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2021.10.28

【入門】ABMとは?概要とツールをわかりやすく解説

ABMとは?

ABMはAccount Based Marketing(アカウントベースドマーケティング)の頭文字を並べたもので、BtoBマーケティングの領域における戦略的なアプローチとして昨今注目されている手法です。本記事ではABMの考え方や具体的な手法、デマンドジェネレーションとの関連などを解説します。また、ABMの推進に役立つおすすめのツールもあわせてご紹介します。

ABMとは

ABMはBtoB企業におけるマーケティング戦略の一種で、自社にとって高い価値を持つ顧客をターゲット・アカウントとして選定し、そのアカウントからの売り上げの最大化を目指します。

比較的広範囲で見込み顧客(リード)を獲得して徐々に絞り込んでいくという従来のマーケティング手法が「広く網を張る」イメージなら、特定のターゲットに狙いを定めてアタックするABMは、「銛(槍)で突く」イメージであると言えるでしょう。

ABMの考え方のイメージ

ABMとデマンドジェネレーションの違い

BtoBマーケティングの手法としてよく知られているものの一つに「デマンドジェネレーション」があります。

デマンドジェネレーションは、見込み顧客の獲得、育成、絞り込みという3つのプロセスを経て、受注確度の高いホットリードを抽出する一連の取り組みです。あらかじめ定義したターゲットセグメント(市場や業種、企業規模など)に対して広くアプローチし、育成・絞り込みフェーズを経て徐々に受注確度を高めていきます。

一方、ABMでは初めから自社に利益をもたらす「企業」をターゲット・アカウントとして選定し、ターゲットに対してマーケティングや営業面でのアプローチを行います。自社に利益をもたらす企業にフォーカスできるため、デマンドジェネレーションに比べて効率よく売上げに繋げられるという側面があります。

デマンドジェネレーションは通常マーケティング部門が主体となって進められ、その成果として抽出されたホットリードが営業部門に手渡されます。つまり、見込み顧客の獲得から受注(売上)に至るまでのプロセスの前半をマーケティング部門が担当し、後半を営業部門が担当するという役割分担となるのが、デマンドジェネレーションの一般的な流れです。

これに対してABMではマーケティング部門と営業部門が一丸となり、売り上げの最大化を目指して様々な手段でターゲット企業にアプローチをかけていきます。このあたりもABMとデマンドジェネレーションの相違点だと言えるでしょう。

このように書くとABMはデマンドジェネレーションと対立する手法のように思われるかもしれませんが、決してそういうわけではありません。デマンドジェネレーションの中で行われる顧客データの把握・管理、顧客育成といった活動は、ABMを実践する場合であっても求められるものです。そういう意味では、ABMはデマンドジェネレーションの進化した形だと言えるかもしれません。

  ABM デマンドジェネレーション
目的 売上の最大化 ホットリードの抽出
役割分担 営業とマーケティング部門が連携して推進 マーケティング部門が主体となって推進
ターゲット特定から受注までのリードタイム 比較的長い 比較的短い
アプローチ対象 選定したアカウント(企業) 選定したセグメントに属する個人

ABMとMAの関係性

前述のデマンドジェネレーションにおいて、主にリードの獲得から育成までの過程を自動化し、効率的に運用するための仕組みをマーケティングオートメーション(MA)と呼びます。こうした自動化はABMでも重要なポイントとなるため、ABMの実践においてはABMツールとMAツールを組み合わせて活用することが少なくありません。

ABMの手法と進め方

では、ABMは具体的にどのように実践していけばよいのでしょう?以下では、平均的なABMの推進プロセスについて解説します。

ABMの進め方のイメージ

ターゲット・アカウントの選定

はじめに、自社に利益をもたらす主要な顧客企業をターゲット・アカウントとして選定します。

選定にあたっては業種や業態、企業規模、所在地といった企業属性の分析、同業他社調査などで得た情報を活用し、自社との親和性や利益性、競合企業との付き合いの有無などを踏まえて総合的に判断します。

