マーケティングを推進する上で、社内外の様々な人から意見を募りたい場面があります。そんな時に有効な手段の一つがアンケートの実施です。
かつてはアンケートを取ろうと思うと、事前準備から実施、データの集計まで多大な手間とコストがかかりました。しかし昨今では、「Google Forms」などをはじめとしてアンケート用の便利なWebサービスが充実してきたこともあり、比較的手軽に実施できる環境が整っています。
この記事では、これからアンケートの実施を検討中の方に向けて、アンケートの作成から実施までの手順、効果的に実施するためのポイントなどを詳しくご説明します。
アンケート作成/実施の前に決めておくべきこと
「アンケートを実施しよう!」と思い立ったら、いきなり作成に着手するのではなく、まずは実行計画を立てるところからはじめましょう。
アンケート実行計画では、5W1Hのフレームワークに沿って以下のような点を具体化するのがおすすめです。
- アンケートの目的(なぜやるのか?/Why)
- 対象者(誰の意見を集めるのか?/Who)
- ヒアリング内容(何を聞くのか/What)
- 実施場所(どこでアンケートを実施するのか?/Where)
- 実施方法(どんな方法/ツールを用いて実施するのか/How)
特にアンケートの目的(①)は、初期段階で可能な限り具体化しておくことが求められます。というのも、この点が明らかになっていなければ、誰に対して何をヒアリングすべきかが定まらないためです。
目的が明らかになれば、おのずとアンケート実施対象者(②)とヒアリング内容(③)が決まります。そして、対象者とヒアリング内容が決まれば、どこで(オンラインかオフラインか、など)(④)どのような方法/ツールを用いてアンケートを実施するのか(⑤)を考えはじめることができます。
遠回りに思えるかもしれませんが、まずはこのような流れを意識してアンケート実施の計画を具体化した上で作業に取り掛かることをおすすめします。
アンケートの作り方とコツ
ここからは、具体的なアンケートの作り方をご説明します。アンケートの作成は、基本的には下記のようなステップで行います。
以下、順に見ていきましょう。
STEP1. 質問内容決める
はじめに、アンケートの目的を踏まえて質問したい内容を洗い出します。
たとえば、新商品企画の参考情報として消費者の意見を聞きたいという場合は、同じ商品カテゴリーでよく購入する他社の商品名、その商品を買う理由、購入しやすい価格帯、購入場所などが考えられます。新規リード獲得を目的としたセミナーでアンケートを配布する場合は、製品導入予定の有無、導入予定時期、予算規模、検討状況などが質問の候補となるでしょう。
質問内容を決める際は、「はじめに考えられるものを可能な限り洗い出す」→「内容が重複するものを省くなどして質問数を絞る」の二段階のステップを踏むことをおすすめします。あまりにも質問数が多いと、回答者の忌避感(回答を避けたいと思う気持ち)を誘発する恐れがありますので、この点も考慮に入れた上で、適度な数に絞り込みましょう。
STEP2. 各質問の回答形式を決める
次に、各質問についてどのような形式で回答してもらうかを検討します。代表的なアンケート回答形式としては、下記のようなものが挙げられます。
回答形式の種類 | 特徴・用途 | WEBフォームの場合の項目タイプ |
---|---|---|
シングルアンサー | 複数の選択肢から一つを選ぶ回答方式。性別や年代など、回答が一つに限られる場合に用いる。 | ラジオボタン |
マルチアンサー | 複数の選択肢から複数を選ぶ回答方式。なお、「この中から2つ選んでください」というように回答数を限定する場合はリミテッドアンサーと呼ぶ。 | チェックボックス |
フリーアンサー | 記述式で回答者が自由に回答する方式。回答者の意見や感想を問う質問などに用いる。 | テキストエリア |
順位回答 | 提示された選択肢に対して順位を付ける回答方式。すべての選択肢に順位付けする方法と、上位のみ順位付けする方法がある。 | ドロップダウンリストやテキストボックス等を複数組み合わせで実現する場合が多い |
