自社Webサイト、展示会などのイベント、自社セミナーや共催セミナー…など見込み顧客(リード)を獲得する機会は多く存在します。ただ、そこで獲得できたリードからどれくらいの商談が生まれ、成果がでているか、きちんと把握していますか?また、リードのフォローを営業部隊に任せっきりにしてないでしょうか?
上記の質問に少しでも「ギクッ」とされたマーケティングや営業企画のご担当者の方は、ぜひ「インサイドセールス」という概念を取り入れた活動をオススメします。獲得したリードを効率的、効果的に商談や成果に結びつけ、営業部隊との連携を高めるインサイドセールスを行うためのアイデアをお届けします。
参考:インサイドセールスとは?特徴やメリット、やるべきことをわかりやすく解説
インサイドセールスの背景と目的
昨今「インサイドセールス」という商談前の営業活動に注目が集まっています。以前は、自社サイトからの問合せやイベントで獲得したリード情報をもとに、営業担当がすべての企業・担当者に電話をかけ、商談のアポイントを取ることから営業活動が始まっていました。しかし、Webサイトからの問合せは「ちょっと資料を見てみたかった」というような自社サービスに対して興味の薄い情報収集段階のリードが含まれていることが往々にしてあり、ましてイベントブースで獲得したようなリード情報であれば自社のことを覚えてすらいないことが大半です。ここに日々数字を追っている営業部隊のリソースを投入することは非効率と言わざるを得ません。営業が商談に行く価値のあるリードであるかどうかの「見極め」と、リードを商談できる状態にまで育成していくための長期的な「コミュニケーション」が重要です。その機能を担えるのがインサイドセールスであり、その役割と重要性が注目されてきています。
インサイドセールスが必要とされる背景
検索エンジンやSNSの普及で、企業の担当者はいとも簡単に情報を手に入れることができるようになりました。業務上必要な製品やサービスに関する情報の入手方法として、50%以上の方が「企業のWebサイト」を参考にしていると答えています。
出典:BtoBサイト調査結果分析2015
今後も非対面で得られる情報はどんどん増えていき、ほとんどの担当者は商談する頃にはすでに多くの情報を持っていることが普通になっていくでしょう。それならば、その情報収集段階で、当社サービスに対して好感を持って頂こうというのがインサイドセールスの考え方の1つです。非対面での活動を重視しなければ、商談が不利になり、契約に至ることが困難になることは容易に推測できます。インサイドセールスでは、対面での活動が始まる前に、Webサイトなどでの情報発信も含めてお客様との関係を構築し、信頼を得ることが求められています。
目的と役割
インサイドセールスは、マーケティング担当者と営業担当者の中間に位置する役割を担います。
セミナーや展示会、イベントなどでマーケティング担当が入手してきたリードに対し、Webサイト・メール・電話などでコミュニケーションを行っていきます。対象のリードが興味・関心を持ち、製品やサービスの検討を始めたタイミングで営業担当にバトンタッチし、対面での営業活動を開始します。インサイドセールスの目的は、興味が薄いリードに興味・関心を持ってもらうこと、対面での営業活動が始まる前に自社サービスに対して理解を深め、好感を持ってもらうことです。
営業効率化という観点からの話
インサイドセールスを営業効率化という観点でも大きな役割を果たします。先ほど述べたように、リードが検討段階に入ってから営業が商談を行うため、無駄な企画提案・商談を大幅に削減できます。また、営業自身が見込みの薄いリードに電話をかけたり、長期的にメール等でフォローするなどの面倒でプライオリティが低くなりがちな活動もなくなります。そうすれば契約する見込みの高いリードだけの対応になるため、少人数の営業担当でも多くの商談の対応が可能となります。非対面コミュニケーション専門の営業担当(インサイドセールス)と、対面専門の営業担当で各自の役割を担い連携することによって、営業活動の大幅な効率化を行いつつ、商談数アップ、成約率アップも可能となるでしょう。
インサイドセールスで効率化する手順とは?
