【参考になる】コンテンツマーケティングの事例を7つ解説します

白砂ゆき子 (A-can(エイカン) Webマーケティング・コンサルタント)

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集客だけではなく、見込顧客の育成やCRMにも幅広く実施されるコンテンツマーケティング。各社さまざまな施策を行っています。戦略や細かい手法は読み取れませんが、ユーザーとしてコンテンツに触れることで、ターゲットとシナリオが見えることがあります。ここでは筆者が「面白い」と感じた、とても参考になるコンテンツマーケティングの事例を7つ解説します。「コンテンツマーケティングとは」と合わせてお読みください。

コンテンツマーケティングの事例TOP

1)会計ソフトfreeeの『SEOコンテンツ×メール』

筆者も利用している会計ソフトのfreee。その存在は以前から知っていましたが、出会いは突然で、そして必然でした。freeeは見事なシナリオ設計によって、開業時のインターネットユーザーを魅力的な製品へと誘導しています。

ターゲット コンテンツ種別 配信手法
・新規見込顧客

・テキストWebページ
・ホワイトペーパー
・メール×Webページ

・SEO
・メール

開業するときは「開業届」というものを税務署に提出するところから始まります。その際多くの方が「開業届」「開業届 書き方」などのキーワードで検索を行い、情報収集することでしょう。freeeはペイドサーチ(リスティング広告)・オーガニックサーチ(自然検索)どちらでも上位に表示されるようになっています。宣伝されたくない方はオーガニックサーチの「開業届とは」というコンテンツをクリックするのではないでしょうか。筆者も実際そうでした。

開業届で検索したときの検索結果画面※2019年10月時点のスクリーンショット

オーガニックサーチで1位のコンテンツは、開業届についてわかりやすく解説してくれています。記事熟読後に目に入るのは、「簡単な質問に答えて情報を入力するだけで、開業届を無料で作ることができる」というオファー。

開業freeeで簡単な質問に答えて情報を入力するだけで、開業届を無料で作ることができる画面

図でわかりやすく解説してくれているため、これなら簡単!と多くの人が無料の「開業freee」に登録することになると思います。この「開業の入り口」をしっかり押さえるコンテンツマーケティングがとても素晴らしいです。登録後は丁寧なメールマーケティングを行っています。このタイミングでは営業色の強いステップメールを送ってしまいがちですが、freeeは淡々とユーザーに必要な情報送ってくれます(メール下部には有料版へのオファーがあります)。

freeeからのメールの内容「開業ガイド vol.1『開業届を出す大きなメリットとは?』」※筆者が2018年開業時に受け取ったfreeeからのメール、Subjectは「開業ガイド vol.1『開業届を出す大きなメリットとは?』」

筆者は有料版を契約するまで、一度も「売り込みされた感」を感じることはありませんでした。検索エンジンとコンテンツのランディングページ、そして「無料の開業届」という最強のホワイトペーパーからのメールマーケティング、すべてが美しいシナリオで設計されていました。

2)ドクターシーラボ紙媒体『シーラバー』『健康通信』

コンテンツマーケティングはデジタルだけではありません。紙媒体で行うコンテンツマーケティングで印象の良い例はドクターシーラボの会報誌です。

ターゲット コンテンツ種別 配信手法
・既存顧客 ・雑誌(紙媒体) ・郵送DM

ドクターシーラボの電話通販・Eコマースなどで商品を購入すると毎月「会報誌」である「シーラバー」と「健康通信」が送られてきます。ただの「カタログ」だったら、商品を買う気がない場合、未開封のままゴミ箱へ入れてしまいます。しかし、この会報誌は開封し読んでもらうための特集が充実しています。

シーラバーと健康通信の表紙※出典:シーラバー・健康通信Web版

季節や流行に合わせた美容や健康情報が掲載されていますが、その内容は雑誌として販売してもよいレベルのものばかり。読みごたえのある内容になっています。

シーラバーの内容事例※出典:シーラバー・健康通信Web版

特集されている内容は、製品の原料や成分となるもの。読者の知識力を上げることが、商品の購買に結びつくようになっています。

3)サイボウズのオウンドメディア『サイボウズ式』

オウンドメディア運営者で知らない人はいない、というほどその実力は折り紙つき。サイボウズのオウンドメディア「サイボウズ式」は圧倒的な存在感で、幅広いインターネットユーザーから愛されています。

オウンドメディアサイボウズ式のTOP画像

サイボウズはサイボウズ Officeやkintoneなどのグループウェアメーカーです。サイボウズはオウンドメディアが流行となる2014年ごろよりだいぶ前の、2012年から「サイボウズ式」を運用しています。多くの記事が配信されていますが、自社製品を勧めるものではなく、一つの中立的なメディアとして記事づくりをされていることがよくわかります。

