マーケティングにおけるセグメンテーションとは、簡単にいうと「市場の細分化」のことです。現代の消費者ニーズは多様化しているため、効果的なマーケティング戦略を策定するためには、セグメンテーションは欠かせない手法となっています。
この記事では、セグメンテーションの基本的な概念と、ターゲティングやポジショニングとの違いを解説したうえで、実際のやり方や活用事例についてご紹介します。
セグメンテーションとは
セグメンテーション(Segmentation)とは、自社の対象となる市場を、特定の軸で細分化するマーケティング活動のことです。市場内に存在する顧客を、特性やニーズ、行動パターンなどに基づいてグループ(セグメント)に分けます。
現代の消費者はニーズが多様化しており、一律のマーケティング戦略では効果が得られにくくなっています。セグメンテーションを行うことで、それぞれの顧客グループのニーズをより深く理解でき、パーソナライズされたマーケティング施策を実施することが可能です。このようなアプローチにより、売上や顧客満足度の向上が期待できます。
ターゲティング、ポジショニングとの違い

マーケティング戦略を策定する際、代表的な手法としてSTP分析があります。STP分析は、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの3つのステップで構成され、それぞれ異なる役割を果たします。
セグメンテーションが市場を顧客の特性やニーズに基づいてグループ分けすることに対し、ターゲティングはその中から自社が狙うべきグループを選定すること、そしてポジショニングはそのグループに対して自社の製品やブランドをどのように位置づけるかを決めることです。
セグメンテーションが適切に行われなければ、正しいターゲットの選定ができず、ポジショニングの決定も難しくなります。そのため、STP分析のなかでもセグメンテーションは非常に重要な役割を担うといえます。
関連記事:STP分析とは?わかること・やり方とマーケティングでの活用事例
セグメンテーションの分類例
セグメンテーションを行う際には、さまざまな軸(観点)を用いて市場の分類を試みます。これらの観点は「変数」「属性」などと呼ばれ、代表的な変数の種類としては以下のようなものがあります。
▼セグメンテーションで用いられる変数
変数の分類 | 説明 | 分類の具体例 |
---|---|---|
地理的変数(ジオグラフィック変数) | 国や都市、地域といった地理的な条件に関連する特性。 | ・東京都在住 ・勤務先が愛知県 |
人口動態変数(デモグラフィック変数) | 性別や年齢、家族構成、職業、収入といった人口動態に関連する特性。 | ・30代の男性 ・20代で子どもが1人の夫婦 ・年収600万円以上 |
心理的変数(サイコグラフィック変数) | 価値観や嗜好性、性格といった心理的な状態に関連する特性。 | ・旅行が趣味 ・喫煙者 |
行動変数(ビヘイビアル) | 人の行動パターンに関連する特性。 | ・商品Aの購入経験あり ・1か月以内に問い合わせしたユーザー |
セグメンテーションに用いる変数は、製品やサービスの性質、または戦略によって異なります。一般的には、複数の変数を組み合わせてグループ分けをすることが多いです。たとえば、地理的変数の「東京都在住」と人口動態変数の「30代の男性」、心理的変数の「喫煙者」を組み合わせ、「東京都在住で30代の喫煙者である男性」といったセグメントを作成します。
このようにして定義したセグメントを、次に述べる「4Rの原則」などに沿って評価し、場合によってはテストマーケティングを行ったうえで、最終的なターゲットを特定します。
セグメンテーションの評価基準「4Rの原則」
セグメンテーションでは、顧客をグループ(セグメント)に分けるだけでなく、マーケティング施策におけるターゲットとして適切なものとなりうるかを評価することが重要です。
セグメントを評価する際の指針としては、以下の「4Rの原則」が有名です。
Rank(優先度) | 自社の事業戦略やマーケティング戦略に沿って優先度付けが行われているか。 |
Realistic(有効性) | 十分な売上や利益を見込めるだけの市場規模があるか。 |
Reach(到達可能性) | 自社の製品やサービス、宣伝広告などのメッセージをターゲットに的確に届けられるか。 |
Response(測定可能性) | 対象市場の規模や特徴などを測定できるか。マーケティング施策実施後の効果(反応)を測定できるか。 |
これら4つのRすべてについてセグメントを評価したうえで、総合的な判断を下すことが大切です。
たとえば自社の戦略上優先度が高く、市場規模が十分であっても、ターゲットに製品を届けるのが著しく困難であっては、ビジネスとして成り立ちません。また、ターゲットの反応を測定できなければ、マーケティング施策を改善するためのPDCAを適切に回すことが困難となり、ビジネスを成長させていくうえでの重大なデメリットになりかねません。

セグメンテーションの活用事例
では、セグメンテーションは具体的にどのような形で実践されているのでしょうか。以下では、マーケティングにおけるセグメンテーションの活用事例をいくつかご紹介します。
「ユニクロ」の事例(BtoC)
ファーストリテイリング社は、「物が売れない時代」に逆行し、積極的に事業を拡大してきました。特に旗艦ブランドともいえる「ユニクロ」は、自社の強みであるSPA(製造小売業)システムを活かし、製品の企画から販売までを一貫して行い、無駄を省きながらスピード感のある事業展開を実現しています。
ユニクロは、従来の「20代女性」「40代男性」といった客層ベースのセグメンテーションではなく、「カジュアルかフォーマルか」「トレンドかベーシックか」という指標で市場のセグメント化を実施。その結果、「カジュアルでベーシックな商品」を中心に展開し、1998年に発売されたフリースが大ヒット。「フリースといえばユニクロ」といわれるほどの大成功を収めました。
参考:ユニクロのマーケティングから学ぶ!セグメンテーションが重要??
