Marketing Blog

2015.09.04

アトリビューション分析の事例まとめ

広告の効果測定だけでなく、さまざまなマーケティング施策の成果を図るためにアトリビューション分析は欠かせません。
その考え方や事例を分かりやすくまとめました。

アトリビューション分析の必要性

広告の費用対効果を測るために、コンバージョンしたユーザーがクリックした広告を計測できることは、Webマーケティングに関わる多くの方がご存知でしょう。
「広告Aを見て、すぐにその商品を購入した」という場合は、購入した直前にクリック(=ラストクリック)した広告Aの効果が計測されるので、十分です。
ところが、「バナー広告Bを見て、すぐに商品を購入しなかったものの、1週間後に同じ商品のリスティング広告Aをクリックして購入した」といった場合はどうでしょう?
広告Aによるコンバージョンは計測されますが、広告Bは計測されません。
では、広告Aは購入という成果に貢献していないのでしょうか?
いえ、このお客様は広告Bを見て印象に残っていたから、広告Aをクリックして購入したのかもしれません。
一般的に、初めての商品の広告をクリックしてもらうのは大変ですが、一度商品を知ったユーザーの広告のクリック率は高くなりやすい傾向があります。
もし広告Bの効果がカウントされずに、広告Aの効果のみが「見える化」してしまった場合には、ラストクリックを生む広告ばかりが重視されるようになってしまいます。
したがって、初めてクリックしてもらうための広告が正当に評価されなくなり、広告予算を適切に配分することができません。
そこで、広告Bが間接的にでも貢献していることを示すための指標が、求められるようになりました。
このような背景から登場したのが、「アトリビューション」という考え方です。
アトリビューション分析と従来の分析のイメージ

アトリビューションの分類

このようにラストクリック以外も評価するようになると、1つのコンバージョンについて「どの広告が、どの程度貢献していたのか?」を決める必要が出てきます。
なぜなら、コンバージョンに貢献していた広告ほど、もっと多くの人に接触できるように、予算を増やすべきだからです。
そこで、このアトリビューションを使って、広告との複数の接点のうちどの広告を評価して、予算を割り振るべきか?についてモデルが生まれてきました。
Googleアナリティクスの公式ヘルプページ に掲載されているケースをもとに、いくつかのモデルを見ていきましょう。

  • 顧客が AdWords 広告をクリックしてサイトを見つけた
  • 1 週間後にソーシャル ネットワークのリンクをクリックして再びアクセスした
  • 同じ日、3 度目にメール キャンペーンのリンクをたどってアクセスした
  • その数時間後に今度は直接アクセスして商品の購入に至った
モデル名タイプ説明
1.終点アトリビューション モデルラストクリック重視型最後の接点(この例では直接的なチャネル)に販売の予算枠の 100% が割り振られます。
2.線形アトリビューションモデルバランス型コンバージョン経路の各接点(この例では有料検索、ソーシャル ネットワーク、メール、直接的なチャネル)に販売の予算枠が均等に(25% ずつ)割り振られます。
3.起点アトリビューション モデルファーストクリック重視型最初の接点(この例では有料検索チャネル)に販売の予算枠の 100% が割り振られます。

この他にも、「減衰アトリビューション モデル」「接点ベース アトリビューション モデル」などいくつかのモデルがあります。
いずれのモデルを採用するにしても、どの時点の広告接点を評価するか?について基準を立てたうえで、その基準にしたがって広告を評価して、予算の配分を決めていけばよいのです。
アトリビューション分析のでの間接効果について

