スコアリングとは?リードスコアリングの仕組みと手法・考え方

井上 智紀(いのうえともき) (ニッセイ基礎研究所)

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スコアリングとは?

マーケティングや営業活動における「スコアリング」とは、別名「リードスコアリング」とも呼び、属性や行動によってポイントを加算することで見込み顧客(リード)や顧客のステージを、数値化することです。スコアリングすることによって、製品・サービスへの興味関心度や理解度別にアプローチすることが可能です。マーケティングオートメーション(ツール)を用いたリードナーチャリングにおいては、顧客の購買意欲や検討状況といった顧客ステータスを適切に評価し、顧客に対して適切なタイミングでフォローしていくことが求められます。
個々に状況の異なる多くのリードを抱える中で、これらを漏らさずフォローしていくためには、顧客の属性や、行動に応じて想定される検討の進捗状況にあわせて数値化(スコアリング)し、優先順位を付けて対応していくことが不可欠です。
ここでは、スコアリング(リードスコアリング)の仕組みと導入に際して留意すべき点について示していきます。

【注意】スコアリングはリードの「絶対的な評価」ではない

スコアリングは属性や行動によって加算されるため、ルールの精度が低いと購買意欲が低くても高得点がついてしまうこともあります。ルール設計は定期的な見直しとアップデートを行い、購買意欲が高い人に高いスコアがつくよう精度を上げていきます。ルール設計の精度が低い状態のスコアリングには、このような弱点があることも理解した上で活用しましょう。

スコアリングの重要性と現状

スコアリングによってタグ付け、セグメントを行いOne to Oneで施策を展開していくマーケティングオートメーション(MA)が普及したことで、スコアリングのニーズは高まっています。獲得したリードは属性に加えてスコアリングの数値によりセグメントされて、ステージに合った施策を行います。そして購買意欲が高まったリードだけを抽出し、優先度をつけて営業活動を効率化していく「リードクオリフィケーション」が重要視されています。

米国ではAIスコアリングがトレンド

マーケティングオートメーションの導入が先行する米国においても同様に、前述のような複数の切り口から個々のリードをスコアリングし、リードの育成を進めていますが、近年ではさらに進めて、自社の商品・サービスと顧客のビジネスとのフィット度合い(例えば企業規模や立地、業種、職位等に関する既存の顧客との類似性)に関するスコアと顧客の行動データ(ウェブの訪問履歴やホワイトペーパーダウンロード時のフォームへの入力、eメールの開封やURLのクリックなど)に基づくスコアの組合せから3週間以内の購買確率を予測するなど、複数のスコアリングの組合せ(マルチスコアリングモデル)に基づいて、将来の顧客の行動確率を予測する動きも見られるようになっています。このようなモデルに基づく予測は、ビッグデータと機械学習に関する技術により、精度を向上させつつあるようです。

国内の現状

国内においても、マーケティングオートメーションの導入を機にスコアリングに取り組む企業が増えてきています。こちらは2020年にSATORIで実施した、MA活用の実態調査の結果です。

MA活用の実態調査結果の画像

カスタマーやメール、ポップアップに比べて活用度は少ないのですが、よく使われるコミュニケーション関連の設定を一通り終え、精度を上げてアクションを増やしていくフェーズでスコアリングが導入されます。そのため、MAツールの利用期間が長い顧客ほど、スコアリングを活用して大きな成果を出している例が多く見られます。しかし、一方ではスコアに基づいた営業活動を開始しても成約率が上がらないというケースも少なくないようです。スコアリングの活用が振るわない背景には、スコアリングの設計や実際のビジネスプロセスへの落とし込みに際して、注意すべきポイントを見落としているケースもあるのではないでしょうか。
以下では、BtoBマーケティングにおいてスコアリングを設計・運用する際のポイントについてご紹介していきます。

スコアリングの仕組みと手法

スコアリングにおいて、個々のリードに付与するスコアは、一般的には以下に示す3つの切り口から決めていきます。

スコアの切り口の画像

1.顧客の属性

例えば、顧客が役職者であることで+5点、すでに他社の製品を使っている場合+5点など、担当者の立場や顧客企業の業種・規模、競合する商品・サービスの利用状況により重みづけをします。担当者が、意思決定権限を有していたり、製品への理解度が高い場合といった顧客の属性は、成約の可否を大きく左右する要素になってきます。

2.顧客の興味

展示会・セミナーへの参加やウェビナーの視聴、無料トライアル、あるいは比較表・料金表、サービスサポートページなどの閲覧といった行動に対して加点します。こうした行動からリードがどの程度自社の商品・サービスに興味を持っているかを把握することで、リードのステージに合ったフォローを行います。

