Web接客とは来訪者に対してポップアップやチャットボットなどを使ってリアルタイムに接客を行うことです。広義の意味では、サイト内検索やレコメンデーションなどもWeb接客に含まれますが、近年注目されている「Web接客ツール」の主な機能はポップアップやチャットボットが主流です。ナーチャリングやコンバージョン改善などを目的として行う施策で、BtoC、BtoBともに活用が進んでいます。
ここでは、Web接客の概念やツールでできること、活用事例、おすすめのツールをご紹介します。
Web接客とは?
Web接客とは、Webサイトを訪問したユーザーに対して即時に対応する施策のことをいいます。チャットボットを使ってリアルタイムなサポートを提供したり、ポップアップでクーポンやおすすめ商品を表示したりといった接客手法があります。
実店舗で行う顧客への語り掛けをはじめとした接客行為をWebサイト上で実現する…というところから、「Web接客」と呼ばれています。自社システムを開発することも可能ですが、Web接客ツールを導入してカスタマイズするのが主流となっています。
Web接客を導入するメリット
Webサイトの訪問者は、リンクやボタンにしたがってWebページを閲覧していきますが、サイト設計者の思い通りに動いてくれるわけではありません。迷子になって途中で離脱することも多くあります。
Web接客を導入していれば、多くのシナリオから次のアクションをポップアップで提案したり、わからないことをチャットでヒアリングして正しい案内をすることが可能です。Webサイトのナビゲーションと違い、パーソナライズされた多くの提案を訪問者に提示できるため、離脱を防ぎ、コンバージョンや売上を上げることが可能です。
Web接客ツールとは?種類と機能
Web接客の基本的な機能を提供するシステムを「Web接客ツール」と呼びます。シナリオに沿ってポップアップを表示したり、チャットでメッセージを返信したりする仕組みは、自社で開発するより、ツールを導入してカスタマイズしていくことが主流です。
Web接客ツールの種類
ツールには大きく分類すると、ポップアップ型とチャットボット型があります。両方搭載しているツールもあります。
ポップアップ型
Webサイトを訪問中のユーザーに対して、設定したタイミングでポップアップウィンドウを表示するツールです。「特定のWebページを表示した」「同じページに3分以上滞在している」「過去1か月間に〇回以上訪問した」…といった表示条件を設定しておき、条件に合致したユーザーに対してポップアップ表示を行います。
適切なタイミングで広告や割引クーポン、おすすめ商品を表示することで、購入促進につなげるなどの効果が期待できます。
チャット型
Webサイト上にチャットウィンドウを表示し、訪問者とのリアルタイムな対話を実現するツールです。ページ閲覧中に疑問や不安を感じたユーザーがチャットウィンドウから気軽に問い合わせを行うことができるため、離脱の抑止・コンバージョンの向上に貢献します。
Webページの右端や下部などの閲覧の邪魔にならない場所にチャットウィンドウを表示し、質問メッセージを送ることができたり、訪問者があるアクションをした際に自動的にチャットウィンドウが開いて話しかけるような仕組みになっています。。
チャット型ツールには、オペレーターが対応する有人タイプとシステムが半自動で応対を行うチャットボットと呼ばれるタイプがあり、チャットボット型は以下のようにシナリオ型とAI型に分類されます。また、はじめはチャットボットが対応し、必要に応じてオペレーターに接続するような仕組みを持つツールも存在します。
シナリオ型のチャットボット | シナリオに沿って会話を行うルールベース型。会話に含まれる文言から判断したり、選択肢を表示して選ばせたりするQAのような仕組み。デメリットはシナリオにない問い合わせには対応できないこと。 |
AI型のチャットボット | 自然言語処理(NLP)技術や機械学習を使った仕組み。多くのFAQを登録しておくことで、AIが質問の内容を読み取って理解し、質問に合う回答を行う。多くの問い合わせに柔軟に対応できるが、予想しない回答をしてしまうリスクもある。 |
現在、どちらのタイプも活用されていますが、昨今のAIの進化によりAI型チャットボットが主流になりそうです。2021年に登場したOpenAIのChatGPT(GPT-3.5)が大きな話題を呼びました。まるでオペレーターと会話しているかのように、質問に対してAIが正確な回答を返すことができるChatGPTを搭載したチャットボットも登場しています。
Web接客ツールの運用イメージ
まずは自社Webサイトへのツールの導入が必要となります。基本的には、提供される専用の「タグ」を対象のWebページに埋め込むという形が多いようです。ツールを選定したら、ツールの仕様に合わせたシナリオ設計を行います。ターゲット、発動するタイミング、その結果どのような成果を上げたいのかを具体化したうえで、適切なシナリオを組み立てます。ツールを導入し、シナリオ通りに動作を設定すれば運用開始となります。運用を開始したら、定期的に効果を測定し、想定通りの成果が上がっていない場合はシナリオの見直しなどを行いましょう。運用結果をもとに検証を行い、改善のPDCAを回していくことが成功への近道となります。
