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セールス・イネーブルメントとは?概念と事例をわかりやすく解説

セールス・イネーブルメントとは?概念と事例をわかりやすく解説

セールス・イネーブルメントとは、営業活動において継続的に成果を挙げていくことを目的とした、営業組織の強化・改善のための総括的な取り組みです。担当者の教育・研修やツール開発、プロセスの設計・管理など、従来なら複数部署に分散している営業の背後にある活動を統合します。
しかし、初めてセールス・イネーブルメントという言葉を聞いた方にとっては、意味が漠然としていて分かりにくいかもしれません。ここではセールス・イネーブルメントが何なのか、その意味やツールでできることを具体的な事例を交えて解説します。

セールス・イネーブルメントとは?

セールス・イネーブルメントとはなにかを解説する図

セールス・イネーブルメント(Sales Enablement)とは、営業組織の強化・改善のための総括的な取り組みです。例えば営業担当者の研修・教育やツール開発、あるいはプロセスの設計・管理といった活動を統合し、全体を最適化させていきます。

セールス・イネーブルメントは1990年代後半にアメリカで生まれました。
1998年ごろに「salesenablement.com」というWebサイトが登場したのが始まりと言われ、現在も多くのオピニオンリーダーが情報を投稿しています。その後、コンサルティングファームであるMEREO社がセールス・イネーブルメントのパイオニア存在として挙げるJohn Aiello(ジョン・アイエロ)氏とDrew Larsen(ドリュー・ラーセン)氏の両名が、1999年に以下の3つを営業上の課題として取り上げました。

  • 差別化、バリューメッセージの欠如顧客
  • 顧客、ソリューションに関する情報の不足
  • 非効率的かつあいまいなセールスプロセス

この考え方は、2010年代に入って多くの企業に広まりました。その理由はモバイルデバイス等の急速な普及により、顧客がインターネットを経由して多くの情報をキャッチできるようになったためです。従来の営業手法に課題が生じる中、セールス・イネーブルメントにおけるテクノロジーを活用した顧客との関係構築、あるいは営業活動の管理および可視化という考え方が注目されたのです。

営業企画との違い

いずれも営業活動を支援する役割を担いますが、それぞれ目的やアプローチが異なります。

セールス・イネーブルメントは、より効率的かつ効果的な営業活動の実現に向けて、必要なツールやコンテンツ、プロセス、トレーニング等を提供するものです。これに対して営業企画は、営業戦略全体の立案や実行をサポートすることで、営業目標の達成を目指します。

具体的な取り組み

セールス・イネーブルメントでは営業メンバーがより効率的かつ効果的に業務を遂行するため、必要となる知識やツール、プロセスの整備等を提供します。主な取り組みについて、以下でご説明します。

1)営業資料などセールス・コンテンツの提供

営業力の強化に向けて商品カタログや提案資料などのセールス・コンテンツを作成し、営業チーム全体で共有管理します。

2)教育・トレーニング

営業担当者の教育・トレーニング機会を設け、人材育成を通じて組織全体の営業力を高めます。トレーニングプログラムの開発を行い、いつでも受講できる体制を構築します。

3)ツールの導入

SFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理システム)、MA(マーケティングオートメーション)、営業コンテンツの共有や、Eラーニングなど必要なツールを導入します。

4)分析と営業戦略の見直し

ツール等で得られたデータを分析し、課題点の改善に向けて営業戦略を見直します。

5)営業プロセスの最適化・標準化

営業担当者の持つ知識やノウハウを組織内で共有し、属人化しがちな営業プロセスを最適化・標準化することで、組織全体の成果拡大につなげます。

これらを実行するためには、セールス・イネーブルメント ツールが有効です。

セールス・イネーブルメントツールでできること

セールス・イネーブルメントに役立つセールス・コンテンツ活用のイメージ

セールス・イネーブルメントと同じく注目を浴びている言葉に「セールス・テック(SalesTech)」があります。これは、例えばSFAやCRM、MAなどのテクノロジーの力を活用して、営業活動の効率化・成果向上を狙おうという考え方です。セールス・イネーブルメントでもツールの活用は重視されており、さまざまなセールス・テックをうまく組み合わせることで、その取り組みを効率化できるでしょう。

