DXとは?具体的に何をやるのかわかりやすく解説

三河 賢文

最近、よく「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉を耳にするようになりました。具体的にDXとは何をすることなのでしょうか。経済産業省の定義や活動、また日本の情勢などを踏まえながら、ここでわかりやすく解説します。DXの意味をしっかり理解し、これからのビジネスに役立ててください。

デジタルトランスフォーメーションDXとは

DXとは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーション)」のこと。言葉の定義は、「データとデジタル技術を活用し、ビジネスにおける激しい変化への対応、業務や企業文化の変革、競争の優位性を持つこと」となります。ただしDXに、絶対的な定義があるわけではありません。実際のところ、DXという言葉は曖昧な形で使用されています。それ故に「DXとは?」と聞かれて、上手く答えられない人は多いでしょう。実務でDXという言葉が使われる際には、前後の文脈をとらえるなどして、何を意味しているのか解釈するようにしてください。

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意味と語源

DXとはデジタル技術を活用し、ビジネスはもちろん私たちの生活そのものを、より良いものに変化させることを意味します。正式には「Digital Transformation」と表記しますが、なぜ「DT」ではなく「DX」と表記されるのでしょうか。これは英語圏において「Trans」が「X」と略されるため、これに従っているためです。

DX推進が注目される理由

DXの必要性、円グラフ

DXの必要性が高まったもっとも大きな要因として、新型コロナウイルスの感染拡大が挙げられます。これにより国内のみならず海外も含め、働き方が大きく変化しました。例えばテレワークの導入、あるいはWeb会議システムを用いた商談・打合せ等のオンライン化は、その最たるものと言えるでしょう。この変化は今後も元に戻るとは考えられず、企業はDX享受による変革が求められているのです。

また、DXの取り組みについて、日本は米国に比べると出遅れています。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の刊行する「DX白書2021」によれば、企業におけるDXへの取り組み度合いは、日本と米国でそれぞれ以下の通りです。

<DXに取り組んでいる企業>

・日本:約56%

・米国:約79%

<DXに取り組んでいない企業>

・日本:33.9%

・米国:14.1%

(DX白書2021 P11より抜粋)

日本においても、DXの重要性は多くの企業経営者が感じていることでしょう。今後さらなる成長を続けるうえで、デジタル技術の活用は避けて通れません。企業を取り巻く環境が変化する中、DXは“生き残り”のために必要なことなのです。

しかし一方で、既存システムが複雑化して活用しきれていなかったり、部署ごとで管理・構築されているために全社内でデータが共有されないブラックボックス化が常態化していたりと、課題を抱える企業は多く見られます。企業がDXを推進するためには、こうした課題解決が必要です。これに伴い、場合によっては社内体制や業務そのものの見直しも求められるでしょう。

こうした課題が解決に至らなければ、企業はDXに取り組めません。そればかりか、2025年以降に最大12兆円もの経済損失が生じるとも言われており、「2025年の崖」と呼ばれています。これを避けるべく、日本では政府が企業のDXを推進。課題の明確化や適切なガバナンスに向けた「見える化」指標の策定、中立的かつ簡易な診断スキームの構築、DX推進システムガイドラインの策定をはじめとした対応策が講じられています。

▼参考

・独立行政法人情報処理推進機構「DX白書2021」

https://www.ipa.go.jp/ikc/publish/dx_hakusho.html

・経済産業省「DXレポート」

https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf

「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」での定義

DX推進ガイドライン

▼参考

経済産業省 DXレポート2

https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004-2.pdf

上記図は、DXを「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「デジタルトランスフォーション」という3つの構造に分けたもの。これにより、DXに向けた企業の取り組みを段階的に設計・推進できます。なお、これら構造の違いは下表の通りです。

デジタイゼーション

アナログあるいは物理的なデータをデジタル化すること(例:紙文書の電子化)

デジタライゼーション

個別の業務およびプロセスのデジタル化

デジタルトランスフォーメーション

全社的な業務およびプロセスのデジタル化、あるいは顧客起点の価値創造に向けた事業・ビジネスモデルの変革

DXへ取り組むうえでは、まず自社がどの段階にあるか確認し、それに応じた具体的な施策を行うことが重要です。なお、経済産業省ではDXについて、以下のように解釈されています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

参照:デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)

IT化との違い

IT化画像

DXと聞いて、IT化と混同する方は多いかもしれません。しかし、DXは“質的変化”であり、その目的はデジタル技術によって企業の提供する製品やサービス、あるいはビジネスモデルそのものの変革です。これに対してIT化は“量的変化”であり、これまでの業務プロセスをデジタル技術によって効率化する、いわば手段と言えます。両者の違いについても、よく理解しておきましょう。

DXの進め方の注意点

日本では“2025年の崖”を克服するため、経済産業省が2018年9月に「DXレポート」を公開しました。さらに2020年度まで、以下のような施策が展開されています。

・2018年12月:DX推進ガイドライン 公表

・2019年7月:DX推進指標 公表

・2020年3月:DX推進指標関連検討(独立行政法人情報処理推進機構)

