リードスコアリングの仕組みと考え方

井上 智紀(いのうえともき) (ニッセイ基礎研究所)

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スコア

リードスコアリングとは?

マーケティングオートメーション(ツール)を用いたリードナーチャリングにおいては、顧客の購買意欲や検討状況といった顧客ステータスを適切に評価し、顧客に対して適切なタイミングでフォローしていくことが求められます。
個々に状況の異なる多くのリードを抱える中で、これら顧客を漏らさずフォローしていくためには、顧客の属性や、行動に応じて想定される検討の進捗状況にあわせて数値化(スコアリング)し、優先順位を付けて対応していく、リードスコアリングが不可欠です。
ここでは、リードスコアリングの仕組みと導入に際して留意すべき点について示していきます。

リードスコアリングとは?

マーケティングオートメーション(ツール)を用いたリードナーチャリングにおいては、顧客の購買意欲や検討状況といった顧客ステータスを適切に評価し、顧客に対して適切なタイミングでフォローしていくことが求められます。
個々に状況の異なる多くのリードを抱える中で、これら顧客を漏らさずフォローしていくためには、顧客の属性や、行動に応じて想定される検討の進捗状況にあわせて数値化(スコアリング)し、優先順位を付けて対応していく、リードスコアリングが不可欠です。
ここでは、リードスコアリングの仕組みと導入に際して留意すべき点について示していきます。

スコアリングの王道

リードスコアリングにおいて、個々のリードに付与するスコアは、一般的には以下に示す3つの切り口から決めていくことになります。


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1.顧客の属性

顧客企業の業種・規模や、競合する商品・サービスの利用状況により、商談に進める可能性や商談の規模は異なってきます。また、コンタクトできている相手が商品・サービスの導入・購入の検討に際して、意思決定権限や社内的な発言力を有しているかといったことも、成約の可否を大きく左右する要素になってきます。
スコアリングに際しては、こうした顧客の属性について考慮することが求められます。

2.顧客の興味

顧客が自社商品・サービスにどの程度興味を持ってくれているかは、顧客の行動履歴から類推することが可能です。展示会・セミナーへの参加やウェビナーの視聴、無料トライアル、あるいは比較表・料金表の閲覧といった行動は、導入・購入の検討段階とも密接に結びついているものと思われます。こうした行動から顧客がどの程度自社の商品・サービスに興味を持っているかを把握することで、それぞれの顧客をどのようにフォローしていけばよいかの判断も可能になるのではないでしょうか。

3.顧客の活性度

顧客の行動について把握できたとしても、その行動が最近のものか、数か月前のものか、といった時点の違いにより、顧客の興味・関心の高まり度合いは異なるものと思われます。数か月前に頻繁に行動していた顧客では、既に他社商品・サービスを購入してしまっている可能性もあるでしょうし、何らかの事情により検討を中段してしまっているかもしれません。逆に、ここ数週間の間に、頻繁にサイトを訪れている場合には、一刻も早くアプローチすることで商談につながる可能性を高めることができるのではないでしょうか。

このように、これら3つの切り口から、それぞれ状況に応じて適切なスコアを付与し、それぞれのスコアに応じて適切なアクションにつなげていくことが肝要といえるでしょう。

米国では顧客の予測がトレンド

マーケティングオートメーションの導入が先行する米国においても同様に、前述のような複数の切り口から個々のリードをスコアリングし、リードの育成を進めていますが、近年ではさらに進めて、自社の商品・サービスと顧客のビジネスとのフィット度合い(例えば企業規模や立地、業種、職位等に関する既存の顧客との類似性)に関するスコアと顧客の行動データ(ウェブの訪問履歴やホワイトペーパーダウンロード時のフォームへの入力、eメールの開封やURLのクリックなど)に基づくスコアの組合せから3週間以内の購買確率を予測するなど、複数のスコアリングの組合せ(マルチスコアリングモデル)に基づいて、将来の顧客の行動確率を予測する動きも見られるようになっています。このようなモデルに基づく予測は、ビッグデータと機械学習に関する技術により、精度を向上させつつあるようです。

