マーケティングオートメーションの基本的な運用方法を分かりやすくマニュアルにまとめました。運用をしっかり定着させたい方はぜひお読みください。
導入直後の基本運用
マーケティングオートメーションは、見込顧客(リード)を未来の顧客に育成(ナーチャリング)したいマーケターにとって、利用価値の高いツールです。しかし、導入後に上司から「成果がなかなか見えてこないね」と指摘されてしまう人がいるのも事実。運用方法に頭を悩ますマーケターは多いようです。失敗例としてよくあるのは、マーケティングオートメーションの機能を駆使しようとする余り、初めから難しいシナリオを考えて挫折するパターンです。そこで今回は、初めての方でも取り組みやすい業務からスタートして、運用を軌道に乗せていく方法を説明します。
現行のマーケティングをリストアップしよう
まずは、現行のリードに対するマーケティング業務をリストアップしましょう。顧客データの蓄積と管理、ウェブサイトを訪れたユーザー向けのフォームの設置、問い合わせなどに対するメール配信などがあると思います。このうち手作業やメールソフトなどで行っていた業務は、マーケティングオートメーションツールでの運用に置き換えます。
手作業からマーケティングオートメーションへ
業務のリストアップが終わった後主な置き換え作業は次の通りです。
・顧客データベースを取り込んで、リードを一元管理する
・顧客属性に応じてタグを付け、あとで検索や抽出ができるようにする
・フォーム設置機能を利用して、お問い合わせフォームや、資料ダウンロードフォームを作る
・配信用メールのひな形を作り、お問い合わせなどに対してのお礼メールを自動で配信する設定をする
マーケティング業務は、「集客」>「誘導」>「育成」>「商談」と段階的に進んでいきます。フォームやメールは、「誘導」段階で見込顧客とファーストコンタクトをとるための重要なツールであると同時に、お客様が入力した情報はマーケティングオートメーションに自動で取り込まれるので、初めからしっかり使えるようにしておきたいですね。
顧客フェーズに合わせたコンテンツを洗い出そう
マーケティングオートメーションにはリードを育成するために、ウェブ上の閲覧行動などのデータを元に見込顧客をスコアリングしたり、興味関心に合わせて表示するコンテンツを変えたりする機能があります。これらの機能を使うためには、自社のウェブサイト上に顧客フェーズに応じたコンテンツが存在しなければなりません。自社の現状をチェックするために、顧客フェーズに合わせたコンテンツがどれだけ用意できているか、下図を参考に洗い出してみましょう。
コンテンツは、量より質が大事ですので、顧客フェーズごとにどんな内容が一番刺さるのかを考えてページを作成しましょう。仮に、コンテンツが全くない顧客フェーズがあった場合、マーケティング施策が分断されてしまいます。
たとえば、ある顧客がウェブ広告を見てA社の製品を「認知」し、A社のウェブサイト(オウンドメディア)を訪れたとします。しかしサイト内に「興味・関心」を満たしてくれるコンテンツが抜け落ちていたら、そこで離脱する可能性が高いため、次のフェーズへ誘導することができません。導入したマーケティングオートメーションの機能を申し分なく発揮するためにも、受け皿となるコンテンツを用意しておくことが重要です。
簡単なナーチャリングのシナリオを書いて実装しよう
次はいよいよ、見込顧客のナーチャリング(育成)を行うシナリオを考えて設定します。最初から難しいことをやろうとせず、ごくシンプルなシナリオから始めるのがコツです。
以下に、3つの例をあげました。自社のウェブサイト上で見込顧客がどのような引き金(トリガー)を引いたときに、どのようなマーケティングアクションを起こすのか、という2ステップで考えるとプランを立てやすいと思います。
(1)資料ダウンロード後にメール自動返信、社内通知アラート
マーケティングオートメーションツールからウェブ上にフォームを設置し、入力を完了したユーザーへのお礼メールを自動返信します。同時に、社内メンバーにも資料ダウンロードされた旨を通知するメールを自動送信しましょう。リアルタイムで社内に通知すると、結果検証への意識が高まり、資料ダウンロード後に何もアクションを起こさない顧客が休眠客になってしまうのを防ぐ効果があります。
(2)ホワイトペーパーダウンロード後にセミナー案内メール
ホワイトペーパーというのは、製品カタログとは違って、周辺知識や市場動向、使い方などの情報を盛り込んだ資料のことです。そのためダウンロードした人は、セミナーや勉強会で知識を得ることにも興味を持つかもしれませんよね? このような仮説を立てた上で、ダウンロード直後に共催セミナーなどの案内メールを自動送信すると、自社に関心を持ってもらいやすくなります。ただし、コンテンツと同様に、セミナーもあらかじめ企画して準備しておく必要があります。
(3)製品検討コンテンツの閲覧(ホットセグメント通知アラート)
コンテンツのうち、たとえば「製品検討中の方には無料コンサルティングをします」という内容のページを見た人は、見込み度合いがかなり高い顧客=ホットセグメントだと予測できます。ホットセグメント向けのコンテンツが閲覧されたら、閲覧者の情報を社内に通知するアラートメールを自動送信するように、設定しておきましょう。そのメールを受け取った営業担当もしくはインサイドセールスが顧客に電話をかけて、感触を確かめるところまで行います。