・2020年5月:「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」施行

しかし、2020年時点において企業のDX推進は停滞している状況です。その理由としては、各ステークスホルダー間における対話不足などが挙がっています。この状況を受けて、経済産業省は企業側からの声を抽出。DXの進め方について具体的な例示が必要であると考え、DXの加速に向けた研究会を発足しました。そのうえで、具体的にDXは以下のような形で進めるものとされています。

DX進め方の画像

経営戦略・ビジョンの提示

経営者自らの言葉で、経理戦略やビジョンを発信することが必要です。DXが企業あるいは各事業分野に対し、どのような価値や変化をもたらしてくれるのか。また、そのために構築すべきビジネスモデルなどが明確でなければ、DXの成功は見込めないでしょう。

経営トップのコミットメント

DX 推進には仕事の進め方はもちろん、組織・人事や企業文化などにも変革が求められます。まずはこうした変革に対し、経営者自身が強いコミットを持ちましょう。ときには経営者自身のリーダーシップにより、トップダウンでの意思決定が必要となる可能性もあります。

DX 推進のための体制整備

DX推進に向けては、それに向けた体制作りも求められます。DX推進は容易なことではなく、仮説と実行、検証を繰り返す先に実現できるもの。特に経営・マネジメント層においては、必ず成功に向けて取り組み続けるというマインドセットが必要です。

それでも、変化というものは大きいほど受け入れがたいものでしょう。DX推進についても、これに抵抗する声が挙がったり、課題に直面したりすることがあるはずです。そのため、状況に応じて部署あるいは人をサポートできる体制を作りましょう。そのためには、デジタル技術を活用できる人材の確保も必要になります。

まずは自社内に目を向け、適任がいないか検討してください。もしいなければ、新規採用あるいは社外との連携も考えなくてはいけません。同時に、以後DXの推進を担う人材の育成も検討しましょう。

投資等の意思決定のあり方

DX推進においては投資も求められます。この投資はコストだけでなく、ビジネスに対する費用対効果を踏まえた判断でなくてはいけません。経営者によるトップダウンではなく現場の意見も取り入れ、DXによる効率化によって利益を生みやすい部分から投資していくことが求められます。

IT システムの構築

DX推進には、基盤となるITシステムの構築が必要です。既存システムが用いられていればその連携も考えながら、全社において最適なシステムを検討します。なお、ITシステムの構築に当たってはベンダーに任せきるのではなく、システム連携基盤の企画・要件定義など企業側が行いましょう。

実行プロセス

現在保有するIT資産を明確に把握・分析し・評価し、その仕訳あるいはどのようなITシステムへ移行するかのプランニングを行います。なお、IT システムには最新のデジタル技術が用いられ、ビジネスモデルの変化にも素早く柔軟に対応できる必要があります。

なお、ITシステムが構築できたからと言って、DXが成功したわけではありません。あくまでITシステムを活用したことで、ビジネスそのものがどう変化したかで評価基準してください。

▼参考

・経済産業省「デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会 WG1 全体報告書」

https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation_kasoku/pdf/20201228_4.pdf

・経済産業省「DX推進ガイドライン」

https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004-1.pdf

【事例】具体例でDXを解説

「DX銘柄2021」から抜粋したDX成功事例をご紹介します。DX銘柄とは、経済産業省と東京証券取引所が共同で特に優れたDX推進企業をモデルケースとして認定するプログラム。2021年は約3,700社にもおよぶ上場企業を対象に、二段階の評価と最終選考によって選定されました。

▼参考

デジタルトランスフォーメーション銘柄2021

https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/keiei_meigara/dx-report2021.pdf

事例:凸版印刷株式会社

全社横断型組織「DXデザイン事業部」を1,000人規模で新設しました。さらに、全社的なDX人財へのリスキルに向けた教育プログラムも実施。外部連携はもちろん長野・沖縄にサテライトオフィスを設け、ITC人材の確保にも取り組んでいます。なお、不正デバイスからクラウドへの不正アクセスを防ぐセキュリティサービスなど、パッケージ事業や建装材事業に留まらず、企業のデジタル化をサポートする各種商品・サービスも提供しています。

事例:株式会社ベネッセホールディングス

一人ひとりの「Benesse=よく生きる」を実現するための、「手段」としてのDXを展開しています。約200万人もの会員の学習履歴データ、そして小中高生指導のノウハウをAI技術と融合し、個人別学習サービスを提供。AIを活用し個人別の学習コンテンツを配信するタブレットを、累計300万台も全国へ配布しています。また、全社員を対象にDXスキルのレベルを可視化し、DX推進に向けた人材育成にも積極的に取り組んでいます。

事例:AGC株式会社

室内から貼り付けることで省エネ性能の高い複層ガラスにする「アトッチ」の営業効率化を、マーケティングオートメーションで実現。営業やマーケティング等において蓄積してきた顧客情報を統合データベースで管理し、ウェビナーやメルマガ等を通じて顧客のニーズを可視化・共有しています。営業効率や成約率の向上に繋がり、今後も拡販におけるデジタル技術の活用を推進する方針です。

