Marketing Blog

2021.10.12

マーケターが取り組むべき営業部門の成果を最大化する5つの方法とは

本記事は米国のBtoBマーケティングコンサルタントとして活躍するPam Didner氏に語っていただいた。

マーケティング部門はどのように営業部門と連携することで、成果を最大限に引き出すことができるのか。マーケターが注力できる方法を5つご紹介します。

はじめに

「企業」が「企業」に対して製品やサービスを提供するビジネスモデルである「BtoB取引」には、そのビジネスのスケールの大きさから、「商材単価が高い」「購買に至るまでに複数の意思決定者が存在する」「検討期間が長い」など、他のビジネスモデルとは異なる特徴が存在します。

これに加えてBtoB取引では、近年、「コンテンツマーケティング」が商談成立の重要なカギを握るようになっています。コンテンツマーケティングとは、顧客に価値のある情報を顧客が必要とするタイミングで提供するマーケティング手法のことですが、この手法がBtoB取引で注目されるようになってきた背景には、顧客の購買行動がこれまでとは違って「顧客主導型」に変化してきていることが挙げられます。

今までは、BtoB企業は潜在顧客に対してアプローチを行い、見込み顧客の育成や絞り込みを行う「企業主導型」の手法をとるのが一般的でした。しかし、各社がコンテンツの拡充に力を入れるようになった今、企業が自社のタイミングで顧客に情報を発信するこの手法は過去のものになりつつあります。

代わりに現在主流になりつつある「顧客主導型」のマーケティングでは、企業は、「見込み顧客が営業担当者に頼らずに情報を自ら収集する行動」を軸にしたマーケティング施策を展開します。実際、見込み顧客が収集する情報の量は多く、顧客は購入決定までに、その商材を取り扱う企業が発信するものと第三者が発信するものを合わせて、平均13ものコンテンツを参考にしていることがわかっています。また、これらを参考にして検討を重ねた購入者のうちの70%が営業担当者と接触する前に自分たちのニーズをしっかり見極めることができており、さらに、44%の購入者が自分たちに必要なソリューションが何なのかを定義できていることもわかっています。

このようなケースでは、顧客が営業担当者を上回るほどの知識を蓄えてから営業担当者に接触してくる例も多いため、従来のように営業部門が単独で行動していても効率的な集客にはつながりません。受注数を増やすためには、顧客にとって価値のある情報を適切なタイミングで発信することのできるマーケティング部門の取り組みが不可欠になってきています。

参考元
Martech Today.  https://martechtoday.com/b2b-buyers-consume-an-average-of-13-content-pieces-before-deciding-on-a-vendor-238540 
The Marketing Blender. https://www.themarketingblender.com/statistics-boost-sales/#:~:text=70%25%20of%20buyers%20fully%20define,reaching%20out%20to%20a%20seller.&text=70%25%20of%20B2B%20buyers%20cite,company%20to%20do%20business%20with.

営業担当者の立場から物事を見る

まず1つめの方法は、「営業担当者の立場から物事を見る」という方法です。これは、営業担当者のペルソナを作成することで可能になります。通常マーケターは、商材の理想的な顧客像である「バイヤーペルソナ」を作成し、これをもとに施策を立案・展開しますが、この作成のプロセスを営業担当者に対しても実施することができます。

営業担当者のペルソナ、いわば「セールスペルソナ」を作成すると、営業担当者に対する理解を深めることができるため、営業担当者の立場から物事を見たり考えたりすることが可能になります。セールスペルソナを作成するときには、バイヤーペルソナのテンプレートを利用するとよいでしょう。

セールスペルソナを作成するときは、以下の内容を確認することから始めます。

  • 営業部門は、商談がまとまらなかった場合にどのように対処しているのか
  • 過去3~5年間で成立した取引のうち最大のものはどれか
  • 商談後、受注できなかった場合、この見込み顧客の情報は今後のナーチャリングのためにマーケティング部門に戻す必要があるか
  • 営業部門がもっとも役に立ったと感じるマーケティングコンテンツは何か
  • 継続的に営業部門との連携を強固にするために、マーケティング部門ができることは何か