「メルカリ」の事例(BtoC)
メルカリ社は、日本国内で人気のフリマアプリを運営しており、その戦略にはセグメンテーションからポジショニングにおける工夫が見られます。個人間取引を扱うサービスとして、Yahoo! JAPANが運営する「ヤフオク!」が有名ですが、「メルカリ」とはその利用目的が大きく異なります。
ヤフオクは「競り」を重視し、少しでも高く売りたいというユーザーのニーズに応えていますが、メルカリは「商品に共感してくれる相手に売りたい」といったシェアリングの側面が強調されています。後発のメルカリは、ユーザーの心理的変数を基に市場を細分化し、ヤフオクと競合するのを避けつつ、ブルーオーシャンともいえる市場を開拓した戦略が成功を収めました。
参考:「メルカリとヤフオク」利用目的の決定的な違い | 東洋経済オンライン
「SATORI」の事例(BtoB)
弊社(SATORI株式会社)のマーケティング戦略においても、セグメンテーションを定義したうえでターゲティングを行い、各マーケティング施策を実施しています。
具体的には、対象市場を業種別にセグメント化したうえで、弊社が提供しているサービス「マーケティングオートメーション(MA)」に最もマッチしそうな業種を“注力業種”として定義し、そのセグメントごとに施策の方向性を定めています。たとえば製造業のセグメントに対しては製造業向けのセミナー開催を企画したり、同業界の事例コンテンツ拡大に取り組んだりしています。
見込み顧客のセグメンテーションにはMAツールが効果的
ここまで解説してきたように、事業戦略やマーケティング戦略を立案する際のセグメンテーションの目的は、市場を細分化し、特定の顧客グループ(セグメント)に分類することです。この段階では、全体像を把握するために大きな枠組みでのセグメンテーションが行われます。
MAツールを活用することで、これらのセグメントをさらに細かく分類し、効果的かつ効率的にマーケティング施策を実施できます。MAツールは、自社が保有する見込み顧客(リード)を、前述のような変数に基づいて自動的にセグメント化し、パーソナライズされたメールやコンテンツを適切なタイミングで配信します。これにより、見込み顧客とのエンゲージメントを向上させることが可能です。
関連記事:MAとは?機能や役割、活用方法や注意点をわかりやすく紹介
セグメンテーションを理解してマーケティング戦略に生かそう
セグメンテーションは、戦略の立案から個別のマーケティング施策の設計まで、さまざまな場面においてターゲットの特定に活用できる手法です。この記事でご紹介した基本事項を理解したうえで、既存の施策のターゲット設定を改めて見直してみましょう。
「現状、見込み顧客(リード)全体に対して一律で同じ施策を打っている」、「漠然としたターゲット設定を用いている」という方は、セグメンテーションからやり直すことで大きな効果アップが見込めるかもしれません。
最後に、記事中でSTP分析というフレームワークをご紹介しましたが、マーケティング領域では他にも便利なフレームワークが数多く使われています。下記のホワイトペーパーでマーケティング戦略に役立つフレームワークをご紹介していますので、ぜひこちらもあわせてご一読ください。
この記事が気になる方へ!おすすめの資料はこちら