Web接客ツールの効果的な選び方
ツール選定においては、以下の4つのポイントを意識して進めましょう。
- やりたいことが叶うか
- 運用コストは最適か
- 導入や設定、効果測定などは使いやすいか
- サポート体制は充実しているか
「このツールでやりたいことがやれるのか?」という視点で評価することが大切です。同時に、コストや運用のしやすさなども重要なポイントとなります。ツールの導入によって期待されるメリットが導入・運用コストを大幅に上回ってしまうようでは本末転倒です。また、どんなに高機能なツールでも、それを使いこなせる人員が確保できなければ宝の持ち腐れとなってしまいます。
ただし、ツールの運用の難易度については、ベンダーのサポート体制によってある程度カバーできる場合もありますので、総合的に評価し、もっとも自社にマッチしたものを選ぶことが重要です。
以下、課題・目的別のWeb接客ツール選定ポイントと導入事例をいくつかご紹介します。
サービスの利用促進/解約率改善に繋げたい
サービスを利用する上で疑問・質問が多く発生するような商品・サービスには、チャットボット型Web接客ツールがおすすめです。ユーザーが思い立った時にすぐ問い合わせることができ、かつ迅速に疑問を解決できるため、ユーザー満足度の向上に繋がります。
Webアプリやサブスクリプション型サービスなどでは解約率の改善が期待できますし、保険商品のように契約までに煩雑な手続きが必要となる場合は、コンバージョンアップにもつながります。
また、チャットボットを診断型のコミュニケーションツールとして利用することで、ユーザーとの繋がりの強化に役立てることも可能です。
導入事例
>>OracleとSYNALIO for LINEを連携したFAQコンテンツでお客様のお問い合わせに迅速かつ的確に対応! (SYNALIO)
BtoCのコンバージョンアップを狙いたい
ネットショップなどのECサイトでコンバージョンアップを狙いたい場合は、ポップアップ型のWeb接客ツールがおすすめです。サイトを訪問中のユーザーに対して適切なタイミングで割引クーポンを表示することで、購入を迷っているユーザーの背中を押すことができます。
クーポンとあわせてお勧めの商品を表示したり(レコメンデーション)、クーポンの有効期限を設けてカウントダウンしたりするような仕組みがついていると、より効果的に活用できます。
導入事例
>>モールから自社ECサイトへ/お客様のコンバージョンアップにWeb接客を導入(ec-CONCIER)
BtoBのリード獲得を強化したい
BtoCに比べて多くのステークホルダが購買に関与するBtoBでは、施策の組み立てにも広い視点での工夫が必要となります。このため、BtoBのリード獲得(リードジェネレーション)を強化したいという場面では、ポップアップ/チャット双方の機能を持つツールの導入をおすすめします。
なお、BtoBのリードジェネレーションに注力していこうとお考えの場合は、Web接客ツール単独ではなく、「Web接客機能を持つMAツール」を導入するのもよい方法です。MAツールが管理するユーザーの情報(属性や行動履歴)を活用してWeb接客ツールのシナリオを設計できますし、Web接客ツールからのフィードバックをMAツール側で利用することもでき、効率的かつ効果的に顧客獲得に取り組めます。
導入事例
>>メルマガ会員登録者数がMA導入前後で242%増!人事メディアの成長に「SATORI」を活用
>>既存顧客リストの活用&匿名ユーザーへのアプローチを目的に導入! 半年で目覚ましい成果が表れ、社内にも活用法が浸透
おすすめのWeb接客ツール9選
以上をふまえて、おすすめのWeb接客ツールを9つご紹介します。
機能/コスト感を把握できる比較表を作成しておりますので、ツール選定時の参考資料としてぜひご活用ください。
ツール一覧・比較表
ツール名 | セグメント配信(ターゲティング) | ポップアップ | チャット | メール配信 | 外部連携(MAなど) | 費用/月額 |
---|---|---|---|---|---|---|
ポップアップ型 | ||||||
①ec-CONCIER | 〇 | 〇 | ✕ | ✕ | 〇 | 無料あり ¥9,800~ |
②TETORI | 〇 | 〇 | ✕ | ✕ | 〇 | ¥10,000~ |
チャット型 | ||||||
③チャットプラス | 〇 | ✕ | 〇 | ✕ | 〇 | 1,500円~ |
④Zendesk | ✕ | ✕ | 〇 | 〇 | 〇 | $55(¥8,005)~ |
⑤Freshdesk | 〇 | ✕ | 〇 | 〇 | 〇 | 無料あり$15(¥2183)~ |
複合型 | ||||||
⑥Sprocket | 〇 | 〇 | 〇 | ✕ | 〇 | 要問合せ |
⑦SYNALIO | 〇 | 〇 | 〇 | ✕ | 〇 | 要問合せ |
⑧Flipdesk | 〇 | 〇 | 〇 | ✕ | 〇 | ¥50,000~ |
⑨KARTE | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 要問合せ |
【凡例】〇:搭載/✕:非搭載 ※2023年8月時点の情報です
ポップアップ型
①ec-CONCIER