国内の現状

国内においても、マーケティングオートメーションの導入を機にリードスコアリングに取り組む企業が増えてきています。しかし、実際にスコアをもとにアクションをとろうとしても、「90点で成約しない見込み顧客がいる一方で、50点でも成約するケースがある」といった声があげられています。このように、スコアに基づいてマーケティング部門から営業担当者にアクションを促す仕組みを作っても、スコアが成約確率に相関せず、結果的に有名無実化してしまうケースも少なくないようです。そして「導入時の社内の説得材料としてスコアを利用したため、見直しが難しい」などという本末転倒な結果を招いてしまった失敗事例もあります。
このように、リードスコアリングの活用が振るわない背景には、スコアリングの設計や実際のビジネスプロセスへの落とし込みに際して、注意すべきポイントを見落としているケースもあるのではないでしょうか。
以下では、B2Bマーケティングにおいてスコアリングを設計・運用する際のポイントについてご紹介していきます。

スコアリングの設計について

BtoBマーケティングにおいて、スコアリングを考える際のポイントなどをまとめました。

まず最初にすることは顧客の成約にいたるまでの行動を可視化する。
前述のとおり、スコアリングは(1)企業規模や担当者の役職などの静的な属性、(2)展示会への参加やウェビナーの視聴などの行動から把握できる顧客の興味、(3)ウェブへアクセスなどの顧客の行動や、営業担当者とのコミュニケーションに関する最近の頻度(活性度)の3つの切り口から考えることが肝要です。
このうち(1)の静的な属性については、容易に把握可能ですが、(2)や(3)のように顧客の行動の面からスコアリングを設計するにあたっては、自社の顧客が実際にはどのような行動を経て成約に至るのか、といった顧客の検討行動全体について、できるだけ詳細な仮説をたてて見ていく必要があります。
これは、顧客の検討プロセスに対する深い理解が、ホットリードがとる行動に対してより高いスコアを付与するなど、行動ごとのスコア設定を精緻化できる可能性の向上につながるためです。
実際の仮説をたてるにあたっては、マーケティング担当部門だけの検討では不十分であり、実際に顧客と直接会って商談を進める、営業担当者の視点を加えることが肝要といえるでしょう。

営業視点からのスコア項目

営業担当者は、日々、顧客と直接コミュニケーションをとっている点で、自社の中で最も顧客に関する情報を有しているといえます。顧客がどのような課題(ニーズ)を抱えているか、また、そうした課題に対して、どのような検討プロセスをたどり、意思決定プロセスはどのように進んでいくのか、顧客のどのような反応が成約の鍵となるのか、といった点について営業担当者以上に熟知している者は社内には存在しないものと思われます。これらの情報は、顧客の興味(行動)に関するスコアリングの設計に際して、不可欠な要素といえるでしょう。前述の国内事情でも触れたように、スコアの高さと成約確率が相関しなくなる要因の一つには、スコアリングの設計においてこのような営業視点が欠落していることもあるのではないでしょうか。
また、スコアリングの設計にあたっては、営業担当者との接触の有無や回数、対話した時間の長さといった外形的な要素のほか、会話の中から引き出されるビジネス上の課題の内容や緊急度といったものも、その後の行動を左右する要素として視野に入れておく必要があります。

マーケティング視点からのスコア項目

マーケティング担当部門においては、ウェブの閲覧履歴やホワイトペーパーのダウンロード、メールの開封状況やウェビナーの視聴、コールセンターへの問合せなどの情報が集約されていることと思います。
これらは、自社と顧客とのコミュニケーションに関わる情報であり、いつ、どれくらいの頻度で、どのような経路でコミュニケーションが発生したのか、といった情報は、各リードにおける検討状況を類推する上で貴重な情報となってきます。
営業担当者がまだコンタクトできていない見込み客の場合には、これらの情報から検討状況や購買意欲の高まり具合を推し測らざるを得ず、こうした限られた情報をもとに、成約に至る確率を想定して、個別のアクションにつなげていくことになるでしょう。