1)セールス・コンテンツの管理と共有

営業活動に必要なコンテンツの管理・共有を支援します。例えば提案書などの営業資料は、営業担当者ごとに作成しているケースもあるでしょう。しかし、こうしたコンテンツの開発や成果測定、改善を組織的に取り組み、組織全体で共有すれば、営業活動の効率化・効果向上が期待できます。

2)教育・トレーニングプランの提供

営業担当者の教育はOJTに頼りがちなところがありますが、OJTの成果は現場を統括するマネージャーの力量に依存する部分が少なくありません。営業現場で得られるノウハウを広く収集し、収集したノウハウをもとに教育・トレーニングプランを開発・整備することで、営業担当者の育成にテコ入れができます。

3)SFA/CRM/MAとの連携

SFAは案件の進捗度合いを可視化し、営業担当者間の密な連携も可能になるツールです。また、CRMは見込み顧客・既存顧客とのやり取りの履歴を管理でき、MAは見込み顧客の成熟度を可視化して把握できます。
従来、CRMやMAはマーケティング部門、SFAは営業部門で別々に運用されるのが一般的でした。しかし、セールス・イネーブルメントの取り組みでこれらを統括すれば、リードジェネレーションから契約までの全体を1つの流れとして管理・最適化できるでしょう。

4)データ分析とレポーティング

営業活動に関わるデータを統合して分析することで、属人化しがちな営業スキルや脳ノウハウを共有し、組織全体の営業力を高められます。また、顧客ニーズを的確に把握できるようになるため、実態に基づいた営業施策の検討および実行が可能となるでしょう。その結果、組織全体の生産性向上や売上拡大に繋がります。

5)営業プロセスの可視化

リード獲得から訪問・商談、そしてクロージングまでにおける一連の営業プロセスを可視化します。これにより、営業活動の課題点が早期に発見できるため、適切な改善策を講じることが可能です。また、プロセスごとに取るべきアプローチ方法も明確になるため、人材育成に役立つほか、組織全体の営業力向上が期待できるでしょう。

セールス・イネーブルメントが注目される背景

2021年に発表されたResearch and Markets社のレポートによれば、セールス・イネーブルメントツールの市場は世界で13億米ドルと推定されています。さらに、これが2027年までに19.5%のCAGRで成長し、2027年には3倍以上の45億米ドルまで拡大するという予測です。
その背景には、MAやSFAといったITツールの普及が考えられるでしょう。多くの企業がこうしたツールを導入する一方、管理が煩雑化したりコストが掛かったり、あるいは扱い慣れるまで従業員の負担が増えたりという課題が顕在化しています。そこで、セールス・イネーブルメントを推進する人材の確保や体制構築、あるいはプログラムの整備などによる、課題解決の必要性が高まっているのです。

なお、コロナ禍を経て、デジタルとアナログを組み合わせたハイブリッド営業が主流になっています。しかし、ハイブリッド営業を実施するには、MAやSFAといったITツールの活用が必須であり、実際に導入する企業も増加し続けています。この点からも、セールス・イネーブルメントは今後さらに重要性を増すことでしょう。
出典:成長し続けるイネーブルメント市場

【事例】セールス・イネーブルメント、SATORIの取り組みとは

ここからはSATORIで実際に行っている取り組みをご紹介します。

営業コンテンツの整備

セールス・イネーブルメントでは、営業用コンテンツの整備も重要なポイントです。SATORIは営業活動に必要となる製品資料などの資料類、営業知識、最新ニュースといったコンテンツを、マーケティングや営業企画のチームが作成するなどサポートしています。初回訪問時のヒアリング項目一覧を整備している程度で、営業活動に制約をかけてしまうようなコンテンツの画一化はあえて行っていません。
セールス・イネーブルメントのゴールの1つとして、営業活動の属人化を排除し、誰でも同じような営業ができる素地の整備があります。しかし、これに最初から取り組もうとすると、どうしても熟練の営業担当者から反発が起きてしまうでしょう。無理に推し進めても効果は薄いので、まずは抵抗の少ないところから進めるというアプローチを取りました。