ターゲット コンテンツ種別 配信手法
・新規~ロイヤル ・テキスト ・SNS
・SEO

サイボウズ式の記事は、SNSの口コミで広がるバズ系コンテンツが多いイメージですが、ahrefsの分析から30万弱のオーガニックセッションがあることが推測できます。働き方や人事に関するキーワードで上位表示しているものが見つかりました。「週休3日」というサイボウズらしいキーワードで上位表示していることも興味深いですね。

2019年10月時点のahrefsのサイボウズ式の流入予想※2019年10月時点のahrefsによる計測

サイボウズ式の編集部は、自由な働き方しながら楽しく自由にメディアを運営することで、サイボウズがツールや制度をもって取り組む「多様な働き方」や、サイボウズの価値観を周知させることに大きく貢献していると感じます。また、社内の「人」をうまく読者に伝えることで、今難しいと言われる若年層の採用にも貢献しているのではないでしょうか?

参考記事:

自由だから成果が出る──サイボウズ式編集長に聞く、「楽しさ重視」のメディア運営術
https://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m005328.html

「青野さん、取材やTwitterばかりで仕事できてるんですか?」と聞いてみたら、マネジャーが本当にすべきことが見えてきた
https://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m005405.html

サイボウズ式が様々な情報を発信していることで、「サイボウズの社風を知っている」「サイボウズの事業を知っている」「サイボウズが目指していることを知っている」人が増加していることは間違いありません。

4)AWSのコミュニティ『JAWS-UG』

AWS(Amazon Web Service)はAmazonが提供するクラウドサービス。AWSは魅力的で理にかなったコミュニティマーケティングを実施しています。AWSの日本コミュニティ「JAWS-UG」を通じて発信されるコンテンツは「勉強会」「懇親会」「ブログやSNSでの情報発信」です。

ターゲット コンテンツ種別 配信手法
・導入~ ・イベント
・主にテキスト
・オフライン
・Facebook、Twitter

コミュニティのWebサイトを確認すると、東京だけではなく大阪、名古屋、札幌など主要都市で多くの勉強会が開催されていることがわかります。勉強会はAWSからの最新情報や事例・使い方など。大型イベントから小規模なセグメント別の「もくもく会」なるものまで、自分が学びたいことを軸にイベントを選べるようになっています。

JAWS-UGのTOP画像

JAWS-UGの素晴らしいところは、ユーザーからのハッシュタグ#jawsugのSNS発信が活発なところ。活発にする仕掛けはちゃんとあってイベント会場にて参加者にさまざまな方法でアウトプットを呼びかけているのです。コンテンツの発信は今やAWSという企業側からだけではなく、AWSユーザーからの発信も増え、まさに「お客様がお客様を呼んでくださる」仕組みが構築されています。年1度のJAWS DAYSの来場者は2000名近くのエントリーがあるそうです。コミュニティは「コンテンツの自動生成ツール」という側面もあると感じます。

※参考文献:ビジネスも人生もグロースさせる コミュニティマーケティング(小島英揮氏)

5)北欧、暮らしの道具店の短編Webドラマ『青葉家のテーブル』

「北欧、暮らしの道具店」は株式会社クラシコムが運営する日用雑貨・インテリア雑貨のECサイトです。月間UUは約150万という、根強いファンの多い人気ショップと言えましょう。そんな「北欧、暮らしの道具店」がYouTubeで配信しているWebドラマが「青葉家のテーブル」です。

ターゲット コンテンツ種別 配信手法
・既存~ロイヤル ・動画 ・YouTube

ドラマ制作の目的は「大切な人たち(お客さま)の心に触れられるような映像作品をつくろう」ということだそうですが、逆にこのドラマから「北欧、暮らしの道具店」を知る方もいらっしゃると思います。ドラマにはキッチンや食卓が頻繁に出てきますが、そこにある雑貨に興味を持って欲しい…という短絡的なものではなく、世界観を伝えることや共感といった目的であることがよくわかります。

2018年4月26日に公開された第1話「トモダチのつくりかた」は110万回以上再生(2019年10月現在)され、第4話はTrueView インストリーム広告として配信し、日本国内で話題になった動画広告を表彰する「Japan YouTube Ads Leaderboard」TOP10に選出されています。
このドラマが表現する世界が好きな人にただ観てもらえればよいと願って作られたドラマですが、観ているとなぜだか「北欧、暮らしの道具店」の雑貨が欲しくなるとても不思議なコンテンツです。

