マーケティングなどビジネスにおける「ペルソナ」とは、自社の製品やサービスの典型的なユーザーを体現する仮想的な人物像です。
ペルソナの作り方や具体的な作成事例を初めての方にも分かりやすく解説するとともに、ペルソナ作成に役立つテンプレートをご紹介します。
ビジネスでの「ペルソナ」の意味とは
「ペルソナ」という語にはもともと「仮面」や「人格」といった意味がありますが、マーケティングの文脈においては、自社の製品・サービスを利用する典型的なユーザー像をペルソナと呼びます。
マーケティング戦略を組み立てる際には、対象となるユーザー層を年齢や性別といった属性で絞り込んで「ターゲット」を定義します。このターゲットに対して具体的な人格を肉付けし、あたかも実存する一人のユーザーのような形に仕立てたものがペルソナです。このようなペルソナを活用したマーケティング活動を「ペルソナマーケティング」と呼びます。
なお、ペルソナはマーケティング領域のみに限ったものではありません。例えばHR領域では、採用すべき人物像を具体化するためにペルソナが用いられることもあります。
ターゲットとペルソナの違い、具体例
ターゲットとは性別や年代、職業、地域など、見込み顧客の属性を表したものです。一方、ペルソナはターゲットをさらに細かく絞り込み、具体的な一人の人物像として作り上げるものです。
具体例
例えばターゲットは「30代」「会社員」「既婚」という属性で分類されます。ペルソナはここから家庭環境や仕事などを絞り込み、「32歳」「会社員」「既婚(夫、息子の3人家族)」「マーケティング部」「リーダーポジション」という具体的な人物像を作り上げます。
違い
ターゲットとペルソナについて、両者の違いをまとめました。主な違いは人物像にまで落とし込んでいるか、定性的な情報が含まれているかという点です。
ターゲット | ペルソナ | |
---|---|---|
表現方法 | 属性やセグメンテーションのみ | 属性を元にした架空の人物像 |
具体性 | やや低い | 高い |
構成情報の特性 | 定量的 | 定量的+定性的 |
活用シーン | ・広告出稿時の属性設定 ・メール送信リストなどの絞り込み条件 | ・カスタマージャーニー定義時の参考情報 ・コンテンツ設計時の参考情報 |
ペルソナの重要性とメリット、使われ方
ペルソナを定義する意義の一つは、ターゲットとなるユーザーに対する理解をより深められるということです。マーケティングにおいて何よりも重要なのは、製品やサービスを利用するユーザーのニーズを正しく理解し、適切なメッセージを届けることだといってよいでしょう。そのためには、ユーザーが何を考え、どのような場面でどんな行動をするかを把握しなくてはいけません。
例えば女性向け化粧品の商品企画を行う際には、「30代、女性、主婦、既婚者」といったターゲット層が定義されます。しかし、こうした属性情報の組み合わせだけでは、具体的な人物像を思い浮かべることはできません。そこで、趣味や性格、ライフスタイル、好きな雑誌など定性的な情報を加え、実存する人物のようなペルソナを定義するのです。
よりユーザー視点に立って考えられるようになるため、以下のようなシーンでペルソナが用いられます。
- カスタマージャーニーの検討
- MAのシナリオ作成
- コンテンツ設計 など
また、ペルソナには関係者の認識共有を促進できるというメリットもあります。ターゲット設定だけだと見る人によって解釈に差異が出てしまう懸念がありますが、具体的なペルソナを共有すれば、関係者全員の認識のブレ幅を最小限に抑えられます。
関連記事:わかりやすい「カスタマージャーニーとは」概念・必要性・事例
ペルソナはもう古い?
近年になって、「ペルソナはもう古い」「時流に合わない」といった意見をしばしば見聞きするようになりました。その背景には、インターネットやスマホの普及・マーケティングツールの進化などにより、デジタルマーケティングが高度化してきているという事情があります。
マーケティングオートメーションツールなどを駆使して、顧客一人ひとりのニーズにあわせたリアルタイムな接客を行うことが可能となった今、「代表的なユーザー像」としてのペルソナはもはや役に立たないのではないか…という主張です。 こうした主張にも一理ありますが、だからといってペルソナが全く不要になったのかというと、そういうわけではありません。
カスタマージャーニーの定義やコンテンツマーケティング戦略などにおいて代表的なユーザー像を具体化しておくことには十分意味がありますし、関係者間における認識共有にも、ペルソナが重要な役割を果たします。
ペルソナの作成~4つの手順と設定法~
ここからは実際にペルソナを作成する手順についてご紹介していきます。
1)企業の属性を定義する
BtoCビジネスの場合は顧客が個人のため、そのままペルソナを定義すれば構いません。しかし、BtoBビジネスの最終的な顧客は個人ではなく企業であり、BtoBのペルソナは「企業に属する従業員」という視点で定義する必要があります。
このため、まずはペルソナが所属する企業の属性を明確にします。具体的には、業種や業界、売り上げ規模、業界内におけるポジションなどを定義していきます。
2)担当者の属性を定義する
続いて、ターゲット企業に所属する担当者の属性を明確にします。ここでは、担当者の性別や年齢、所属部署、所属部署の人数、役職の有無などを具体化していきます。
BtoCでは、基本的に個人が製品の導入検討を行います。しかし、BtoBでは一つの製品の導入検討に複数の担当者が関わるケースが多いため、たとえば「情報収集を担当する企画部門担当者のペルソナ」「IT部門担当者のペルソナ」…というように、施策の対象となりうる担当者の種類ごとにペルソナを定義する必要があります。