効率的に営業活動を行うために、リードがいまどのような状態にあるのか、営業が行くべき段階なのかという評価(スコアリング)を行って、そのリードの検討段階に合わせたコミュニケーションを行っていくことが大切です。インサイドセールスを実施するための手順とやるべきことをまとめました。
(1)リード(見込み顧客)管理
まず、リード情報を適切に管理していくことから始まります。これまで獲得したリード情報はきちんとデータベース化されていますでしょうか?展示会ごとにExcelのリストとなって散在していないでしょうか?会社情報などの属性情報はもちろんのこと、何のイベントで当社を知ったのか、その後のイベントやセミナーの参加状況、商談済みかどうか、などの情報を「いつでもアクセスできるように」管理し、そのリードがどのような状況であるかを把握しながらアプローチすることが肝要です。Excelで出来ないとは言いませんが、高度なテクニックが必要でしょう。マーケティングオートメーションなどデータベース化されたツールの活用をオススメします。
(2)リードナーチャリング(メールマーケティングやセミナー活動)
リード管理ができるようになれば、自社に興味・関心をもってもらうためのコミュニケーションを実施し、リードを育成していきましょう。BtoBであれば主にメールでのコミュニケーションが中心になります。ただし、単なる最新サービス情報やセミナー情報のような一斉配信では意味がありません。例えば、対象とするリードにとって役立ちそう、もしくは気になるであろうコンテンツ(ブログなどの自社コンテンツが望ましいですが、外部媒体の情報でも可)を送るなど、この「会社からのメールは役立ちそうだな」と思ってもらい情報を継続的に受け取ってもらうことが先決です。そういった情報の合間に自社セミナーやキャンペーン情報などを入れることで反応率は高まります。メールの開封やクリック、セミナー参加状況などのユーザーアクションをデータベースとして蓄積していくことも重要です。メールクリックは10点、Web閲覧は5点など、アクションの内容に応じて重み付けをしていけば、どのリードから対応すべきかのプライオリティづけにも活用できます。ここもメールマーケティングやマーケティングオートメーションのツールを利用すれば容易に蓄積できます。
(3)ホットリード向けのコミュニケーション
メールの開封頻度が高いリードや、セミナーに参加してくれたリードを「ホットリード」(興味関心が高い見込み顧客)として位置づけ、特別なコミュニケーションを行いましょう。例えば、招待者を限定したセミナーや無料相談会などの特別なイベントに招待したり、より興味関心を高めてもらえそうな製品・サービスの詳細資料や顧客事例集・ホワイトペーパーなどを送ったり、電話でアポイントを取得するのではなく、現状課題や困っていることなどをヒアリングするなどの活動が有用です。製品やサービスの特性を知ってもらうだけでなく、自社に好意的になってもらうことも視野に入れて活動することで、いざ商談が始まった際にはすでに競合を排除した状態でスタートすることができたりします。
(4)興味関心が深まった段階で営業に渡す
リードが製品・サービスに対して興味関心を持ち、導入検討を始めた段階でそれまでの経緯など顧客の動きも含めて営業担当に引き継ぎを行います。インサイドセールスなしで営業活動を開始する場合、これらの情報は営業担当が自ら入手するしかありませんでした。(初回訪問をそれだけのために消化することもあったのではないでしょうか?)しかし、インサイドセールスを行うことで、顧客の課題や興味、ニーズがおおよそ理解できている状態から商談をスタートできるので、スムーズに提案が行えます。
これまで説明した通りインサイドセールスは営業担当に商談を引き継ぐ前段階でたくさんのステップを踏みます。一見、効率化できていないように見えるかもしれませんが、インサイドセールスの活動は非対面での活動を複数のリードに対して一斉に行うため、一件ずつ契約率の低い商談に営業担当が足を運ぶより大幅に工数を削減することが可能です。また、商談・契約の段階で、顧客に自社の製品・サービスの価値や活用方法に関する深い理解があることで、契約までのプロセスもスムーズになり、導入後のクレームが少ないこともインサイドセールスを行うメリットです。
ツールで実現、マーケティングオートメーション×営業支援ツール
