メールマーケティングとは、eメールでのコミュニケーションを活用したマーケティング活動のことです。手法としてはメルマガが最も知られていますが、他にもたくさんの手法があります。メールマーケティングの大きなメリットは効果測定が容易であることや自動化されたOneToOneコミュニケーションが可能なことで、デメリットは開封されないと見てもらえないことではないでしょうか。
最近ではメール施策を行っている企業が増えて受信ボックスに未読が溜まる傾向があったり、ビジネス以外での利用が減っているため「もう効果がない」と言われることもあります。確かにBtoCはLINEやSNS配信に切り替える企業も増えてきていますが、BtoBではまだメールの効果はあります。
ここでは、メールマーケティングの概要に加えて効果を出している成功事例や、成功のポイントを解説していきます。
メールマーケティングの種類と効果
メールマーケティングには大きく分けてメルマガなどの一斉メールと、配信のターゲットやタイミング、内容などを相手に最適化するOneToOneメールの2種類の手法があります。
それぞれの手法でメリットやデメリット、配信方法や効果が違いますので、詳細を解説していきます。
1)メルマガ(一斉メール)
メルマガとは、対象者全体に一斉に配信されるマガジン(雑誌)のようなメールのことです。配信システムの仕組みを利用した個人名や宛名の簡単な最適化は行われたりしますが、基本的には「同じメールを全員に配信」しています。
配信するための手間が圧倒的に少なく、運用が手軽であることから、メールマーケティングを始めるにあたって「まずはメルマガから」と最初に着手することの多い手法になります。
運用が容易であることから、メルマガ運用を行っている企業が多く、受信者のメールボックスに埋もれてしまう可能性が高くなってきています。開封して読んでもらえるメルマガにするには、メールタイトル(Subject)や内容、メール以外での顧客とのコミュニケーションによる信頼関係が大切です。
メールマーケティングでは「開封率」「クリック率」を主な指標にしていきます。
メール配信ソフトBenchmark Emailのユーザーのデータを元にした2022年度メルマガ開封率に関する調査結果レポートでは業種別に以下のような結果が出ています。
出典:メルマガ平均開封率レポート【2022年版】 – Benchmark Email
全業種での平均開封率が26.20%、平均クリック率が3.39%となっており、予想より良い数字なのではないでしょうか。自社のメルマガの実績値と比較してみましょう。大切なのは顧客との信頼。ファンになってもらえれば、一斉メールでもある程度の効果を得ることができます。
2)One To Oneメール(パーソナライズドメール)
メルマガと違って、個人に合う内容やタイミングで送るメールのことです。パーソナライズドされたメールは一斉メールの開封率に対し1.5倍、コンバージョンは2倍になった例もあります。
One To Oneメール施策は、従来のメール配信ツールで対応すると大きな手間がかかり、配信ミスも起こりがちです。マーケティングオートメーション(以下MAツール)を使うことで、行動履歴による抽出や配信のタイミングをシナリオを基本に運用することが可能です。
参考記事>>きちんと開封される魅力的なOne to Oneメールの作り方
2-1)ターゲティングメール・リターゲティングメール
ターゲティングメールやリターゲティングメールは、顧客プロフィールや過去の行動履歴などで配信先(ターゲット)を抽出して配信するメールのことです。
例えば、ターゲティングメールは「関東にお住いの方だけに、東京開催のセミナー告知メールを送る」、リターゲティングメールは「過去に東京開催セミナーのメールを開封した人にだけ、セミナー残席数のメールを送る」というものです。受信した人にとって、興味関心の高いメール内容になる上、不要な人に送らないことでメール配信解除率を下げることができます。
2-2)フォローメール
フォローメールは、ターゲティングメールの一種で、前のアクションに対してフォローするメールを瞬時に送るものです。
例えばセミナー来場者に「お越しいただきありがとうございました、アンケートにお答えください」と翌日配信するものなどがわかりやすい例です。フォローメールを送ることで、アクションを起こしてくれた人に安心感を与え、自然と次のアクションに繋げることができます。
2-3)ステップメール
ステップメールもターゲティングメールの一種で、ステップを追って複数回送るメールです。
例えば資料をダウンロードした方に、「1回目(直後):ありがとうございました、こちらの資料もおすすめです」「2回目(3日後):資料の不明点はありませんでしたか?オンラインMTG予約案内」「3回目(7日後):トライアル・デモのご案内と営業担当の紹介」と複数回にわけてコミュニケーションをとってきます。
