インバウンド・マーケティングの面白い事例まとめ

井上 智紀(いのうえともき) (ニッセイ基礎研究所)

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インバウンド・マーケティングはユーザー(顧客)の自発的な行動をターゲットにしたマーケティング手法。今行っているWebマーケティング手法で手ごたえを感じなくなった場合に、ぜひ取り入れていただきたい分野になります。コンテンツ・マーケティングやSEO、ソーシャルなどを上手に行っている事例をまとめてみましたので、ぜひ参考にしてください。

マーケティング

インバウンド・マーケティングとは

広告・宣伝においてAIDMA理論が長く支配的であったように、従来、マーケティングの手法は、往々にして企業から消費者への一方的なものでした。

しかし、現代では、消費者は日々、膨大な情報に接しており、自ら必要性を感じた情報に興味を示すだけで精一杯になっています。このことは、今日の環境下では大量の広告やDM、テレマーケティングといったアウトバウント・マーケティングは非効率であり、多くの売上をもたらすことはなくなっていることを意味しています。裏を返せば、消費者は、「自ら知りたい、調べたい」と思ったときには、自ら情報を求めて能動的に行動し、有用な情報が得られれば確実にメッセージを受けとめるようになっていることから、こうした能動的に行動する消費者に向けて、検索エンジンやブログ、ソーシャルメディアといったコミュニケーション・プログラムを活用すれば、効果的に消費者にリーチできる可能性があるといえるでしょう。

インバウンド・マーケティング(Inbound Marketing)は、このように、自ら情報を求めて自発的に集まってきた(=インバウンド)ユーザーに対するマーケティング手法です。

従来型のアウトバウント・マーケティング(Outbound Marketing)では、マス広告やDM、テレマーケティングなどを通じて消費者の認知や関心を引きだし、購入などの行動に結びつけていくものでした。そのため、テレマーケティングであればCPOやコール数などが、WebマーケティングであればCTRやCPAなどが、それぞれ成果をはかる指標として用いられますし、ターゲットとする消費者と接触したとき、そもそも商品に関心を持っているのか、商品への関心の程度はどの程度か、といったことがわからないため、プロモーション自体も往々にして注意を引くために(品質や効能、価格などの)優位性を強調するもの(広告などのクリエイティブ)になりがちです。また、プロモーション手法の採否は(短期的な)売上につながるか否かで決まることが多いものと思われます。

一方、インバウンド・マーケティングでは、事前に動機づけられた状態で接触してくる消費者に対して、適切な情報を提供し続けることで信頼を築き、顧客になってもらうとともに、将来的には推奨者にまで育てていくことを目的としています。前述のとおり、消費者は自ら情報を求めて接触してくることから、関心を持っていることは明らかです。そのため、プロモーションは単に注意を引くのではなく、彼らの知りたい、調べたい事柄に応える適切な情報(コンテンツ)であることが求められます。また、「購入してもらうこと」を目的としているアウトバウント・マーケティングとは異なり、潜在顧客との関係を深め、顧客化していくなかでは、継続性を意識した情報発信やコミュニケーションのあり方が求められるといえるでしょう。具体的には、ブログやウェビナー、ホワイトペーパーなどを用いたコンテンツ・マーケティングとこれらのコンテンツに誘導するためのSEO、Facebook、TwitterなどのSNSを活用したコミュニケーション(アクティブサポートを含みます)などの手法を組み合わせていくことになります。

なお、インバウンド・マーケティングでは短期的な売上よりもむしろ、顧客との長期的な関係性やブランドの構築に価値をおいていることから、マーケティング指標としては、CTRやCPAなどに加えて、満足度やブランドエンゲージメント、推奨行動の動向も用いていく必要があるでしょう。

インバウンド・マーケティングとアウトバウント・マーケティングの違い

手法事例
インバウンド・マーケティング
  • 検索ユーザーを捉えるSEO
  • コンテンツ・マーケティング
  • アクティブサポート
  • インサイドセールス など
アウトバウント・マーケティング
  • 純広告
  • リスティング広告
  • TVCM
  • 新聞/雑誌広告
  • 交通広告 など

 次の章では、インバウンド・マーケティングのプロとして有名な「ハブスポット」社の事例[1]から、インバウンド・マーケティングの考え方とその有効性についてみていきます。