新規顧客の獲得に取り組む場合は、法人リストを購入するのも有効な方法です。また、後述するABM用ツールもこのフェーズにおける強力な武器となります。

アプローチ戦略の策定

ターゲット・アカウントを選定したら、ターゲットに対するアプローチ戦略を策定します。

ターゲット・アカウントの購買検討プロセスを整理し、どの段階でどのようなアプローチをかけていくかを考えるとともに、アプローチに用いる方法、チャネルなども検討します。このフェーズでは、従来から用いられてきたペルソナ※1定義やカスタマージャーニーマップ※2などの手法・ツールを活用します。ターゲット・アカウントが既存顧客の場合は営業担当者へのヒアリングを行い、企業風土や社内稟議のプロセス、キーマンなども把握しておきましょう。

なお、後述する効果測定・改善のプロセスを効果的に回すため、この段階で具体的な指標を定義しておくことも大切です。

【あわせて読みたい】

※1:マーケティングの「ペルソナ」とは?作り方と例・無料テンプレート

※2:カスタマージャーニーマップとは?基本と正しい作り方(事例・テンプレート付き)

施策の実施~効果測定・改善

策定した戦略に基づき、ターゲット・アカウントへのアプローチを開始します。

施策の実施結果は常にモニタリングし、効果を測定することが大切です。測定結果では、あらかじめ定義しておいた指標と照らし合わせて達成度合いを見極め、思い通りに成果が出ていない場合は改善策を検討します。

このあたりのPDCAの考え方は、従来のマーケティング手法で用いられてきたものと大差ありませんが、ABMでは、従来は営業部門が管理していた営業活動上の成果なども統合的に収集・管理して分析していく必要があります。部門をまたいでのデータ収集・統合においては、営業部門が使用するSFAツールとマーケティング部門が使用するCRMの連携が課題となるでしょう。

ABMのメリット・デメリット

次に、ABMのメリット・デメリットについて考えてみましょう。

ABMのメリット

ABMの最大のメリットは、アプローチする対象を初期段階で絞りこめるという点です。自社の利益につながる企業にターゲットを絞った上で活動を展開するため、無駄を減らし、効率よくマーケティングを推進できるという利点があります。

また、ABMではマーケティング部門と営業部門の連携が重要な鍵となります。結果として両部門のスムーズな連携が実現し、ABM以外の領域にもよい影響をもたらすことが期待できます。

ABMのデメリット

ABMという手法そのものに、特にデメリットはありません。ただし、ABMという手法がマッチする企業とそうでない企業は顕著に分かれます。

「ABMではターゲット・アカウントからの売り上げの最大化を目指す」という話をしましたが、具体的に何をするかというと、ターゲットとした企業に対してクロスセルやアップセルなどをかけて売り上げを積み上げていくという活動が基本となります。したがって、クロスセルやアップセルをかけられるような複数商材・サービスを持たない企業では、ABMを導入しても高い成果は期待できません。

また、ABMは「絞り込んだ企業に対して集中的にアプローチする」という少数精鋭的な手法ですから、一つのターゲット・アカウントから上がる売り上げには、それなりのボリュームが求められます。つまり、ターゲットとなる企業は大手、もしくは大規模中小企業レベルでないと高い成果を上げにくいのです。

また、既に書いたとおりABMの実践においてはマーケティング部門と営業部門のスムーズな連携が成功の鍵となります。両部門の連携が軌道に乗らない等の問題を抱えている場合は、その点を解消するための取り組みを事前、あるいは並行して行う必要があるでしょう。