これらを継続すると、どのコンテンツを閲覧した人の見込み度合いが最も高いのかが、次第に分かってきます。初めはいくつかのコンテンツで試してみて、感触の良かったパターンに絞り込んでいくのがおすすめです。
また、見込顧客に送るメールについては、自社の担当者の名前と顧客の名前を必ず表示して、個別メールのような親しみの持てるトーンでコミュニケーションを心がけることも大切です。顧客名の表示も、マーケティングオートメーションツールなら自動化が可能です。
結果を分析しPDCAを回していこう
マーケティングオートメーションツールの導入がひと段落すると、施策の実行が自動化されたことに満足してしまいがちです。マーケティングオートメーションを導入したら、必ず結果を分析してPDCAサイクルを回しましょう。Plan(計画・仮説)>Do(実行)>Check(評価・検証)>Action(修正・改善)の流れを日々意識することが大切です。
MAベンダーのカスタマーサポートを活用しよう
技術的なアドバイスが受けられるカスタマーサポートは、運用方法を改善する大きな助けになります。一度社内でナーチャリングを試してから、結果を共有してアドバイスを求めると、どこをどう改善したら良いか具体的なヒントが得られるはずです。
運用が定着してきたら、新しいシナリオにチャレンジしよう
基本的なリードナーチャリングに慣れてきたら、もう一歩踏み込んだシナリオにチャレンジしてみましょう。先ほど紹介したシナリオは、自社のウェブサイト上に引き金(トリガー)を設けて、それに対するアクションを考える、というシンプルなものでした。こちらは、見込顧客を現在のフェーズから次のフェーズへとステップアップさせることを意識した、連続性のあるシナリオとなります。
(1)“そのうち客”向けのホワイトペーパーダウンロード後に、啓蒙ステップメールを送信する
製品検討には至っていない“そのうち客”でも、仕事上で役立つ情報には敏感です。たとえば、自社製品を売りたい相手の職業がマーケターなら、マーケティング知識をまとめたハンドブックを用意しておくなど、専用のホワイトペーパーを用意しましょう。ウェブから資料がダウンロードされたら、自社製品の必要性に気づいてもらうためのメールを数回に分けて送信します。“そのうち客”には、まず自社のファンになってもらうことが重要なので、メールを敬遠されないように、製品の紹介は押し付けにならない範囲に抑えることがコツです(たとえばメール内に3つ話題があったら、そのうち1つだけを製品の宣伝にするなど)。
(2)展示会で名刺交換後、すぐにお礼メールを送信する
展示会場で名刺交換したら間をおかずにマーケティングオートメーションツールに登録し、早いタイミングで「先ほどはありがとうございました!」というお礼メールを自動送信する設定をしておきます。別れたばかりの相手から送られてくるので開封率が高く、担当者の名前や顔を覚えてもらいやすくなります。対応の良さも印象付けられるので、その後の営業活動にもプラスに働くことが期待できます。
(3)セミナーの告知ページを離脱した後に、リターゲティング広告orプッシュ通知を表示し、セミナー参加に誘導する
セミナー申し込みフォームなどを訪れた匿名客が入力を完了せず、離脱してしまうことはよくあります。そんな匿名客を追いかけるのに最適なのが、リターゲティング広告やプッシュ通知※です。どちらも「自社サイトに訪れていないときにアプローチできる」というのがポイント。プッシュ通知は見落とされることが少なく、匿名客からメールアドレスなどの個人情報を獲得するまで追跡を続けたいときに有効な手段の1つです。
※ポップアップは顧客の許可なく表示できますが表示範囲は限られ、自社サイト内に訪れたユーザーを見て欲しいページに誘導したい場合に適しています。
関連記事:MAのシナリオとは?設計方法と具体例【テンプレート付き】
マーケティングオートメーション運用のポイント
今回は、マーケティングオートメーションの基本的な運用方法について説明しました。いくつかポイントがありましたが、特に気を付けて欲しいのは、「シンプルなシナリオから実行すること」と、「PDCAサイクルを回して、小さな成果を積み上げていくこと」です。そうすることで、運用を定着させ、欲しい効果を導くことができるようになります。
マーケティングオートメーションには、見込顧客を集客して可視化する機能や、フォーム設置、メール送信、広告配信との連携やプッシュ通知など、さまざまな打ち手を次々に繰り出せる機能も備わっています。
しかし機能の多さはそれほど重要ではなく、自社のマーケティング戦略や見込顧客にとって魅力的なコンテンツがきちんとあることのほうが大切です。マーケティングオートメーションツールの導入にあたっては、既存のマーケティング業務や自社サイトの構成を見直すことも必要だといえるでしょう。
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マーケティングオートメーション入門の手引き
マーケティングオートメーションについて、どんなことを知っていますか?
MAとも略させるマーケティングオートメーションですが、導入企業は年々増え続けている一方で、上手く活用しきれていないという声も耳にします。
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