シンプルなスコア設定ではじめてみる

このように、スコアリングの設計には様々な視点を取り入れることが可能ですが、導入段階ではどのような属性、行動にどれくらいのスコアを付与していけばよいか、といった基準がありません。
そこで、まずは既存の情報に基づいて、業種や企業規模などの静的な属性情報については○点、自社サイトの特定のページ(商品・サービスの詳細、料金表など)の閲覧など、行動に関する項目に該当する場合には1項目あたり○点など、個々の項目ごとに重み付けを変えないようにします。シンプルなスコア設定からはじめ、運用しながら適宜スコアを見直すことで精度を高めていく方がよいでしょう。

スコアのとり方とアクション

前述のスコア設定の結果、全体での合計スコアが○点以上、または前述の3つの切り口について、すべて○点以上となった場合、などの条件を決め、条件を満たしたリードをホットリードとして営業に連携することになります。
連携されたホットリードは、十分に購買意欲が高まっており、購入に至る確率が高いと考えられることから、営業担当者は早急にアポイントをとって商談を進めていくことになります。一方で、所定の条件を満たさないリードに対しては、マーケティング部門やインサイドセールス部門から直接・間接のコンタクトを通じてリードの購買意欲を高める取組み(リードナーチャリング)を進めていくことになるでしょう。

スコア値を修正するときのポイント

このように、基本的にはスコアに基づいてリードの購買意欲を推し測り、適宜営業に連携していくことになりますが、シンプルなスコア設定のままではスコアが十分に高くなっていても成約には至らないケースも考えられます。また、まだスコアが低く、検討が進んでいない状況にあるものと考えられたリードが他社に流失してしまう恐れもあるでしょう。こうした状況を把握したら、原因についてできるだけ速やかに検討し、スコア設定の見直しや精緻化をはかるよう、PDCAを回していくことが肝要といえます。
修正にあたっては、リードの属性や行動の種類によるコンバージョン率の比較分析や、営業担当者等に対するヒアリングを通じて、よりコンバージョン率が高い属性や行動、購入の後押しとなった行動を特定していく必要があるでしょう。

究極のスコアリングとは

リードスコアリングでは、スコアの設定についても、より高い精度を求めてPDCAを回すことが求められますが、その際、既に設定している項目以外に用いることが可能な情報がないか、といった観点についても、考慮してみることが重要です。

究極のスコアリングは「競合商品と比較検討している」という情報を使うこと。
見込み客の自社サイトでの閲覧履歴や、コール履歴などの行動それぞれについて、スコアを設定したり、閾値を検討したりするためには多くの時間を要しますし、スコアの修正を繰り返してもなかなか期待するほどの成果につながらない、といったことも危惧されます。

一方、外部比較サイトなどの外部のデータが利用できる場合には、自社サイト内などの行動履歴を詳細に分析するまでもなく、成果につながる可能性が高まります。
例えばこのブログを運営しているSATORIでは外部データを活用しており、外部比較サイトで「他社製品との比較をした」ユーザのうち、自社サイトの料金表を閲覧した場合には、テレマーケティングによるアポイント率(アポイント数/コールリスト数)が75%を超えているそうです。外部比較サイトを閲覧したからといって、必ずしも自社の製品・サービスを検討候補に加えているとは限りませんが、比較サイトの利用者は製品・サービスの導入・乗換の検討が進んでいる可能性が高いことから、こうした情報を積極的に活用することで、具体的な成果につながることが期待できるものと思われます。

