コンテンツマーケティングとは、簡単に言うとコンテンツ(情報)を用いてコミュニケーションを行うマーケティング活動の一つです。コンテンツマーケティングを「Webページを大量に作って潜在顧客に見つけてもらうこと」と限定的に考える人も多いようですが、それは一つの手法に過ぎません。コンテンツ(情報)とはWebページだけに限りませんし、コンテンツマーケティングは集客方法に限ったことではないのです。これから始める方にもわかりやすく、事例を使って説明してゆきます。
コンテンツマーケティングとは?手法について解説
コンテンツ(=広告ではない、価値ある情報)を使ったマーケティング活動のことです。集客フェーズの潜在顧客に使うこともあれば既存顧客向けのCRMで使うこともあります。昨今注目されるようになりましたが、ハガキや会報誌などオフラインの世界では昔から存在した手法のように感じます。
コンテンツマーケティングとは何かを簡単に理解できるよう、コンテンツマーケティングとそうでないものを表で比較してみました。
◎コンテンツマーケティング | ×コンテンツマーケティングとは言えない |
---|---|
化粧品Aの使い方動画をFacebookで配信する | 化粧品Aの30%OFFクーポンをFacebookで配信する |
家具ショップB発行「インテリアマガジン」を自宅へ郵送する | 家具ショップBのカタログを自宅へ郵送する |
SATORIで行われるMA活用事例セミナー | SATORIの訪問営業 |
無料ダウンロードできるSATORIマーケティングガイドブック | 無料ダウンロードできるSATORIの資料 |
◎と×の大きな違いは、商品やサービスを積極的に売るためのアプローチか、有益な情報をユーザーに届けているだけなのかの違いです。簡単に言うと、見込み顧客や顧客に興味を持ってもらえるまでは、積極的な売り込みをしない「インバウンドマーケティング(相手の方からこちら側に来る)」の一種ということになります。興味を持ってもらうまで何もしないと忘れられてしまうので、それまでは相手に有益な情報(コンテンツ)を与え続けて、ずっと傍にいる・関係を維持することを目的としているのです。この思想に関しては、書籍「インバウンドマーケティング」をお読みになることがおすすめです。
参考文献:インバウンドマーケティング(高広伯彦氏)
コンテンツマーケティングと配信メディア
コンテンツマーケティングはさまざまなマーケティング手法と一体となって運用してゆきます。
配信先は検索だけでなく、SNSや動画メディア、メールマガジン、そして広告など。見込み顧客や顧客との接触のタイミングや接触方法は各社緻密なコミュニケーション設計を行って運用しています。主に以下のような接触方法があります。接触のタイミングやシーン例とともにまとめました。
どこに配信するにしても、まずは「コンテンツ」をしっかり作り込む必要があります。オウンドメディアなどのコンテンツ置き場があると様々なメディアに流用しやすいでしょう。コンテンツマーケティングは、SNSやメール、広告などの運用と連携しなければなりません。いきなり「すべて」はハードルが高いので、2つ~3つ選んで運用・配信してゆきましょう。
コンテンツの種類
ここ数年で動画メディアが大きく躍進したと言えるでしょう。写真に特化したSNSであるInstagramも好調です。コンテンツといえば、以前はテキストをイメージしていた方も多いと思いますが、今はもうそのような時代ではないと感じます。ただし、商材・サービスによっては写真や動画が向かないものもあります。例えば「SATORI」のようなBtoB商材は説得が必要となるため、テキストの読み物コンテンツと相性がよいと考えます。以下のコンテンツ種別から自社に合ったものを選び、制作してゆきましょう。
コンテンツの種類 | 主な配信先 |
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テキストコンテンツ(読み物) | オウンドメディア、SNS、メールマガジン、外部メディア、会報誌、雑誌、ホワイトペーパー |
写真 | オウンドメディア、SNS |
動画 | オウンドメディア、SNS |
オンラインセミナー | コーポレートサイト、セミナーポータルサイト |
オフラインセミナー・イベント | オフライン |
コンテンツSEOとの違い
