです。
マーケティングプロセスは多くの場合で、次の6つに分けられます。
(1)市場分析
(2)セグメンテーション
(3)ターゲティング
(4)ポジショニング
(5)マーケティングミックス
(6)実行と評価
これらについては次章で詳しく解説していきますが、大きな括りとして(1)と(2)は戦略の立案、(3)から(6)は戦術として実践していくフェーズに分けることができます。

マーケティングプロセスのイメージ

実際の取り組みとしては、もちろん基本通りに6つのステップを実行していくのがベストです。しかし初期段階にあたる(1)については、事業規模によっては十分にリソースを割けないといったケースも出てくるでしょう。
そんな場合にはこのステップはできる範囲までをおこない、(2)から(4)までに注力するといったやり方もあります。これを「STP戦略」と呼びます。
STP戦略は他にもさまざまなメリットがあるので、6つの基本的な流れを押さえた後の3章で、詳しく解説していきます。

2. 6つの流れ

ここではマーケティングプロセスのそれぞれについて、解説をしていきます。フレームワークと対応したものも多いので、それらの説明も簡単に交えていきましょう。

2.1 市場分析

マーケティングの初期段階として重要なのが、その企業が属する業界の内と外の環境を調査、分析していくことです。
マクロとミクロの情報を収集し、それに対する解釈を加え「自社の強み」や「顧客に対しての価値は何か」といったことを分析していきます。
このステップの主なフレームワークは、以下のものです。

○PEST分析:
外部のマクロな環境調査をおこなうためのフレームワーク。外部環境とは「政治(Politics)」「経済(Economy)」「社会(Society)」「技術(Technology)」の4つを指します。
○3C分析:
外部環境として「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」、内部環境として「自社(Company)」の調査をおこなうためのフレームワーク。主観を入れずに客観的な事実を集めるとともに、顧客を軸として見ていきます。
○SWOT分析:
自社を軸に、4つの観点で見ていきます。4つの観点とは、「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」です。PEST分析や3C分析が事実を集めることが主なのに対し、SWOT分析はそこで集められた情報から、戦略目標を導き出すための解釈を加えていく役割もあります。

2.2 セグメンテーション

セグメンテーションは日本語にすると、「市場細分化」と言われます。市場分析の結果を踏まえ、自分たちのビジネスにとって最も適した市場を見つける役割を担います。
適した市場を見つけるためには、その市場にいる生活者(消費者)のニーズや価値観などをもとに分析していきます。また年齢や性別といったデモグラフィックや地域差を加え、より細かく細分化していく場合もあります。

2.3 ターゲティング

ターゲティングは、セグメンテーションと深い関係性があります。
セグメンテーションで細分化された市場内のニーズを考え、自社の商品やサービスが最も強みを出せる場所を選ぶことが、ターゲティングです。
自社の強みを生かすためには、市場動向や顧客の属性、競合企業の存在といったものをよく考えることが大切です。
セグメンテーションが市場細分化と呼ばれるのに対し、ターゲティングはその中での見極めをおこなっていくことから、「標的市場」「市場の絞り込み」と呼ばれることもあります。
またセグメントが「分類」なのに対して、ターゲティングはその中の「誰に対してか」という役割と捉えてもいいでしょう。

2.4 ポジショニング

ポジショニングもセグメンテーション、ターゲティングのふたつとセットで捉えておく必要があります。
セグメンテーションで細分化された市場、その中で設定されたターゲットに対して、自社の商品やサービスの価値を認識してもらうステップになります。
ターゲットに認識され選択してもらうためには差別化が重要です。
セグメンテーションの「分類」、ターゲティングの「誰に」というのに対して、ポジショニングは「どの立ち位置で」といった捉え方をすることもできます。

ポジショニングで役に立つフレームワークとして、「ポジショニングマップ」があります。
○ポジショニングマップ:
業界内における、自社の位置づけを示す二次元のマップ。
独立性と重要度が高い縦軸と横軸で構成し、競合と重ならない空白の位置を取るようにすることがポイント。今だけでなく、将来的に優位に立てる位置を取るというのもポイント。

マーケティングプロセスの一つであるポジショニングに使える「ポジショニングマップ」

2.5 マーケティングミックス

マーケティングミックスは、実行戦略の位置づけです。
つまり前のステップまでで作りあげてきたことに対して、実際にアプローチしていく方法を組み立てていく内容となります。
なぜマーケティングミックスという言葉が使われるのかというと、実行のために複数の要素を組み合わせていくからです。

この複数の要素は基本的に4つに分類され、これをもとに「4P」というフレームワークでまとめられています。
○4P:
販売に影響を与える4つの要素を分類、それぞれの影響を考えていくもの。4つの要素とは「製品・サービス(Product)」「価格(Price)」「立地・流通・販路(Place)」「販促・広告(Promotion)」を指します。この四要素の頭文字を取り、「4P」と称されます。

マーケティングミックス≒4Pという考え方が基本ですが、近年は生活者(消費者)の視点をより重視する意味で、「4C」という考え方を取り入れるケースも増えています。
○4C:
「顧客価値(Customer Value)」「顧客にとっての経費(Cost)「入手の容易性(Convenience)」「コミュニケーション(Communication)」の4つの要素をもとにした、生活者視点のフレームワーク。

