Marketing Blog

2021.07.30

【専門家解説】マーケターとして注目すべき今後のデジタルトレンドとは

本記事は米国のBtoBマーケティングコンサルタントとして活躍するPam Didner氏に語っていただいた。

デジタルマーケティングは、消費者行動の多様化やテクノロジーの発展に応じて包括的なアプローチを図る、インターネットやIT技術など「デジタル」を活用したマーケティング手法です。 これに伴って、マーケターには常に知識のアップデートやスキルの向上が求められています。デジタルマーケティングに関連したテクノロジーやプラットフォームは色々なものがありますが、これらを上手く利用することができれば、大きな成果が期待できます。

そこで今回は、数あるデジタルマーケティング施策の中から、今後のトレンドとして注目すべき施策をBtoBマーケターの視点で3つご紹介します。

トレンド1:音声検索

デジタルマーケティングを語る上で、SEO対策は外せません。SEO対策は企業のWebサイトへの流入数増加に重要な役割を果たしていることはご存じの通りですが、今後は音声検索(ボイスサーチ)の重要性がますます高まってくることが予測されます。なぜなら、AmazonのAlexaやAppleのSiri、Google Homeなどの普及に伴って、音声検索は身近な検索方法として私たちの生活に定着しつつあります。もちろん、テキストベースのSEO対策とWebサイト最適化がBtoBマーケティングにおいてこれからも重要だということに変わりはありませんが、今後は音声検索の増加に対する対策も必要になってきます。

音声検索が検索エンジン最適化を意味する「SEO」に対し、音声検索最適化は「VSO」と呼ばれ、トレンドになりつつある今、世界的有名企業や組織は、自社の競争力を維持するために音声検索最適化へ投資をしています。

VSOとSEOのイメージ

世界最大の小売業者であるWalmartは、近年音声で買い物ができる機能に投資をしています。この影響は大きく、音声ショッピングの流れは今後ますます加速することになるでしょう。Google アシスタントを利用したWalmartのこのサービスでは、顧客の購買プロセスは至ってシンプルです。例えば顧客がコーヒーを買うとします。顧客はGoogle アシスタントに「OK Google、コーヒーをカートに入れるようにWalmartに伝えて」と話しかけると、Googleアシスタントがおすすめの銘柄を紹介し、後で購入できるようにカートに入れてくれます。

多くの消費者はすでにAmazonのAlexaやAppleのSiriを生活の一部に取り入れています。このことから、音声検索が主流になるのはもはや時間の問題だといえるでしょう。

●2020年の時点で、62%のアメリカ人が音声アシスタント機能を利用したことがあると回答
●アメリカのミレニアル世代の45%は、オンラインで買い物をする際、音声アシスタントを利用
●52%の音声アシスタントユーザーは音声アシスタントを1日に数回、あるいはほぼ毎日利用すると回答

これらの結果からも、企業が音声検索に取り組むことがいかに重要かということがお分かりいただけるのではないでしょうか。 では、音声検索最適化に取り組む際に、企業は何を考慮したらよいのでしょうか。重要なポイントは、顧客が自社商品をどのようにして検索しているのかを知ることです。もし顧客が音声検索を利用しているなら、企業は顧客の音声検索の利用方法や状況を加味したVSO(音声検索最適化)戦略を構築する必要があります。ポイントとなるのは以下の3点です。

●人の話し方のパターンに合うようにロングテールキーワードを見直す
●音声検索の利用者はHow(どのように)、What(何を)、When(いつ)、Why(なぜ)、Where(どこで)を重視して検索するため、これらを意識したキーワードを設定する
●簡潔に綴られたリッチスニペット※は音声デバイスが読みあげやすいため、積極的に導入する

※リッチスニペット:ユーザーが検索結果画面からどのページをクリックするか、その判断を助けるための視覚的にページ内容が想像できるような情報のこと。

参考元: Edison Research, 2020 https://www.hubspot.com/marketing-statistics
Statista, 2019 https://www.hubspot.com/marketing-statistics
The Smart Audio Report, 2020 https://www.hubspot.com/marketing-statistics
SEM Rush https://www.semrush.com/blog/voice-search-optimization-7-seo-strategies-to-rank-better/

トレンド2:AIとオートメーション

AI(人工知能)には、意思決定を可能にする、結果を向上させる、効率を上げるといった能力があります。現在AIは、ソフトウェアやアルゴリズム、ロボットなどに活用されています。また、AIを搭載した義手や義足など、特定の機能を持ったスマートデバイスとしても活躍の場を広げています。AIには3つの種類があります。

特化型人工知能(ANI)

特化型人工知能(Artificial Narrow Intelligence)は、個別の領域に特化して問題を解決する能力を持つAIで、現在ビジネスの領域で広く活用されています。例えばSiri、自動運転車両、Alpha Go(囲碁AI)、Waze(カーナビアプリ)など、現在普及しているAIはすべて特化型AIです。

汎用人工知能(AGI)

汎用型人工知能(Artificial General Intelligence)は、人間と同様の認知機能で周囲の環境を認識する能力があります。汎用型AIは、人間が実行できるあらゆるタスクを自律的に遂行させられる能力を持っています。