インバウンド・マーケティングのプロ「ハブスポット」の研究

ハブスポット社(HubSpot)は、MIT在学中に出会ったB.ハリガン(Halligan)とD.シャー(Shah)の2人により、2006年に設立された会社です。同社はインバウンド・マーケティングを支援するウェブベースのソフトウェアを提供する企業であるとともに、インバウンド・マーケティングの普及を目指す「エバンジェリスト(伝道者)」として、インバウンド・マーケティングの有効性や、取り組みにあたって必要となる様々な知識・情報を発信しています。ここでは、同社の提供するソフトウェアおよび同社が取り組むインバウンド・マーケティングについて概略を紹介するなかで、インバウンド・マーケティングの考え方とその有効性について確認します。

【ハブスポット社の商品】

ハブスポット社では、Web2.0の世界観を体現するウェブベースのマーケティングシステムを提供するソフトウェアとして、あらかじめデザインされたテンプレートにより、ウェブページやブログ、オンラインフォーム、ランディングページをオンラインで顧客自身が容易に作成できるCMSや、自社および競合他社のアクセス状況の分析や自社サイトのキーワードの有効性を検証するSEOツール、インバウンド・マーケティング・プログラムの効果を検証するうえで必要な顧客トラッキングといった機能を提供しています。

これらの機能は、企業の顧客ファネル[2]を管理し、ビジネスを支援することを可能にしています。顧客ファネルの最上部や中段は、マーケティング・プログラムにより、潜在顧客を惹きつけ、潜在顧客の中から有望な見込み客を見出してセールスフォースに送り込むプロセスであり、最後の段階では、見込み客に販売し、顧客化するクロージングのプロセスといえます。このうち、クロージングのプロセスについては、すでに、見込み客のデータベース化や購買までの進捗状況の管理を可能にするセールスフォース社のソフトウェアが事実上の業界標準となっていることから、ハブスポット社では、顧客ファネルの最上部から中段までのステージにおいてセールスフォース社のように支配的な地位を占めることを目指しています。

[1] 出所:T. Steenburgh, J. Avery & N. Dahad (2009) “HubSpot; Inbound Marketing and Web2.0”, HARVARD BUSINESS REVIEW Case Study Series
[2] ファネルは漏斗のこと。顧客ファネルとは、企業が見込み客を惹きつけて顧客化し、推奨者にまで導くプロセスを、漏斗が水を細い口に集めて流し出す様に例えて比喩的に表現したものである。

【ハブスポット社のインバウンド・マーケティング】

顧客ファネルの最上部では、消費者の注意を喚起し、関心を抱かせて潜在顧客としてファネルに取り込むことが目標となります。こうした目的に対して、バナーやリスティング広告などで集客をはかるアウトバウント・マーケティングとは異なり、インバウンド・マーケティングに取り組む企業では、ウェブサイトを通じて情報やコンテスト/懸賞や無料相談を提供します。情報の受領やコンテストへの参加、オンラインフォームへの入力といった見込み客の行動は、彼らの予算や購入タイミングを推定するうえで有益な情報となっています。ハブスポット社では、同社のサイトを通じてWeb2.0とインバウンド・マーケティングに関する情報をホワイトペーパー、ウェビナー、ポッドキャスト、ブログを通じて発信するとともに、Pro-MarketersというWeb2.0とインバウンド・マーケティングに関心のあるマーケティングプロフェッショナル8000名のメンバーが登録するリンクトインのグループを開設・管理しています。このほか、iTunesでも視聴可能なポッドキャストでのライブストリーミングであるHubSpotTVを毎週金曜に従業員協力のもと流したり、インバウンド・マーケティングのコンセプトを示すためにアラニス・モリセットの”You Oughta Know”の歌詞をもじったビデオや”Cold Calling Is for Losers”と題してアウトバウント・マーケティングの無駄を滑稽に描いたビデオをYouTubeに投稿しています。YouTube上のビデオは、それぞれ5万回以上、あるいは3万5000回以上再生されています。

同社は、インバウンド・マーケティングの体現者であり、関心のある者には自分たちの豊富な知識を惜しみなく提供し、専門家になることを支援する旨、ウェブサイト上で宣言しており、多くの従業員が自社のWeb2.0でのプレゼンス向上に向けて、ブログやTwitterなどのソーシャルメディアに参加してプロモーションを行っています。

一方、顧客ファネルの中段では、異なる段階にある潜在顧客を選別し、見込み客生成プログラムに送り込むことにある。顧客への販売には、人材や財源の投資が必要であり、企業はできる限り有望な見込み客に集中して資源を確保したいと考えている。多くの潜在顧客を見込み客に転換し、顧客化できる可能性は高くないことから、購買意欲が高まっていない潜在顧客を選別できれば、企業は多くの費用を節約することができる。

