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インサイドセールスの成功事例

インサイドセールスとは、マーケティングと営業活動の中間にたってメールや電話など非対面チャネルを活用して見込み客のニーズを見極め、成約可能性の高い見込み客を優先的に営業担当者に引き継いでいく手法です。実施した結果、営業成績にどのような成果をもたらしているのか、事例を挙げてご説明します。
参考:インサイドセールスとは?特徴やメリット、やるべきことをわかりやすく解説

事例1:カリフォルニア損保

米国のInsideSales.com社の顧客であるカリフォルニア損保[1]では、インサイドセールスを導入することで、営業成績の向上につなげています[2]
カリフォルニア損保は消防士や保安官、教育関係者、看護師向けの損害保険に特化した1914年創業の伝統的な損害保険会社です。
保険は極めて競争の厳しい業界の一つですが、同社を含めて伝統的な保険会社では、事前情報がほとんどない見込み客リストに対する電話と訪問営業により、契約を獲得するのが一般的な姿でした。

同社では、見積や成約を向上させる解決策として、見込み客に対する電話のコンタクト率を高めることを目的にインサイドセールスを導入しました。
同社は、データに基づいて見込み客リストの優先順位を定めたり、電話をかけるタイミングを測るため、また、自動化されたメールやボイスメールにより見込み客のニーズを醸成するためにInsideSales社の各種製品を活用しています。

インサイドセールスという新たな営業手法を導入した結果、コンタクト率が向上したことで年間の電話での会話時間は4000時間以上に達しており、見積書の提示率が40%、成約率が22.9%、営業担当者あたりの売上が12.5%の向上と、営業担当者の生産性の向上にもつながっているようです。
同社のCMOであるM.マコーミック氏によれば、インサイドセールスの導入は、このような収益の拡大に留まらず、従業員の職務満足度の向上にもつながっているようです。

事例2:外資系システム販売業

もう1つの事例として、顧客管理とインサイドセールスのコンサルティング会社である(株)ピー・ディー・アールの沼澤氏がインサイドセールスの実務と運用のノウハウについて詳述した著書[3]より、外資系システム販売業の会社の事例を紹介しましょう。

無停止型サーバーを製造・販売している外資系システム販売業の会社では、製品価格の下落により、既存のリソースのまま売上を伸ばす工夫の必要に迫られ、SFAツールとあわせてインサイドセールスを導入したそうです。

当初はマーケティング部門にインサイドセールスチームを設置していたこともあって、営業担当者が訪問した直後にオペレーターが電話してしまうなど、インサイドセールスチームと営業部隊との連携がうまくとれないこともあったようです。
最初の半年は目に見えた成果もみられなかったようですが、自社製品や自社の販売スタイルにあわせて手法の改善を重ねることで8~9か月が経過した頃には徐々に成果がみえるようになり、現在はインサイドセールスを営業部門に移設しているそうです。
また、これまで取り組んできた中では、電話の対応履歴からはニーズが読み取れない状態にあった顧客からの引き合いがあるなど、顧客ニーズの見極めの難しさや、些細なものであっても顧客情報として履歴を残し、顧客への営業プロセスを透明化し、社内に共有することの重要性を実感しているそうです。

ミックスチャネル×インサイドセールスのアイデア例

前述の2つの事例でも示されている通り、インサイドセールスでは見込み客に対するアウトバウンドの電話が業務の中でも重要な位置を占めています。
しかし、コール先となる見込み客の情報の入手や、具体的な商談につながるようなニーズが出てくるまでの関係性の構築には、Webやメールなど様々な接点(チャネル)を活用することが求められますし、今後、オムニチャネル化が進むに従い、初めての接点から成約まで、あるいはその後の継続的な取引に至るまで、カスタマージャーニーを想定した多様な接点における顧客の行動を一元管理することの重要性はますます高まっていくことでしょう。