3)担当者のユーザー像を具体化する
企業の属性と担当者の属性が定義できたら、これらの属性情報に対して定性的な情報を肉付けし、ペルソナとして具体化していきます。
BtoCの場合、家族構成やライフスタイル、趣味といった情報が重視されますが、BtoBでは所属部署における業務内容、抱えている課題、担当業務に対する姿勢(マインド)といった、業務寄りの情報に重心を置くのがポイントとなります。場合によっては決裁のポイント、よく利用する情報収集メディアなどを含めることもあります。
4)氏名・顔写真を添える
具体的なユーザー像が定義できたら、最後に氏名をつけ、顔写真を添えましょう。顔写真は必須ではありませんが、ペルソナにマッチした人物を添えることで、より具体的にユーザー像をイメージできるようになります。写真は画像素材集などから使用するほか、ペルソナのイメージに近い人物イラストを使用するのも一つの手です。
以下のページより、前述のような流れでペルソナ定義を進める際に役立つペルソナ設計シートを無料でダウンロードいただけます。ぜひ参考になさってください。
なお、ペルソナ定義の際に用いる属性は、BtoBとBtoCで異なります。本記事ではBtoBを前提としたペルソナ定義の手順をご紹介しましたが、BtoCの場合はターゲットが「個人」となるため、前述の1)で述べた企業属性の定義が不要となるほか、2)で述べた「所属部署における業務内容」「抱えている課題」といった企業よりの属性も基本的には使用しません。代わりに、趣味や家族構成、休日の過ごし方、好きなテレビ番組…といったより個人の嗜好に寄せた属性を具体化します。
どのような属性を用いるかは扱う商材・サービスによって異なります。BtoCも視野に入れたペルソナ設定の流れについては下記の記事にて詳しく解説しておりますので、ぜひご参照ください。
参考記事:市場調査からのペルソナ設定とその活用法
ペルソナ作成・活用における注意点
最後に、ペルソナの作成・活用における注意点を確認しておきましょう。
1)正確なユーザー像を定義する
ペルソナを作成するうえで重要なのは、事前の情報収集・調査に基づいて、可能な限り正確なユーザー像を定義するということです。想像や思い込みで不正確なペルソナを定義することは避け、正確かつ現実的なペルソナを定義します。
2)必要な情報のみを定義する
ペルソナは、より具体的にユーザー像をイメージするために用いられます。しかし、具体的にしようとするあまり、不要な情報まで付加する必要はありません。なぜなら、不要な情報を付加しすぎてしまうと、かえってユーザー像がぼやけてしまうケースがあるためです。
例えば、建設用重機の顧客を表すペルソナに、「好きな食べ物」の情報は必要ありません。自社が取り扱う製品・サービスのユーザー像を把握するのに、必要十分な情報のみを定義するよう心がけましょう。
3)定期的にペルソナを見直す
マーケティング戦略のレベルで製品やサービスのターゲットに変化が生じた場合は、それにあわせてペルソナも見直しを行いましょう。
たとえば、販売開始当時は従業員1,000人以上の企業を主要ターゲットとしていたものの、戦略変更によって50~100人程度の企業に注力することになったとします。この場合は、新たな属性情報にあわせてペルソナの再設定が必要です。
また、社会の変化などをトリガーとして、ターゲット企業層の市場における立ち位置が変化することもあるでしょう。そうした際にも、ペルソナの見直しが必要となります。
ペルソナはマーケティングの羅針盤
ペルソナは顧客・見込み顧客の代弁者であり、あらゆるマーケティング施策における羅針盤となる重要な存在です。商品企画部門や営業部門、その他関連部署の意見も参考にしつつ、正確で役立つペルソナを定義してみてください。自社内でペルソナを定義するのが難しい場合は、経験・ノウハウを持つ外部パートナーにペルソナ作成を依頼するのもよい方法です。
初めてのペルソナ設計は、テンプレートに沿って進めましょう。BtoBとBtoC、2種類のパターンをご用意しており、今すぐ使えるペルソナーシートを無料でダウンロードいただけます。ぜひご活用ください。
ペルソナ設計テンプレートのダウンロードはコチラ
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ペルソナ設計テンプレート
マーケティングにおける「ペルソナ」とは、自社の製品やサービスの典型的なユーザーを体現する仮想的な人物像です。
ペルソナを用いてマーケティング戦略を組み立てることで、よりユーザーに寄り添った施策を展開することが可能となります。
ペルソナ作成にぜひともお役立てください。
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ナレッジ・リンクス(株)代表、NPO法人HASHIRU理事。大学在学中に人材ベンチャーでRA/CAとして勤務し、新卒で医療系人材会社に就職。RAとして主に医薬品業界を担当し、トップセールスを達成した後に営業企画職を兼務。Webマーケティングに従事し、その後はITサービスの新規事業にも携わる。IT系企業に営業企画職として転職し、数値分析および戦略立案を担う。その後にナレッジ・リンクスとして独立し、約3年後に事業を法人化。多くのフリーライターとパートナーシップを構築し、幅広いコンテンツ制作を担う。個人でもライターや編集者として、主にスポーツ・ビジネス関連の分野で活動する。その他、ランニングクラブ運営やメディア編集長など。趣味はマラソン、4人の子を持つ大家族フリーランス。