マーケティングミックスのステップでは、この4Pをもとに実行戦略を検討するとともに、評価の基準となる「KPI(重要業績評価指標)」も併せて定めておくようにしましょう。 最終目標は「KGI(重要目標達成指標)」ですので、KPIはそれを実現するための中間目標となります。そのためにまずは、最終ゴールであるKGIを明確にしておくことが大切です。目標を俯瞰しながら、さらに可視化するための方法としてはKPIツリーを作るのが一般的です。またKPIについては定量的な評価ができること、つまり数値管理が可能なことも押さえておきたいポイントです。
このKPIは次の実行と評価のステップで、戦略の結果を評価するために必要な指標となります。

WebサイトのKPIツリー例

2.6 実行と評価

ここまでに策定した戦略を、実行するステップです。
ここでマーケティング担当者が強く意識しておきたいのが、評価についてです。マーケティングミックスで定めたKPIが、ここで生きることになります。
単に「良かった/悪かった」という全体評価ではなく、検証をおこなうことでマーケティングプロセスのどこに問題があったのかを見つけていくことが、大切な取り組みになります。
マーケティングプロセスに当てはめて振り返ることで、「セグメンテーションまではうまくできていたが、ターゲティングを間違っていた」などの誤りが掴めます。
集客から商談や販売といった、実行のステップごとにKPIを設けておくことで、マーケティングプロセスの中で策定していた戦略とのギャップも見えやすくなります。

3. マーケティングプロセスのコツ

マーケティングプロセスは前章の6つに分けるやり方以外に、「R-STP-MM-I-C」といったふうに示されるケースもあります。
これは、それぞれ下記の内容を指します。
(1)R:調査、分析
(2)STP:セグメンテーション+ターゲティング+ポジショニング
(3)MM:マーケティングミックス
(4)I:実行
(5)C:管理
なお大きく(1)と(2)は戦略的プロセス、(3)以降を戦術的プロセスに分けることができます。戦略は手順を定めること、戦術は具体化することですので、この分け方をするとよりマーケティングプロセスがイメージしやすくなるかもしれません。

マーケティングプロセスのコツ

6つの流れと比較する形で、R-STP-MM-I-Cを見ていきましょう。
「R」はResearch、つまり調査を中心にした市場分析にあたります。
「STP」は「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」の三つがまとめられています。このSTPはR-STP-MM-I-Cの提唱者である、フィリップ・コトラー氏がもっとも重視しているプロセスです。なぜならこの三つによりマーケティングの要となる、「自社が」「誰に対し」「どんな価値を」「どうやって提供するか」が導き出されるからです。

戦略が決まれば、次は実行の準備となる戦術的プロセスへと移ります。マーケティングミックスは実行性のある方法の組み立てです。その後に最終ステップとなる、実行と評価がきます。この最後のステップをIとCのふたつに分けることで、マーケターの主要な業務である評価や次への改善といったことが、よりフォーカスされた形になっています。

このようにR-STP-MM-I-Cも基本的には、6つの流れと同じ内容と言えます。
なお(2)のSTPは、マーケティング活動にあまり時間やリソースを割けない場合や中小企業にとって、より大切なステップといえます。なぜならこれらの企業は、少ない労力で大きな成果を出すことが極めて重要となるからです。

STPをきちんと実行することで、「ランチェスターの法則」を取ることができ、それに基づいた戦略の構築ができます。
ランチェスターの法則はビジネスの世界では、中小が大手に勝つための理論として知られます。
○ランチェスターの法則:
弱者が強者に勝つための法則。
マーケティングやビジネスでは、差別化をすることで資産やリソースに差があっても勝てる戦略を取ることを指します。「ランチェスター戦略」という用語で、中小企業や二番手以降の位置にいる企業が勝つための戦略としても知られます。
セグメンテーションやターゲティング、あるいはポジショニングで自分たちの有利な場所を見つけることが重要となるため、STP戦略に近しい考え方として理解されています。

4. マーケティングプロセスを実践形式で解説

それではマーケティングプロセスを、メーカー規模別で具体的な例を用いて解説していきたいと思います。
イメージがつきやすいように、身近な商品であるビールを例にとってみます。
あくまでもマーケティングプロセスを解説するためのものなので、データ等は必ずしもビール業界の実態にもとづくものではありません。その点はご了承ください。
日本国内には、大手ビールメーカーが5社が存在しています。
この5社であれば、マーケティングプロセス初期の分析ステップからきちんとおこない、戦略の立案から実行までを進めていく必要があるでしょう。
たとえば環境分析の初期段階であるPEST分析における、政治(Politics)や社会(Society)の状況を、大手企業の場合はより強く受けることが考えられます。そのため、こうした調査や分析から、疎かにすることはできません。