数値配分法 | 10点・100点などの持ち点を、あらかじめ提示した選択肢に配分する回答方式。前述の順位回答よりさらに詳細な分析が可能。 | ドロップダウンリストやテキストボックス等を複数組み合わせで実現する場合が多い |
スケール | 設問に対して、「あてはまる」「ややあてはまる」「あてはまらない」など多段階の選択肢を与えて回答者の同意度合いを測定する方式。リッカート尺度とも呼ばれる。 | ラジオボタンなど |
マトリックス | 同種の質問を一つにまとめて表形式で回答を促す方式。複数の製品・ブランドなどに対して同一軸で評価してもらいたい場合などに用いる。 | 表組とラジオボタン/チェックボックスなどの組み合わせ |
回答方式を決める際のポイントは、質問の内容、集めたいデータの性質によって適切なものを選ぶということです。
たとえば、性別や年代のように答えが一つに限られる場合は、シングルアンサー形式を採用することで回答者の負荷を減らすとともに、事後の集計もやりやすくなります。一方、自社の製品・ブランドに対する消費者の意見を幅広く集めたい場合には、フリーアンサー形式を選ぶべきでしょう。
一般的に、自由記述式よりは選択式の方が定量化しやすく集計・分析が容易です。ただし、同じ選択式であっても、順位回答や数値配分法、スケールなどの手法では集計時にひと手間かかることが多いです。
事後の集計・分析作業まで視野に入れた上で、効果・効率の面で最適なものを選ぶよう心がけてください。
STEP3. 質問文を作成する
続いて、アンケートの質問文を作成します。質問文を作成する際のポイントは、大きく以下の3点です。
1.「読みやすさ」を意識する
回答者の負荷を軽減するため、文章の内容・長さとも「読みやすさ」「分かりやすさ」を意識しましょう。分量的には1~2行で、パッと見てすぐに質問内容が頭に入るのが理想です。
2.回答方式と矛盾しない
選択式の回答方式なら「選んでください」、フリーアンサーなら「記入してください」など、設定した回答方式にあわせて文章を組み立てましょう。
細かいことですが、意外にこの点に対応できていないアンケートは少なくありません。回答者を迷わせることのないよう、このような点まで配慮したいところです。
3.回答を誘導しない
これは無意識にやってしまいがちな失敗の一つですが、自社として「こう回答して欲しい」と思う方向に誘導するような質問文は基本的にNG(※1)です。余計なフィルターがかかっていない正確なデータを集めるためにも、この点は念頭においておきましょう。
※1:PRや知名度アップを目的とした一部の施策では、あえてこのような質問文を用いてアンケートやクイズを行う場合があります。
STEP4. 選択肢を決める
続いて、選択式の回答方式を設定した質問の選択肢を設計します。
選択肢の各項目にも、質問文と同じように分かりやすい単語・文章を採用することを心がけましょう。回答者の負荷を軽減するため、選択肢の数は一つの質問につき最大でも10個程度を目安とすることをおすすめします。また、どの選択肢にも当てはまらないというケースを想定し、「その他」などの項目を設けておくのも大切なポイントです。
STEP5. アンケート実施方式を決める
アンケートの質問文と選択肢が決まったら、そのアンケートをどのような形で実施するかを決めましょう。アンケートの実施方式には次のようなものがあります。
1.オンラインアンケート
WEBフォームなどを用いてオンラインでアンケートを実施する方式です。専用のアンケートフォームなどを用いれば、実施から集計まで効率よく行うことが可能です。
2.オフライン実施(電子媒体利用)
メールあるいはExcel、Wordなどの電子ファイルを用いてアンケートを実施する方式です。専用フォームなどを用意する必要がない分導入障壁は低いものの、事後の集計にひと手間かかるのがデメリットといえます。
なお、アンケートの作成にあたっては、Web上で無料公開されているテンプレートなどを活用すると便利です。
>bizocean
https://www.bizocean.jp/doc/category/208/
>経費削減実行委員会
https://econavi.owners.ne.jp/template/