見込み客の選別は、有望な見込み客を抽出し、販売部隊に送り込むことに焦点を当てたプロセスである。同社では、見込み客に対してHubSpotの紹介と併せて有益な情報を提供するとともに、見込み客所有するサイトやTwitter、Facebookのアカウントのパフォーマンスを評価できるWebsite Grader、Twitter Grader、Facebook Graderという3つの小さなソフトウェアを無償で提供しています。

2009年には、ウェブサイトは65万以上、Facebookプロフィールは2万2000以上、Twitterアカウント200万がこれらのフリーツールを利用しており、多くの好意的な反応やオンラインのクチコミを産むとともに、利用者を顧客ファネルに導いています。

【インバウンド・マーケティングの有効性】

以上、ハブスポット社の取り組みを概観してきましたが、インバウンド・マーケティングを効果的に実践していくためには、以下に示す3つのスキルが必要です。

第1に、広告メッセージではなく、有益な内容により顧客を引きつける文章能力です。冒頭にも記したように、今や消費者は、広告メッセージ(それがいかに秀逸なものでも)に反応することはなくなってきています。インバウンド・マーケティングの効果を高めるためには、潜在顧客が知りたい、調べたいと感じていることに対して、的確に応える内容をわかりやすく伝える文章能力は不可欠といえるでしょう。

第2に、検索サイトで有益な情報を探す(潜在)顧客に容易に辿り着いてもらうため、必要とされるSEOに関する洗練された知識です。すぐれたコンテンツを用意しても、読み手の目に留まることができなければ、意味をなしません。(潜在)顧客の検索キーワードについてあらかじめ想定したうえで、常に検索上位に挙がるためには、SEOに関する知識を有することは必須の要件といるでしょう。

第3には、(潜在)顧客との対話を継続するなかでコミュニティを構築・維持し、コンテンツとして新たな(潜在)顧客へと裾野を拡大していく能力です。(潜在)顧客との対話は1対1で行うことにも意味があるのは確かですが、特定の(潜在)顧客との対話を公開することは、(潜在)顧客と向きあう姿を示すことにもつながりますし、顧客同士でサポートを提供しあったり、顧客が新たな(潜在)顧客に対して、推奨してくれる効果も期待できます。こうした効果を享受するためには、コミュニティを構築し、良好な関係を継続する努力が求められるといえるでしょう。

これら3つのスキルをもとに、特定の領域における専門知識を提供し、顧客を支援する姿を見せることで、市場からの信頼を獲得できるのです。ハブスポット社は、これらのスキルを活用してインバウンド・マーケティングに取り組むことで、先にみたような成果を手にしているといえるでしょう。

以降では、コンテンツ・マーケティングやSNSの活用など、インバウンド・マーケティングによる成功事例について、それぞれ紹介していきます。

コンテンツ・マーケティングを使った集客の事例

【B2Bのコンテンツ・マーケティングによる集客の事例】

経営ハッカー

クラウド会計ソフト、クラウド給与計算ソフトを提供するfreee株式会社は、2013年3月に「クラウド会計ソフトfreee」をリリース後、急速に顧客数を増やし、すでに30万以上の事業所で利用されています[1]。同社では、自社サイト上での単なる製品紹介に留まらず、動画やスライドによる解説や導入事例の紹介ページのほか、公式ブログや代表者ブログ、twitterやFacebook、Google+、公式YouTubeチャンネルなどのSNSの活用などを通じて、潜在顧客や見込み客を惹きつけることに成功しています。また、同社では、スモールビジネスの企業、個人事業主を主要なターゲットとしていることから、これらの顧客層を支援することを目的としたサイト「経営ハッカー」を運営しています。「経営ハッカー」では、経理・会計に関わる情報のほか、バックオフィス業務を効率化するヒントなど、同社のターゲット顧客層にとって有益な情報を発信するメディアとして、週に数回の頻度で更新しています。現状では、クラウド型の会計ソフトは、会計ソフト利用者のうち5%程度[2]と、顕在化している市場は限られているものの、同社の「クラウド会計ソフトfreee」はクラウド型会計ソフト利用者の4割と、トップシェアを獲得しています。

同社は、「バックオフィスの効率化」を目指して商品開発を続けており、外部ツールとの連携による自動入力の実現など、機能強化が進められています。このような商品の機能向上は、クラウド型会計ソフトや、同社商品の機能に関心を持った潜在顧客を顧客ファネルに導くうえで、重要な役割を担っているといえるでしょう。