6)ハーゲンダッツジャパンのInstagram

Instagramは写真による表現と共感を目的としたSNSなので、向き・不向きのあるツールだと言えます。特にBtoBとは相性がよくないと言われています。しかし、Instagramを使ったマーケティングはブランディングだけでなく、コンテンツの配信やコミュニケーションの場として活用することも可能です。多くの企業がInstagramをカタログのような使い方をしている中、ハーゲンダッツジャパンは、ちょっと面白いコンテンツを配信しています。
ハーゲンダッツジャパンのInstagramは2019年10月現在、約22万人のフォローを得ていて、人気アカウントと言えます。

ターゲット コンテンツ種別 配信手法
・新規~ロイヤル ・写真
・テキスト
・Instagram

ハーゲンダッツのコンテンツが面白いのは、新フレーバー発売やパッケージの変更などの際に行う、写真や動画を使ったクイズ。

ハーゲンダッツジャパンInstagramクイズ投稿例

美しい柄の画像をクリックすると動画が再生されて、一部商品の写真が見えるギミックに「パッケージが新しくなりました!このデザイン何のフレーバーでしょうか?」といういたずらっぽい口調の投稿。思わず再生したくなりませんか?実際、この動画は15万回以上も再生されています。また、写真の一部を切り取ったものを少しずつ投稿していき、タイムライン上でパズルのように写真が完成していく手法もお見事。

ハーゲンダッツジャパンInstagramのタイムラインパズルの例

こちらにも「どんなフレーバーでしょう?“赤い実○○○○”と言えば?」というクイズがついています。
新商品や新パッケージへの期待を煽りながら、クイズ形式でコミュニケーションを活発にする上手なコンテンツマーケティングと言えるでしょう。商品と写真、Instagramの仕組みを活用した面白い表現方法です。

7)マーケティングオートメーションSATORI『マーケティングブログ』

このブログを運営しているSATORIもコンテンツマーケティングを活用したコミュニケーションをしっかり設計し、運用しています。

ターゲット コンテンツ種別 配信手法
・新規~既存 ・主にテキスト ・SNS、SEO
・広告
・メルマガ

SATORIではオウンドメディアにマーケティング基礎知識やマーケティングオートメーションに関するノウハウ記事を定期的に投稿しながら、いくつかのホワイトペーパーやセミナー・イベントを用意し、見込顧客や顧客とのコミュニケーションに活用しています。

SATORIマーケティングブログのTOP画像

SATORIの運用で特徴的なのが、見込顧客を「そのうち客」「いますぐ客」と分類し、その分類に合わせたコンテンツと接触方法を、シナリオを描いて実施していることです。

コンテンツマーケティングのKPI設定例

「そのうち客」が「いますぐ客」に変化していく様を、マーケティングオートメーションを活用して把握し、そのタイミングでリターゲティング広告などを使ってキラーコンテンツを配信します。(※キラーコンテンツとは

SATORIリターゲティング広告のクリエイティブの事例

そして、そのキラーコンテンツを閲覧しているユーザーにだけ、架電するという手法をとっています。そうすることで実現できたことは2つあります。無駄な営業電話の削減と、架電に対する商談化率を格段にアップできたこと。キラーコンテンツを閲覧した見込顧客の商談化率は、見込顧客全体の商談化率に対して約2倍という結果が出ています。
SATORIの施策については「コンテンツマーケティングのKPI」でも詳しく解説していますので、そちらも合わせてお読みください。

いかがでしたでしょうか?ここまでご紹介したコンテンツマーケティングの施策すべてに言えることが「積極的な売り込み活動を行っていない」ということです。今はインターネットユーザーが手軽に情報を入手し、そして発信できる時代です。過度な売り込み活動は売上に貢献しないばかりか、悪い評判をネット上に書かれてしまい、むしろマイナスの効果にしかなりません。コンテンツマーケティングは相手に「売り込みされている」と思われないまま、製品や企業に共感して好きになってもらう手法です。コンバージョンに執着せず、相手の気持ちを捉えた心理戦を淡々と実行できた者だけが成功を手にする、我慢比べのような施策と言えましょう。しかし、広告や派手な売り込みが嫌われる時代、このような難しい施策に活路を見出すしか生き残るすべはないのです。成功事例から多くを学び、自社のシナリオ設計のスパイスとして活かしていきましょう。

PROFILE

白砂ゆき子

A-can(エイカン) Webマーケティング・コンサルタント


映像コンテンツプロバイダー・化粧品メーカーECでのWebディレクション・マーケティング担当を経て、コンサルタントに。20社以上のオウンドメディア・コンテンツの企画・戦略設計を行った経験を持つコンテンツマーケティング専門家。2018年5月に独立。検索ユーザーに寄り添うコンテンツ設計を得意とする。
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