データを活用したマーケティングの必要性が騒がれる昨今、DMPの導入を始める企業が増えてきています。DMPの種類(プライベートDMP、オープン(パブリック)DMP)の機能や導入することによってできることを初心者にも分かりやすく解説しました。
DMPとは
DMP(Data Management Platform)には、大きく分けて2種類あります。DMPは、顧客情報・売上/購買情報・自社WEBサイトアクセス履歴などの自社で取得できるデータや、自社サイト以外のCookie情報などを用いたユーザーの興味・関心データなど、点在する各種データを統合、分析し、広告配信やCRM(Customer Relationship Management)施策に活かすための基盤となるものです。
DMPは扱われるデータによって大きく2種類に分けることができます。
1.オープンDMP
オープンDMPとは、(自社ではない)様々なWEBサイトへのアクセス履歴などからユーザーの属性(デモグラフィック)情報や興味・関心、嗜好性などのオーディエンスデータを扱うプラットフォームです。これらのデータを、ユーザーを細かくターゲティングして広告を配信したり、ユーザーの興味関心に合わせた最適なメールやDMを送信するためなどに活用します。自社で保有していないデータを活用したマーケティングを行えるのが魅力です。
Intimate MergerやAudienceOneなどがクラウドサービスとして提供されています。
主要なオープン(パブリック)DMP
DMP名 | AudienceOne | AudienceSearch | Oracle BlueKai |
---|---|---|---|
提供元企業 | デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社 | 株式会社インティメート・マージャー | 日本オラクル株式会社 |
URL | https://www.dac.co.jp/service/solution/audience-one-itm | https://corp.intimatemerger.com/ | https://www.oracle.com/jp/data-cloud/products/data-management-platform/ |
特徴 | 月間4.8億UBのcookieデータを保有、利用企業数は900社以上、嗜好性クラスタを1,000以上保有 | 約4億件のオーディエンスデータを保有 | 世界でも最大級のオーディエンスデータを保有するBlueKaiを、2014年にOracleが買収 |
2.プライベートDMP
プライベートDMPとは、オープン(パブリック)DMPで扱われるオーディエンスデータに加え、自社で取得可能なデータを統合、分析するためのプラットフォームです。オープン(パブリック)DMPと違って、データは自社で管理(自社が管理する環境内に構築)することになります。
顧客情報や購買情報、さらには自社WEBサイトへのアクセス履歴、問い合わせ履歴、アンケートデータやソーシャルデータなどを扱うことが可能です。これらのデータを、ターゲットを絞った広告配信やメール、DMの実施などに活用します。
DMPの導入によって実現できる施策とは
基本的なDMPの知識を理解した次には、実際にDMP導入によってどのような施策展開が可能となるのか、主にプライベートDMPを念頭におき、活用ステップごとに紹介していきます。
1.ファーストパーティデータ(1st party data)の整理
まずは、自社が保有しているデータの整理が必要です。
年齢や性別など属性情報を含む顧客情報や購買情報などは、ECを運営されている企業や、すでにCRMやERPが導入されている企業であれば比較的容易に抽出可能でしょう。
ただし、WEBサイトアクセス履歴やメールクリック履歴、ソーシャルを含むキャンペーン参加履歴やアンケートなどの顧客の“アクション情報”まで管理できている企業は少ないのではないでしょうか。
これらを整理しておく必要があります。
2.ID統合による分析
上記のような顧客を把握するためのデータは数多く存在するものの、管理するシステムやツールが違うこと、それぞれのデータを紐付けるための”ユニークID”が付与されていないことなどから分析が難しい、という問題はさまざまな企業で発生している問題の1つでしょう。
DMPを基盤として各種情報が統合されることにより、はじめて多角的な顧客分析・購買分析が可能となります。
3.サードパーティデータ(3rd party data)との連携
“2”の分析により、「優良顧客になる可能性の高い顧客」や「商品Aを新規で購入しやすい顧客」 の属性情報やWEB上の特徴的な行動履歴が把握できれば、それらに近しい属性または行動をしているユーザーをサードパーティデータからセグメントすることが可能です。
セグメント毎にアプローチ内容を変えていくことで、新規顧客を効率的・効果的に集めるような施策を立てられるでしょう。
(オーディエンス拡張とも言われますが、提供ベンダーによって扱うデータが異なるため、活用時には注意が必要です。)
4.ターゲティング配信、コンテンツ配信