インサイドセールスでは、このように、様々なチャネルにおける見込み客との接触履歴を一元管理し、適宜コンタクトをとりつつ、具体的なニーズを引き出した上で、営業担当者に連携していく役割を担うことになります。
ここではこうしたミックスチャネルとインサイドセールスとの連携について、Webサイトとメールを例にあげてご説明します。

Webサイトプロモーションとインサイドセールス

企業は自社サイトに見込み客を誘導するために広告やSEOなど様々な手法を用いています。
また、自社サイトの訪問者に対しては、ホワイトペーパーのダウンロードやウェビナー等を通じてWebフォームへの個人情報の入力を求めることで見込み客の情報を入手しています。
Webの場合には閲覧履歴を管理することで、自社サイトへの到達方法やランディングページの内容、Webフォームへの個人情報の入力前後におけるサイト内の行動など追加的な情報も入手できることから、電話などで直接コンタクトをとる前に、見込み客の興味・関心の内容や程度についてある程度推測することも可能です。

インサイドセールスでは、このような形で入手した見込み客のリストに対するフォローコールやメールプロモーションにつなげていくことになりますが、InsideSales.com社が2007年に公表した研究[4]によれば、その後の商談や成約につながる確度を高める上では、見込み客がWebフォームに入力した後、できるだけ早いタイミング(5分以内)でフォローコールを入れることが重要であることが明らかにされています[5]
Webサイトとの連携の効果を高めていくためにはこのように、見込み客の情報を随時捉えて適切にフォローしていく体制の整備が欠かせません。
インサイドセールスは、このようなWebサイトプロモーションと見込み客への営業活動の効率的な連携を図る上で、有効な手法といえるのではないでしょうか。

メールプロモーションとインサイドセールス

インサイドセールスにおいてメールは、見込み客にとって有用な情報を継続的に提供することによりニーズの醸成(いわゆるリードナーチャリング)を図る目的で活用されることが多くなっています。

一方で、資料請求先のリストや展示会等で交換した名刺をもとにしたメールプロモーションは、低コストで大量の見込み客に直接情報を届けることができることから、インサイドセールスに限らず、多くの業界で多用されています。
そのため、インサイドセールスにおけるメールが、いかに有用な情報を記していたとしても、頻度が多くなりすぎれば、また、DMやテレマーケティングなどの他のプロモーションと重なってしまえば、せっかくの見込み客の醸成の機会も単なる「広告」として受け止められてしまう危険性が高まり、成果につながりにくくなりかねません。
メールによる情報提供は、見込み客のニーズを醸成する上で、有益な手法ではありますが、頻度や内容には細心の注意が必要といえるでしょう。

もう一方で、メールは開封確認や、送付先ごとに異なるURLを用意してメール本文中に記載し、訪問履歴を確認することで、見込み客の目に触れたか、追加の情報を求めて自社サイトの他のWebページにアクセスしたか、といった行動を確認できることから、前述のWebとの連携例と同様、確認が取れたところでインサイドセールス部門からフォローコールを入れていく、といったことができるのではないでしょうか。
インサイドセールスにおいて見込み客へのメールを通じた情報提供を行うことは、このように見込み客のニーズの醸成を図るとともに、直接の行動を促し、フォローコールや商談の機会につなげていくことが肝要といえるでしょう。

このように、Webやメールなどの手段とインサイドセールスを連携させることで、電話をかけてヒアリングする以前に行動を把握し、予め見込み客の興味・関心の内容や程度を推し量っていくことが可能となりますが、こうしたチャネル間の連携を円滑に進めていくためには、それぞれのマーケティング施策について、常に効果を検証しながら進めていくことが不可欠といえるでしょう。

CRMツール、SFA・MAどちらを選ぶ?

