B2Bコンテンツマーケティングの事例と設計【2018年最新情報あり】

山内 悠太(やまうち ゆうた) (合同会社つむぎマーケティング)

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B2B企業のブログや動画、オウンドメディア、そしてメールコンテンツなどコンテンツマーケティングが盛り上がりを見せています。設計の手順から、B2Bならではの注目すべき最新事例まで詳しく解説します。

ルーペ

B2Bコンテンツマーケティングが重要となっている背景

なぜB2Bの取引において、コンテンツマーケティングへの関心が集まっているでしょうか?

インターネットが普及する前の商習慣を、思い浮かべてみましょう。
製品・サービスの導入を検討する企業は、営業マンに説明を受けたり、カタログを取り寄せたりしなければ、適切な情報を得られませんでした。

そのため、まずは出入りの営業マンに話を聞いたり、ダイレクトメールを送ってくる企業に問合せたりすることが多かったでしょう。

ところが、インターネットの普及によって、B2CだけでなくB2Bでも、買い手と売り手の情報格差がなくなります。
BtoB取引の買い手側の担当者の行動を調査した、次のデータをご覧ください。

  • BtoB取引において、92%の企業は製品/サービスの購入前に ネットリサーチを行う。(※1)
  • BtoB取引の情報源は、営業担当者30%に対して、企業Webサイトは50%(※2)
  • BtoB企業は買い手企業が購買意思決定プロセスの60%をサプライヤーに連絡する前に済ませている。(※1)

つまり、営業マンと対面で商談をする前に、見込み客は既に多くの情報を収集している、あるいは既に購入する製品・サービスを決めてしまっている場合もあるのです。

この傾向はさらに進み、「2020年までに、人々は企業との取引の85%を対面のやり取りなしで 行うようになる。」(※1)という予測も出ています。

このような時代の流れのなかで注目されているのは、製品・サービスの導入検討にあたって見込み客が必要とする情報を、自社のコンテンツとして提供するという方法、つまりコンテンツマーケティングです。
非対面チャネルを使ってコンテンツを見込み客に提供して、有効商談を創出することが求められているのです。

※1 出典:Retailingtoday、E-consultancy、Acquity Group、CEB、ガートナー より
※2 出典:TRIBECK, Sirius Decisions, Marketo

B2Bのコンテンツ設計の手順とは?

このような背景もあって、多くの企業がコンテンツマーケティングに取り組み始めています。
ところが、すぐに成果を挙げている企業ばかりではありません。

私が企業の担当者に話を伺ったときに出てきたのは、「どうやってコンテンツを作ればいいのか、分からない」という悩み。 その方法について、整理してみました。

ペルソナ設定

はじめに、ターゲットとなる見込み客について、イメージを形づくりましょう。

  • どのような業種、どの程度の売上規模の企業が多いのか?
  • 担当者は、何の部署・役職にいるのか?
  • どのような課題や悩みを抱えているのか?
  • 何についての情報を求めているのか?
  • 製品・サービスを選ぶときに、何と比較するのか?どのような基準で選ぶのか?

既存クライアントの傾向を営業担当者にヒアリングしたり、見込み客からの問合せデータを調べたりなどして、ターゲットとする見込み客の傾向を洗い出しましょう。

バイヤーズジャーニー/顧客ステータスの定義(シナリオ設計)

次のステップは、見込み客の意思決定プロセスを把握することです。

見込み客が製品の導入を決めるまでには、どのように候補先の企業と接触するのか?
どのような手段で情報を収集するのか?
どのような決裁ルートをたどるのか?

これらのプロセスを、「バイヤーズジャーニー」(=購入に至るまでの道のり)として可視化します。

バイヤージャーニー

なぜ、バイヤーズジャーニーを定義するのが有効なのでしょうか?
それは、見込み客の検討ステージごとに、必要な情報が異なるからです。

検討段階の進んでいる見込み客にとっては、製品・サービスに直接に関係する情報が参考になるでしょう。
逆に、まだ検討が進んでいない情報収集の段階の見込み客にとっては、製品・サービスについての情報は魅力的ではないかもしれません。

コンテンツの切り分けの例

業種 具体的に検討している段階 情報収集の段階
広告代理店 広告料金のモデルケース、支援企業の成功事例、幹部社員のプロフィールなど 費用対効果を上げるためのノウハウ、広告テクノロジーについての説明記事、マーケティング担当者へのインタビューなど
教育研修企業 導入企業のケーススタディ、研修のメソッド、育成する人材についての理念など 研修にまつわる専門用語の解説、海外で主流になっているトレンド、人事部へのアンケートデータなど