これまでのデータ整理・分析、サードパーティデータ活用を行うことによって、マーケティング施策をより高度に、緻密に展開することが可能となります。
たとえば、「商品Bを多く買う顧客のLTV(Life Time Value)が最も高い」ということがDMPを活用した分析から導き出されれば、商品Bと一緒に買われる確率の高い商品Cを買っているが、商品Bを買ったことのない顧客にメールマーケティングを行う、といった施策展開が可能となります。
メールマーケティングのメールクリック率、サイト全体のコンバージョン率向上にもつながるでしょう。
また、ユーザーの興味・関心に合わせたコミュニケーションが可能となるので、メールのオプトアウト率低下、広告反応率の維持や向上などの効果も期待できます。
事例として、ZOZOTOWNさんではDMPを活用して140種類ものパーソナライズされたメールを毎日配信しているそうです。
CF) http://markezine.jp/article/detail/20277
データの集約から分析、それを基にしたアクションまで自動化しており、かなり高度なDMP活用となるでしょう。
ここまでできるのは同社のCFM(Customer Friendship Management)という顧客への接し方や考え方が根底にあるからではないかと思います。
5.広告配信
DMPのオーディエンスデータが最もうまく活かされるのが、広告配信です。オープン(パブリック)DMPにしろ、プライベートDMPにしろ、オーディエンスデータの分析結果をもとに最適なターゲットへ向けてディスプレイ広告を配信することができます。
たとえば、「商品Bを多く買う顧客のLTV(Life Time Value)が最も高い」ということがDMPを活用した分析から導き出されれば、商品Bをよく買う顧客属性情報から、同一属性情報をもつユーザーに向けた広告配信といったことが実現可能です。
DMP導入にあたっての課題
このようにさまざまなメリットがあるDMP導入ではありますが、導入にあたっての課題やハードルはないのでしょうか。
DMP導入・運用における課題を整理してみたいと思います。
1.プロジェクトが大規模になりやすい
取り扱うデータの多さやデータ整備不足、それに伴い増えていく関係部署、セキュリティ面の考慮など、DMP導入プロジェクトは肥大化していく可能性をはらんでいます。
さらには、人的リソースの確保や多額のシステム投資など予算問題、プロジェクトとして年単位になるようなケースもあるでしょう。
具体的な成果(がでる傾向)を出すまでにプロジェクト体制を維持できない、という問題が発生します。
2.既存データが整備されていない
・顧客情報と購買情報が実はユニークIDで紐付いていなかった
・顧客の属性情報が抜け漏れだらけで精度の高い分析ができない
など、いざ導入となって社内ヒアリングをしていくと、現状のデータ整備状況がボトルネックとなってしまうケースも散見されます。
3.データサイエンティストははじめとしたデータ活用人材の不足
せっかくの分析基盤と施策展開への手段を手にしたとしても、それを活用する人材が不足していれば“宝の持ち腐れ”にしかなりません。
各種データから意味ある情報を取捨選択し、仮説にもとづいて施策を考え、実行し、その結果を基に次の施策につながるような分析をしていく、つまりDMPを活用した施策のPDCAサイクルを回せる人材を登用する(育成していく)必要があります。
まとめ
DMP導入によって実現できるマーケティング施策と、導入あたっての課題を見てきましたが、いかがでしたでしょうか?
「ビッグデータを活用して新しい施策を・・・」と考えているマーケティング担当の方も増えているとは思いますが、まずは「自社が保有するデータを把握し、整理する」ことが最も重要です。
顧客管理システム以外で個別に管理されているExcelデータや紙のデータなどはないでしょうか?自社に眠っているデータは宝の山です。
それらを活用できるように整理しておくことがDMP活用の第一歩となるでしょう。
DMP導入と合わせて考えたいマーケティングオートメーション
「DMPは難しいかもしれないが、一歩踏み込んだマーケティング施策に取り組んでいきたい」という方には、マーケティングオートメーションツールがオススメです。
顧客データ(リード情報含)としてメールアドレスを保持しており、自社WEBサイトにトラッキングタグを設置できるようであれば、マーケティングオートメーションツール活用によって、WEBアクセス状況に応じた顧客フォローが可能となります。
特に検討(商談)期間の長い傾向にあるBtoBサービスや高単価のBtoCサービスの見込み顧客管理ツールとして、マーケティングオートメーションは活躍します。
自社サイトの顧客事例などの特定ページを見ているなどを条件に、メールの内容を変更(パーソナライズ)して反応率を高めたり、それらのログをスコア化して指標化することで、スコアが一定以上になった顧客から営業アプローチ開始、など見込み顧客への対応プライオリティづけも可能となります。
DMP導入の入り口として、マーケティングオートメーションツールを是非検討してみてください。