インサイドセールスでは、見込み客のニーズの高さを測り、優先順位をつけて営業担当者につないでいく、いわば営業プロセスの前半部分を担うことが多くなっています[6]

見込み客のなかには、まだ具体的なニーズを持つには至っていない潜在顧客も少なくないことから、実際の営業プロセスにおいては、このような潜在顧客について、ニーズが具体化するタイミングがくるまで、メールや電話を用いて継続してフォローすることも必要となります。
そのためインサイドセールスでは、営業担当者との間での顧客データの共有に加え、見込み客とのコンタクト履歴や現在のニーズの程度等、ステータスを常に管理していくことが不可欠といえます。
また、それぞれに状況の異なる見込み客を適切に管理し、ニーズを醸成していくためには、適切なタイミングで最適なチャネルを通じて、顧客の状況にあわせたコンテンツを届けていくことも求められます。
インサイドセールスに限ったことではありませんが、このような顧客管理を手動で行うのは現実的とはいえず、多くの顧客・見込み客を抱える企業にとって、顧客との関係を管理していくためには、何らかのツールの導入は避けられないのではないでしょうか。
こうした、顧客管理や営業活動の支援に用いられるツールとしては、CRMやSFA、MAなど、様々なものがあります。

多くの顧客について、個別に対応していくことは、多大なコスト負担を伴いますが、CRMツールを導入することで属性や行動履歴などの顧客情報を管理できるようになれば、個々の顧客にあわせたきめ細やかな対応のコストを圧縮することができるでしょう。

一方で、見込み客に対する営業活動の成果・効率・質を高めていくには、顧客ごとに属性やアプローチした内容と結果、今後のスケジュールなどの情報を整理していくことが求められます。
営業活動では、顧客も個々に異なりますが、営業担当者についても、個々の経験や力量が異なることから、経験の浅い営業担当者を教育し、スキルをあげていく上でも、このような営業活動に関する情報の整理と情報共有は欠かせないものといえます。
SFAはこのように、営業活動に関わる営業担当者と顧客それぞれの情報を整理し、ビジネスを効率化する上で、有効なツールといえるでしょう。 CRMやSFAといったツールは、このように顧客情報の管理、あるいは営業活動の管理に軸足をおいたものとなっています。

これに対してMAツールでは、少し興味や関心があった程度、などといった漠然としたニーズに留まる見込み客の段階から情報を管理し、ブランディングや潜在的な需要の発掘につないでいく、様々なマーケティング施策の効率化に適したツールといえます。

インサイドセールスでは、CRMのように顧客情報を管理しながらも、顧客の属性やWebの行動履歴といった情報から様々なマーケティング施策の効果や効率性について分析し、ニーズを醸成していくことが求められます。
ある程度ニーズが具体化した見込み客を管理しながら営業担当者に引き継いでいく段階ではSFAの方が適しているように思われますが、漠然としたニーズの段階にある見込み客の集客やニーズの醸成を図っていくのであれば、CRMやMAの方が適していますし、加えて様々なマーケティング施策の効果を分析するのであれば、MAが最適といえるのではないでしょうか。

[1] 出所:カルフォルニア損保ウェブサイト(https://www.calcas.com/)
[2] 参考:カルフォルニア損保発行レポート(http://static.insidesales.com/assets/pdf/CS-California-Casualty-09-2014.pdf)
[3] 参考文献:沼澤拓也(2013)「インサイドセールスの実務-売上を3倍に増やす脅威の営業支援システム」東洋経済新報社
[4] 参考文献:D. Elkington, J. Oldroyd (2007)”How Much Time Do You Have Before Web-Generated Leads Go Cold?”, MarketingSherpa’s Business-to-Business Demand Generation 4th Annual Summit 2007/
[5] 参考文献:InsideSales.com社レポート(http://www.marketingsherpa.com/DG07SFSlides/LeadResponseManagementReport.pdf)
[6] このほか、成約後の顧客に対する継続的なフォローを通じて、追加購買の機会を伺うこともインサイドセールス部門の役割となる場合もある

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