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2018.10.31

B2Bマーケティングにおける目標達成・業績評価指標(KGI/KPI)の活用を考える

今回は、BtoB企業のマーケティングとセールス領域のコンサルティングを行っているB2Bマーケティング株式会社の代表取締役 堀首 裕芳 氏に記事を寄稿いただきました。

国内の多くのB2B企業において、企業規模に関わらずデジタルマーケティングの取り組みが推進されつつあります。しかしながら、B2B事業の多くはネット広告やWebサイトなどオンライン上で完結しないビジネスであり、展示会やセミナーなどのイベント集客、あるいはセールス担当者による提案活動など、リアルな活動や施策との連携・連動が、成果(売上)につなげるための重要な要素になってます。

そこで、B2Bマーケティングにおける取り組みの成果をどのように計測・評価し、どう改善活動につなげていくべきか、マーケティングあるいはセールス全体での目標達成・業績評価指標(KGI/KPI)の考え方や活用方法を考えてみたいと思います。

あらためて目標達成・業績評価指標(KGI/KPI)とは?

一般的に、KGI(ケージーアイ)やKPI(ケーピーアイ)というワードはそれぞれ以下のように訳されます。

  • KGI(Key Goal Indicator):重要目標達成指標
  • KPI(Key Perfomance Indicator):重要業績評価指標

設定した目標KGIを達成するために必要なプロセスを評価・可視化し、改善していく(よりゴールに近づける)ために使われる中間指標がKPIとなります。

そもそもKGIやKPIという考え方は、BSC(バランスト・スコアカード)と呼ばれる戦略策定フレームワークの中で用いられる指標が一般化したもので、現在ではあらゆるビジネスシーンにおいて、よく使われるようになりました。

J1リーグ優勝までのKGI/KPI の設定イメージ

それでは、こういった指標にあまり馴染みのない方々の理解を助けるため、サッカーチームの経営・運営に当てはめて説明したいと思います。

図表にあるように、最終目標をリーグ優勝とします。その最終目標を達成するために、重要成功要因(Critical Success Factor)を定めます。重要成功要因とは目標と戦略の実現のために何が重要な成功要因かを明示するものです。

ここでは、重要成功要因の一つとして「攻撃的なサッカー」の実現を掲げています。

このとき、年間総得点60ゴールをKGIとして設定し、この60ゴールを達成するための中間指標としてKPIが設定されている、という考え方です。

例えば、ゴールはシュートを打たないと入らないものですので、全試合で300本以上のシュートを打つ、あるいはパスの平均成功率を80%以上とする、などの指標を定めます。

あるいは、重要成功要因の一つとして「サポーターの活性化」を掲げて、KGIとして年間の観客総動員数80万人に設定したとすれば、ファンクラブの会員数や会員サイトのページビュー(PV)などをKPIとして計測・評価していくことが可能、というわけです。

これらのKPIを考える際には、KGIの達成と相関関係がありコントロール可能な指標であることを考慮して設定する必要があります。というのも、KGIの達成に貢献せず、マネジメントできないような指標であれば不適切だからです。

とはいえ、当初から適切な指標を設定できるとは限らず、これらの指標を継続的にモニタリングしていきながら、適宜見直していくことが求められます。

目標から逆算することで、目標達成プロセスをマネジメント

マーケティングあるいはセールスに関する施策を企画・実行する以前に、目標を見据えた達成シナリオを想定できていないと、思うような成果は得られません。

例えば、目標が『来期予算の達成』なら「目標達成のために、何件の営業案件(平均の案件単価から算定)が必要か? ⇒どんな商談経路から案件を獲得するか? ⇒その案件を創出するには、どんな施策・活動がどの程度必要か?」といった具合に、目標から逆算して日々の施策・活動レベルにまでブレークダウンしていきます。

下図を例にとると、Webサイト経由の問い合わせに対する営業プロセスを想定した場合、12件の案件獲得を目標にすると、各プロセスの遷移率からWeb経由の問い合わせ数は100件必要だということが判明します。