中にはコンテンツSEO=コンテンツマーケティングと勘違いされる方もいらっしゃいますが、この二つは似て非なるものです。コンテンツSEOとは、検索ニーズと意図を把握したコンテンツを充実させることで検索流入を稼ぐ手法です。潜在顧客・見込み顧客向けのコンテンツは検索ニーズもあることから、コンテンツマーケティングとセットで行われることも多いことは事実です。検索エンジンGoogleのアルゴリズムが進化し、ペンギンアップデート(悪質な自作自演リンクを取り締まるロジック)やパンダアップデート(低品質なコンテンツを取り締まるロジック)を経て、SEOにおいても良質なコンテンツが重視されるようになり、コンテンツSEOという言葉が生まれました。
コンテンツSEOもコンテンツマーケティングの一部であると言えますが、コンテンツマーケティングはより広範な施策ということになります。
コンテンツマーケティングが注目される背景
コンテンツマーケティングが注目される理由としては、インターネット広告費の高騰が挙げられるでしょう。広告だけのコミュニケーションでは費用対効果が見合わなくなったため、本当に買ってくれる人にだけ広告を出したいと考えるようになりました。今では、ファネルの概念を踏まえ、買いたい気持ちになってくるまではできるだけ広告費を抑える「コンテンツによるコミュニケーション」が活用されるようになってきています。スマートフォンの普及で消費者が触れられる情報も圧倒的に増えました。購入の決断を下す前に、大量のコンテンツに触れながら選定していく過程が存在するため、企業側もコンテンツを使ったPR活動が必須になります。顧客化してからも継続的に使ってもらうよう関係を維持するのにもやはりコンテンツが必要です。今では、どんなマーケティング施策を行うにも、そのほとんどに「コンテンツ」が必要な時代であると言っても過言ではないのです。
強みとデメリット
「嫌われないマーケティング」を行えるメリットは大きいのですが、デメリットはすぐに売り上げに結びつかないことです。今まで打ってきた広告施策と同じような感覚で取り組んでしまうと「いつまで経っても成果が出ない」と感じてしまうことでしょう。しっかり全体設計を行い、KPIを設定して目標に貢献できているかを見張ることがコンテンツマーケティングにとって大切なこととなります。
参考記事>>コンテンツマーケティングのKPIは?目的に合わせた設定法
別の視点にはなりますが、コンテンツマーケティングにおいて制作するさまざまなコンテンツは資産となり、他の目的で利用することもメリットと言えます。よく見る例としては、活用事例などのWebコンテンツは新卒の研修で利用されていますし、紙媒体にして営業ツールとしても利用することもできます。作ったコンテンツはさまざまな施策で流用するべきでしょう。
コンテンツマーケティングの面白い成功事例
多くの企業が行っているコンテンツマーケティング。ちょっと面白く、参考になる例を3つ集めてみました。簡単に解説させていただきます。
1)北欧、暮らしの道具店
(コラム、動画(YouTube)、SNSを融合した総合的なコンテンツマーケティング)
「北欧、暮らしの道具店」は株式会社クラシコムが運営する雑貨・衣類のネットショップです。商品をただ販売するのではなく、生活の中のちょっとした「非日常」を楽しんでもらいたいという願いの元に運営されています。コンテンツ施策は多岐に渡り、テキストコラムや動画、写真を使ったSNSマーケティングなど、オールラウンダーな企業というイメージなので、多くのマーケターが参考にしています。
ミニコラムに掲載されるコンテンツを1種類ご紹介しましょう。
着用レビューでは、身長の違う3名のスタッフが着用している写真や感想をまとめてくれています。筆者は150cm以下の低身長なので、丈の長いコートを買うときはどうしても慎重になってしまいますが、写真だけでなく低身長の方のコメントがあると安心して買うことができます。このように、訪問者に寄り添う丁寧なコンテンツは商品の購買に大きく貢献していることが予想できます。
Instagramの投稿では、コンセプトである「ちょっとした「非日常」」をドラマチックな写真で演出して人気を集め、2022年10月現在でフォロワーは124.4万人に達しています。
そして近年クラシコム社が最も力を入れているのはYouTubeチャンネルを使った動画コンテンツマーケティングです。チャンネル登録者数は2022年10月現在で53万人を超えており、これは企業チャンネルとしては驚異的な数字と言えます。
中でも注目は「オリジナルドラマ」。
商品を紹介する動画ではなく、ファンをつくり絆を深めるための施策です。