3.顧客の活性度

上記[2.]の行動が最近のものか、古いものかの違いにより顧客の興味・関心の高まり度合いは異なります。数か月前に頻繁に行動していた顧客では、既に他社商品・サービスを購入してしまっている可能性もあるでしょうし、何らかの事情により検討を中断してしまっているかもしれません。逆に、ここ数週間の間に、頻繁にウェブサイトを訪れている場合には、一刻も早くアプローチすることで商談につながる可能性を高めることができるのではないでしょうか。そのような理論のもと、例えばウェブサイトに直近○日以内にアクセスがあったか、直近1週間に○回以上のアクセスがあったかなどで加点を行います。

このように、これら3つの切り口から、顧客の状況に合わせて適切なスコアを付与し、スコアに応じて期待するアクションにつなげていくことが肝要といえるでしょう。

スコアリングの設計

BtoBマーケティングにおいて、スコアリングを考える際のポイントなどをまとめました。
最初にすることは顧客の成約にいたるまでの行動を可視化する。
前述のとおり、スコアリングは(1)企業規模や担当者の役職などの静的な属性、(2)展示会への参加やウェビナーの視聴などの行動から把握できる顧客の興味、(3)ウェブへアクセスなどの顧客の行動や、営業担当者とのコミュニケーションに関する最近の頻度(活性度)の3つの切り口から考えることが肝要です。
このうち(1)の静的な属性については、容易に把握可能ですが、(2)や(3)のように顧客の行動の面からスコアリングを設計するにあたっては、自社の顧客が実際にはどのような行動を経て成約に至るのか、といった顧客の検討行動全体について、できるだけ詳細な仮説を立てて見ていく必要があります。
これは、顧客の検討プロセスに対する深い理解が、ホットリードがとる行動に対してより高いスコアを付与するなど、行動ごとのスコア設定を精緻化できる可能性の向上につながるためです。
実際の仮説を立てるにあたっては、マーケティング担当者だけでなく、実際に顧客と直接会って商談を進める、営業担当者の視点を加えることも重要です。

営業視点からのスコア項目

顧客がどのような課題(ニーズ)を抱えているか、また、そうした課題に対して、どのような検討プロセスをたどり、意思決定プロセスはどのように進んでいくのか、顧客のどのような反応が成約の鍵となるのかなど、営業担当はスコアリングの設計に必要な要素を熟知しています。これらの情報は、顧客の興味(行動)に関するスコアリングの設計に際して、不可欠な要素といえるでしょう。スコアリングの設計にあたっては、営業担当者との接触の有無や回数、対話した時間の長さといった外形的な要素のほか、会話の中から引き出されるビジネス上の課題の内容や緊急度といったものも、その後の行動を左右する要素として視野に入れておく必要があります。

マーケティング視点からのスコア項目

マーケティング担当部門においては、ウェブの閲覧履歴やホワイトペーパーのダウンロード、メールの開封状況やセミナーへの参加・ウェビナー視聴、コールセンターへの問合せなどの情報が集約されていることと思います。
これらは、自社と顧客とのコミュニケーションに関わる情報であり、各リードにおける検討状況を類推する上で貴重な情報となってきます。
営業担当者がまだコンタクトできていない見込み顧客の場合には、これらの情報から検討状況や購買意欲の高まり具合を推し測り、成約に至る確率を想定して、個別のアクションにつなげていくことになるでしょう。

スコアリングの活用法

このように、スコアリングの設計には様々な視点を取り入れることが可能ですが、導入段階ではどのような属性、行動にどれくらいのスコアを付与していけばよいか、といった基準がありません。
そこで、まずは既存の情報に基づいて、業種や企業規模などの静的な属性情報については○点、自社サイトの特定のページ(商品・サービスの詳細、料金表など)の閲覧など、行動に関する項目に該当する場合には1項目あたり△点など、個々の項目ごとに重み付けを変えないようにします。シンプルなスコア設定からはじめ、運用しながら適宜スコアを見直すことで精度を高めていく方がよいでしょう。

スコアのとり方とアクション

前述のスコア設定の結果、全体での合計スコアが○点以上、または前述の3つの切り口について、すべて○点以上となった場合、などの条件を決め、条件を満たしたリードをホットリードとして営業に連携することになります。
連携されたホットリードは、十分に購買意欲が高まっており、購入に至る確率が高いと考えられることから、営業担当者は早急にアポイントをとって商談を進めていくことになります。一方で、所定の条件を満たさないリードに対しては、マーケティング部門やインサイドセールス部門から直接・間接のコンタクトを通じてリードの購買意欲を高める取組み(リードナーチャリング)を進めていくことになるでしょう。