なお、見込み客の獲得にあたっては、今のところ同社では行われていないものの、企業のセールス資料、サービス紹介資料、技術資料、事例資料などのホワイトペーパーを作成し、連絡先や関心事項などの個人情報の入力と引き換えにホワイトペーパーをダウンロードさせることも有効です。ただし、この場合、個人情報と引き換えに入手したホワイトペーパーの内容が見込み客の意に添った有益なコンテンツとなっていない場合には、離脱されたり、ブランドを毀損するリスクがある点に注意が必要でしょう。

【B2C(EC)のコンテンツ・マーケティングによる集客の事例】

生活用品の企画、製造、販売を行うアイリスオーヤマでは、2009年4月に主婦向け情報サイト「アイリス暮らし便利ナビ」を開設[3]し、レシピや家事のアドバイス・裏技などを提供しています。同サイトでは、会社側からの一方的な情報発信に留まらず、ブロガーによる連載記事の寄稿や会員からのクチコミ情報の投稿を募るユーザー参加型のコンテンツなどを通じて、同社製品の使い方などの認知拡大をはかっています。また、YouTubeチャンネルでは、実際の利用シーンを撮影した15本の動画が登録されており、同サイトの記事と併せて、認知の拡大や購買に向けた検討行動を支援しています。

なお、同サイト中の記事では後半部分におすすめ商品を掲載し、同社のECサイト「アイリスプラザ」に誘導することで、潜在顧客を購買につなげるよう導線設計がなされています。

同社ではこのほか、「家庭菜園ドットコム」「収納インテリアドットコム」「ペットどっとコム 犬といっしょ」など、興味関心が異なる顧客層ごとに情報サイトを開設・運営し、それぞれのサイトを訪れる潜在顧客を顧客ファネルに導いています。

Facebookページで成功した事例

【土屋鞄製造所のコンテンツ・マーケティング】

土屋鞄

(株)アイ・エム・ジェイの「企業Facebookページ年間ランキング2013」において「いいね!」ランキング4位に挙げられた「土屋鞄製造所」は、公式サイトで豊富な写真とともに製品の特徴や使用する革の紹介、使い方の提案などの記事コンテンツ、店舗周辺のスポット情報などをまとめた特集コンテンツ、ブログなど、様々なコンテンツを掲載しています。Facebookページでは、公式サイトと連動して鞄作りの様子や製品紹介のほか、四季折々のつぶやきを投稿しており、約28万人のファンを集めています。また、投稿へのいいね!数は前述の2013年時点のランキングでは平均8,220件と高く、ユーザーローカルによる解析結果[4]では、最近の人気書き込みランキング上位10件の平均いいね!数は9,527件、ファン数に占める比率では平均3.4%と、高いエンゲージメントを築いていることがわかります。

商品の使い勝手や質感などは実店舗で触れてみなければわからないものの、同社はFacebookページや公式サイトでブランドの世界観を伝えるとともに、実店舗やECサイトへの導線(前述のハブスポットの事例でいえば、顧客ファネルの中段以降)として活用し

ているものと考えられます。

【北海道Likers(ライカーズ)のコンテンツ・マーケティング】

一方、サッポロビール(株)が運営する「北海道Likers(ライカーズ)」は、同社創業の地である北海道の魅力を国内外に発信して地域活性化を行うことを目的として2012年4月にFacebookページが開設されました。販促やブランディングにつなげることを主目的としたものではないため、公式サイト[5]やFacebookページではできる限り企業色を排したものとなっており、開設後9か月で国内外あわせて約75万人(現時点では約125万人[6])のファンの獲得に成功しています。Facebookページは、道内在住のライター、カメラマンといった運営パートナーとのネットワークにより、更新されており、サイトで紹介された北海道発の製品で完売したものも多数現れるなど、地域の発展に貢献するビジネスモデルとして注目を集め、2012年度の日本マーケティング協会「第5回 日本マーケティング大賞」では地域賞も受けています。

3周年を迎え、専用のiOSアプリをリリースするとともに、オリジナルデザインラベルのビールをサッポロビール社のネットショップ限定で販売する計画も進められていることから、当初の主目的である北海道の地域活性化に加えて、同社のブランディングや販促への活用も進められていくものと思われます。

Twitterアクティブサポートで成功した事例

【オルビス社のアクティブサポート】

化粧品や栄養補助食品、ボディウェアの開発と販売を行うオルビス株式会社は、2011年よりFacebookやTwitter、LINEといったソーシャルメディアの活用を始め、それぞれのメディアの特性を活かして使い分けています[7]