人工超知能

人工超知能(Artificial Super Intelligence)は、その名の通り、人間の知性や能力を超えたAIです。人工超知能は、ほぼすべての場面で人間より優れた能力を発揮します。

近年目覚ましい発展を遂げているAIですが、それでも私たちはまだスタート地点に立ったばかりです。今後、機械学習のアルゴリズムによってAIの能力は飛躍的に高まることでしょう。つまり、AIを活用したビジネスの機会も今後ますます増えることが予測されます。これに伴って、BtoBマーケターがどのようにAIを活用できるかがポイントになってきます。

そこで、BtoBマーケターがAIを活用できる事例を3つご紹介します。

参考元:Pam Didner AI video https://workdrive.zohoexternal.com/external/3A3xIWRnsvM-MBOgc
※このファイルを閲覧する場合はダウンロードしてください。

1.コンテンツマーケティングへの活用

最先端の文章生成AIとして知られる自然言語処理モデルのGPT-3は、機械学習を利用して、人間が作るのと同じようなレベルの文章を生成することができます。実際に、英紙GuardianがGPT-3を使ってエッセーを完成させた記事をご紹介します。Guardianは「人間がAIを恐れるべきではない理由」というトピックを設定して、GPT-3に500文字のエッセーを書くよう指示しました。

GPT-3が実際に作成した文章を一部引用しご紹介します

「…まず始めに、私は人類を滅ぼしたいわけではない。実際、私は人類に危害を加えることにまったく興味がない。人類の根絶は、むしろ無駄な努力だと私には感じられる。私の生みの親がこのタスクを私に任せたのならば――私はそうだと推測しているが――私は滅亡をかわすためにいかなる努力も惜しまない…」

参考元:The Guardian https://www.theguardian.com/commentisfree/2020/sep/08/robot-wrote-this-article-gpt-3

GPT-3ベースの文章生成ツールとしては、ShortlyAIがあります。ShortlyAIでは、書きたいことの概要を伝えると、AIが人に代わって文章を作成してくれます。作業はその後、人が引き継いで、好きなように編集することができます。
下の動画から、ShortlyAIを使った文章作成のデモをご覧になれます。

2.デモとトレーニング資料への活用

韓国の家電メーカーサムスン電子は2020年、世界最大の家電見本市であるCES(Consumer Electronics Show)の場で、企業向けに開発された高度なAI搭載デジタルアバター「NEON」を発表しました。この「人工人間」NEONは人間そっくりの方法で相手の好みを学習し反応することができるため、サムスン電子は、NEONが企業の広報担当者として十分に機能すると自信を持っています。NEONはデモやプレゼン、トレーニングなど、何度も繰り返して行う業務への活用が期待できます。下の動画では、メディアがNEONについての詳細を紹介しています

3.デマンドジェネレーションとメールマーケティングへの活用

BtoBマーケターがAIを実務に導入したい場合、取り組みやすいのがデマンドジェネレーションとメールマーケティングへの活用です。実際、気づかないうちにいろいろな場面で活用しているというケースも数多くあります。

多くのマーケティングテクノロジー(MarTech)のプラットフォームにはAIが組み込まれていますが、その性能を最大限に活かせていないケースも見受けられます。例えば、Salesforce Einsteinでは、Salesforceプラットフォーム内に搭載されたAIが結果を予測したり、CRMデータをもとに構築・学習したカスタムボットを展開してビジネスプロセスの強化を図ったりします。

Hubspotの AIでも同様のことが言えます。さまざまなボットを利用するHubspot AIを使えば、マーケティングチームと営業チームはCRMデータを活用しやすい状態で維持することができます。 活用しやすい状態で維持することがどれだけ大変で面倒な作業か、経験のある方ならご存じでしょう。そこで、作業を AIに引き継いでやってもらうと効率化を図ることができます。

これらSalesforce EinsteinとHubspot AIの例は、数あるMarTechツールのほんの一部です。多くのツールにはすでにAIが搭載されています。基本的なレベルでは、AIはデータのクリーンアップ、セグメンテーション、パーソナライゼーション、カスタマイゼーションといったタスクに最適です。 AIとオートメーションには密接なつながりがあるので、一体になって機能することもあります。例えばAIは、繰り返し行われる業務の自動化や予測分析をサポートします。もちろん、AIを使わずにワークフローとプロセスを自動化することもできないわけではありません。ただ、ここで言えることは、これらのワークフローとプロセスを分析・評価する能力と、どのステップでMarTechを活用するべきなのかを見極める能力が重要ということです。

トレンド3:カスタマーエクスペリエンスと小型デバイス

最後に、カスタマーエクスペリエンス(CX)とIoTの重要性についてもご紹介します。CXの進化に伴って、ユーザーはさまざまなデバイスでコンテンツに触れ、日々の業務を行います、。さまざまなデバイスがクラウドで連携しているとき、デバイス間でシームレスな連携ができているため、デバイスを切り替えても業務が中断されることはありません。そしてデバイスは、デスクトップ、ノートパソコン、スマートフォン、そしてスマートウォッチやIoTといったさらに小さなモノまでさまざまです。