1回ですべての内容を送ってしまうと、まだ資料の半分も見ていない人もいて興味を持ってもらえず見逃されてしまうかも知れません。情報を小出しにして少しずつ理解してもらいたい内容を送ることに向いています。
2-4)リマインドメール
リマインドメールもターゲティングメールの一種で、顧客のアクションに対して再度告知を行うメールのことを言います。
例えば、セミナー申込済みの方に「明日の会場のご案内」や、ショッピングカートに商品を入れたままになっている人に「カートにこの商品が入ったままになっています」と送るなどがわかりやすい例です。その名の通り、重要なアクションを忘れられないように思い出してもらう施策です。
各One To Oneメールは配信するターゲットや配信日時が個々で違う上、システムにより自動挿入される内容もありますので、従来のメール配信ツールで行うのはとても大変です。例えば、企業から誕生日当日に送られてくる「誕生日おめでとうございます」のクーポンメールも、一見単純そうに感じますが、配信側の視点に立ってロジックを考えると「毎日、今日誕生日の人を抽出して配信する」という作業になるのです。
One To Oneメールは、受信側に最適化されたタイミングと内容で心を捉える仕組みですが、ある程度自動化して運用する必要があります。
成功事例
ここからは、メールマーケティング施策の成功事例をご紹介していきます。これから新たにメール施策を始める方や、現状のメール施策の成果を伸ばしたい方は必見です。
セグメントごとにメール内容を最適化した結果、 メルマガ経由でのサイト訪問件数が 1.5倍以上増加!
ビッグビートは、BtoB企業のマーケティングにおけるコミュニケーションの支援を事業としている企業です。デジタルマーケティングを強化していく中で、MAツールを使ったメール施策・効果分析に乗り出しました。MAツール導入前は、実名顧客に向けて一斉メールを配信していましたが、導入後はプロフィールによるセグメントを行ったターゲティングメールに変更。メール経由のイベント特設ページの訪問件数が1.5倍と増加しています。
ステップメールで段階的にユーザーをサポートし、課金率5%向上を実現
「ペライチ」は、無料かつ簡単にホームページを作成でき、「最短5分」と手軽に導入できるサービスです。メール施策では主に無料ユーザーの「ページを作成したばかり」「2度目のログイン」フェーズのユーザーに対し、ステップメールを送ることでアップセルを行っています。「SATORI」導入で「課金率」は全体で5%の向上が見られたとのこと。ステップメールの開封率は20%もあり、順調に課金ユーザーを増やす施策として手ごたえを感じているそうです。
メールマーケティングの流れ
メールマーケティングを始めるなら、まずは一斉メルマガから始めて、徐々にOne To Oneメール(パーソナライズドメール)にも広げていきましょう。メルマガ施策は配信リストと配信ツールがあれば今すぐにでも始められる施策です。配信リストがない場合は登録フォームを作ってリストを集めるところから開始してください。
One To Oneメールを行う場合は、少し手順が複雑になります。以下の流れで進めることがおすすめです。
導入前)ツールの選定と導入
一斉メールやOne To Oneメールは通常のメールソフトでの配信は不可能です。一斉メールはBCCで配信している現場もありますが、間違ってCCで送ってしまうなどの人的ミスによる情報漏洩のリスクが高いのでおすすめできません。必ず配信システムを導入しましょう。
One To Oneメールの配信を予定している場合は、MAツールを選定することをおすすめします。One To Oneで行いたい施策をある程度描いておいて、それが叶う機能を備えているMAツールを選びましょう。
>マーケティングオートメーション(MA)で何ができるの?基本と機能・導入をわかりやすく解説
Step1)配信ターゲットのリストアップ
誰に対して、どんな内容のメールを送るのかを考えて、配信先の抽出条件(セグメント・ターゲティング)や発動条件(トリガー)を決めていきます。誰に、いつ、何を送るかを設計したものを「シナリオ」といいます。このシナリオを設計しましょう。
Step2)メールコンテンツの作成
メールのタイトルや内容を決めていきます。メールコンテンツは静的コンテンツと動的コンテンツにわけて設計します。静的コンテンツは原稿を作成し、動的コンテンツは出力のロジックを決めていきましょう。
特にメールタイトルは重要です。メールタイトルが受信者の心に刺さらないと中身は全く目に触れないままになってしまいます。タイトルのつけ方はこちらの記事を参考にしてください。
>【サンプル付き】メルマガ件名のテクニックを知って開封率UP!
