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2020.04.14

【図解】セールス・イネーブルメントとは?事例で具体的な営業最適化を学ぼう

セールス・イネーブルメントとは、営業活動において継続的に成果を挙げていくことを目的とした、営業組織の強化・改善ための総括的な取り組みです。「営業」というと、顧客に電話をかけてアポイントを取ったり、顧客先を訪問して商品やサービスの提案を行ったりする活動にフォーカスが当てられがちですが、その背後には営業担当者の教育・研修、営業ツールの開発、営業プロセスの設計・管理といった、様々な活動が控えています。

従来、複数の部署に分散して取り組まれていたこうした活動を俯瞰的に捉え、より成果があがるよう統合していこうというのが、セールス・イネーブルメントが目指すゴールです。
この記事では、昨今注目を浴びているセールス・イネーブルメントについて、得られる効果や具体的な取り組みの内容、セールス・イネーブルメントで活用されるツールなどについて説明した上で、SATORIにおけるセールス・イネーブルメントの取り組みをご紹介します。

セールス・イネーブルメントの具体的な取り組みとは?

セールス・イネーブルメントとはなにかを解説する図

では、セールス・イネーブルメントという名のもとに、具体的にどのような取り組みが行われているのでしょう?冒頭でも述べたように、セールス・イネーブルメントとは「営業組織の強化・改善」を行うための総括的な取り組みです。したがって、理論上はこの目的に合致するあらゆる活動をセールス・イネーブルメントの取り組みの一貫として定義することが可能です。
営業担当者のスキル向上を目的として行う研修や教育、営業時に使用する会社案内や製品カタログ、Webサイトコンテンツといった営業ツールの開発などもそうですし、営業活動の前段として行われるマーケティング活動も視野に入れることができるでしょう。
重要なのは、こうした活動を「別々の独立した活動」ではなく「営業組織の強化・改善」という目的につながる一連の活動として統合し、全体を最適化していくという点で、これこそがセールス・イネーブルメントの主要なコンセプトだといってよいでしょう。

たとえば、営業ツールの拡充や教育、営業プロセスの整備といった取り組みを通じて個人の能力に依存しがちな営業活動の属人性を取り除くことで、組織としての営業力を強化することができます。ここで登場した営業ツールの開発、教育、営業プロセスの整備といった活動は、従来はそれぞれ異なる部署が担当していましたが、これらを統合管理して最適化していくことで、より高い成果を狙うことが可能となります。
この際に重要とされているのが、施策の成果を数値で評価し、PDCAを回して継続的に改善に取り組んでいくという姿勢です。こうした取り組みを繰り返していくことで、組織としての営業力を高めていくことができるのです。
セールス・イネーブルメントに取り組む際は、こうした活動を統括する専門の部署を設けると効果的だと言われていますが、状況により、関連部署からそれぞれ担当者を集めてタスクフォース的な組織として運営するような方法も考えられます。

セールス・イネーブルメント ツールでできること

セールス・イネーブルメントに役立つセールス・コンテンツ活用のイメージ

セールス・イネーブルメントという概念の登場と前後して、同じく注目を浴びている言葉に「セールス・テック(SalesTech)」というものがあります。これは、ITなどのテクノロジーの力を活用して営業活動の効率化・成果向上を狙おうという考え方で、SFA(Sales Force Automation)やCRM(Customer Relationship Management:顧客関係性管理)、MA(Marketing Automation)といったツールを活用し、営業活動の可視化や効率化、営業担当社同士の連携強化などに取り組む組織が増えてきています。
セールス・イネーブルメントの文脈の中でも、当然こうしたツールの活用は重視されています。
2020年2月現在、セールス・イネーブルメント専用のツールはまだあまり一般に流通していませんが、様々なセールス・テックをうまく組み合わせることで、セールス・イネーブルメントの取り組みを効果的に進めていくことができるでしょう。

1)セールス・コンテンツの充実・共有

たとえば、デジタルコンテンツの作成・更新を支援し、作成したコンテンツの管理を行うツールを活用することで、セールス・コンテンツを効率よく管理することができます。
営業に用いる提案書などの資料はともすれば個々の営業担当者がその都度作成して使用するケースもありますが、コンテンツの開発・成果測定・改善といった活動に組織的に取り組み、それを全営業担当者に共有することで、営業活動の効率化・効果向上が期待できます。

2)教育・トレーニングプラン

営業担当者の教育はOJTに頼りがちなところがありますが、OJTの成果は現場を統括するマネージャーの力量に依存する部分が少なくありません。営業現場で得られるノウハウを広く収集し、収集したノウハウをもとに教育・トレーニングプランを開発・整備することで、営業担当者の育成にテコ入れをすることができます。

3)SFA/CRM/MAとの連携

SFAとCRMは、近年の営業の現場において、もはやなくてはならないツールとなりつつあります。SFAを使えば案件の進捗度合いを可視化することができるとともに、営業担当者間の密な連携を行うことも可能となります。また、CRMを使えば見込み顧客・既存顧客とのやり取りの履歴を管理することができますし、MAを使えば見込み顧客の成熟度を可視化して把握することも可能です。
従来、CRMやMAはマーケティング部門、SFAは営業部門で別々に運用されるのが一般的でしたが、セールス・イネーブルメントの取り組みのもとでこれらを統括し、リードジェネレーションから契約までを全体を一つの流れとして管理・最適化していくことができるでしょう。