3.オフライン実施(紙媒体利用)
アンケートを紙に印刷して回答者に配布する方式です。
従来、展示会やセミナーなどのイベント会場におけるアンケート実施では主にこの方法が用いられてきましたが、昨今はスマホの普及により、来訪者にQRコードなどを渡して事後にオンラインで回答してもらうようなケースが主流となりつつあります。
STEP6. アンケートを組み立てる
アンケート内容と実施方式が決まったら、採用した実施方式でアンケートを組み立てます。
たとえばオフラインで実施する場合は、ExcelやWordなどを使ってアンケートフォーマットを作成する必要がありますし、紙媒体を用いる場合はそれを印刷する必要があります。オンラインで実施する場合は、WEBフォームや専用のアンケートツールを使ってアンケート用のページを準備します。アンケートツールについては、次の節で詳しく説明します。
なお、アンケートを実装する際には、項目の並べ方にも工夫したいところです。
たとえば、優先度の高い項目は先頭付近に配置した方が回答してもらえる可能性が高まります。また、関連のある項目は一箇所にまとめ、連続して答えられるようにした方が回答者の負荷が下がります。回答者が無理なく回答を進められるよう、全体の流れを意識しながら組み立てるよう心がけましょう。
STEP7. アンケートの内容を最終確認する
最後に、完成したアンケートを全体的に確認し、誤字脱字、読みづらい所や回答しづらい質問などがあれば修正します。
可能であれば、作成者自身が実際に回答者の立場でアンケートに答えてみると良いでしょう。回答者と同じ視点に立ってアンケートの構成を見直すことで、作成時には見落としていた改善点が見つかります。
また、一般消費者向けのアンケートや社内の全従業員を対象とした大規模なアンケートであれば、作成者以外にも複数の人にチェックしてもらうことをおすすめします。
アンケート作成ツールについて
オンラインでアンケートを実施する場合は、専用のツールやアンケートフォームサービスなどを利用すると便利です。ここでは代表的なツール・サービスをいくつかご紹介します。
Google Forms
Google FormsはGoogle社が提供するフォーム作成ツールです。
Googleアカウントを開設していれば誰でも無料で使用でき、アンケートフォームの作成からデータの集計までシームレスに行えます。
Google Forms公式サイト
https://www.google.com/intl/ja_jp/forms/about/
Questant(クエスタント)
Questant(クエスタント)は、無料で利用できるアンケート作成サービスです。
前述のGoogle Formsが汎用的なフォーム作成ツールであるのに対し、Questantはアンケートに特化したサービスである点が特徴です。たとえば、データベースから質問タイプや選択肢を選んで使うことができたり、質問の分岐やスキップなどを柔軟に設定できたりします。さらに、アンケート実施後の集計・分析機能も充実しています。
Questant(クエスタント)公式サイト
https://questant.jp/
Microsoft Forms
Microsoft FormsはMicrosoft社が提供するフォーム作成ツールです。Microsoft365(Office365)を導入している企業で社内向けにアンケートを実施する場合、Formsがアンケート作成ツールの有力な選択肢の一つとなるでしょう。
Micfosoft Forms自体は有償のツールですが、MicrosoftのサブスクリプションサービスであるMicrosoft365(Office365)に加入していればライセンス内で使用可能です。シンプルな機能と分かりやすい操作性が特徴で、ドラッグ&ドロップで手軽に項目を編集できるほか、「問い1の回答が〇〇の場合はBに進む」といった分岐も設定可能です。
Microsoft Forms公式サイト
https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/online-surveys-polls-quizzes