そのなかで、Twitterでは、問い合わせに対して答えるのはもちろん、製品に関する要望や悩みごとに関するツイートに対して積極的に声をかけて相談に乗る「アクティブサポート」にも取り組んでいます。同社では、こうした一見ネガティブなツイートへの対応のほか、同社や同社製品に好意的な内容のツイートに対して、感謝の意を伝えるとともに、付加的な情報を提供することで、さらに満足度を高めることも意図しています。このような取り組みは、情報の拡散が容易なソーシャルメディア上にあって、同社のブランド価値の向上に直截的に寄与することが期待されます。実際に、オルビス社はサービス産業生産性協議会が実施しているJCSI(日本版顧客満足度指数)において、通信販売業のなかで4年連続で顧客満足度1位となっており、知覚品質、知覚価値、推奨意向の3指標においても1位とバランス良く高い評価を獲得しています。

【ソフトバンク社のアクティブサポート】

SBtw

一方、ソフトバンク社では、2010年4月よりTwitterでのアクティブサポートを開始しており、1日あたり500件のツイートのうち、企業側から探しだしたトラブルに陥っている顧客に対する発信が300件にのぼっている[8]ようです。

運用にあたっては、1日のはじまりはあいさつツイートから始めることや、個人情報を取得する必要がある場合は専用のEメールフォームに誘導すること、Eメールの受け取りや回答もTwitter専任のサポートスタッフが対応することなどのガイドラインを定めているうえ、Twitterにより収集された顧客の声は、トラブル情報だけでなくポジティブなものも含めて1日2回、関連各部門に報告されるようになっているようです。

同社のTwitterによるカスタマーサポート「SBCare」の企画と立ち上げ、運用に従事した金澤氏によれば、アクティブサポートを進めるうえでのポイントとして、「ユーザーの気分を害さないように気をつけて丁寧かつフレンドリーな対応を心がけること」、「話しかけられたくないユーザーもいるため、ユーザーに嫌われるリスクを常に考慮しておくこと」、「Twitterだけでユーザーが抱えている疑問や課題を解決しようとせず、Eメールや電話など顧客接点を柔軟に使い分けること」の3点を指摘しています。

これらのポイントはいずれもアクティブサポートに限った話ではなく、顧客志向にたった対応が不可欠であることを意味しているといえるのではないでしょうか。

以上みてきたように、現代では、B2BかB2Cを問わず、従来型のアウトバウント・マーケティングではなく、インバウンド・マーケティングへの取り組みが不可欠な時代になっているといえそうです。

ハブスポット社の事例や、後半で紹介してきた各社の事例ではいずれも、顧客満足度やブランド価値の向上など、短期的な売上に囚われず、顧客志向にたった長期的で良好な関係を構築・継続していくことを重視して取り組まれているようです。実際に、土屋鞄製造所やオルビス社のように、顧客との高いエンゲージメントや満足度、推奨意向といった成果につなげているところもでてきています。

自社の公式サイトやブログ、ウェビナーや見込み客獲得を企図したホワイトペーパー、ソーシャルメディアなどのメディアの使い方には注意すべき点も様々にありますが、事業の効率性向上の観点からも、早急な取り組みが必要であることは言を俟たないでしょう。

[1] 出所:http://www.freee.co.jp/company/
[2] (株)シード・プランニング デジタルインファクト調べ
[3] 出所:同社プレスリリース(http://www.irisohyama.co.jp/news/2009/0407.html
[4] 出所:http://social.userlocal.jp/facebook/page/b2543_203361056348699.html
[5] http://www.hokkaidolikers.com/
[6] 出所:サッポロビール社プレスリリース(2015年4月6日)
[7] 出所:http://itnp.net/story/496
[8] 出所:http://blogs.itmedia.co.jp/saito/2011/02/sbcare-0083.html

PROFILE

井上 智紀(いのうえともき)

ニッセイ基礎研究所

生活研究部 准主任研究員

・1995年:財団法人生命保険文化センター 入社
・2003年:筑波大学大学院ビジネス科学研究科経営システム科学専攻修了(経営学)
・2004年:株式会社ニッセイ基礎研究所社会研究部門 入社
・2006年~:同 生活研究部門
・東洋大学経営学部(2006年度~)非常勤講師
・山梨大学生命環境学部(2010年~)非常勤講師

所属学会
・日本マーケティング・サイエンス学会
・日本消費者行動研究学会
・日本ダイレクトマーケティング学会
・生活経済学会
・日本保険学会
・生命保険経営学会
・ビジネスモデル学会
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