スコア値を修正するときのポイント

このように、基本的にはスコアに基づいてリードの購買意欲を推し測り、適宜営業に連携していくことになりますが、シンプルなスコア設定のままではスコアが十分に高くなっていても成約には至らないケースも考えられます。また、まだスコアが低く、検討が進んでいない状況にあるものと考えられたリードが他社に流失してしまう恐れもあるでしょう。こうした状況を把握したら、原因についてできるだけ速やかに検討し、スコア設定の見直しや精緻化をはかるよう、PDCAを回していくことが肝要といえます。
修正にあたっては、リードの属性や行動の種類によるコンバージョン率の比較分析や、営業担当者等に対するヒアリングを通じて、よりコンバージョン率が高い属性や行動、購入の後押しとなった行動を特定していく必要があるでしょう。

スコアリングの活用事例

リードスコアリングでは、スコアの設定についても、より高い精度のPDCAを回すことが求められますが、その際、既に設定している項目以外に用いることが可能な情報がないか、といった観点についても、考慮してみることが重要です。

このブログを運営しているSATORIでもスコアリング機能を活用しています。

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設定時の例

見込み顧客の検討行動と商談創出率でコンテンツを分類し、顧客がどのコンテンツを閲覧したか、ダウンロードしたかで細かくスコアを設定しています。直接的なMAに関するコンテンツでなくても、ゆくゆく検討につながる課題に対するコンテンツの閲覧は小さいスコアが入るように設定しています。

行動名行動シグナル(閲覧コンテンツ)例
直接的な検討コンテンツMA比較表
料金体系…など
将来的な需要(課題)マーケティングブログのキラーコンテンツ
リード獲得・育成フェーズ向けノウハウ系ホワイトペーパーダウンロード
…など
スコア設定の例

このように、検討行動を把握した上で顧客に合ったタイミングで最適な資料をレコメンドすることで、資料ダウンロードからの商談化率が3~8倍になったケースもあります。

活用時の例

あるスコアに到達したユーザー情報をアラートで通知したり、コミュニケーションを変えて、活動を活性化します。例えば「検討度の高い資料ページを閲覧し、かつ料金ページを見た」など複数の閲覧行動からスコアを付与することで「購入意欲が高い」と判断し、インサイドセールスへの通知を行い、電話で手厚いフォローを行うことで商談につなげています。

また、ナーチャリング施策を行った後、その後のスコアの上げ幅を毎回検証し、施策の反応率(例えばメールの開封率など)と合わせて次の施策への参考にしています。

スコアリングは単なる「点数付け」ではなく、それにそった施策の運用ルールを自社内で少しずつ構築していくことが重要な仕事となっています。

このように、さまざまな角度からスコアリングとナーチャリング施策を実施しているため、SATORIでは常に40種類以上の資料ダウンロードを用意しています。

資料一覧>> https://satori.marketing/satori_materials/

スコアリングだけでなく直接ニーズの確認も大事

以上のことから、リードスコアリングへの取組みでは、見込み顧客の購買意欲の程度や、検討プロセスに対する理解の深さが大きな鍵を握っています。
今やBtoB、BtoCを問わず、購買検討プロセスのなかではウェブ上の様々な情報が検索・比較されるようになっていることは言うまでもなく、お客様の購入意思決定に際して最も重要な情報が、外部のサイトにあることも多くなっています。自社サイト内のコンテンツは参考にはされるものの、お客様の検討タイミングによっては、真に有益な情報が異なる可能性もあるでしょう。
前述のとおりスコアリングの設計には、営業視点も必要とされることを意識しておきましょう。また、お客様に直接ヒアリングするなど、さらに理解を深めることで、より精度の高い設計を行うことができます。
いかがでしたか?これからマーケティングオートメーションを導入する方は、顧客の行動を営業と一緒に可視化しながら、スコアリングをはじめてみてはいかがでしょうか。

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PROFILE

井上 智紀(いのうえともき)

ニッセイ基礎研究所

生活研究部 主任研究員

・1995年:財団法人生命保険文化センター 入社
・2003年:筑波大学大学院ビジネス科学研究科経営システム科学専攻修了(経営学)
・2004年:株式会社ニッセイ基礎研究所社会研究部門 入社
・2006年~:同 生活研究部門
・山梨大学生命環境学部(2010年~)非常勤講師
・高千穂大学商学部(2018年度~)非常勤講師

所属学会
・日本マーケティング・サイエンス学会
・日本消費者行動研究学会
・日本ダイレクトマーケティング学会
・生活経済学会
・日本保険学会
・生命保険経営学会
・ビジネスモデル学会
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