O2Oマーケティングの成功事例

井上 智紀(いのうえともき) (ニッセイ基礎研究所)

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O2Oマーケティングとは、Web(オンライン)上での活動を実店舗(オフライン)の集客・購買につなげる、またはその逆のオフラインで集客して、オンライン購買に繋げるマーケティング手法です。比較的新しいこの手法を、いち早く取り入れて成功している事例をまとめました。

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O2Oマーケティングとは

O2Oマーケティングとは、もともとは「Online to Offline Marketing」の略でWeb(オンライン)で集客した見込み客を店頭(オフライン)に誘導して購買につなげるマーケティング手法のことを指しています。
飲食や理美容などの対人サービスだけでなく、実店舗を持つ事業では、いかに店舗に集客するかが重要です。
従来であれば、マス広告やOOH(Out of Home:屋外広告)、各種のインターネット広告、自社のWebサイトなどを通じて認知を獲得することで、ある程度集客も期待できたものと思います。
しかし、インターネットの普及に伴い、流通する情報量が爆発的に増加するなか、消費者は無意識のうちに情報をふるい分け、必要な情報にしか接触しないようになっています。
大量に広告メッセージを発信したとしても、もはや費用にみあう効果(集客・売上)を得ることは極めて困難な時代となっているのです。
このような環境の中、効率的に実店舗への集客を実現するためには、特定のターゲットに対して、来店の動機となる具体的なメリットを提示することが求められます。
O2Oマーケティングでは実店舗(オフライン)での購買につなげるために、Web(オンライン)を通じて来店を動機づけるためにどのようなメリットを提供するかを検討することになります。
一方で、近年では様々な商品カテゴリーにおいてECサイトが充実していることもあり、実店舗への集客に成功したとしても、その場では購入に至らず、実際の購入は比較サイト等を通じて他店に流れてしまう、いわゆるショールーミングの動きも多く見られるようになっています。
こうした環境を前提とすれば、実店舗(オフライン)を訪れた見込み客が競合店に流出する前に、自社のECサイト(オンライン)に送客する、”Offline to Online(O2O)”のマーケティングの必要性も高まっているといえるでしょう。
このように、O2Oマーケティングは自社サイトやECサイト、実店舗といったオンライン・オフラインのチャネル間の連携により、見込み客を囲い込むためのマーケティング手法ということができます。
また、急速に普及しつつあるスマートフォンやタブレット端末は、マスメディアとの接触から消費者の時間を奪う だけでなく、消費行動においてもオンラインとオフラインの使い分けをさらに加速させているものと考えられます。
意識や行動の異なる多様な見込み客を囲い込み、効率的に収益につなげていくためには、オンライン・オフラインの双方における見込み客の行動に沿って適切なタイミングでメッセージを届け、自社のチャネルへと巧みに誘導していくことが肝要といえるでしょう。

「O2O」と「オムニチャネル」の効果の違いとは

O2Oと同様の概念として、「オムニチャネル」もよく聞かれるようになっていますが、O2Oはオムニチャネル・マーケティングのひとつとして位置づけられます。
「オムニチャネル」は、販売、流通に関わるあらゆるチャネルを統合し、有機的な連携を実現することであらゆるチャネルからのアクセスを顧客に保証することです。このことから、「オムニチャネル」では顧客の導線が複線的になることが避けられず、KPIは個々のチャネルについて、それぞれ期待される顧客の導線にあわせて異なる指標を設定することになるのではないでしょうか。
これに対しO2Oでは、先にも記したとおり、「オンライン」と「オフライン」をまたぐ導線を作ることに主眼をおいたものですから、顧客の導線は、概ねオンライン(オフライン)からオフライン(オンライン)へと、単線で捉えていくことになるでしょう。
このことは、KPIもチャネルごとに単一の指標として設定することができることを意味しています。
このように、「O2O」と「オムニチャネル」では想定される顧客の導線やKPIの設定の仕方は異なり、「オムニチャネル」では複線的な設計が求められるといえるでしょう。
以降では、具体的なO2Oの取り組みについて、事例をもとにみていきます。

