【標イベントレポート】伝説のマーケター“劇薬”の流儀

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2020年2月27日(木)、オンラインにて開催された「『標 -しるべ-』営業&マーケティングのちからを養う1日」。

「自社のプロダクトやサービスをもっと世の中に広めたい」「熱い想いを、多くの人に届けたい」そのために、目の前の壁をどう乗り越えればよいのだろうか?何に取り組めばよいのだろうか?プロダクトやサービスを一歩先へ進める、新たな「道標」を探す本カンファレンス。

カンファレンスの最後を飾るセッション「圧倒的な成果と勝負の勘所〜伝説のマーケター“劇薬”の流儀〜」では、当時300億円の赤字に苦しんでいた日本マクドナルドをV字回復に貢献し、現在は『PokémonTM GO』で知られるナイアンティックで活躍されている足立 光氏が、仕事で常に結果を出し続けるための「7つの価値観」を語った。

セッション風景_Niantic, Inc._足立 光 氏

Niantic, Inc. 
足立 光 氏

「圧倒的な成果と勝負の勘所」というテーマで、私が持ち続けている7つの価値観ついてお話しをさせていただきます。

その前に、簡単に自己紹介をいたします。P&Gへの入社から始まり、6回転職を経験しました。現在はナイアンティックという会社に在籍しています。マーケティングの人だと思われていますが、肩書に「マーケティング」というタイトルがついていたのはP&Gと日本マクドナルドで働いていた時と今だけで、実は経営に携わっていた期間のほうが長いのです。ですから、プロのマーケターというよりは、「マーケティングもしている経営の人」が正しい表現になります。

現在勤めているナイアンティックは『PokémonTM GO』などのゲームを運営していますが、ゲーム会社ではありません。ARという拡張現実のプラットフォームを作っている会社で、「共に歩いて、冒険に出よう」という社是があります。運動不足の解消や家でゲームをする子どもを外に連れ出したい、これをARの技術とゲーム性で実現するための会社です。

1:Be Different

セッション風景_Niantic, Inc._足立 光 氏

私の経歴には一貫性、共通点があるのです。P&Gやコンサルティング、洋服、外食まで、全て違う業界なのですが、実はどこも経営が悪化している最中の会社ばかりでした。

私がP&Gに入社した30年前はバブル絶頂期の頃、周りの友達の殆どが銀行や証券会社、商社に入社していきました。P&Gは今こそ人気企業ですが、当時は業績は低迷していた頃ですし、誰も外資系には行かない時代でした。日本マクドナルドも史上最も赤字を出した年に入社しています。これはなぜか。

『エクセレント・カンパニー』という本には「ずっと良い会社なんてない」と明確に書かれています。どんなに良い会社でも低迷する時期があるのです。もう1冊、『V字回復の経営』という本があります。著者の三枝匡さんは有名な経営者で、彼は「長くやること」が経験ではなく、「修羅場の数こそが経験」だとこの本で書いています。初めて三枝さんにお会いした時にも、「君は修羅場を何回くぐったか?」と聞かれました。ですから、修羅場をくぐるために、あえて大変な状態にある会社での仕事を選択してきたのです。

私にも当然、新入社員の頃がありました。そこで何をしたか。とにかく目立つことを意識しました。具体的な行動は、会議で一番前に座る、会議中に下を見ない、質問時間には最初に手を挙げるなどです。

それから、期待を超えることも意識しました。そうしないと、他の社員との差別化にならないと考えたからです。外資系では、日本の社員だけでなく、よりアグレッシブな海外の社員たちと常に比べられていました。今後、より労働市場がグローバルになるにつれ、そうしたシチュエーションは増えていくと思います。「一生懸命アピールをして認識されないと、何もしていないのと変わらない」ということを、強く学びました。

実は「Be Different」の一番根本にあるのは、昔父親にずっと言われ続けた「人と違う人生を歩みたければ、人と違う選択をしなさい」という言葉です。だからキャリアにおいても、人と違う方向へ歩んだのかもしれません。