そして、営業部門について自分たちが理解していることも加えていきます。ちなみに、セールスペルソナを作成するときは、営業担当者を人気アニメや漫画のキャラクターに当てはめるのもおすすめです。親しみのあるキャラクターに置き換えてみることで、楽しくペルソナを検討したり見直したりすることができ、マーケターとしての自分の考えを営業担当者に理解してもらいやすくなります。

バイヤーペルソナイメージ
セールスペルソナイメージ

営業部門の立場から物事を見ることができるようになると、受注数を増やすための戦略を立てやすくなります。下の図は、上のセールスペルソナからの抜粋です。

このように、セールスペルソナを作成することで、マーケターはどのように営業部門と連携を図ればよいのかが具体的に把握できるようになります。

営業プロセスのステップを理解する

ここまでで、マーケターが営業担当者を理解することの大切さをお話ししましたが、自分が属する組織の営業プロセスのステップ(セールスステージ)を理解することもマーケターには欠かせない要素です。

一般的に、BtoB取引には以下のようなセールスステージがあります。

見込み顧客へのアプローチ ➡️ 見込み顧客の絞り込み ➡️ 提案・デモ ➡️ 交渉 ➡️ 受注

営業担当者はこれらのステージで、見込み顧客の「関心」を「受注」につなげるための営業活動を展開します。各セールスステージには、見込み顧客を次のステージに移行させるための戦略やコンテンツが用意されていますが、マーケターとしては、営業担当者がどのステージで何をするのかをよく理解することが重要です。十分に理解することで、どのように営業部門と連携を図ればよいのかが判断できるようになります。

セールスジャーニー例

セールスステージにコンテンツを割り当てる

セールスステージを理解したら、次のステップでは、顧客が必要としているコンテンツが何かを見極め、それらをステージごとに割り当てる作業を行います。これは、営業部門と連携を図る上でもっとも重要なもののひとつと言えます。このステップでは、どのようなコンテンツがあれば見込み顧客がセールスステージをスムーズに移行できるのかをマーケターがよく理解していることが不可欠です。

下の図では、セールスステージごとのコンテンツの例をご紹介しています。

コンテンツをセールスステージにマッピング

マーケティング部門の観点から導き出したおすすめのコンテンツを各セールスステージに割り当てたら、営業部門から意見や提案を出してもらいましょう。話し合いお互いに納得のいく内容になったら、次は、営業活動に必要なコンテンツの格納場所について話し合います。

営業のコンテンツライブラリがある場合は、必要なコンテンツをライブラリにアップロードして、それらを商材、地域(エリア)、キーワード、テクノロジー、コンテンツ形式などのカテゴリでタグ付けします。タグは、営業担当者がコンテンツを検索するときに使用するものを使うようにします。

現在では、自動でタグ付けができる機能を持ったセールスイネーブルメントツールもあり、マーケターを効率よくサポートしてくれています。代表的なツールとして挙げられるのは、HighspotShowpadSeismicAttachなどです(これらのツールは、セールスイネーブルメントツールと呼ばれる場合もあります)。

※セールスイネーブルメントについて参考記事はこちら


セールスイネーブルメントツールにはデータの分析機能が付いていることが多く、「営業担当者がコンテンツ検索に使ったキーワード」「一番多くダウンロードされたコンテンツ」「各コンテンツを閲覧した時間」など、マーケティング施策に重要な情報を得ることができます。このデータを使うことで、コンテンツの作成者やマーケターは、営業部門のニーズに合うようにコンテンツを調整したり改良したりすることが可能になります。

参考元
Pam didner  https://pamdidner.com/support-sales-with-content/ 

営業部門との連携システムを構築する

営業部門とマーケティング部門は共に、「会社の繁栄」や「ビジネスの成長」という共通の目標を掲げているにもかかわらず、部署同士の連携ができていないケースが多く見受けられます。これは、営業部門とマーケティング部門がマーケティングファネルの別の部分にフォーカスした活動をしていることに起因しています。