「北欧、暮らしの道具店」のファンにフィットする商品を販売するのと同じ感覚で動画コンテンツを配信する、という考えのもと実施されているオリジナルドラマですが、おそらくそこに「費用対効果」という考え方は存在しません。
「大儲けできなくても、マイナスにならなければ無料のマーケティングツール」という考えでチャレンジされていることがとても印象的です。コンテンツマーケティングに目先の成果を求めがちな方が多い中、このように自分たちのアイデンティティを伝えることに全力を注いでコンテンツを制作・配信することはとても難しいのです。結果、大きな注目を浴びることになり、企業・ショップの認知拡大に大きな影響を及ぼすことになったはずです。
ミニドラマ第一弾の「青葉家のテーブル」は人気急上昇の結果、映画化されたことも記憶に新しいですね。
参考:ダイヤモンドオンライン「ECサイト「北欧、暮らしの道具店」がドラマや映画までつくる深い理由」
参考記事>>https://diamond.jp/articles/-/229104
2)サントリー
(動画とYouTubeを使ったコンテンツマーケティング)
サントリーは言わずと知れた日本の大手飲料メーカーですが、動画マーケティングの上手な企業だと感じます。ペプシJコーラのCM音楽に合わせて踊るダンス動画のSNS拡散(参考:ペプシJコーラ、動画アプリTikTok活用で1800万回再生)が記憶に新しいですが、企業のサステナビリティという真面目なお話にもふんだんに動画が使われています。「水と生きる」という理念と、その起源を伝える動画は丁寧に作り込まれています。この8分ほどの動画を閲覧するだけで「サントリー」という企業のことを深く理解できます。
また、この理念は「サントリー次世代環境教育」と銘打った「水育」へと引き継がれています。
もちろん、水育に関する動画もいくつか発信されていて、興味をもったユーザーがいつでも閲覧できるようになっています。「水と生きる」という理念を「言っているだけ」でなく「本物」にするには、こういった活動を多くの方に知ってもらうことが重要です。その知ってもらう活動に動画というコンテンツが上手に活用されています。
以前最近では芸能関係のニュースで「アルコール依存症」が話題となり、注目されています。そこにもすかさず反応し、「適正飲酒啓発動画」をYouTubeで配信されていることもサントリーのコンテンツマーケティングが素晴らしいところです。
お酒を販売する企業としては、触れたくないような内容にも真摯に向き合い、かんぞうくんというキャラクターを使って「適正飲酒」というプラスの活動に変換しているところが魅力的です。動画を使ったコンテンツマーケティングはサントリーという企業のブランディングに大きく貢献していると感じますね。
サントリーは、テキストコンテンツも充実しています。お酒を楽しむための「カクテルレシピ検索」。400種類ものカクテルのレシピや使っているお酒が公開されています。
カクテル名+レシピで検索すると多くがこのように検索結果上位表示しています。
画像を使った丁寧なコンテンツを用意することで、検索結果で大きな面積をシェアしています。これが400種類もあるとなると、多くの検索トラフィックを獲得していることは容易に想像できますね。
3)マーケティングオートメーション「SATORI」
(テキストコンテンツとMAツールを使ったコンテンツマーケティング)
マーケティングオートメーション「SATORI」でも積極的なコンテンツマーケティングを行っています。ファネルとバイヤージャーニーを設計し、各フェーズにあったコンテンツで見込み顧客とコミュニケーションをとっています。
SATORIは展示会などのイベントに出展していますが、そこで名刺交換に応じてくださった方に「SATORIを導入しませんか?」と一辺倒なアプローチをせず、オウンドメディアの新着記事やMA解説記事などを配信することによって、定期的な接触を図っています。また、MAに関する興味関心が高まってきた見込み顧客にはオフラインコンテンツとしてMAの情報を無料で得ることができるセミナーを用意しています。こうして、何度かお会いする機会もつくりつつ、いよいよMAを選定するフェーズとなってきた見込み顧客だけをインサイドセールスに引き継ぐ手法をとっています。
SATORIのコンテンツマーケティングについての詳細はコンテンツマーケティングのKPIで解説しております、ぜひお読みください。
▼さらにコンテンツマーケティングの事例を知りたい方はコチラ