セールス・イネーブルメントが注目される背景

セールスイネーブルメントの注目度の説明

セールス・イネーブルメントの概念は2010年代の初期に登場し、右肩上がりにその注目度を挙げてきています。CSO Insightsが2019年1月に発表したレポート(Sales Enablement Grows Up)によると、2013年から2016年までほぼ横ばいであったセールス・イネーブルメントの認知度が、2017年になってほぼ2倍に拡大し、2018年もほぼ割合で推移しています(下記グラフ参照)。

では、なぜ今、セールス・イネーブルメントが注目されているのでしょう?
様々な理由が考えられますが、一つには、WebマーケティングやMAの普及によってマーケティング部門が獲得するリードの質と量が格段に向上してきているという点を挙げることができるでしょう。つまり、マーケティング部門からは良質なリードが数多く連携されてくるのに、営業部門の力不足によりそれを捌ききれないという状況が顕在化しつつあるのです。
せっかくよいリードを多く集めても、それを受注につなげることができなければ意味がなく、これが営業組織の強化・向上が叫ばれる一つの理由となっています。
欧米をはじめとした世界に目を向けると、既に60%以上の企業や組織がセールス・イネーブルメント専用の人材や体制、プログラムなどを整備していると言われています。この流れは遠からず日本にも流れ込んでくるでしょう。
出典:2018Sales Enablement Grows Up:4th Annual Sales Enablement Report(MILLER HEIMAN GROUP.)

【事例】セールス・イネーブルメント、SATORIの取り組みとは

SATORIでは2019年夏頃に「営業勝ちパターンプロジェクト」と銘打って、営業活動にテコ入れをする活動を開始しました。この活動の中で、営業プロセスの見直しや営業時に使用するコンテンツの最適化に取り組んでいます。
営業プロセスの見直しとしては、過去の営業履歴の分析から、初回と2回目の二段階の営業訪問で契約を獲得するというパターンを打ち立て、実践して成果を観察しています。
セールス・イネーブルメントでは営業用コンテンツの整備も重要なポイントですが、現時点では初回訪問時のヒアリング項目一覧を整備している程度で、営業活動に制約をかけてしまうようなコンテンツの画一化は敢えて行っていません。
セールス・イネーブルメントのゴールの一つとして、営業活動の属人化を排除し、誰でも同じような営業ができる素地を整えるということがありますが、これをはじめからやろうとすると、どうしても熟練営業担当者からの反発があります。反発のあるところを無理に推し進めても効果は薄いので、まずは抵抗の少ないところから進めるというアプローチを取りました。
教育という観点では、現時点では外部教育機関による研修とOJTが中心になっています。OJTでは、営業プロセス見直しと平行して営業担当者のスキル別に顧客を割り振るという仕組みを作ることで効果の向上と全体最適化につなげようとしています。
具体的にいうと、SATORIではインサイドセールスが獲得したアポイントのランクを受注確度によってA~Fの6段階に分類していますが、受注確度の高いA~Cは経験豊富な営業担当者が、D~Fのランクを経験の浅い担当者が担当するという棲み分けを試しています。
ランクD~Fは現時点での受注確度が低いため、「まずはSATORIを知ってもらう」という比較的軽いスタンスで営業をかけることができますし、その結果受注に結びつかなくても、大きなロスとはならないという考え方です。
また、2回目の訪問時には経験豊富な営業担当者に新人担当者が同行し、クロージングの手法を実地で学ぶ機会を作っています。
また、インサイドセールスがつけたランクと営業訪問後の結果を可視化することで、インサイドセールスのランク判断スキルを逆評価するという試みも行っています。これにより、インサイドセールスとフィールド・セールスのスキルを相互に底上げしていくような流れを作ろうとしています。

セールス・イネーブルメントを学ぶ、おすすめの書籍

最後に、セールス・イネーブルメントを学ぶのにおすすめの書籍を2冊ご紹介します。

営業力を強化する世界最新のプラットフォーム セールス・イネーブルメント

バイロン・マシューズ 他(著)/ISBN:4877718052
URL:https://www.amazon.co.jp/dp/B07MZZLYN6
書籍 「営業力を強化する世界最新のプラットフォーム セールス・イネーブルメント」
セールス・イネーブルメントの先鋒ともいうべきミラー・ハイマングループの元CEOであるバイロン・マシューズ氏を中心とした数名の著者により執筆された書籍。ミラー・ハイマングループの手法を具体的な事例を添えて解説した、セールス・イネーブルメントの実践的なガイドブックです。

セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方

山下貴宏(著)/ISBN:4761274581
URL:https://www.amazon.co.jp/dp/B082VW6554/
書籍「セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方」
セールスフォース・ドットコム社にてセールス・イネーブルメントを主導した著者による書籍。営業担当者の研修・教育に重きをおいた内容で、具体的な事例が説明されています。
以上、この記事ではセールス・イネーブルメントについて解説しました。日本ではまだ「導入が進みつつある」という段階ですが、営業力の強化を課題と感じる企業は多く、今後徐々に具体的な事例が登場してくることと思われます。

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