2:Never Give Up

セッション風景_カメラ越しのNiantic, Inc._足立 光 氏

業績が低迷している会社が持っている共通点は、目標が達成されないのが当たり前になってしまっていることです。そして、それを誰も悔しがらない。これではいけません。サラリーマンは結果がすべてです。

結果を出すために効率的かつ、効果的なことが柔軟に実行できるかが「リーダーシップ」だと考えています。田端信太郎さんが『ブランド人になれ!』という本を出版しましたが、これはまさにその通りです。私も含めて、皆さんは個人の名前がブランド。だから、自分の名前にプライドを持ってください。個人がブランドを作るためには、出来ない約束は絶対にしてはいけません。そして一回約束をしたら、死んでもそれを守る。 結果を出し続けないと、個人がブランドを築くことは出来ません。上司や部下、景気、取引先といった環境を言い訳にしてはいけません。環境が悪くても、初めて取り組む仕事でも、結果を出せるかどうかが、優秀な人とそうでない人の分かれ目なのです。

結果を出すためには、新しいことに挑戦しなくてはならない時があります。しかしそれには上司の承認がいると皆さん言いますが、それは本当でしょうか。たしかに、やったことがないこと、新しいことには、上司はなかなかOKと言いません。ですので、まずは自分の権限を最大限に活用し、その中で進めてしまえばいいと思っています。

もう一つ新しいことに挑戦をする時のポイントは、そもそもそのプランを「新しい」と言わないこと。「新しい」と言われると周りに抵抗されます。なので、そのプランが新しくても、前と同じという見せ方の工夫をしておきます。

リスクを取らないと、結果を出すために新しいことはできません。エイベックスの松浦社長もこう話しています。「普通のやつは、『こうしたいんですが、よろしいでしょうか』と聞いてくる。でも、優秀なやつは、『こうしました』と言ってくる」と。

成功できるかどうかの違いは、気合いです。「これは絶対いける」と確信したことは諦めないことが大事だと思います。

3:Be Hungry

「If you satisfied, you are dead.」という言葉がありますが、現状に満足してしまったら、成長は無いし、死んでいるのと一緒なので、常に新しいチャレンジをしなければならない、という意味です。じゃあ、どうすればいいのでしょうか。別に転職しなくても、今の会社、今の仕事で実績を積んで、新しい仕事に取り組んだり昇進するなどして、どんどん仕事の幅を広げれば良いのです。そうすると視野が広がるでしょう。

「苦労は買ってでもしろ」という言葉があります。「何かうまく行っているな」「何か順調だな」と思ったら、新しいことにチャレンジするタイミングです。

実は「脳」は刺激を与えないと、どんどん退化していきます。マーケティングとは、人の心に刺激し、結果的に行動を変えてもらうことです。何かを伝えて、人の心を動かし、商品やサービスを買ってもらう仕事です。なのでマーケターは流行っていることに常に敏感でいなければならないのです。流行っていることとは、多くの人が心を動かされていること、に他なりません。流行りものを追ってみて、自分で体験してみると、「なんでこれが流行っているのかな?」と、人の心が動かされているメカニズムを自分の頭で考えることが出来ます。

年齢を重ねると「落ち着いたほうがいい」と言う人がいます。これは全くの間違いです。年齢を重ねるうちに落ち着いた生活をして、新しい刺激がなくなることで、どんどん老化が進みます。若い人に負けちゃいけないし、年齢を言い訳にしてはいけません。

4:Life is too short

セッション風景_Niantic, Inc._足立 光 氏

人生は意外と短く、あっという間です。なので、やりたいことをやりましょう。皆さん何かのために(家族とか、しがらみとか)自分自身のやりたいことを犠牲にしていることが多いと思います。これは、本当にそうすべきか、立ち止まって考えるべきだと思います。

また、意外と皆さんは言い訳になっていない「無意識の言い訳」をしています。自分で選択しているのに、いかにも他の何か・誰かのせい、にしているのです。例えば「仕事が忙しいから、飲み会にいけません」は、飲み会より仕事を優先している、ということです。もしかして、仕事より重要な飲み会はたくさんあるかもしれません。他にも、「先約があるからいけません」は、先約の方があなたと会うより大事ということを意味している、結構失礼ない言い分です。もしその方と会うことが重要なら、先約をリスケすればいいんです。実は、他の何かのせいにしていますが、実は 全部自分で時間の使い方を決めているのです。何が本当に大切か、常に考えてから選択すべきです。