ABMの導入を検討する際にはこうした点を念頭におき、本当に自社にマッチする手法なのかどうかを注意深く検討することが大切です。

ABM推進におけるツール活用

最後に、ABMを推進する上で活用できるツールについてご紹介しておきましょう。

ABMの活動は、時系列に大きく「リード獲得~育成」「商談」「顧客維持」の3つのフェーズに分類されます。

リード獲得~育成フェーズ

新規ターゲット・アカウントを獲得し、育成するフェーズでは、ABMツールMAツール(マーケティングオートメーション・ツール)を併用するのが一般的です。

ABMツールは企業情報のデータベースを持ち、ターゲット情報の統合・選定を支援します。また、MAツールは顧客の獲得から育成、絞り込みまでを自動化する機能を備えています。まずはABMツールを用いてターゲット・アカウントを選定した上で、MAツールを活用してターゲットの育成に取り組む…というのが、このフェーズでのツール活用のイメージです。

関連記事>> リード獲得について:リードジェネレーションとは?具体的な手法と事例も紹介

関連記事>> リード育成について:リードナーチャリングとは?基本の手法と成功事例

商談フェーズ

育成フェーズを経て受注確度が高まったアカウントは、商談フェーズに移行します。このフェーズでは営業活動を可視化・効率化するSFAツールが役立ちます。また、営業活動の中で獲得した名刺の電子化・社内共有を支援する名刺管理ツールもこのフェーズで活躍します。

顧客維持フェーズ

商談の結果、めでたく受注にこぎつけたら、その後は対象アカウントを維持する顧客維持フェーズに入ります。このフェーズでは顧客との良好な関係性構築を目指すため、CRMツールが活躍します。

営業・マーケティングプロセスにおける各ツールの活用イメージ

ABMで活躍する代表的なツール5選

続いて、上記で紹介した各ツールの代表的な商品をご紹介します。

◆顧客獲得~育成フェーズに役立つツール

uSonar(株式会社ランドスケープ)【ABMツール】

https://www.landscape.co.jp/service/usonar/

uSonarは顧客データ統合ソリューションを中心としたABMツールです。自社が保有するデータとuSonarが提供する膨大な企業情報を統合し、ターゲット・アカウントの特定を支援します。

SATORI(SATORI株式会社【MAツール】

https://satori.marketing/

SATORIは顧客獲得・育成から絞り込みまでを自動化するMAツールです。ターゲット・アカウントの従業員をリードとして把握し、行動状況の可視化やWebサイト上での接客などを通じて顧客育成を支援します。

◆商談フェーズに役立つツール

Salesforce(株式会社セールスフォース・ドットコム)【SFAツール】

https://www.salesforce.com/jp/

SalesforceはSFA(Sales Force Automation)ツールの代表格で、商談フェーズにおける営業案件の管理、および営業活動の可視化を支援します。

Sansan(Sansan株式会社)【名刺管理ツール】

https://jp.sansan.com/

Sansanは法人向けの名刺管理ツールです。営業活動で入手した名刺データをクラウド上で一括管理し、顧客情報を全社で共有することが可能です。営業担当者の引き出しの中にしまい込まれがちな名刺を共有することで、マーケティング部門と営業部門の連携強化に役立ちます。

◆顧客維持フェーズに役立つツール

Microsoft Dynamics 365(Microsoft)CRMツール】

https://dynamics.microsoft.com/ja-jp/

Microsoft Dynamics 365は、WindowsやOffice 365でおなじみのMicrosoft社が提供するCRMツールです。CRMに必要な機能を網羅し、大規模な組織にもなじみやすい点が特徴です。

自社の戦略にあわせてアプローチとツールを選定しよう

以上、この記事ではABMの概要や具体的な進め方を解説し、各フェーズで活用されるツールをご紹介しました。

既に述べたように、ABMはすべての企業に適したマーケティング手法ではありません。流行りにのって闇雲に取り入れるのではなく、まずは自社にマッチした手法なのかどうかを慎重に検討した上で導入に踏み切っていただければと思います。

なお、ABMにおける顧客の育成を効果的に進める上ではMAツールが大いに役立ちます。代表的なMAツールの比較資料を下記より無料でダウンロードいただけますので、ぜひあわせてご一読ください。

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