クーポンを利用した事例

オンラインでの施策を通じて実店舗への集客を促す施策の代表例は、Webサイトやスマートフォンアプリでのクーポンの配布ではないでしょうか。

【「ガストアプリ」のクーポンとチェックイン】

全国1,379店(2015年5月末現在)を展開するファミリーレストラン(ファミレス)のガストでは、同社のスマートフォンアプリ「ガストアプリ」上でクーポンを配信し、来店促進を行っています。
同社が提供するガストアプリでは、アプリ限定のクーポンとともに、GPSを利用した店舗検索の機能を提供することで集客につなげています。
加えて、無料の会員登録によりポイントプログラムや会員限定クーポンの利用を可能にするなど、顧客の囲い込みに向けて様々なサービスを提供しています。
これらの会員向けの施策は、顧客の属性や行動に関する情報の取得・分析を通じて、店舗ごとなど、より詳細なマーケティングを可能にすることを意図したものといえるでしょう。

【「ユニクロ」のクーポンとチラシスキャン】

一方、ファストファッション大手「ユニクロ」のユニクロアプリでは、ガストと同様に店頭で提示することでモバイル会員限定価格商品が購入できるクーポンや店舗検索、アプリ内でチラシ情報を確認できる「デジタルチラシ」を通じて、アプリ(オンライン)から実店舗(オフライン)への導線をつくりだしています。
また、商品バーコードをスキャンすることで商品の詳細情報や他の消費者のレビューを確認できる「バーコードスキャン」により、同社商品への理解を深めてもらうという、商品(オフライン)からアプリ(オンライン)への導線設計もなされています 。
加えて、2014年に追加された「チラシスキャン」では、紙のチラシの商品写真を写すことで、商品の着用イメージの確認し、そのままカートに入れてオンラインストアで購入できる、顧客に紙のチラシ(オフライン)からオンラインストア(オンライン)への、ストレスのない導線を提供しています。
「ユニクロ」の取り組みの1つ1つは、オンラインとオフラインそれぞれの顧客接点を有機的につなげるO2Oマーケティングの実践例であるとともに、ユニクロアプリ全体としてみると、複線的な顧客の導線を保証する、「オムニチャネル」の実践例としてみることもできるでしょう。

SNSを利用した事例

最近では、TwitterやFacebook、LINEなどを利用したO2Oの取り組みも多く見られるようになってきました。

【クーポンなし!ダイソーのLINEアカウント運用

100円ショップを運営するダイソーでは、2014年4月よりLINE@の運用を開始し、画像とともに商品情報を発信しています 。
前述のとおり、店舗への集客を促すオンライン上の施策ではクーポンの配布が代表的ですが、同社では、100円ショップという同社の特性を考慮してクーポンの配布は行わず、商品情報を発信することでコアな顧客とのコミュニケーションをとることに注力しています。
こうした取り組みを始めた結果、LINE@で商品情報をアップした日は、店頭で商品を案内する機会が増えたり、紹介した商品の棚の前にお客様が集まる姿をよく見かけるようになるなど、店頭への送客を確実に実現しているようです。

【Twitter事例ハッシュドポンタ】

7,007万人(2015年5月末現在)の会員に対して、78社(2015年7月1日現在)と提携のもと約23,700店でサービスを提供しているロイヤリティ マーケティング社の共通ポイントサービス「Ponta」では、Twitter社の協力のもと、2013年7月より事前にアカウントを登録上、ハッシュ(#)タグつきでツイートするだけでエントリー可能なTwitter連動のキャンペーンシステム「ハッシュドポンタ」を開始し、H.I.S.や日本ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)などの企業がキャンペーンに利用しています 。
このうち、KFCでは、ハッシュドポンタの登録ユーザーについて、店頭購入時のPontaポイントを通常利用の5倍とするほか、未登録であってもKFCの公式Twitterをフォローした上で特定のハッシュタグをつけてツイートすることで、抽選で3名に全メニュー食べ放題・飲み放題が当たるキャンペーンを実施した結果、キャンペーン期間中の来店客のうち約4割を新規客が占め、ハッシュドポンタ登録ユーザーの3割が購買に至る、といった成果もみられたようです。
このように、特定のハッシュタグをつけてツイートすることで、店頭でのポイント加算などの特典を提示し、店頭への送客を促進する取り組みは、一見、比較サイトなどでのクーポン配布と何ら変わりがないようにみえます。
しかし、ハッシュドポンタでは、性別や年齢などの属性に加えてTwitter上でのつぶやきの傾向を含めてターゲティングできることから、性別や年齢などの属性で絞り込む程度の通常のキャンペーンに比べ、より高い効果が期待できるといえるでしょう。

