モバイルマーケティングでブランド・エクスペリエンスはどう変わるのか?

鈴木あゆみ (デジタルマーケティング・コンサルタント)

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モバイルマーケティングとブランド・エクスペリエンスの関係性

モバイルマーケティングの歴史と変遷

モバイルマーケティングという分野が確率して10年程度になります。かつてモバイルマーケティングは、携帯電話(いわゆるフィーチャーフォン)の時代、iモードを始めとするキャリアの公式サイト内のコンテンツマーケティングやSEO対策を中心としたマーケティング施策を指すものでした。その後、スマートフォンの普及に伴い、レスポンシブデザインが一般的になり、モバイルマーケティングの意味・施策も変容を遂げました。

モバイルマーケティング

特にこの数年間は、モバイルフレンドリーなWebサイトを作ることや、Webのほかタブレット端末やメール配信コンテンツにおいても、レスポンシブデザイン設計をすることが重要視されるようになりました。

現在、モバイルマーケティングは、単なるSEO/コンテンツマーケティングに留まらず、ブランド・エクスペリエンス*にかかわる重要な分野として認識されるようになっています。とはいえ、ブランド・エクスペリエンスもマーケティング分野としては比較的新しく、効果測定が難しいと認識されている分野の一つです。そのため、モバイルマーケティングの成果も測定が難しいものとして認識されるようになったと感じています。

参考:ブランド・エクスペリエンスとは?  
実際に使用したか否かにかかわらず、さまざまな接触の機会を通じて、企業や商品・サービスに対する知識、理解、さらには親近感が、消費者の中に蓄積されていくことを「ブランド・エクスペリエンス」と呼ぶ。電通ワンダーマンの定義より)

モバイルマーケティングを独立した一つのマーケティング分野としてみなすのではなく、モバイルマーケティングで収集したデータをリアルの現場でどのように生かせるかも非常に注目されている点です。今回は、モバイルマーケティングとブランド・エクスペリエンスを捉える最新の傾向として、Think with Googleによって発表されたデータをご紹介します。日本国内でも近年注目の集まる「モバイルとリアル店舗の連携」についてもデータが発表されています。

モバイル・マーケティングとブランド・エクスペリエンスの関係性~Think with Googleのデータから読み解く

今回は、2017年9月に発表されたThink with Googleのデータをご紹介します。データから、モバイルで事前に調査をしていたユーザーは、店舗を訪問した際、購入に積極的であることや、逆にモバイルでネガティブな体験をしたユーザーは、その後の購入可能性が大きく低下することなどが読み取れます。傾向としては想定通りであるものの、具体的な数値には想定外のものも多く含まれているのはないでしょうか。以下、興味深いデータを抜粋します。

モバイルマーケティング

  • モバイル経由でのブランド・エクスペリエンスの数は、TV、リアル店舗を含む他のどのマーケティングチャネルによるブランド・エクスペリエンスに対し、2倍以上に上る。
  • モバイル経由のブランド・エクスペリエンスのうち、42%はサーチ検索(SEO)によるものである。
  • モバイル経由のブランド・エクスペリエンスのうち、54%は画像・動画によるものである。
  • モバイル経由のブランド・エクスペリエンスのうち、78%はポジティブな印象をユーザーに与えている。
  • モバイル経由のブランド・エクスペリエンスのうち、ユーザーにポジティブな印象を与えるものの3つの特徴は、簡単に使える(easy)、有効である(helpful)、便利である(convenient)である。
  • モバイル経由のブランド・エクスペリエンスによってポジティブな体験をしたユーザーのうち、89%はそのブランドをリコメンドしたいと回答している。
  • モバイル経由のブランド・エクスペリエンスによって有意義な体験や関連性の高い情報を得たユーザーのうち、ほぼ9人中10人は、将来的にそのブランドの製品を購入するであろうと回答している。
  • モバイル経由のブランド・エクスペリエンスによって、有意義な体験をしたと回答するユーザーは、そうでないユーザーに比べ、実際に製品を購入する可能性とリコメンドする可能性がそれぞれ5倍程度高い。
  • モバイル経由のブランド・エクスペリエンスのうち、ユーザーにネガティブな印象を与えるものの3つの特徴は、平凡である(neutral)、邪魔である(interruptive)、内容が予測できるものである(predictive)の3点である。
  • モバイル経由のブランド・エクスペリエンスによってネガティブな体験をしたユーザーは、ポジティブな体験をしたユーザーと比較して、実際にそのブランド製品を購入する可能性が60%も低い。
  • モバイルの情報に対し「鬱陶しい」と感じる体験をしたユーザーのうち、46%は将来そのブランド製品を購入することはないだろうと回答している。
  • モバイル経由のブランド・エクスペリエンスによって、「平凡である」とネガティブな印象を抱いたユーザーは、そのブランド製品を購入しにくく、リコメンドもしにくい。
  • モバイルで事前に製品について検索をして積極的に製品について調べていたユーザーは、そうでないユーザーと比較し、実際に店舗を訪れた際、購入に至る可能性が3倍ある。
  • 実際に店舗を訪れる前にモバイルで製品について調べていたユーザーのうち35%は、店舗での滞在時間よりもモバイル検索に多く時間を費やしていた。
  • 実際に店舗を訪れる前にGoogleのリスティング広告をクリックしたユーザーは、そうでないユーザーと比較し、店舗での消費金額が10%高い。

モバイルマーケティングの施策によりユーザーにポジティブな体験を与えられた場合、そのユーザーが製品購入に至る可能性が高いことは予想通りではないでしょうか。むしろここで注目すべき点は、モバイルでネガティブな体験をしたユーザーは、製品購入に至る確率がそうでないユーザーに比べ、60%も低下してしまうことです。つまり、良かれと思って実施したモバイルマーケティング施策が、下手をすると諸刃の剣となってしまうということです。

モバイルによるブランド・エクスペリエンスが非常に大きな威力を持ち得ることを、企業のマーケティング担当者は認識しなくてはなりません。たとえば、仮に予算が余っていたとしても、無闇に広告費を増額し、ユーザーあたりの広告の表示回数を増加させるようなことは得策ではないのです。

企業のマーケティング担当者として、モバイルマーケティングで何ができるのか?

モバイルによるブランド・エクスペリエンスが重要だと分かったところで、企業のマーケティング担当者はどのような工夫をすれば良いのでしょうか。一般的に、企業規模が大きくなるほど、モバイルマーケティング(あるいはデジタルマーケティング)とブランドマーケティングを扱う部門に距離があり、担当者レベルで両方の分野を管轄することは難しくなります。

一方で、企業のマーケティング部門においては、デジタルマーケティング分野の重要性が高まるにつれ、部門再編・組織再編が頻繁に行われることも珍しくなく、一人の担当者が複数の分野を横断的に統括することが求められるケースも増えています。企業のマーケティング担当者の方にとっては、担当者レベルで外部セミナーや勉強会に積極的に参加をするなど努力をし、時代の変化に適応する応用力が求められるようになってきています。SATORIマーケティングブログでは、企業のマーケティング担当者を対象とし、モバイルマーケティングを含むマーケティング領域全般で役立つ情報をお届けしています!

PROFILE

鈴木あゆみ

デジタルマーケティング・コンサルタント


グリー株式会社、複数の外資系企業を経て、独立。海外企業におけるデジタルマーケティング施策の戦略立案を得意とし、日本市場へのローカライゼーションを幅広く手がける。
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