SNSマーケティングとは、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を活用して行うマーケティング手法の総称です。SNSの持つ拡散力の高さを活かして施策を打つことができ、昨今のWebマーケティングの中でも重要な手法の一つとなっています。
この記事ではSNSの必要性やその効果、代表的なSNSのそれぞれの特徴をご紹介した上で、SNSマーケティングの主な手法について事例を交えつつ解説します。
SNSマーケティングとは
SNSマーケティングは、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を使って行うマーケティング活動の総称で、別名ソーシャルメディアマーケティング(SMM)とも呼ばれています。具体的には、企業がSNS上に自社のアカウントを解説して利用者とコミュニケーションを測ったり、SNS上に広告を出稿したりといった形で展開されます。
デジタルマーケティングの戦略立案に際し、顧客との接点となりうるメディアを自社が所有する「オウンドメディア」、広告のように金銭を支払って発信する場を購入する「ペイドメディア」、双方向のコミュニケーションにより利用者からの評判などを受ける(earn)「アーンドメディア」の三つに分類して考える方法があります。
TwitterやFacebook、InstagramなどのSNSは、三つ目のアーンドメディアに該当します。また、クチコミサイトやブログなどもアーンドメディアに含まれます。
SNSマーケティングの必要性と効果
SNSの特徴のひとつは、その高い拡散力にあります。Twitterの「リツイート」やFacebookやInstagramの「シェア」といった機能により驚くべき速さで情報が拡散されるため、必要なメッセージを「広く」「速やかに」届けることが可能です。また、SNSは利用者同士の「つながり」を基盤としたサービスであり、つながり間での「信頼」がよい影響をもたらします。
このようなSNSの特徴をうまく取り入れることで高い効果を狙えるのが、SNSマーケティングの最大のメリットだと言えるでしょう。ある調査(※1)によれば、SNSの情報をきっかけとして初めて利用するECサイトで商品を購入したことがあると答えた消費者は、代表的な6つのSNSのいずれでも50%を超えています。
出典:アライドアーキテクツ株式会社 SMMLab SNSをきっかけとした購買行動・口コミ行動調査結果
もちろん、商品の購入のきっかけ作りだけがSNSマーケティングではありません。SNSマーケティングを行うことで、たとえば以下のような効果を期待できます。
- 製品・サービスの認知拡大
- 認知ユーザーへの情報提供
- 顧客ロイヤリティ向上
- 新商品発売前の市場状況の把握
代表的なSNS
さて、ソーシャルメディアにも様々なものがありますが、下記の表に2022年現在の代表的なサービスをまとめました。
メディア名 | 月間アクティブユーザー(MAU) | ユーザー層 | 特徴 |
LINE | 9,000万人 | 年齢・性別を問わず幅広い層 | 代表的なメッセージツールとして普及。 |
2,600万人 | 30~50代中心 | 比較的高い年齢層に普及。実名によるリアルなつながりが特徴。 | |
3,300万人 | 10~20代の若年層中心 | 写真や画像を中心としたサービスで、視覚面での訴求に適している。 | |
4.500万人 | 20~30代中心 | SNSとしては最古参サービスの一つ。リアルタイム性が高くスピーディな情報拡散が可能だが、投稿できる文字数に限りがある(140文字)。 | |
YouTube | 6,500万人 | 年齢・性別を問わず幅広い層 | 動画配信を中心としたサービス。文字や画像のみのメディアに比べて表現力の高い訴求ができる。 |
TikTok | 950万人 | 10代中心 | 15秒~1分程度の動画配信を中心としたサービス。ユーザーの大半が10~20代の若年層である。 |
※MAU:2022年2月時点
上記の他、はてなブログやAmeba、noteなどのブログを中心としたサービス、LinkedInのようなビジネス系のサービスも存在します。前述のとおり媒体によって利用者層や特徴に違いがありますので、自社の製品・サービスにマッチしたものを選定することが大切です。
SNSの国内シェア(利用率)
続いて、日本国内におけるソーシャルメディアの利用状況を見てみましょう。
下記のグラフを見てもお分かりのように、メッセージツールのインフラ的存在であるLINE、および動画配信を主体としたサービスであるYouTubeがダントツで高いシェアを誇っている一方で、「ユーザー間での情報共有」を主目的に据えたTwitter、Facebook、Instagramの三大SNSの利用者数は概ね横並びとなっています。年代別で見ると、10~20代の若年層ユーザーを多く抱えているのがTwitter、Instagram、TikTok、逆にFacebookは40代以降の高齢層に人気が高いことが伺えます。