教育プログラムとリソース管理

教育という観点では、若手社員と中堅以上の社員が必ずペアを組んで商談に当たります。外部教育機関による研修とOJTが中心になっており、OJTでは営業プロセス見直しと、平行して営業担当者のスキル別に顧客を割り振るという仕組みを作っています。これにより、効果の向上と全体最適化につなげようとしているのです。

具体的にいうと、SATORIではインサイドセールスとフィールドセールスとの間で「商談のランク」を共有し、その確度に営業担当者を振り分け、営業リソースを効果的に使用できるような体制を作っています。インサイドセールスが獲得したアポイントのランクを受注確度によって、A~Dの4段階に分類しています。ランクDは現時点での受注確度が低いため、「まずはSATORIを知ってもらう」という比較的軽いスタンスで情報提供を行います。フィールドセールスでは個人主義制ではなくチーム制を意識しており、柔軟な協力と支援が可能です。お客様に不利益が出ないよう、漏らさずフォローできる体制を築いています。難易度の高い案件については、経験豊富な営業担当者と新人担当者が同席し、クロージングの手法を実地で学ぶ機会を作っています。
また、インサイドセールスがつけたランクと営業訪問後の結果を可視化することで、インサイドセールスへのフィードバックを行いやすい環境を構築し、インサイドセールスとフィールド・セールスが相互に情報をキャッチアップしながら、連携が取れる仕組みとなっています。

セールス・イネーブルメントを学ぶ、おすすめの書籍

最後に、セールス・イネーブルメントを学ぶのにおすすめの書籍を3冊ご紹介します。

営業力を強化する世界最新のプラットフォーム セールス・イネーブルメント

バイロン・マシューズ 他(著)/ISBN:4877718052
URL:https://www.amazon.co.jp/dp/B07MZZLYN6

営業力を強化する世界最新のプラットフォーム セールス・イネーブルメント

セールス・イネーブルメントの先鋒ともいうべきミラー・ハイマングループの元CEOであるバイロン・マシューズ氏を中心とした数名の著者により執筆された書籍。ミラー・ハイマングループの手法を具体的な事例を添えて解説した、セールス・イネーブルメントの実践的なガイドブックです。

セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方

山下貴宏(著)/ISBN:4761274581
URL:https://www.amazon.co.jp/dp/B082VW6554/

セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方

セールスフォース・ドットコム社にてセールス・イネーブルメントを主導した著者による書籍。営業担当者の研修・教育に重きをおいた内容で、具体的な事例が説明されています。

トップセールスだけに頼らない組織を作る 実践セールス・イネーブルメント データを活用した必勝パターンの設計から、育成施策・ナレッジ活用、効果検証まで

山下 貴宏 (著):ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4798178134
URL:https://amzn.asia/d/9JL54o6

トップセールスだけに頼らない組織を作る 実践セールス・イネーブルメント データを活用した必勝パターンの設計から、育成施策・ナレッジ活用、効果検証まで

先にご紹介した「セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方」の続編とも言える著書。セールス・イネーブルメントについて実践的な内容が書かれており、具体例を取り上げながら解説されています。

以上、この記事ではセールス・イネーブルメントについて解説しました。セールス・イネーブルメントの市場規模は拡大しており、日本においてもITツールの普及やハイブリッド営業の登場などを背景に、導入する企業は増えています。

また、営業成果を最大化させるには、マーケティングと営業の連携強化も欠かせません。例えばマーケティングデータの分析内容を活用すれば、より効果的な営業戦略の立案に役立つでしょう。セールス・イネーブルメントにより営業力強化を目指すのであれば、マーケティング戦略についても改めて見直してみてはいかがでしょうか。

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