また、 「忙しい」とは言ってはいけないし、忙しそうにしてもいけません。「心を亡くす」と書いて「忙しい」と書きます。忙しそうにしている人には、他の誰も寄ってこなくなります。「時間がない」「忙しい」と言う人がいますが、時間は作ることができます。例えば、お金で時間を買う方法があります。私は新入社員の頃、自分でワイシャツのアイロンをかけていたんですが、これに1枚30分以上も時間がかかるのです。しかし、クリーニングに出したら1枚200円で済むので、自分の価値は1時間400円以上あると考えて、自分でシャツにアイロンかけるのはやめました。同じ理由で、本と比べて時間あたりのインプット量が少ないので、テレビは見ません。流行の番組とかTVCMだけは、別にチェックしています。あと、移動中に仕事ができるので、自費でタクシーにもよく乗ります。

あと、寝ないという方法もあります。昔は1日8時間寝ていたのですが、コンサルタントの仕事をしていた頃は4時間くらいしか寝なかった。そしたら、今でも4時間の睡眠で済んでいます。寝る時間が4時間減ると、1週間で28時間増えるので、色んな事が出来ます。

そして、 人生は短いのでインプットはたくさんしましょう。インプットを超えるアウトプットは絶対にありえません。ビジネス書、新聞、専門誌、色々ありますが、どんどん読んだ方がいい。本は誰かが一生懸命に考えたこと、誰かの経験や知恵が詰まっており、読書でそれらを追体験できるのです。私は1週間に1冊本を読むことをおすすめしています。

5:People are wonderful

読書の話をした後ですが、 最高のインプットとは、人に会って直接その人の話を聞くことです。話を聞いて、「なんでこんなことをしたのですか」「どこに苦労されましたか」などと質問すると、圧倒的に深い情報を手に入れることが出来ます。

そこで最大限に活用すべきなのが食事です。ランチに会食と、数ヶ月後まで私の食事の予定はほぼ埋まっています。

日本の会社では仲のいい同じ部署の人たちとランチに行くことが多いのですが、これは時間の使い方としては非効率的です。毎日同じ人とランチして、新しい視点や知見が得れるわけもありません。週に1回でもいいから、違う部署の人や、話を聞いてみたい人を誘ってみてください。全然違った視点の経験や知恵が得られるはずです。

なぜ私が人と合うことを重視しているかと言うと、仕事は「期間限定」であるのに対して「いい友達」は一生ものなのです。だから、仕事より大切な人に会うこと明確に優先しています。

「どうすれば新しい人に会えるのですか」とよく聞かれるのですが、自分で交流会を主催すればよいでしょう。自分が会いたい人を呼び、自分が行きたい場所で、自分のタイミングで開催できます。また、大きなイベントやセミナーに行ったら、プレゼンターの話を聞くだけではなく、そこに参加されている方々ともコミュニケーションをとってください。特に大事なのは、「絶対この人と仕事では会わないな」という人と接点を持つこと。自分と近い人や同じ業界、近い年齢だと、仕事の中で普通に会えてしまいます。まったく違う人たちに会えるのはかなり貴重な機会なので、ぜひ積極的になってください。

6:You are NOT alone

セッション風景_Niantic, Inc._足立 光 氏

当たり前ですが、1人では仕事は絶対できません。助けてくれる方々が必要です。その時に大事なのが感情です。人は論理で動かず、感情でしか動きません。「Love is Giving」という言葉がありますが、人に何か頼まれたら、損得を考えずに、できるだけやってあげることです。これは「人間関係の引き出し」というコンセプトなんですが、私の祖母が教えてくれました。引き出しは先に何かを入れないと、後から出せませんよね。人間関係も同じなのです。いつか誰かに何かをして欲しければ、まずは他の人のためにどんどんやってあげることです。そうすることで、「ものの入った(いずれ何か取り出すことのできる)引き出し」の数が増えていきます。もしかして一生、取り出さないかもしれませんが、どんどん「引き出し」の数を増やしていきましょう。