【DXの対象となる領域はそれぞれ】

どの領域でDXを進めるかは、企業の事業内容や方向性等によって異なります。中でも営業やマーケティングプロセスのDXは、中小企業を含め取り組んでいる企業が増えているようです。上記でご紹介したDX銘柄企業のみならず、営業やマーケティングプロセスのDXは取り組みやすいでしょう。

DX銘柄に掲載されている事例は大手企業ばかりですが、中小規模の現場でも導入が進んでいます。むしろ、規模が大きくなる前から取り組む方が順難に対応できるため導入しやすいと言えるでしょう。まずは、できることから積み上げていくことが大切です。

DXで注目される技術とツール

DXのために、新たな技術やツールを導入する場合があります。

注目の技術

DXに役立つ技術について、注目すべきものを3つ取り上げてご紹介します。

AI

AIは人工知能のことであり、人間のような知性・知覚を人工的に再現したものです。具体的には、iPhoneに搭載された「Siri」などが挙げられます。Siriは音声認識による受け答えや操作を行うだけでなく、ユーザーの使用状況などから使用するアプリを予測するなどと言ったことが可能です。

IoT

IoTは「モノのインターネット」を表し、身近なものではスマートスピーカーや車の自動運転などが挙げられます。昨今はIoTにより、外出先からスマートフォンを用いて家電を操作するといったこともできるようになりました。

クラウド

クラウドは「クラウド コンピューティング」の略であり、ネットワークを経由して提供されるサービスのこと。例えばデータを保管・共有できるDropboxやさまざまなビジネスアプリを利用できるGoogle Workspaceなどは、ビジネスパーソンにとって聞き覚えのあるクラウドサービスではないでしょうか。

DX推進でよく導入されるツール

DX推進では、以下のようなツールが多く用いられています。自社に合ったものがあれば、ぜひ導入を検討してみてください。特に近年、営業・マーケティング分野におけるDX推進は注目を浴びています。営業・マーケティング分野で活用されているツールを多く取り上げました。

チャットツール

テキストメッセージでやり取りしたり、ファイルを送付したりできます。タスクやプロジェクトの進行状況を管理できるなど、ツールによって機能は多様です。

<例>

・Slack https://slack.com/intl/ja-jp/

・ChatWork https://go.chatwork.com/ja/

MA

MAは「Marketing Automation(マーケティングオートメーション)」の略で、マーケティング活動を仕組み化すること、およびそのために使われるツールを指します。顧客情報の一元管理やメール配信、Webサイト等における履歴の管理・分析など、ツールによってさまざまな機能が搭載されています。

<例>

・「SATORI」 https://satori.marketing/

CRM

CRMは「Customer Relationship Management(カスタマーリレーションシップマネージメント)」の略で、日本語では「顧客管理」などと訳されます。その名の通り顧客に関する情報を管理・分析し、これを基に顧客に対して適切なアプローチを行うことで売上拡大などを目指します。

<例>

・Salesforce https://www.salesforce.com/jp/

・Kintone https://kintone.cybozu.co.jp/

BI

BIは「Business Inteligence(ビジネス・インテリジェンス)」の略。企業内に蓄積されているデータを分析することにより、経営上の迅速な意思決定を支援するものです。

<例>

・Tableau https://www.tableau.com/ja-jp

・Actionista! https://www.justsystems.com/jp/products/actionista/

・Oracle BI https://www.oracle.com/jp/business-analytics/business-intelligence/technologies/bi.html

RPAツール

RPAは「Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)】の略。これまで人の手によって行われていたコンピューター上での作業を、ロボットによって自動化するものです。

<例>

・WinActor https://winactor.com/

・Blue Prism https://www.blueprism.com/japan/

・BizRobo! https://rpa-technologies.com/products/first/

DX推進とマーケティングオートメーション

事例でご紹介したAGC株式会社のように、MAを導入・活用することでDXを推進している企業があります。MAは営業・マーケティングに伴う煩雑な作業を効率化し、業務効率を高めてくれるでしょう。そのため、規模を問わず多くの企業が導入に踏み出しています。自社のDX推進にMAツールが有効であるかどうか、一度検討して見ると良いかもしれません。

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PROFILE

三河 賢文

ナレッジ・リンクス(株)代表、NPO法人HASHIRU理事。大学在学中に人材ベンチャーでRA/CAとして勤務し、新卒で医療系人材会社に就職。RAとして主に医薬品業界を担当し、トップセールスを達成した後に営業企画職を兼務。Webマーケティングに従事し、その後はITサービスの新規事業にも携わる。IT系企業に営業企画職として転職し、数値分析および戦略立案を担う。その後にナレッジ・リンクスとして独立し、約3年後に事業を法人化。多くのフリーライターとパートナーシップを構築し、幅広いコンテンツ制作を担う。個人でもライターや編集者として、主にスポーツ・ビジネス関連の分野で活動する。その他、ランニングクラブ運営やメディア編集長など。趣味はマラソン、4人の子を持つ大家族フリーランス。
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