リード情報のデータベース管理やユーザーアクションの蓄積などを駆使してインサイドセールスで営業効率化するためには、ツール導入が必須となるでしょう。データベースを兼ね備えたメールマーケティングツールやCRM(Customer Relationship Management顧客管理ツール)、SFA(Sales Force Automation営業管理ツール)など活用できるツールは様々ありますが、最近特に注目されている「マーケティングオートメーションツール(MA)」はリード獲得から育成を担う、インサイドセールス実施にあたり活用したいツールの1つです。
マーケティングオートメーションでできること
リード顧客データを管理するだけではなく、Webサイトの閲覧状況やメールのクリックなどのユーザーアクション履歴を自動で蓄積(トラッキング)し、それらのアクションに応じて加点(スコアリング)して、よりホットなリードを抽出してくれることがマーケティングオートメーションの魅力の1つです。
それらのユーザーアクションやスコアからリードをセグメントし、リードそれぞれに合った、よりOne to Oneに近いコミュニケーションをすることが可能です。例えば、「自社Webサイトを直近1週間で2回以上見に来ているリードにだけ電話をかける」というような、リードが自社に対して興味を持っているタイミングや何かを検討しているであろうタイミングを察した活動が可能になります。
また、導入が簡単なことも魅力。リードデータをCSVファイルでインポートし、自社Webサイトに指定のトラッキングタグを設置するだけで運用が開始できです。当社が提供するマーケティングオートメーションSATORIも、営業支援・インサイドセールスのツールとしてご活用頂いているお客様もいらっしゃいます。
※参考:導入事例インタビュー「Faber Company様に、SATORIをどのように活用し、何が変わってきたかを聞いてみました」
営業支援ツールとしてのマーケティングオートメーションの選び方
インサイドセールスにマーケティングオートメーションを活用するなら、まずは「導入目的の明確化」が必要でしょう。どのようなことを実施したいのか、どこまでの発展を見据えているのか、既存ツールとのすみ分けはどうするのかなど、事前の整理が重要です。またマーケティング部、営業部など複数の部署が関わる施策になるので、部署間を超えた連携を行うプロジェクトチームの組成と、プロジェクトリーダーの選定も成果への近道になるでしょう。
そうした目的の明確化と社内体制が整ったら、目的に応じて自社の活用できる範囲のツール選定をオススメします。単純に高機能であることがいいことでは限りません。ほとんど機能を活用できず、成果もうやむやに終了するケースもあると聞きます。当社でもマーケティングオートメーション活用に関するご相談にはいつでものれますので、お気軽にお問合せください。
インサイドセールスで営業効率化した事例
ここでインサイドセールス事例を1つご紹介します。米国のカリフォルニア損保では、インサイドセールスを導入し、見積提示率や成約率を大幅に向上させただけでなく、営業担当1人あたりの売上を12.5%も増加させています。何より、「興味を持ってくれている見込み顧客」だけに営業活動を行うため、従業員の職務満足度の向上にもつながっているとのことで、効率化以上の成果もあると言えるでしょう。
※参考:インサイドセールスの成功事例はこちらの記事でまとめています、ぜひお読みください。
より大きな成果を挙げていくためには、リードを獲得してくるマーケティング部と成約に導く営業部が有機的に連動することが必要です。それによって営業効率化も実現できるでしょう。まずは獲得したリードをきちんと管理・育成できる環境を作り、インサイドセールスチーム(担当)を配置することから始めましょう。組織構築には時間と労力がかかりますが、専任担当を配置することは比較的容易だと思います。そうした動きからまずは小さな成果を出して、少しずつ社内でポジション(役割)を確立していくことが重要となるでしょう。
この記事が気になる方へ!おすすめの資料はこちら
・1995年:財団法人生命保険文化センター 入社
・2003年:筑波大学大学院ビジネス科学研究科経営システム科学専攻修了(経営学)
・2004年:株式会社ニッセイ基礎研究所社会研究部門 入社
・2024年~:現職
・高千穂大学商学部(2018年度~)非常勤講師
・相模女子大学人間社会学部(2022年~)非常勤講師
所属学会
・日本マーケティング・サイエンス学会
・日本消費者行動研究学会
・日本ダイレクトマーケティング学会
・生活経済学会
・日本保険学会
・生命保険経営学会
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