人間関係において、「笑い」は明確なグローバル言語です。笑かすのが上手い人はみんな上にいます。ぜひ笑わせる技術を磨いてほしい。

さて、感情における「情熱」とは一体何でしょうか。実は「Passion」という言葉がスローガンになっている会社は世界中にたくさんあります。 つまり「Passion」も「笑い」同様に世界共通です。ただ、情熱はうちに秘めているだけでは、全く人に伝わりません。「情熱」は、外に撒き散らしてなんぼです。それはなぜか。仕事を頑張るのは当たり前ですが、人が「頑張る人を助けたい」と思うのは、世界共通だからです。「なんとかこのビジネスを成功させたい」というパッションをまわりに撒き散らしながら仕事をすることが、まわりの共感を得て行くためには、とても重要です。

2, 30年前に「GNN:義理・人情・浪花節」という言葉がありました。 お礼をする、人に情けをかけるなど、これらも世界共通です。ドライだと思われる外資系でもほぼ同じ。義理を欠いた人間には二度と付き合ってくれません。

ただし、仕事の評価に感情を挟まないことも重要です。ゼネラル・エレクトリック(GE)の経営者、ジャック・ウェルチ氏の言葉にこうあります。「部下と仲良くしすぎるとその人の家庭が見えてしまうから厳しい評価ができない。だから、絶対に部下とは仲良くしない」と。私も、直接の部下と飲みに行くことはほぼありません。仲良くなりすぎてしまうと厳しいことが言えなくなり、かえってマイナスになります。

また「仲間」や「組織」と言われると自分の会社や部署を思い出しますが、重要な仲間や組織はそれだけではありません。例えば、皆さんが一緒に働いているエージェンシーさん、外部のサプライヤーさんも、仕事のアウトプットに大きな影響を及ぼす「仲間」や「組織」です。彼らの効率性やモチベーションもきちんとケアしてあげるのはとても重要です。普段から接する態度もそうですし、これまでの成功・失敗例もどんどん共有してあげると、よりビジネス全体に対する理解が深まり、強い組織ができあがっていきます。

7:Enjoy life

私は「ワーク・ライフ・バランス」という言葉が好きではありません。「ワーク」が悪者で、「ライフ」が良いものみたいだからです。でも、皆さん1日の大半は仕事をしていますよね。だから、仕事が楽しくなければ、人生も楽しくありません。「仕事なんて楽しめないよ」とよく言われますが、そんなことはありません。ほとんどの仕事は売上や利益をあげるために、あれこれやってみることですよね。これ、シミュレーションゲームと変わりません。仕事は、お金をもらって、人のお金で、シミュレーションゲームをしているようなものなのです。なので、仕事はゲーム感覚でぜひ楽しんでほしいと思います。

それでも嫌なこと、我慢できないことはあるでしょう。そんな時は「シンガポール原則」を思い出してください。何かに不満を感じた時に選べる行動は常に3択しかありません。①出ていく、②(ルールを)変える、③従う、この3択です。

シンガポールでは、道に唾を吐くとむち打ちの刑といった、とても厳しい罰則があると言います(事実は未確認)。おかしいと思ってもこれが法律なので、それが嫌ならシンガポールを出ていくか、法律を変えるか、我慢して従うかの選択しかありません。つまり、愚痴を言うのは無駄でストレスになるだけです。こうやって嫌なことがあっても、3択からどれを選ぶか決めて行動に移せば、ストレスはありません。

私はいつも笑顔で仕事を楽しんでほしいと思っています。「ワーク・ライフ・バランス」ではなく、ワークはライフの一部と考える「ワーク・ライフ・ブレンディング」をおすすめしており、私も実践してきました。

「Be Different」「Never give up」「Be Hungry」「Life is too short」「People are wonderful」「You are NOT alone」、そして何より大事な「Enjoy life」、以上が私の7つの価値観でした。

集合写真_登壇者がすすめる!はじめてのマーケティング関連書籍についてNiantic, Inc._足立 光氏とSATROI株式会社植山

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