モバイルファースト最新情報2018年版

鈴木あゆみ (デジタルマーケティング・コンサルタント)

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デジタルマーケティング業界において、数年前から「モバイルファースト」という言葉が一般的に使用されるようになりました。従来の「モバイルファースト」は、開発・デザインのサイト設計における用語として使用されていました。しかし最近では、「モバイルファースト」であることはもはや前提として認識されることが多く、さらに「コンテンツファースト」であることや「ユーザー中心設計」であることなど、従来の「モバイルファースト」の言葉の定義に加えて様々なニーズや要件がデジタルマーケティングのシーンにおいて求められるようになってきています。

そんな昨今だからこそ、「モバイルファースト」の言葉の定義について、理解が曖昧である・今更周囲に聞きづらいというマーケティング担当者の方も多いのではないでしょうか。今回は、「モバイルファースト」の定義や変遷、最新動向についてお届けいたします。

モバイルファースト

モバイルファーストの定義と変遷

モバイルファーストとは

従来の「モバイルファースト」の定義は、主にWeb開発において、PC版に先行してモバイル版から開発する手法、またはコンセプトを指す言葉(出典:IT用語辞典バイナリ)でした。「モバイルファースト」という言葉が日本でも使用され始めた当初(2010年頃)は、ちょうどレスポンシブWebデザインの登場に伴い、モバイルサイト制作の進化が注目され始めた頃でした。今となっては信じられないことですが、2010年頃まではPCからの閲覧のみを前提としてサイト設計がなされることが圧倒的多数で、モバイルサイトはPCサイトを制作した後にコンテンツを「移植」するという発想が主流でした。そのため、このように開発・デザインといったサイト設計に主軸をおく定義を発端として、「モバイルファースト」という言葉が使用され始めたことが分かります。

ちなみに、「モバイルファースト」の言葉の起源は、2009年にYahooのサイエンティストかつVPを務めるMarc Davis氏が最初に唱えはじめたのが発端であるという説がありますが、真相は定かではありません(ネット上でも様々な説が議論されており、一般的に同意がなされているものではありません)。2009年4月にサンフランシスコで開催されたイベント・Web 2.0 Expoにおいて、同氏が「モバイルファースト」について語ったことが明らかになっています(以下、Readwrite.comより引用)。

ヤフーのMarc Davis氏は、モバイルからのインターネット訪問、そしてモバイル業界の動向についてこう語った。『モバイルサイトが進化するにつれ、単にPCサイトをモバイルサイトの小さなスクリーンに移植すれば良いという方法は通用しない時代となった。「モバイルファースト」なサイト制作が求められるようになっている。「モバイルファースト」とは、モバイルデバイスの利点を生かし、モバイルサイトならではのユニークなものを制作することだ』

「モバイルサイトならではのユニークなものを制作することだ」という発言からも分かる通り、2009年4月当時は、レスポンシブデザインもまだ一般的ではなく、モバイルといえばiPhoneではなくフィーチャーフォンの時代でした(特に米国では、ブラックベリーのような画面の非常に小さな携帯電話が主流でした)。それ故、このような表現がされているものとうかがえます。当日は、Marc Davis氏のこの講演を発端に、多くのテック系企業が影響を受けたとされています。

 

モバイルファースト

 

モバイルファーストの定義の変化

開発手法の方法として提唱された「モバイルファースト」という言葉の意味が、次第に変化を遂げるようになったのは、2013年~2014年頃です。この頃から、レスポンシブデザインであることを前提とした上で、「モバイルファースト」に「コンテンツマーケティング」の概念が加わるようになりました。つまり、サイト設計の際に(PCサイトからの移植ではなく)モバイルサイトを優先して制作されることは当然であるとして、更にコンテンツの中身が問われるようになりました。

日本国内においても、この数年間で「コンテンツマーケティング」が大きく注目されるようになり、サイト設計においてはデザインや技術的な面だけでなく、コンテンツの中身が重視される傾向が一層高まりました。キノトロープ代表取締役社長・生田氏によると、「ユーザーのライフスタイルの変化のみならず、インターネットに求められるサービスやコンテンツが変化している」と指摘します。モバイルからの閲覧が主流になるに伴い、ウェブサイト内の導線が変化しました。従来のようなトップページからの変遷ではなく、ユーザーが見たいコンテンツに検索エンジンから直接アクセスするようになっています。この傾向を受け、「欲しい情報を素早く、クリックせずに入手したい」という現在のユーザーニーズに対して「最適な情報」を「最適な表現」で提供するサイトが求められている、というのが同氏の主張です。