マーケターはファネルの最上部、つまり「認知」に焦点を当てていますが、営業部門にとって重要なのはファネルの最下部にある「購入」の部分です。「認知」にフォーカスしているマーケティング部門の業務は、潜在顧客に商材を知ってもらい、購入意識を高めていってもらうことです。このように顧客を興味喚起するにはそれなりの時間を要します。

一方で、営業部門には四半期ごとにノルマがあり、四半期ごとの枠の中でこのノルマを達成させなければなりません。このことから、マーケティング部門の目標と営業部門の目標は必ずしも足並みが揃っていないということがわかります。

しかし、目指すゴールが別々でもコミュニケーションが取れないということはありません。両部門が連携できるシステムを構築すれば、上質なカスタマーエクスペリエンスを実現させることができます。

営業部門との強固な連携を実現する上でもっとも簡単な方法は、営業担当者同士の打ち合わせや毎週開かれるミーティングに出席することです。このとき、また、MQL(マーケティング活動によって絞り込まれた有望な見込み顧客)のダッシュボードを営業部門と共有することも両部門の連携強化につながります。ダッシュボードを共有することで、マーケティング部門がどのように商材の認知度を高めて需要を喚起しているのかを営業部門に知ってもらうことができます。共有する際には自分たちの活動のメリットが営業担当者の立場からも理解しやすいように説明することが重要です。最初の段階で、マーケティング担当者は営業担当者の立場で物事を考える必要があるとお話ししましたが、このスキルはこのような場合に役に立ちます。

マーケティングキャンペーンの中には、特定の客層をターゲットにしているものもあります。このようなケースでは、キャンペーンの計画とその結果を営業部門と共有することが重要になってきます。特定の客層に対するマーケティング担当者としての知見や考察は、営業部門が見込み顧客を次のセールスステージに押し上げていく戦略を立てる上で役に立ちます。

このように、営業部門と連携を図る場合には、営業部門の一員であるという意識が不可欠です。

営業部門の新人研修に参加する

最後にご紹介するのは、「マーケティング担当者が営業部門の新人研修に参加する」という方法です。マーケターが営業部門の新人研修に「新人」として参加すると、自社の商材や営業ツール、顧客エンゲージメント形成・向上についての情報を得ることができます。また、これらの情報を営業部門の新人がどのように学んでいくかを知ることができるため、営業担当者の立場に立ったものの見方ができるようになります。

もちろん、マーケターが「新人」ではなく「情報発信者」として参加する方法もあります。ここでのマーケターの役割は、マーケティングの視点からの知識や情報を新人の営業担当者に紹介することです。

マーケティング部門が営業部門に対して行う新人研修の例としては、企業のバリューやミッションから始まり、SNS、やコンテンツなど、マーケティングに関する取り組みを知ってもらうなどがありますが、このような研修を積極的に実践することで、両部門の連携をさらに強化させることができます。

まとめ

今回は、営業部門の成果を最大限に引き出すためにマーケターができる5つの方法をご紹介しました。もちろん、マーケティング部門が営業部門と連携する方法は、これ以外にも数多くあります。しかし、どのように連携するにしても、マーケターとして何ができるかは自分の役割や責任に基づいて判断する必要があります。そして、営業部門と連携するときは、営業部門の下について働くのではなく、対等の立場にいること、そしてマーケターとしての価値を相手に示すことを意識して行動することが大切です。

デジタル化の時代では、営業部門とマーケティング部門が連携して活動することがビジネスに欠かせない要素になってきています。マーケターとして営業部門にどんな貢献ができるか、先を見越して行動することがマーケターには求められています。

参考元
Pam didner https://pamdidner.com/supporting-sales-as-a-marketer/
Pam didner https://pamdidner.com/manufacturing-sales-tips/
Hubspot https://blog.hubspot.com/marketing/tried-and-true-sales-marketing-alignment

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