「カスタマーサクセス」と「カスタマーサービス」の違いとは?

鈴木あゆみ (デジタルマーケティング・コンサルタント)

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カスタマーサクセスという職種が日本でも一般的になりつつある今、「カスタマーサクセスとカスタマーサービス(カスタマーサポート)の違いがよく分からない」あるいは、「カスタマーサクセスに期待される役割がよく分からない」とった声を耳にすることが多々あります。そこで今回は、カスタマーサクセスの定義や役割・歴史、そしてもっとも多い質問の一つである「カスタマーサクセスとカスタマーサービスの違い」について考えてみたいと思います。

カスタマーサクセス

Source: Gainsight, credit: www.gainsight.com

 

「カスタマーサクセス」とは~カスタマーサクセスに求められる役割

カスタマーサクセスの定義や解釈は、日本語のウェブサイトでも多数取り扱われるようになりました。一般的には、カスタマーサクセスという言葉の意味する通り、顧客を成功に導いてあげる職種であるという認識がなされているようです。ここでは、カスタマーサクセスのバイブルと言われる『Customer Success』の著者の1人、Nick Mehta氏の率いるGainsight社の解説をご紹介します。同社では、カスタマーサクセスの役割を以下のように説明しています。

カスタマーサクセスに求められる役割は、顧客が満足いく結果を得られるようにサポートすることです。顧客の満足度を高めるためには、人のリソース、適切なプロセス、そして十分なデータが必要であることは言うまでもありません。つまるところ、顧客が自社製品をいつ、どのような理由で、どのように実際に使用するのかを現時点で把握していないのであれば、まずは顧客が自社製品を上手く使用できるように導いてあげることです。

そしてカスタマーサクセスを上手く機能させるためには、以下の3つの要素が重要であるとしています。

(1)テクノロジーの活用
(2)顧客が自社製品を上手く活用できているか、データを駆使したモニタリングの実施
(3)成果主義プロセスの導入

この3つの要素を組み合わせてカスタマーサクセスを実施することにより、自社製品を使用する顧客やそれにより影響を受ける人たちに対し、率先して組織レベルでのアプローチができるようになり、製品を使用することへの満足度を長期的かつ継続的に高められるようになるとしています。

一方、『Customer Success』のもう一人の著者・Lincoln Murphy氏は、最初にカスタマーサクセスガイドを公開した2014年と比較し、現在はカスタマーサクセスの役割が大きく進化しているといいます。実際、2014年当初は、カスタマーサクセスに求められる役割は、既存顧客のリテンション(維持)が中心でした。それが現在では、カスタマーサクセスががサービス全体の成長を担う役割としても捉えられるように進化しています。

 

「カスタマーサクセス」の歴史と変遷~SaaSビジネス、サブスクリプションモデルとの関係性

今でこそ、カスタマーサクセスという職種が一般的に認知されるようになり、様々な業界で取り入れられるようになったものの、元来、カスタマーサクセスはSaaSビジネスに特化した職種でした。SaaS(サース:Software as a Service)は、かつてソフトウェア製品として提供されてサービスをインターネット上で提供するビジネスモデルであり、Google AppsやSalesforce、DropboxなどがSaaSビジネスの代表例として挙げられます。

そのビジネスモデルの特性上、SaaSではサブスクリプションモデルによる月額課金(あるいは年額課金)によって収益を上げているものが多数です。前回の記事、【2017年】サブスクリプションモデル時代のマーケティング戦略で紹介したZuora社が最たる事例です。サブスクリプションモデルにおいては、アップセル施策で既存顧客からの収益増加を狙う一方、チャーン(解約率)を減少させることが大切になります。というのも、新規顧客を獲得し続けることよりも、既存顧客からの収益増加を見込む方がはるかに容易であるためです。

カスタマーサクセスという職種を理解するには、SaaSビジネスの台頭→サブスクリプションモデルの導入→その結果として、カスタマーサクセスの重要性が高まるという構図を理解することが大切なのです。

カスタマーサービス

Source: Amazon, credit: www.amazon.co.jp

「カスタマーサクセス」と「カスタマーサービス」の違いは?

「カスタマーサクセスとカスタマーサービス(カスタマーサポート)の違いがよく分からない」といった声もよく聞きます。特に、これからカスタマーサクセス部門を立ち上げようとしている企業にとっては重要なポイントです。

Gainsight社の定義によると、カスタマーサクセスとカスタマーサービスの違いは、率先して顧客満足度を高める活動をするのか、受け身で顧客対応をするのかにあるとしています。より具体的には、顧客は通常トラブル・不都合が生じた際に、メールや電話で問い合わせをして問題解決を図ります。この対応がカスタマーサービスに求められる役割です。カスタマーサービスには、ケースバイケースで直ぐに対応することが求められます。

一方、カスタマーサクセスには、顧客情報の収集・分析に基づき、率先して顧客満足度を高めていく役割が期待されています。戦略的に顧客の経験価値を高めていくことが求められるのです。それに加え、カスタマーサクセスは、単に自社のビジネスの成功を目的とするのではなく、いかに真剣に顧客を成功に導けるか、顧客に真剣に向き合う姿勢が求められます。

カスタマーサクセスには、営業・他部署との連携も必須

先日のイベントレポートでは、ソーシャルメディアやコンテンツマーケティングの重要性が高まるにつれ、企業の広報担当者の業務範囲が拡大し、現在は広報担当者に他部署との調整業務を任されるようになっている事例をご紹介しました。カスタマーサクセスにおいても、広報と同様、他部署との連携が非常に重要視されるようになっています。

SATORIでも1年ほど前からカスタマーサクセス部門を強化していますが、営業やマーケティング部門とのコミュニケーションはもちろん、お客様からのリクエストにお答えするために、カスタマーサクセス担当者がエンジニアとも密にコミュニケーションをとるケースも増えています。そのため、カスタマーサクセスに求められる要件としては、コミュニケーションスキルや他の職種への理解・経験など多岐に渡ります。従来のカスタマーサポートとは比較にならないほど広範な業務領域を担当しているとも言えます。

SATORIマーケティングブログでは、マーケティング関連の業務を担当される方や、自社のカスタマーサクセスの立ち上げ・強化に取り組みたい方、カスタマーサクセスへの知見を深めていきたい方へ、有意義な情報を日々お届けしています!

参考文献

 ・Nick Mehta, Dan Steinman, and Lincoln Murphy. 2016. Customer Success: How Innovative Companies Are Reducing Churn and Growing Recurring Revenue. United States: Wiley.
・ Gainsight, The Essential Guide to Customer Success, 2017. [Online]. Available: https://www.gainsight.com/guides/the-essential-guide-to-customer-success/ [Accessed: 4- Sep- 2017]
・ Lincoln Murphy, Customer Success: The Definitive Guide 2017, 2017. [Online]. Available: http://sixteenventures.com/customer-success-definition [Accessed: 4- Sep- 2017]

PROFILE

鈴木あゆみ

デジタルマーケティング・コンサルタント


グリー株式会社、複数の外資系企業を経て、独立。海外企業におけるデジタルマーケティング施策の戦略立案を得意とし、日本市場へのローカライゼーションを幅広く手がける。スタートアップ企業のブランドマーケティングにも関心があり、デジタルマーケティング支援を広く行っている。
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