テキストメールとHTMLメール
メールにはテキストメールとHTMLメールがあります。テキストメールは画像や動画を使うことができませんが、ファイルサイズが小さくどんな環境でも受信しやすいことがメリットです。視覚的に訴える必要がないメールはテキストメールを活用しましょう。
HTMLメールは画像や動画、デザインを埋め込むことができるメールです。例えば、商品を訴求するようなカートリマインドメール、セミナーなどのイベント案内など、写真が必要な場合に活用しましょう。また、リンクURLをテキストに貼り付けることができるので、計測パラメータ付きのURLを隠したいときにもおすすめです。
Step3)テスト配信~本配信
まずは社内メンバーなどの少量のリストへのテスト配信を行い、効果測定などに問題がないか確認してから本配信を行いましょう。メール配信ツールで送るときは問題なかったが、各種メールソフトで確認してレイアウトのズレや計測パラメータの間違いでカウントできていないなどの問題が見つかることがあります。
メールは一度配信してしまうと訂正ができず、謝罪メールを送ることになります。本配信前に、メール原稿やリストに間違いがないか複数名で確認しましょう。
Step4)効果測定と見直し
配信したら必ず効果測定と見直しを行いましょう。興味を持ってもらえないメールを一方的に送ることで、配信解除を招くだけでなく、企業イメージも下がってしまいます。
効果測定に以下の指標を使います。
指標 | 解説 |
---|---|
開封率 | メール開封数÷有効配信数※で算出。開封した際にリクエストされる透明な画像などで計測するためHTMLでしか取得できない数値。開封率が低い場合はタイトルの見直しを行う。 |
クリック率 | メールの本文中にあるURLがクリックされた数÷有効配信数で算出。メールの内容に興味を持ってもらえたかの指標になる。パラメータをつけることで、どの位置のURLがクリックされたか、誰にクリックされたかまで把握できる。 |
コンバージョン率 | メール経由でアクションがあった数÷有効配信数で算出。掲載している商品やオファーの内容がよかったかどうかの判断基準になる。 |
※有効配信数とは、配信リスト数からエラーなどで届かなかったメールを省いた「配信成功数」のこと
参考記事>>メルマガの開封率はどれくらい?平均から見るKPI設定について
他にも、よくモニタリングされる指標として配信解除率がありますが、普段は個々の施策において数字を追う必要はありません。全体の配信解除率が上がってきたときには、原因特定を行います。配信頻度やメールの内容を見直しましょう。
メールはこのStep1~4を繰り返して運用していきます。効果測定と見直しを行うことで、より受信者に受け入れられる優良なメール施策へと育てていきましょう。
成果を出すためのコツは?
メールマーケティングはPDCAを繰り返し行う、丁寧な運用がカギになります。成果を出すには長期的な視点で、トライアンドエラーを繰り返して知見を溜めていきましょう。
1)戦略設計を行い数ヶ月先を見据えた運用を行う
見通しを立てずに運用を開始するとすぐにネタ切れになるので、長期的な目線で戦略設計を行いましょう。特にメルマガ(一斉メール)は、ネタがないと配信できません。年間でイベントのスケジュールを作り、おおよそどんな内容の原稿を提供できるかを把握しておきましょう。数ヶ月先を見据えた配信予定を組むような運用方法がおすすめです。
2)愛のあるコンテンツを意識する
メール施策はある程度自動化していくものですが、自動化に頼りすぎた愛のないメールになっていませんか?システムが送っているメールの雰囲気が強ければ強いほど、受信者はスルーしたくなっていきます。自動化しているメールでも、書き出しで時節を入れた話しかけを行うなど、愛と温かみのあるメール原稿を作りましょう。
3)定期的な効果測定と見直しを
繰り返し配信するメール運用はとても大変です。配信本数を決めることでメールを送ること自体が目的になってしまわないようにしましょう。配信したら必ず効果測定を行い、シナリオやコンテンツに問題がないかを考えます。受信者にとって読みたくなるような内容を維持するために、高い意識で運用していきましょう。
多くの企業がメールマーケティングを行っている中、選ばれてクリックされて読まれるメールは、個人に最適化されたものになりつつあります。今後も一斉メールの配信頻度は下がり、施策のほとんどがOne To Oneメールになっていくと推測できます。
メール配信を始めるなら、個人に最適化しやすいMAツールを選ぶことを強くおすすめします。MAツールにおいても、一斉配信は可能です。まずは、シンプルなメルマガから開始して、徐々にOne To Oneメールに切り替えていきましょう。
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映像コンテンツプロバイダー・化粧品メーカーECでのWebディレクション・マーケティング担当を経て、コンサルタントに。20社以上のオウンドメディア・コンテンツの企画・戦略設計を行った経験を持つコンテンツマーケティング専門家。2018年5月に独立。検索ユーザーに寄り添うコンテンツ設計を得意とする。