TVCM×YouTubeのアトリビューション分析「リクルートジョブズ」の事例

このアトリビューションは、マーケティングの現場ではどのように使われているのでしょうか?
大手企業の事例を中心に見ていきましょう。
1つ目は、求人情報サイトの事例です。
リクルートジョブズの運営する求人情報サイト「タウンワーク」では、テレビCM素材を加工して、ビデオ広告としてネット上でも広告配信しました。
このビデオ広告が、サイトの目的である、アルバイト求人者の登録に結びついているか?アトリビューション分析を行いました。
アトリビューション効果はYouTubeのインストリーム広告と、リマーケティングリストを活用して測定しました。
ビデオ広告の視聴者と非視聴者が、それぞれ「アルバイト」を検索したときにリスティング広告を表示してクリック率を取ると、非視聴者に比べて視聴者のクリック率は32.5%高いという顕著な差が見られました。
これにより、ビデオ広告が明らかにその後のアクションに貢献していることが分かりました。
またユーザーへのアンケートでも、効果測定を試みました。
視聴前後の態度変容をアンケートで聞き、また同意の上でウェブ上の行動ログを取りました。
その結果、「純粋想起率」(=ヒント無しで広告やブランドを思い出してもらえた割合)は非視聴者より視聴者が2.9%高く、サイト利用率も3.9%高くなったのです。

「ラストCV」と「貢献CV」を比べバナー広告の間接効果が判明、Z会の事例

2つ目は、通信教育サービスの事例です。
Z会では、会員獲得のために効果的な施策を検証するため、アトリビューション分析を実施しました。
コンバージョンまでの経路を分析して、ラストクリックだけを評価するのではなく、「ビュー効果」(=広告がクリックされなくても表示された効果)も加味して、スコアを算出。
「貢献コンバージョン」という指標をつくって、広告ごとに比較しました。
その結果分かったのが、リスティング広告などと比べて、バナー広告が「ラストCV」よりも「貢献コンバージョン」を多く生み出していたこと。
なかでも特に貢献していたのが、サイトを訪れたユーザーに近い興味や属性を持つユーザーに対して広告を配信する、アドネットワークのオーディエンス配信でした。
つまり、バナー広告によって潜在的なユーザーへアプローチすることによって、ニーズが喚起されて、その時は会員登録しなくても後のコンバージョンにつながっていることが分かったのです。

「メディアの価値を可視化」KDDIの事例

3つ目は、です。携帯電話サービスの事例です。
大手通信会社KDDIでは、「リターゲティング広告」「純広告」「DSP1」「DSP2」「アドネットワーク1」「アドネットワーク2」など、媒体別に効果を検証しました。
単純にCPAで比較すると、リターゲティング広告が最も優秀で、アドネットワーク2が最も悪いことが分かりました。
アトリビューション分析を取り入れずに費用対効果の測定をすると、アドネットワーク2は別の手段に切り替えるべきですが、次の分析で判明したのは、まったく逆の結果でした。
auの「スマートバリュー」というサービスの利用意向を調査したところ、アドネットワーク2に接触したユーザーでは利用意向が約12%アップしており、パフォーマンスが高いことが明らかになったのです。
CPAだけでは見えてこなかったメディアの価値を、アンケートデータによって見える化できた事例です。

今すぐできるGoogleアナリティクスのアトリビューション分析

これまで見てきたアトリビューション分析ですが、実施するためにはツールが必要です。
さまざまな専用ツールが販売されていますが、まずは無料で簡易的にも始めたいという方は、Googleアナリティクスを活用してみましょう。
管理画面上で「コンバージョン」→「マルチチャネル」→「コンバージョン経路」と進むと、複数回の接触を経てコンバージョンしたユーザーのたどった経路と、コンバージョン件数が表示されます。
これを見ると、たとえば次のように大まかな傾向が分かってきます。

<Googleアナリティクスで分かることの例>

  • 「有料検索」がきっかけで、次に「ノンリファラー」(直接訪問)したユーザーが多いこと
  • 「ディスプレイ広告」から次は「オーガニック検索」したユーザーが多いこと

この記事を読んで、アトリビューション分析に興味を持たれた方は、まずはご自身のGoogleアナリティクス上で数字を確認してみてはいかがでしょうか?
そのうえで本格的な分析を始めたい方、または既にアトリビューション分析を実施している方にとっては、この記事で解説した考え方や事例が少しでもご参考になれば嬉しいです。

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