【専門家解説】コンテンツマーケティングの事例8選(2021年版)
コンテンツマーケティングを始めるには
コンテンツマーケティングは全体設計がとても大切になってきます。誰に、どのタイミングでどんなコンテンツでコミュニケーションを取っていくのか、まずは可視化していきましょう。その後、コンテンツ制作・配信となります。
1)ペルソナ設計
マーケティングにおいてのペルソナとは、自社の製品・サービスを利用する典型的なユーザー像のことです。ターゲットを明確化したものとして、名前や居住区、趣味や生活など必要な要素を決定していきましょう。
コンテンツの読者・視聴者は誰でどんな人なのかを「ペルソナ設計」で明確化しておくことで、コミュニケーション設計を行うときに立ち返って考え直すことができます。設計においては、実際の顧客を参考にすることがおすすめです。
参考記事>>【入門編】マーケティングの「ペルソナ」とは?作り方と例・無料テンプレート
2)カスタマージャーニーマップの作成
カスタマージャーニーとは「顧客が商品を購入し、利用するまで(場合によっては最終的に廃棄するまで)の道のり」のことです。マップを起こすことで、タッチポイントと配信コンテンツを最適化することが可能です。
1)で設計したペルソナの感情や行動を時間軸であるフェーズごとに書き起こしていきます。その後、タッチポイント(メディアやコンテンツ)でどのような体験を与えて、どんな態度変容を促していくのかを設計します。このカスタマージャーニーマップがコンテンツによるコミュニケーション設計の羅針盤となります。詳しい作り方はこちらの記事を参考にしてください。
参考記事>>カスタマージャーニーマップとは?基本と正しい作り方(事例・テンプレート付き)
3)コンテンツリストの作成
2)で設計したカスタマージャーニーマップを元に、制作が必要なコンテンツを洗い出してリスト化します。メディアのタイプ(コラム記事、ホワイトペーパー、動画など)や、配信方法(オウンドメディア、SNS、YouTubeなど)、タイトル仮案、概要などを入れておくと、時間が経っても記憶しやすく、担当が変わっても制作しやすいです。リストアップ後に優先度をつけて、制作を開始しましょう。購入・成約に近いコンテンツから先に制作していきましょう。
4)コンテンツ制作
1つずつ丁寧にコンテンツを制作します。コンテンツ制作は時間と工数がかかるため、外部制作会社を利用することも検討しましょう。コンテンツができたら公開・配信を開始します。SNSやメルマガなどを使って同じコンテンツを何度も配信していきます。
5)KPI設定と振り返り
KPIとは「Key Performance Indicator」の頭文字をとったもので、わかりやすく言うと「最終目標(KGIなど)に到達するために、確認すべき『細かい目標』」のことです。
コンテンツの配信が始まるころまでには、KPIを設定しておきましょう。2)で作ったカスタマージャーニーマップにより、コンテンツを閲覧した潜在顧客や見込み顧客がどのような態度変容を起こして欲しいかがKPI設定の基本となります。
各コンテンツごとに、成果を振り返り、次のコンテンツ制作や配信方法・配信のタイミングの改善に活かしていきましょう。
参考記事>>コンテンツマーケティングのKPIは?目的に合わせた設定法
「コンテンツマーケティングが流行っているから実施したい」「広告費を下げるためにコンテンツマーケティングをやりたい」このような声をときどき耳にします。しかし、コンテンツマーケティングは、売り上げに直結しづらく根気の必要な難しい施策であるので、「流行り」「広告費削減」という短絡的な考え方で始めるべきではありません。成功している事例や企業の背景には、きちんとしたコミュニケーション設計が存在し、そのツールとしてコンテンツを活用しているのです。潜在顧客や見込み顧客、既存顧客に「伝えたいこと」と「伝えたいタイミング」がないまま実施すれば失敗しやすい施策と言えましょう。まずは、誰にいつ、何を伝えたいのかを描くことから始めてみませんか?
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映像コンテンツプロバイダー・化粧品メーカーECでのWebディレクション・マーケティング担当を経て、コンサルタントに。20社以上のオウンドメディア・コンテンツの企画・戦略設計を行った経験を持つコンテンツマーケティング専門家。2018年5月に独立。検索ユーザーに寄り添うコンテンツ設計を得意とする。