位置情報を利用したサービスの登場

GPSを内蔵したスマートフォンが急速に普及してきたことで、最近では位置情報を活用したO2Oのサービスも登場してきています。
スポットライト社の「スマポ」や「楽天チェック」、リクルート社の「ショプリエ」などのアプリでは、スマートフォンの位置情報を活用して参画している店舗にチェックインしたり、商品バーコードをスキャンするだけで商品券などに交換できるポイントを付与することでユーザーを店舗に誘導しています。
また、店舗やイベント会場などを中心として、円形や多角形のエリア(ジオフェンス)を設定し、そのエリア内にユーザーが入った瞬間、店舗の情報やクーポンをプッシュ通知するといった取り組みも少しずつ行われるようになっています。
たとえばファーストリテイリンググループのブランド「ジーユー(GU)」では、スマートフォンのアプリを用い、スマートフォンの位置情報と連動して周辺店舗のセール情報や店舗のオープン告知をプッシュ通知し、店舗付近にいる顧客を店頭に誘導する取り組みを行っているようです 。

QRコードを利用した事例

よく飲食店で「LINEはじめました」という看板にQRコードが掲載されているのを見かけますが、これも立派なO2Oマーケティングです。
来店いただいたお客様(オフライン)をLINEやFacebook、Twitterの自社アカウント(オンライン)に誘導し、継続的にコミュニケーションをとっていくことで商品・サービスやスタッフとの関係を構築・深化させるなど、ブランド力の向上をはかる効果が期待できます。
また、こうした取り組みを通じてファンになっていただいたお客様に対して限定クーポンを提供し、再来店を促すなどの取り組みも効果が期待できるものと思われます。
実際に、下着を中心としたファッションアイテムを販売するピーチ・ジョン社では、店頭でのQRコードつきチラシの配布や公式サイトを通じて、LINE公式アカウントの「友だち登録」を促すとともに、1000円割引クーポンを提示して会員登録へと誘導しています。
また、購入額に応じた割引の提案をすることでお客様の店舗滞在時間や購入点数の増加などの成果もみられているようです。

ネットで注文・店舗で受取サービス

インターネットでいつでも注文可能だけど、お店とのつながりも欲しい。
特に家電やPCは買ってからの購入後に家まで持ち帰るまでが大変、ということがあります。
また、ネット通販により、購入は簡単にできても、仕事が忙しく平日はなかなか宅配便が受け取れない、という方も少なくないのではないでしょうか。
近年では、こうした状況に対応して、ネットで注文した商品を店頭で受け取れるサービスを提供するところもでてきています。
たとえば、全国100店舗以上(FC含む)を展開するピーシーデポ社では同社のPCDEPOT Web本店(オンライン)で注文した商品を、送料・手数料無料で近隣の店舗(オフライン)で受け取れる仕組を用意することで、Web(オンライン)だけで完結させず店頭に誘導し、顧客とのリッチなコミュニケーションを実現しています。

また、ジュンク堂書店では、Webサイト上で店頭の在庫を確認し、店頭に取り置きできる仕組を用意することで、お客様を店舗に誘導し、ついで買いを誘うことに成功しているようです。

 

いかがでしたか?様々な事例を通じてご紹介してきたように、O2OマーケティングはWeb(オンライン)を用いて実店舗(オフライン)への送客拡大をはかるだけでなく、チラシ(オフライン)からWeb(オンライン)へ、あるいはチラシ(オフライン)からオンラインを経由して実店舗(オフライン)へと、顧客を誘導することにも用いられています。
こうした取り組みが、コミュニケーションの深化や、売上の拡大などの成果につながっている企業も少なからず出てきています。
店舗やWebへの集客の拡大に向けて、O2Oマーケティングの取り組みを進められてはいかがでしょうか。

PROFILE

井上 智紀(いのうえともき)

ニッセイ基礎研究所

生活研究部 准主任研究員

・1995年:財団法人生命保険文化センター 入社
・2003年:筑波大学大学院ビジネス科学研究科経営システム科学専攻修了(経営学)
・2004年:株式会社ニッセイ基礎研究所社会研究部門 入社
・2006年~:同 生活研究部門
・東洋大学経営学部(2006年度~)非常勤講師
・山梨大学生命環境学部(2010年~)非常勤講師

所属学会
・日本マーケティング・サイエンス学会
・日本消費者行動研究学会
・日本ダイレクトマーケティング学会
・生活経済学会
・日本保険学会
・生命保険経営学会
・ビジネスモデル学会
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