このように、見込み客の検討段階に応じて、どのような情報が求められるか?を考えましょう。

顧客ステータスに合わせたコンテンツ設計

顧客ステータスごとに情報ニーズが見えてきたら、具体的なテーマの洗い出しに取りかかりましょう。
この段階で調べておきたいことを1つ挙げるならば、検索ユーザーのニーズです。

検索エンジンからの流入が多いほど、安定的なアクセスが期待できます。
仮に検索エンジンからの流入をメインには考えていない場合でも、Googleの公開しているデータで、「どのキーワード(テーマ)に、どの程度の検索数(ニーズ)があるのか?」が定量的に分かるので、参考になるでしょう。

具体的には、GoogleAdwordsの提供している「キーワードプランナー」にアクセスしてみましょう。 (GoogleAdwordsのアカウントを持っている場合は、使用できます)
keywordplanner
見込み客にニーズがありそうなキーワード候補のなかで、「検索ボリュームが多いキーワード」と「自社が提供できるコンテンツ」を見比べながら、優先順位を決めていくとよいでしょう。

KPI設定

今度は、KPIの設定です。
KPIというと、記事の「アクセス数」(PVやセッション数)を思い浮かべる方が多いと思います。

もちろんアクセス数も重要な指標ですが、仮にアクセスは集まっても商談や受注に貢献しなければ、成果になりません。

もしコンテンツマーケティングで求められるのが「新規リードの獲得」だった場合、分かりやすいのが、CPAへの換算でしょう。

KPI設定の例

KPI 内容
費用 記事の制作や集客にかかった費用 5,000,000円
獲得リード数 コンテンツから発生した資料請求・問合せなど 1,000件
CPA 1リードあたりの獲得単価 5,000円
有効商談数 コンテンツから発生した商談 100件
商談獲得単価 1商談あたりの獲得費用 50,000円
コンバージョン率 リード獲得数÷セッション数 0.5%
セッション数 Webサイトへのユーザーの訪問回数 200,000セッション

このように、商談から逆算してKPIを設定して、一定期間(たとえば1年間)での費用対効果を、仮にでも可視化します。
そうすれば、広告やDMなど他の集客手段とも比べやすくなり、幹部への説明もスムーズにできるでしょう。

これらのKPIを設定したうえで、リード数を達成するために必要なセッション数や、コンバージョン率といった、Web上のKPIに落とし込んでいきましょう。

PDCAを回す

このように設定した目標を達成するために、PDCAを回していきます。

まずはKPIが達成されているのか?を検証していきましょう。そのうえで、改善策を考えるときには、先ほど説明したKPIをブレイクダウンして、より具体的な指標に落として見ていきましょう。

目標の獲得リード数を達成するために、どのコンテンツが貢献しているか?を見ていきます。

セッション数が多いのは、どのコンテンツか?
コンバージョンに貢献しているのは、どのコンテンツか?

これらを、たとえばGoogleAnalyticsでチェックします。

大量のアクセスを集めているページや、アクセスは多くなくてもコンバージョンの起点となっているページがあれば、「他の記事も、そのページの構成にならって修正できないか?」あるいは、「同じようなテーマで、新しく別の記事を作れないか?」など、改善策を企画していきます。

なお、コンバージョンをWeb上での最終的な成果指標とした場合は、サイトによってはコンバージョンの件数が少ないために、PDCAを上手く回せないといった場合も出てくるはずです。
その場合は、「滞在時間」や「読了率」、「直帰率」や「離脱率」、「製品ページへの送客数」など、中間指標を用意して検討することをお薦めします。

このようにPDCAを精緻に回せば回すほど、その検証・集計をすべて手作業で行うと多大な工数がかかってしまいます。 たとえばアクセス解析も、Googleアナリティクスでたいていのことはできますが、コンテンツの貢献度合いをはかるためには、専用のツールを使うとよいでしょう。

また、獲得したリードが商談や受注にどれだけ貢献しているか?をはかるためには、マーケティングオートメーションツールの導入も合わせて検討するのをお薦めします。
ちなみに、このサイトで紹介している「SATORI」も、B2B企業でよく使われているマーケティングオートメーションツールなので、よろしければ資料をダウンロードしてみてください。

新規リード獲得・売上アップに結びつけている、米国の事例

BtoB企業でコンテンツマーケティングの活用が進んでいる米国では、成功事例が数多く生まれています。無料ebookや事例集などのオファーを用意して、ダウンロードしたリストを獲得。
単にアクセスを集めるだけではなく、新規リードの獲得や新規売上アップに結びつけている事例も、多くあります。

以下の記事から、いくつか成功事例を抜粋してご紹介しましょう。
(出典:”20 B2B Content Marketing Examples and Case Studies for 2015”