さらに一歩進めて、自社サイト内に「他社との比較」といったコンテンツを用意し、その閲覧履歴から判別する、という方法も考えられます。
これは、外部比較サイトとは異なり、自社サイト内における比較コンテンツの閲覧者は、自社の製品・サービスを有力な候補とみている可能性が極めて高いと推察されるためです。
実際に、サイボウズスタートアップス社のサイトには「他社との比較」コンテンツがあり、他社製品と比較した特長を示すこのコンテンツの閲覧履歴がある場合には、アポイント率が10~30%程度高くなっているそうです。
この結果は、顧客の行動についてスコアを設定しなくても、検討が進んでいるリードが閲覧しそうなキラーコンテンツを提示し、その閲覧履歴から絞り込むだけでも効果が期待できることを意味しています。こうしたキラーコンテンツにはこのほか、「料金シミュレーション」や「ライセンス更新・乗換についての情報」、「契約内容についての確認」なども考えられます。購買意欲の程度の類推やスコアリングへの活用という観点からは、まずはこれらのコンテンツへのリンクのクリックや、実際の閲覧といった行動を把握できることが重要()です。
このようなコンテンツを自社サイト内に意図的に配置し、閲覧履歴をスコアリングやマーケティングオートメーションにおけるシナリオの設定に活用することは、商談の獲得や営業活動の効率性向上への寄与が期待できるといえるでしょう。

精緻なスコアリングに向けて、多くの時間やコストをかけるのも一案ですが、行動履歴などのスコアリングに用いられるデータは、あくまでも「購買意欲の程度を類推する材料」であることから、高いスコアが示されていても、営業に連携する前にインサイドセールスで確度を探るなどのステップが必要となることも少なくないようです。このようにKPI向上の鍵となるコンテンツの特定や外部データを活用することができれば、スコアリングに労を割く以上の価値を実現することも不可能ではないといえるでしょう。


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サイボウズスタートアップス株式会社 「他社との比較」ページ

() リードの育成上は、著しく自社に有利な内容に偏っていたり、内容が陳腐化している、UXが考慮されていないなど、コンテンツに不備があっては論外であるが、購買意欲の程度を類推する上では、コンテンツの充実度合いよりもリンクのクリックや滞留時間などの行動履歴の方がより重要である。

スコアリングだけでなく直接ニーズの確認も大事

以上のことから、リードスコアリングへの取組みでは、見込み客の購買意欲の程度や、検討プロセスに対する理解の深さが大きな鍵を握っています。
今やB2B、B2Cを問わず、購買検討プロセスのなかではWeb上の様々な情報が検索・比較されるようになっていることは言うまでもなく、お客様の購入意思決定に際して最も重要な情報が、外部のサイトにあることも多くなっています。自社サイト内のコンテンツは参考にはされるものの、お客様にとって真に有益な情報とはなっていない可能性もあるでしょう。
前述のとおりスコアリングの設計には、営業視点も必要とされることを指摘したいところです。しかし、営業担当者がお客様のニーズや意思決定の鍵となる要素について十分には理解していない可能性も考慮すれば、お客様に直接ヒアリングするなど、お客様への理解を深める努力こそが最も肝要といえるのではないでしょうか。

いかがでしたか?これからマーケティングオートメーションを導入する方は、顧客の行動を営業と一緒に可視化しながら、はじめてみてはいかがでしょうか。

PROFILE

井上 智紀(いのうえともき)

ニッセイ基礎研究所

生活研究部 准主任研究員

・1995年:財団法人生命保険文化センター 入社
・2003年:筑波大学大学院ビジネス科学研究科経営システム科学専攻修了(経営学)
・2004年:株式会社ニッセイ基礎研究所社会研究部門 入社
・2006年~:同 生活研究部門
・東洋大学経営学部(2006年度~)非常勤講師
・山梨大学生命環境学部(2010年~)非常勤講師

所属学会
・日本マーケティング・サイエンス学会
・日本消費者行動研究学会
・日本ダイレクトマーケティング学会
・生活経済学会
・日本保険学会
・生命保険経営学会
・ビジネスモデル学会
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