アンケートの実施手順
アンケートの作成・組み立てが完了したら、次は実施フェーズです。
1. アンケートを実施する
事前に計画した方式に従ってアンケートを実施します。オンライン方式で実施する場合は、Webサイト上での告知やメールなどを利用してアンケートへの回答を促すのが一般的です。
紙媒体を使用する場合は質問・回答用紙を印刷し、回答者に配布します。セミナー会場などで配布する際は、事前に配布資料などとあわせて参加者に手渡ししておき、退室時に出口で回収するという流れが一般的です。
2. アンケート結果の集計と分析
アンケートは「作成して実施すればそれで終わり」ではありません。回収した回答を集計・整理し、グラフなどを用いて結果を可視化した上で、自社の活動に役立てられるように情報を取りまとめるところまでがアンケートの役割です。
先にご紹介したようなアンケートフォーム作成用のツールの中には、実施後の集計や可視化のための仕組みを備えているものが少なくありません。こうした機能をうまく活用することで、効率よく分析を行えます。ExcelやWord、紙媒体などを用いて実施した場合は、回収した回答を項目ごとに手動で集計するというひと手間が必要となるでしょう。
なお、集計の方法は回答形式によって異なる点に留意してください。たとえば、シングルアンサー、マルチアンサーなど選択式の回答形式の場合は、選択された項目の件数を単純にカウントしますが、数値配分法で設計した項目は、回答者が各選択肢に割り振った点数(数値)を割合で示すのが一般的です。
フリーアンサー形式は、一般には定性的な情報を集める目的で用いられますが、回答内に多く含まれるキーワードやフレーズを抜き出してカウントすることで、回答の傾向を定量的に可視化することも可能です。
アンケートの回答率を上げるためのポイント3つ
最後に、アンケートの回答率をあげるために押さえておくべきポイントを3つご紹介します。
1.アンケートの趣旨を伝える
目的がはっきり分からないと、回答者に不安感を与える恐れがあります。どのような趣旨でアンケートを実施するのかを、事前に回答者に伝えましょう。
2.回答に必要な時間の目安を明示する
アンケートへの回答にどの程度の時間がかかるのかが分からないと、回答を躊躇されてしまう恐れがあります。質問が全部で何件あり、回答にどの程度の時間がかかるのかを冒頭で明示しておくことで、このような懸念を払拭できます。
3.謝礼を用意する
アンケートに回答してくれた人に対して、現金やギフトカード、ポイントなどを謝礼(インセンティブ)として渡すのも、回答率を挙げる上で有効な手法です。
ただし、過剰な謝礼を設定してしまうと謝礼だけを目的とした回答者を誘致してしまい、適切な結果を得られなくなる恐れもあります。質問の数や内容の重要度に応じて、適切な謝礼を設定するようにしてください。
以上、この記事ではアンケートの作成から実施までの手順を詳しく解説しました。
アンケートは、商品設計やイベント企画などの方向性を決める上で非常に有力な手法の一つとなり得ます。記事中でご紹介したテクニックやポイントを参考に、貴社のマーケティング施策の一貫として活用してみてください。
マーケティング施策を実施するためにはMA(マーケティングオートメーション)の活用がおすすめです。MAを使えば、顧客情報と関連付けたアンケート収集やリード育成など様々なマーケティング施策を実施でき、より効果的なマーケティング戦略を展開することが可能です。
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システムエンジニア/フリーライター/BtoBマーケターの3つの顔を持つワーキングマザー。
BtoB商材を扱うIT企業に在籍し、課題解決ブログの立ち上げ・SNS活用を始めとしたコンテンツマーケティングの導入に取り組んだ経験を持つ。
ライターとしては20年を超える経験を有し、『小さな会社のAccessデータベース作成・運用ガイド』(翔泳社)をはじめ、プログラミング関連の著書多数。
現在はIT企業にてシステム評価に携わりつつ、IT、マーケティング分野を中心に精力的に執筆活動を展開中。