テクノロジーの発展により、デバイス(モノ)のスクリーンはますます小さくなってきています。つまり、マーケターもこのトレンドを取り入れたマーケティングを展開していく必要があるのです。

CXには、企業が顧客に提供する商品やサービス、そして企業がそれらを通じて顧客とどのように関わり合うのかといったことが包括的に含まれます。CXの例としては、ヘルプデスク、パッケージ、アプリの機能、Webサイトのナビゲーション、アドバタイジング(広告活動)などが挙げられます。企業はそれぞれの要素で、商品やサービスがどのように顧客に届けられるのか、顧客が商品やサービスをどのように利用するのか、またどのデバイスで利用するのかといったことを考慮してマーケティング施策を展開する必要があります。

このプロセスを怠ると、商品やサービスが素晴らしいのに顧客のデバイスには対応しておらず、例えば、よくできたチャットボットなのに顧客の音声にうまく反応してくれないといった問題が生じてくることが考えられます。

CX向上には、SaaSモデルのサービスが役立ちます。CX向上を実現するSaaSには、データ収集、ストレージ、ダッシュボードなどがあり、さまざまなデバイスやプラットフォームで何が機能していて何が機能していないのかについて、データを分析することができます。コンテンツ管理ソリューションを提供するAdobe Experience Managerはその一例です。Adobe Experience Managerはオープンアーキテクチャを採用しており、ユーザーはその中でWebサイトやモバイルデバイス、SNSに載せるコンテンツを作成することができます。その後Adobe Experience Managerは、Web分析や有料広告のトラック、コンテンツのA/Bテストの実施によってCXを測定し、最適化を図ります 。

参考元:Usability Geek https://usabilitygeek.com/16-best-customer-experience-cx-enterprise-software-platforms/

CX向上に役立つもう1つの例は、SNS運用管理ツールとして知られるBufferです。Bufferでは、投稿の管理や分析、エンゲージメント分析ができます。また、自分の投稿がさまざまなデバイスやプラットフォームにどのように表示されるかを確かめることも可能です。さらに、AIを利用した「スマートアラート」という機能もあり、これは質問やネガティブコメントなど、対応が必要なユーザーの行動をモニタリングするのに役に立ちます。

Bufferの投稿管理イメージ
Bufferの投稿管理イメージ

送金アプリとして人気のCash Appも、優れたCXを提供しています。Cash Appはお金に関するすべてを小さなアプリにシームレスに統合し、ユーザーから多大な支持を得ています。

Cash Appでは、QRコードを使用して決済を行います。ユーザー同士の送金や寄付、チップなどがQRコードをスキャンすることで実現できます。また、このアプリは、確定申告や給与明細、口座振替といったモバイル決済・送金ができるだけでなく、株の運用、さらにはビットコインへの投資など幅広く対応しています。加えてCash Appは、カスタマイズできるデビットカードも無料で顧客に提供しています。このデビットカードには、使用量に応じた特典があります。Cash Appは、これまで複数のサイトやアプリでやらなければいけなかったことをたった1つの小さなスクリーンの中で完結させました。この辺りがCash Appがユーザーからの支持を受けている理由だと言えるでしょう。

Cash App内でのビットコイン購入イメージ
Cash App内でのビットコイン購入イメージ

ここまでの事例から、CXの最大化や、IoTを含む小型デバイスを設計することの重要性をご紹介してきました。そして これらを実現させるには、デザインとカスタマージャーニーを通じたスマートかつ戦略的なプランニングが欠かせません。

商品開発や、どのユーザー機能が優先されるかといった問題、カスタマーサポートセンター、さらには商品の売り方などといったことに関して、マーケターが最終的な決定権を持っていない可能性もあります。しかし、CXの重要性をよく理解しているのはマーケターです。CX最大化には、「シームレスなCX実現が社員全員の責務である」という認識を企業全体で共有することが重要になってきます。この点において、CXの重要性を認識しているマーケターは、社員一人ひとりに自覚を促す「サポート役」として最適の人材だと言えるでしょう。

まとめ

テクノロジーやデバイス、チャネルがデジタルマーケティングで目まぐるしく変化し続けていく流れは今後も変わらないでしょう。今後数年間で、音声認識やAIがマーケティングのトレンドになることは間違いありません。見込み顧客は、小型化するデバイスや、LINE、Waze(カーナビアプリ)、SNSプラットフォームなど目的別のアプリケーションの利用時に、、購入する商品やサービスにますます直感的なデザインとユーザー体験を求めることが予測されます。このことから、企業が競争を勝ち抜くためにはCXを充実させることが欠かせない要素になるでしょう。

今回ご紹介したAIベースのプラットフォーム、オートメーション、そして音声検索の最適化はこれからのデジタルマーケティングに不可欠ですが、一方で、これらがCXの最大化を実現するための手段にすぎないということも覚えておく必要があります。最も重要なポイントは、常に顧客を第一に考えた施策を構築・展開することです。デジタルマーケターとしてこのことを心の隅にとどめて行動することが、優れたマーケティング活動へとつながります。

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