総務省「令和2年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」
このように、様々なソーシャルメディアが幅広い年齢層に普及した結果、ユーザーによる投稿がインターネット上に蓄積され、それがGoogleなどによる検索結果にも影響を与えるようになってきています。Google検索をトリガーとしてソーシャルメディアサイトを訪れ、閲覧した情報を更に自分のネットワークにシェアする…といった形で情報が拡散されていくことも珍しくありません。
SNSマーケティング 5つの手法
次に、SNSマーケティングで用いられる5つの代表的手法をご紹介します。
活動 | 対応メディア |
1)SNSアカウント運用 | 自社SNS |
2)SNS広告配信 | SNS広告/ネットワーク広告 |
3)SNSキャンペーン | 自社SNS+SNS広告 |
4)インフルエンサーマーケティング | UGC※1 |
5)ソーシャルリスニング | UGC※1 |
※1:UGC(User Generated Contents)とはユーザーによって作られるコンテンツのこと。SNSや口コミサイト・掲示板、ブログなどに掲載される消費者発信の情報を指します。
1)SNSアカウント運用
TwitterやFacebookなどのSNS上に自社のアカウントを解説し、「公式アカウント」として運用する手法です。顧客・見込み顧客に向けた情報発信、顧客接点の創出や関係性構築などを行うのに適しています。
広告費などがかからず始めやすい一方で、不注意な投稿による炎上などのリスクが伴います。運用開始にあたってはルールを明確にするとともに、自社のソーシャルメディアポリシーをWebサイト上などで公開していけるとよいでしょう。また、投稿の内容・雰囲気にブレが出ないよう、極力少人数で運営することをお勧めします。
参考事例:AGC
対応メディア | 目的 |
認知・サービス理解 |
世界最大級のガラスメーカーであるAGCは、Twitterの同社アカウント上にて、自社キャラクターである「AGCちゃん」を使ったコミュニケーションを展開しています。
自社の宣伝・PRだけにとどまらず、日常のちょっとした出来事を取り上げて「ほっこり」させるような投稿をうまく取り入れることで、親しみやすい雰囲気を出すことに成功しています。
参考:世界のBtoB企業はSNSをどう使う? 国内外のBtoB・モノづくり業界におけるSNS投稿事例9選
2)SNS広告配信
SNS広告配信は、文字通りSNS上で広告を配信する手法です。広告のタイプは様々ですが、ユーザーのフィードやタイムライン上に、一般の投稿と同じような体裁で広告を表示させる手法が多く用いられています。「いかにも広告」という雰囲気が払拭され、自然な形でユーザーにメッセージを届けられるのがメリットです。
参考事例:SATORI
対応メディア | 目的 |
Facebook広告 | リード獲得、セミナー集客 |
SATORIではセミナー集客や資料ダウンロードページへの誘導を目的として、SNS広告を活用しています。主な出向先メディアは、利用者の年齢層が比較的高く、ビジネスに強いFacebok。類似オーディエンス※2とリターゲティング広告を配信しています。
※2:類似オーディエンス:既存顧客と似た特性を持ち、ビジネスに関心を示す可能性が高いと思われる利用者に広告のリーチを広げる機能。
3)SNSキャンペーン
SNSキャンペーンは、SNSを通じて行うユーザー参加型の行動喚起施策です。TwitterやInstagramなどのSNS上でプレゼントやコンテストなどのキャンペーンを展開し、商品やサービスの認知拡大や顧客関係性強化、自社アカウントのフォロワー増加などを目指すのが一般的です。
参考事例:J:COM
対応メディア | 目的 |
TikTok | 認知・フォロワー獲得 |
ケーブルテレビ事業を運営するJ:COMは、10~20代の若年層に強いTikTok上で「もののけついてんね」キャンペーンを展開しました。このキャンペーンは、同社が配信した「もののけついてんねダンス」をアレンジした投稿をユーザーに募るというもので、「優秀な作品は渋谷の街頭ビジョンで放映する」という特典が付けられました。これがTikTokユーザーに受け、900件を超える応募作が集まりました。
参考:企業は「TikTok」をこう使っている! ユーザーも盛り上がったキャンペーン事例4選
4)インフルエンサーマーケティング
インフルエンサーマーケティングとは、SNS上で活躍するインフルエンサー(著名なインスタグラマーやユーチューバーなど)を起用し、消費者の購買行動に影響を与えるマーケティング手法です。人気のあるインフルエンサーを起用できれば、彼ら/彼女らのファン層に対して広くアピールすることができます。