また、海外ではMobile First Content Marketing Strategyという言葉が一般的に使用されるようになりました。UdemyのコースでもMobile First Content Marketing Strategyというコースが開講されています。2014年頃、モバイルユーザーがPCユーザーの数を上回るようになった頃から(下記画像参照)、Mobile First Content Marketing Strategyという見解が注目されるようになりました。

 

モバイルファースト

Source: www.smartinsights.com

Mobile First Content Marketing Strategyにおいては、モバイルフレンドリーなサイト設計や、モバイルからアクセスするユーザーに適切なコンテンツを届けることを目的としたコンテンツマーケティングが重視されるようになった点は、日本国内の「モバイルファースト」の概念と同様です。しかし、それに加えて国土の広い米国では、ロケーション別にユーザーの嗜好を加味し、地域別ターゲティングを設定する手法が重視されるようになりました。Content Marketing Instituteの記事では、Mobile First Content Marketing Strategyの最重要事項として地域別ターゲティング設定が紹介されています。これには各地域のユーザーの嗜好に合わせてコンテンツ作成・配信を行うことで、より効果的にモバイルファーストを実現することができる、といったニュアンスが含まれています。その他、ビデオコンテンツの配信やモバイルサイト向けの入力フォーム作成など、モバイルならではの施策が数多く登場するようになりました。

 

モバイルファースト
米国内での地域別のユーザーの興味・関心について、示しています。
Source: contentmarketinginstitute.com

モバイル ファースト インデックス(MFI)の登場

2016年11月、Googleがモバイルファーストインデックス(Mobile First Indexing)の導入について正式に公表しました。モバイルファーストインデックスの導入により、デスクトップ版のコンテンツではなく、モバイル版のコンテンツでの評価に主にもとづいてランキングが決定されるようになります。

近年では、Google 検索を使用するユーザーのほとんどが、モバイルから検索を行っているにもかかわらず、Googleのランニングシステムは、依然としてデスクトップ版のコンテンツを用いてユーザーとの関連性を評価していることが背景にあります。モバイルファーストインデックスを導入することにより、ユーザーにとって更に価値のある検索結果を提供できるようになるとGoogleは公表しています。

とはいえ、モバイルファーストインデックスの導入については、2017年11月時点では、まだ目途が立っていません。現在では、2018年中の実装が濃厚であるという見方がされていますが、詳細はまだ発表されていません。これだけ「モバイルファースト」の概念が一般的になり、モバイルからのサイトへのアクセス比率が年々増加している状況において、Googleの対応が追い付いていないというのは、意外な状況にも思えます。

モバイルファーストからモバイルベストへ

サイト設計においてモバイルサイトを優先して制作する意味での「モバイルファースト」(2009年~2014年頃)、そしてコンテンツマーケティングの意味を含む「モバイルファースト」(2014年頃~)についてこれまで解説してきました。最近では、この2つの「モバイルファースト」の意味に加え、ユーザーエクスペリエンスが一層重要視される傾向が高まっています。特に、スマートフォンやタブレットの普及後は、1人のユーザーが複数のデバイスからサイトへアクセスをするケースも一般的になりました。その一方で、異なるデバイスからアクセスをする1人のユーザーを同一人物として識別し、適切なコンテンツを配信し続けることは至難の業です。そんな中、注目を集めているのは「モバイルベスト」という概念です。

モバイルベストとは

「モバイルベスト」は、ユーザーがアクセスをするデバイスや配信チャネルを問わず、常に最高のユーザーエクスペリエンスを届けるものとする概念です(TUNE社の定義より引用)。「モバイルベスト」の概念においては、モバイルアプリの制作やモバイルサイトの最適化が、それ自体で完結化することはあり得ません。1人のユーザーが、朝の時間帯には通勤電車でモバイルからアクセスをし、昼間の時間帯には勤務先からPCでサイトを閲覧し、夜には自宅でタブレットかからアクセスを行うといったケースは珍しくありません。

また、同一デバイスからのアクセスであっても、複数のソーシャルプラットフォーム(FacebookやInstagram、LinkedInなど)を使い分けているケースも一般的なことです。ComScore社の調査結果(下記画像参照)では、50代以上のユーザーでさえ、複数のデバイスを使い分けていることが明らかになっています。