事例1:EMC

企業向けに情報管理製品を販売する同社は、ITのプロである購買担当者が、製品を提供するパートナー企業とのギャップを解消するために、コンテンツを作成。

  • ページビュー:55%アップ
  • リード:100%アップ
  • 売上:1200万ドル

事例2:Experian Marketing Services

デジタル・マーケティングの展望をガイドする、長編のレポートを制作。
ダウンロードできるようにして、オプトインを取得したリストにアプローチ。
それを起点に、リード獲得を狙いました。

  • ダウンロード:8,978件
  • オプトイン取得:4,154件
  • リード:359件

事例3:Unitrends

データ復旧サービスのホワイトペーパーを発行。
ハローウィンの時期に合わせて、ホラーをテーマとしたゲーム性を取り入れて、リード獲得・新規売上のアップを狙いました。

  • リード:300件(そのうち185件が新規)
  • 売上: 32,000ドル

事例4:Marketo

ソーシャルメディアの活用初心者をターゲットにして、ソーシャルメディア戦略をどのように描けばよいのか?のサンプルプランを用意。
それを起点に、リードの獲得・新規売上のアップを狙いました。

  • ダウンロード:40,791件
  • 新規営業の機会:1,664件
  • 売上:381,671ドル

2016年B2Bコンテンツマーケティングの展望

同じく米国の記事で面白いデータを見つけたので、最後にご紹介します。
B2B企業へのアンケート調査からの抜粋です。
(出典:B2B CONTENT MARKETING 2016 Benchmarks, Budgets, and Trends – North America

コンテンツマーケティングを活用している企業は、88%

b2bcont-g1

多くの企業が、コンテンツマーケティングに取り組んでいることが分かります。 ただし、「効果的に取り組めている」と答えた企業は、全体の30%に過ぎません。

最も重要な指標について、31%が「営業用のリードの質」と回答

b2bcont-g2

2位に続くのが「営業(セールス)」で23%。一方、「コンバージョン率を高める」は9%、「営業用のリードの量」は7%と、それぞれ相対的に低くなっています。
単にリード数を増やすだけでなく、商談や受注に結びつくリードの供給が求められていることが読み取れます。

コンテンツマーケティングにかけている予算の割合は、平均で28%

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50%以上の予算を投入する企業も2割弱出てきている一方で、ほとんどの企業では主力のチャネルとはなっていないと、予算だけを見ると推測されます。
ただし、51%の企業が「今後予算を増やす予定」と回答していることもあり、先ほど述べたような費用対効果が明確になれば、より伸びていくのかもしれません。

興味深かったのは、コンテンツマーケティングに効果的に取り組めているという企業ほど、以下の数字が高かったことでした。

  • コンテンツマーケティングの戦略を資料にまとめている
  • 編集方針(ミッションステートメント)を文書化している
  • コンテンツマーケティングの成功イメージが、組織内で明確になっている
  • 日次または週次でミーティングをしている

「戦略を定める」「組織内で共有する」など基本的なことが、思ったよりも大事なのかもしれません。
皆さんの会社でも、しっかりと戦略が定められているか?組織内で共有されているか?もう一度見直してみてはいかがでしょうか?

2018年B2Bコンテンツマーケティングの展望

先述のレポートで、2018年度版が発表されていました。たった2年ですが、どのような変化があったのかを確認してみました。

(出典:B2B CONTENT MARKETING 2018 Benchmarks, Budgets, and Trends – North America

コンテンツマーケティングを活用している企業はさらに増え、91%

取り組んでいない企業が1割を切ってきており、ほぼすべての企業がコンテンツマーケティングに取り組んでいるということがわかります。また、2年前は「効果的に取り組めているかどうか」という調査項目がありましたが、今回の調査ではその調査項目自体が無くなっていました。

今後12か月でコンテンツマーケティングの予算は「増やす」が38%

また、コンテンツマーケティングにかけている予算の割合は26%だが、成功企業は40%を割いているとのことです。真剣に取り組む企業ほど多くの成果を手にできるということなのかもしれません。
(2018年6月 SATORI株式会社追記)

PROFILE

山内 悠太(やまうち ゆうた)

合同会社つむぎマーケティング

2004年に東京大学教養学部を卒業。新卒では、大手電機メーカーに新卒で入社して広報・CSRを担当。その後広告代理店に転職して、主に化粧品や健康食品など単品リピート通販会社の広告制作やCRM設計等、ダイレクトマーケティングの支援を手がけた。新規クライアント集客も担当して、リード(問合せ・資料請求など)の獲得数を約1年半で約3倍に増加させた。
2011年8月、認定NPO法人カタリバに参画。広報・ファンドレイジング部の責任者として、Webサイトの運営や広告展開、マスコミ向け広報、寄付や助成金による資金調達等を担い、就任当初は約2千万円だった寄付収入が約8倍に成長するのを牽引した。14年9月から独立して、企業やNPOのマーケティングを支援。合同会社つむぎマーケティング代表。
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