参考事例:東ハト
対応メディア | 目的 |
YouTube(コラボ動画) | 認知・登録者獲得 |
「キャラメルコーン」や「暴君ハバネロ」で有名な東ハトは、「料理のおにいさん」の愛称で親しまれる料理研究家リュウジさんを起用してインフルエンサーマーケティングを展開しています。
リュウジさんが運営するYouTubeチャンネル「料理研究家リュウジのバズレシピ」で同社製品とのコラボ動画を公開するとともに、InstagramやTwitterなどでも動画情報を拡散することで幅広い認知獲得に成功しています。
参考:【2021年最新事例】インフルエンサーマーケティングのメディア別9事例
5)ソーシャルリスニング
ソーシャルリスニングは、SNSを通じて消費者の声を収集するマーケティング手法です。TwitterやFacebook、ブログやクチコミサイトなどに投稿された情報を収集・分析し、マーケティング施策の検討において活用します。
従来のアンケートなどの手法に比べて、よりリアルな「生の声」を拾える可能性があり、昨今特に注目されている手法の一つです。
参考事例:カルビー
対応メディア | 目的 |
ファン育成、マーケティングリサーチ |
ポテトチップスや「じゃがりこ」でおなじみのカルビーでは、2007年から10年以上運営しつづけてきたミュニティサイト「じゃがり校」の後続として、Twitterをベースとした「じゃがりこ」ファンとのコミュニケーションを開始。2021年には「#みんなで創るじゃがりこ2021」というハッシュタグキャンペーンを展開しました。
このキャンペーンは、新商品のアイデア(味、パッケージ、バーコードのデザイン、ダジャレ・キャッチコピー)をハッシュタグ付きでTwitter上に投稿してもらうというもの。味に対しては12,000件を超える投稿が集まり、「じゃがりこ 味噌バターコーン味」という新商品が生まれました(2022年3月発売予定)
参考:ユニークさが生む共創。「じゃがりこ」熱狂的なファンコミュニティの秘伝レシピを大公開!(PRTIMES Magazine)
SNSマーケティングの成功のポイント
最後に、SNSマーケティングを成功に導くために大切なポイントをご紹介します。
1.ターゲット層に応じたチャネル(SNS)を選定する
前述の通り、SNSの主要ユーザー層はサービスによって異なります。自社製品のターゲット層にマッチしたサービスを選定しましょう。
2.目的にあった手法を採用する
前項でSNSマーケティングの主な手法を5つご紹介しましたが、それぞれに得られる効果が異なります。やみくもに施策を展開するのではなく、まずは目的を明らかにした上で、目的達成のために最適な手法を選びましょう。
3.PDCAを回す
SNSマーケティングも他のマーケティング施策同様、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)のPDCAを回すことが重要です。
目的を明らかにして適切なKGI/KPIを設定した上で、改善のサイクルを回していきましょう。
図:消費者の検討段階に応じたKGI設定、およびSNS活用の例
4.運営体制・ルールの構築
SNSマーケティングの推進には、想像よりも手間と時間がかかります。
施策自体のPDCAをまわす仕事はもちろんのこと、ユーザーからの投稿に返信したり、いわゆる「炎上」が起こらないようにウォッチしたりといった作業も発生します。
可能であれば専任の担当者を置くなどして運営体制を確立しましょう。
参考:企業のソーシャルメディアポリシー・ガイドラインの作成方法
SNSを活用してマーケティング戦略全体を成功させるためには
以上、SNSマーケティングの概要から具体的な手法と事例、SNSマーケティングを成功させるためのポイントについてお話しました。この記事をきっかけとして、SNSマーケティングの実践に取り組んでいただくことができれば幸いです。
なお、SNSマーケティングは強力なツールではありますが、これだけでマーケティングの全領域をまかなえるわけではありません。成果の上がるマーケティング戦略を立案するためには、SEOや純広告なども含めて、広い視野で最新情報をウォッチしておくことが大切です。
下記の資料もぜひあわせてご一読ください。
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システムエンジニア/フリーライター/BtoBマーケターの3つの顔を持つワーキングマザー。
BtoB商材を扱うIT企業に在籍し、課題解決ブログの立ち上げ・SNS活用を始めとしたコンテンツマーケティングの導入に取り組んだ経験を持つ。
ライターとしては20年を超える経験を有し、『小さな会社のAccessデータベース作成・運用ガイド』(翔泳社)をはじめ、プログラミング関連の著書多数。
現在はIT企業にてシステム評価に携わりつつ、IT、マーケティング分野を中心に精力的に執筆活動を展開中。