 

モバイルファースト
Source: www.smartinsights.com

 

マーケティング担当者は、モバイルファーストにどう向き合うべきか

企業のマーケティング担当者の方に求められる分析スキルは、年々ハードルが上がっています。クロスチャネル・クロスデバイスでデータを分析し、ユーザーエクスペリエンスを高めていくことは、容易なことではありません。TUNE社の調査によると、企業のマーケティング担当者の86%は、クロスデバイスでユーザーの行動を計測することができていないといいます。こうした状況に対し、デジタルマーケティング業界では様々な分析ツールが登場しているものの、企業としてはなかなか新しい分析ツールの導入や、マーケティング担当者の教育にリソースが回らないケースが多いようです。

一方、企業のマーケティング担当者として、デジタルマーケティング業界、とりわけモバイル分野への理解を深めていくには、どのような努力が必要になるのでしょうか。一つは、自身の担当部門に限らない、全社視点でのマーケティング戦略について理解を深めていくことが挙げられます。デジタルマーケティング領域の進化に伴い、マーケティング担当者には、ジェネラリストとしての柔軟性だけでなく、専門性が求められるようになりました。その一方で、Facebook広告担当者やリスティング広告担当者、あるいはコンテンツマーケティング担当者であっても、自身の専門分野や担当チャネルのみならず、他部署への理解や社内外のカウンターパートとのコミュニケーションが求められることには変わりません。

それに加えて、近年ではオフラインマーケティングも含め、全社視点でマーケティング戦略を捉えられることが重要視されるようになっています。デジタルのみ、オフラインのみで完結するマーケティング施策は、もはや成り立たないのです。

MAツールの活用という解決策

クロスデバイス・クロスチャネルでの分析が容易なことではない、というのは上述の通りですが、これに対する施策として挙げられるのが、MAツールの活用です。たとえば、MAツールの「SATORI」では、ブラウザ情報などにもとづき、プッシュ通知やポップアップなど匿名ユーザーに対するアプローチ施策が充実しています。マーケティング担当者が、データ分析や戦略立案に時間を割くことができない場合でも、SATORIアカウント内の蓄積データを活用することで、簡単に適切な施策を打つことができます。毎週、東京・大阪で少人数制セミナーを開催しておりますので、少しでも興味のある方は、一度ご参加されてみてください。

各社MAツールの比較には、以下の記事もあわせてご参照ください。

【2017年最新版】 マーケティングオートメーションツール 7社比較<目的別>

 

参照文献

・IT用語辞典バイナリ, ‘モバイルファ―スト’. [Online]. Available: https://www.weblio.jp/content/%E3%83%A2%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%88
・SARAH PEREZ, ‘What It Means to be “Mobile-First”’, 2009. [Online]. Available: http://readwrite.com/2009/04/06/putting_mobile-first_to_work/
・Udemy, ‘Mobile First Content Marketing Strategy’, 2015. [Online]. Available: https://www.udemy.com/mobile-friendly/
・Dave Chaffey, ‘Mobile Marketing Statistics compilation’, 2017. [Online]. Available: https://www.smartinsights.com/mobile-marketing/mobile-marketing-analytics/mobile-marketing-statistics/
・Devika Girish, ‘How to Create a Mobile-First Content Marketing Strategy’, 2014. [Online]. Available: http://contentmarketinginstitute.com/2014/01/create-mobile-first-content-marketing-strategy/
・Googleウェブマスター向け公式ブログ, ‘モバイル ファースト インデックスに向けて’, 2016. [Online]. Available: https://webmaster-ja.googleblog.com/2016/11/mobile-first-indexing.html
・Jessica Biber, ‘MobileBest: What it means and why you can’t afford to ignore it’, 2017. [Online]. Available: https://www.tune.com/blog/what-is-mobilebest/
・John Koetsier, ‘Customer journeys in a #MobileBest world, part one: Opportunities’, 2017. [Online]. Available: https://www.tune.com/blog/customer-journeys-mobilebest-world-part-one-opportunities/

PROFILE

鈴木あゆみ

デジタルマーケティング・コンサルタント


グリー株式会社、複数の外資系企業を経て、独立。海外企業におけるデジタルマーケティング施策の戦略立案を得意とし、日本市場へのローカライゼーションを幅広く手がける。
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