特徴:ポップアップ型のWeb接客ツール。NTTドコモと共同開発した高性能AIによる自動改善機能搭載を搭載し、CVR/顧客単価の改善に強みあり。
②TETORI
特徴:ポップアップを中心としたシンプルなWeb接客ツール。月額1万円から使えて、Webサイトのパーソナライゼーション機能も充実。
チャット型
③チャットプラス
特徴:月額1,500円から導入できるチャットボットに特化したWeb接客ツール。ChatGPTを搭載し、予測QAにも対応。有人チャットへの切り替えもスムーズで使いやすい。
④Zendesk
URL:https://www.zendesk.co.jp/
特徴:数十億のカスタマーデータから学習したZendesk AIを搭載したチャットボットにより、会話の内容を顧客にあわせて最適化可能。OpenAIと提携し、生成AIを活用した新機能の提供を開始しています。
⑤Freshdesk
URL:https://www.freshworks.com/jp/freshdesk/
特徴:カスタマーサポートに特化したチャットボットを含むお問い合わせ管理システム。メールだけでなくFacebook、LINEなどとも連携可能で、総合的な顧客対応を実現できます。
複合型
⑥Sprocket
特徴:シナリオに沿ったポップアップ配信に加えて、LPOやEFO、A/BテストなどさまざまなUX改善機能を搭載。シナリオ型のチャットボットを搭載していて、外部連携することで有人チャットやAIチャットにも対応できます。
⑦SYNALIO
特徴:ユーザーデータによるクリエイティブの最適化に加え、シナリオ型のチャットボットを搭載。SATORIなどのMAツールや各種広告、LINE@などの外部ツールとの連携も可能。
⑧Flipdesk
特徴:ポップアップ型Web接客ツールに同社のチャットボット「Cross Talk」を連携することで両方に対応。機械学習に加え、日本語表現の解釈に特化した自社開発のアルゴリズムを採用していて、日本語での自然な会話を得意としています。
⑨KARTE
特徴:CX(カスタマーエクスペリエンス)向上を目的とした総合的なツール。KARTE Message/KARTE Action(ポップアップ), KARTE Talk(チャット)など、複数のサービスに分割されています。
Web接客ツールを効果的に活用するには
Web接客ツールを導入することで様々な効果が期待できますが、ただ導入して動かすだけでは高い成果を上げることはできません。計画、実行、検証、対策のPDCAを回して継続的に改善を重ねていくのが、成果を上げるための近道となります。
また、Web接客はそれ単独の施策として回すのではなく、UX改善を含むWebサイト運営の一環として捉えて、最適化や改善に取り組むことを強くおすすめします。
Web接客ツールとMAツールの違い
Web接客ツールとMAツール、どちらを導入すべきか悩ましいこともあります。似ているツールではありますが、機能や目的が異なるので、その違いを理解しておきましょう。
【凡例:◎ほとんどのツールに搭載されている、〇多くのツールに搭載されている、△一部搭載しているツールがある、×ほとんどのツールに搭載されていない】
ツールの種類 | Web接客ツール | MAツール |
課題・目的 | リード獲得顧客満足度の向上解約率の改善CV改善 | リード獲得・育成からリード管理まで一気通貫商談獲得 |
ポップアップ | ◎ | ◎ |
チャットボット | 〇 | × |
チャット | ◎ | △ |
顧客(リスト)管理 | △ | ◎ |
メール配信 | × | ◎ |
Web接客ツールは、ポップアップ機能やチャット機能といったリアルタイムのWeb接客を中心として構成されるツールです。
一方、MAツールは主にリード獲得から育成を目的としてマーケティング活動を自動化するツールで、顧客管理やメール配信といった様々な機能が備わっていて、リアルタイムだけでなくその後のコミュニケーションも得意としています。
そのため、検討期間の長い商材(BtoBやBtoCの高額商材)にはMAツールの方が向いていて、ECなど購入を即決する商材にはWeb接客が向いているといえます。
また、多くのWeb接客ツールはMAやSFA、LINEなど外部ツールとの連携が可能で、併用することも可能です。自社で使っているツールや実施したい施策に合わせてWeb接客ツールを選んでいきましょう。
MAツールでできること、運用イメージなどについてマンガで分かりやすくご説明しています。ぜひこちらもあわせてご一読ください
この記事が気になる方へ!おすすめの資料はこちら
マンガでわかる!MAのすすめ
マーケティングオートメーションを“漫画”で解説した資料です。MAの機能だけでなく、MAの機能を通じてどのような課題が解決できるのか?という点も伝わるようなストーリー構成となっております。ご自身だけでなく、上司やお客様にもご展開いただくことで、稟議や提案の際にもご活用いただける内容です。
映像コンテンツプロバイダー・化粧品メーカーECでのWebディレクション・マーケティング担当を経て、コンサルタントに。20社以上のオウンドメディア・コンテンツの企画・戦略設計を行った経験を持つコンテンツマーケティング専門家。2018年5月に独立。検索ユーザーに寄り添うコンテンツ設計を得意とする。