あるいは実行と評価においても、販路が膨大になるためKPIを評価するためのデータをきちんと管理できるように、あらかじめ整備をしておく必要があるでしょう。
一方でマーケティングにそれほど力を割けない事業者、あるいは中小企業の場合には、調査や分析にかける比重を弱め、STP戦略に力を入れるのが現実的です。
ビール業界では、地ビールメーカーがこうした存在になるでしょう。
地ビールメーカーは、うまくいっている所とそうではないところが二極化している状況です。仮にいま売上が伸び悩んでいる地ビールメーカーがマーケティングに取り組む場合には、前述のようにSTPできちんとした戦略を立てることで、改善ができるかもしれません。

マーケティングプロセスの大手・中小企業の実践イメージ

大手メーカーのビールは、コンビニやスーパーでは「いかに棚の良い位置を取るか」が重要になります。また居酒屋などの飲食店では、決まったビールが入れられていて新たな商品の導入は難しいといえます。
そうした状況において、地ビールメーカーで売上が高いところをマッピングしていくと、イベントなどでPRしている企業が多いことがわかります。すでにこの位置に多くのメーカーが存在していますので、そこに売上が伸び悩むメーカーを入れるというのは、適切なポジショニングとは言えません。
一方でもし通信販売という位置が空いていたとしても、そこに入れることが必ずしも適切とは言えないでしょう。
なぜなら昨今の社会情勢を考えると、通販はすぐに競争が過熱することが目に見えているからです。これは将来に渡って優位に立てるポジショニングとは言えません。また通販の場合は価格競争に陥りがちで、そこにポジションを取った後にマーケティングミックスで価格を考えると、売上をあげるための戦術は取りにくいことに気づくでしょう。このようにSTP分析をおこなうことにより、無駄な競合との争いを回避することができます。

また「自社のビールは、手に入りにくいという付加価値がつけられるのでは」と自社の強みに気づくことができたり、「マニアックなビールを好む人たちは、大衆向けの商品では満足しきれないのでは」といったように顧客ニーズを洗い出せることも、STP分析を実行するメリットです。
STP分析により自社の強みと顧客のニーズがマッチし、競合との争いを回避できるといった気づきが見えたら、たとえば思いきり高級ビールとして、本当にビールが好きな層にだけ訴求をしていくというのも手です。

流れとして、セグメントで「お酒にこだわりを持っている層、いない層」を年代別で分けます。その中にターゲットとして、「お酒にこだわるミドル層」を設定します。ポジショニングとして「通常のビールの約三倍の価格、限られた所でしか売っていない」という特別感を設けます。
あとはマーケティングミックスで、これを具体的な方法に落とし込んでいく流れです。

STP分析の実践例

このようにマーケティングプロセスの手順をきちんと踏んでいったうえで、良い結果が出ればSTP戦略(またはランチェスター戦略)による成功といえます。もし結果が出なかった場合には評価を通してマーケティングプロセスを遡っていき、STP分析のどの部分で誤りがあったか、あるいは次のマーケティングミックスを間違えていたなどが掴めるはずです。

5. BtoB企業が気をつけるべきポイント

前章の例ではイメージがしやすいようにビールを例にあげましたが、BtoBでマーケティングプロセスに取り組む場合にも、流れは同じです。
ただしBtoBの場合だと集客からすぐに購入という流れにはなりません。「集客→見込み顧客の獲得→育成と追客→商談」といった、購買にいたるまでのリードタイムが長くなるのが一般的です。

また窓口と決裁者が異なる場合や、検討から承認までにいくつも段階を踏んでいくことも多いでしょう。
つまり一般的な消費行動である、潜在顧客からの「認知→興味・関心→欲求→記憶→行動」という流れが必ずしもあてはまりません。そのためマーケティングプロセスの中に、こうした購買プロセスを加味する必要が出てきます。

たとえば分析では顧客を「個人」でとらえるのではなく、顧客を「企業」でとらえて業界全体を調べていきます。マーケティングミックスの販促・広告でも、イベントやセミナーへの取り組みがより効果的になる場合が多くあります。実行段階のKPIを定める場合には、「集客→見込み顧客の獲得→育成と追客→商談」のそれぞれに対してKPIを設定することで、より評価がしやすくなるはずです。

近年BtoBのマーケティングの実行支援のための手段として、マーケティングオートメーション(MA)やSFAが活用されるケースが増えています。マーケティングプロセスは主にこの前段階で、戦略と戦術を練るためのものです。
マーケティングツールを使うまでにしっかりとした戦略と戦術を持てるか否かで、成果は大きく左右されるでしょう。

6. まとめ

最後にマーケティングプロセスについて、最重要ポイントをまとめておきましょう。
まずマーケティングプロセスは、「市場分析」「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」「マーケティングミックス」「実行と評価」の6つに分けられます。
この中の「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」は特に重要で、これらSTP分析をきちんとおこなうことにより、マーケティングに十分な力が割けない場合や、中小企業も成功への道筋を開くことができます。

これらは中小企業や二番手以降の位置にいる企業が大手に勝つための、「ランチェスター戦略」にも繋がる分析です。
今回紹介をしたようにマーケティングプロセスには基本的な流れがあります。この基本の流れに業界や業種はもちろん、本文でも多く触れたように事業規模やBtoBなど対象に合わせた進め方をすることで、より効果を出していけるでしょう。

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