目標件数から逆算する各フェーズにおける目標獲得数のイメージ

同様の考え方で、商談経路ごとの案件創出・獲得シナリオを目標から逆算していくと、以下のようなツリー構造で関連付けられ、それぞれの評価・マネジメントが可能になります。

具体的には、年間で必要な受注件数の30%をWeb経由で獲得するために、案件の受注率あるいは案件化率などで割り戻していくと、Web経由の問い合わせ件数が600件必要なことがわかり、それをさらにブレークダウンしていくと、対象の製品サイトのユニークユーザー数として月間3,000を目指すことが示されます。

各商談経路ごとの獲得シナリオのイメージ

では、この月間ユニークユーザー数3,000を実現するためには、どの様なコントロール可能なアクションが考えられるでしょうか?

ノウハウ系のコラムを毎週公開することも考えられますし、毎月1件の導入事例を公開することも考えられます。あるいは、現在のターゲット設定を見直して、サイト自体をリニューアルする必要があるのかもしれません。

経営層が見たいのは、「その事業は目標達成できそうか?その進捗に問題があるようであれば、どんなテコ入れが必要か?」などを判断できる指標であり、現場の責任者・リーダーは、施策・活動単位の進捗を示す指標に興味をもつことが多いように思います。全体のプロセスの中でそれぞれがどう関連付けられているのかを把握できることは、全体最適を図る上で非常に重要な要素だと考えています。

ここでは解説するためにあえてシンプルに表記していますが、それぞれの商談経路から案件を創出するには幾つかの指標(アクション)が考えられるため、目標達成を実現するための貢献度合いを把握・調整しながら、日々のマネジメントに活かすことが肝要です。

前述してきたように、これらの指標がすべて整然とつながるのが理想ですが、現実的には運用面で難しいところもあるかもしれません。「そもそも、マーケティングの目標や評価指標は明確にしづらい」という問題意識をよく伺いますが、正確性や網羅性を追求するよりも、その傾向を相対的にいち早くつかんで改善活動につなげていく姿勢が重要ではないか、と筆者は考えています。

ITツール(MA/CRM/SFA)の活用で、現状の可視化と改善活動を推進

たとえ目標が明確になっていても、それを実現するシナリオや目標とのギャップを指し示す現在地がはっきりしないようでは、効果的な対策は打てず、目標達成には至りません

逆に、現在地を正しく把握できれば軌道修正が容易になる、というものです。

そして、この現在地を把握できる評価指標(KGI/KPI)を継続的かつ効率的にモニタリングしていくためにはITツールの活用が効果的です。

一般的には、マーケティング関連の指標であれば、MA(マーケティング・オートメーション)やCRM(顧客管理システム)といったITツールで、セールス関連の指標であれば、SFA(営業支援システム)といったITツールの活用でモニタリング可能ですが、あくまでも成果獲得・課題解決のためのツールとして活用を検討頂きたいと考えています。

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さいごに

15世紀半ば~17世紀半ばまで続いた大航海時代では、多くの国家・民族が未知の新大陸発見を期待して、競うように大海原へ挑戦したといいます。歴史上では、コロンブスのアメリカ大陸到達、さらにはマゼランの世界一周などがあげられますが、当時、仮に精度の高い海図があったとしても、緯度や経度などで現在地を正確に把握することができなければ、目的地に到達することは容易ではなかったと思います。

これは企業経営でも同じことではないでしょうか?

企業のビジョン・目標を達成するための戦略や施策を展開していくものの、航海上の天候と同様に市場環境やニーズの変化により、必ずしも想定していたシナリオ通りには進展せず、常に戦略や計画の見直しを迫られるものです。

目標達成のためには何が必要で、その成否を判断する指標は何か。

各社のマネジメントに合った指標の活用は一朝一夕にはいかないもの。試行錯誤を重ねながら独自の成功モデルを築かれることを期待しています。

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